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■2015/11/24 (Tue)
創作小説■
第6章 キール・ブリシュトの悪魔
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9
翌日も旅は続いた。東へ進路を進め、やがて海岸線が見えてきたところで南に折れた。再び舗装された道路が見えてくると、それに沿って進んだ。日が暮れた頃、ちょうどよく漁村が見えてきたので、その日は漁村の民家で休みを取った。その後も再び南へ、ついに街道から逸れて、地図にも描かれていない土地へと踏み込んでいく。その先に何があるのか、バン・シー以外に知る者はない。荒れ地ばかりの風景に目印など何一つない。旅の一行は、バン・シーの案内のみを頼りに旅を続けた。
旅もいよいよ5日目に入った。荒れ地は深まっていく。土は赤茶けた面を剥き出しにして、木々は不吉に折れ曲がり、大地が吸い込もうとしない雨水が不快な臭いを放つ沼になって浮かび上がっていた。風景に魔性の気配が漂い始めた頃、行く手に山脈が立ち塞がった。
バン・シーは躊躇いもなく山へと入っていく。セシル達もこれに続いた。
まさに死の山であった。山には健康な草木などなく、なにもかもが朽ち果てていた。獣の気配はなく、囁くのは邪な悪霊の声ばかりだった。悪霊達は、もはやドルイドの祈りの声すら受け付けなかった。
そんな場所ですら、かつて人が立ち入った痕跡があちこちにあった。山の奥へ向かって道が整えられていたし、建物の跡があちこちにあった。信じられないが、かつてこの場所にもかなり賑わった街があったようだ。バン・シーが言うには、城を築くために集められた労働者が過ごす街だったそうだ。廃墟には、もはや悪霊の影すらなく、バゲインが潜む気配が感じられた。
山の奥へと入り込んでいくと、噴火でも起きたような濁った灰色が風景を包み始めた。ますます生命の気配は遠くなっていき、死の世界に迷い込んだような不気味さが漂い始めていた。風の音もなければ獣の気配もない。ただ不吉さが景色全体を覆っていた。
ゼイン
「なんじゃこの気配は……。不吉だ」
バン・シー
「この辺りはネフィリムの楽天地だ。いつでも剣を抜ける用意をしておけ」
バン・シーは灰色の霧の中、迷いなく一同を導いていく。そのお陰か、ネフィリムとは遭遇しなかった。
山道は何度も分岐した。この山では、崖の下がそのままあの世に通じているように思えた。
そんな山の中で夜を迎えて一泊した。次の日の朝も、山道を進む旅は進む。
やがて谷間に、人の建築物が見えた。まるで教会の尖塔のようなものが見えた。一行は谷を下りていく。するとその辺一帯が、山をくりぬいたかのような広い平野になっていた。その平野に、不気味な建築物が堂々たる威容で建っていた。
キール・ブリシュトだ。
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