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■2015/10/21 (Wed)
創作小説■
第5章 蛮族の軍団
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8
暗く、怪しい霧が何もかもを覆っていた。霧は深く、その向こうに時折見せるのは、草も見せず、精霊も宿さない赤茶けた土に枯れた木々、そして廃墟だけだった。不毛と呼ぶなら、それ以上に相応しい光景がない場所。そんな場所に、馬が一騎。馬の背に乗っていたのはバン・シーだった。
バン・シーは暗く、毒でも混じっているかのような灰色の霧の中、恐れずに進んでいく。やがて、行く先に大きな門が現れた。かつては荘厳華麗であったであろう大門は今や朽ち果てて、細かな職人の手による彫刻は、グロテスクに形を歪めている。それはすでに門としての役割を果たさない代わりに、訪れる者を地獄に誘うかのように開け放たれていた。
門を潜ると、真っ直ぐな石造りの道路が延び、その両側にいくつもの台座が置かれ、台座の上にガーゴイルたちが思い思いの姿で固まっていた。なぜか台座の半分にはガーゴイルの姿はない。
バン・シーは道路を進む。馬の蹄の音が、辺りに響いた。響きの中に人の気配は全くない。しかしバン・シーは警戒を緩めず、奥へ奥へと入っていった。
目の前に、建物の姿が現れた。灰色の石造りの建物は、霧に取り囲まれて全体が見えなかったが、しかし見えざる霧の向こうに圧倒的な威容を感じさせるものがあった。
そこで、バン・シーは足を止めた。
不意に、辺りの霧が濁ってきた。不穏な気配で満ちあふれ、そして――どこかで唸り声がするのを聞いた。まさしく地の底の魔物の声だった。
バン・シー
「また1匹目覚めたか」
バン・シーは舌打ちして、馬の首を反対方向に向けて進もうとした。
が、霧に向こうに急速に気配が集まってきた。大門の向こうにいたのは、ネフィリムの軍団だった。ネフィリムたちは剣や斧をかちゃかちゃ鳴らせて、狂気の目を血走らせていた。
バン・シーは馬を止めない代わりに、顔を憤怒に歪め、掌に雷を走らせた。
バン・シー
「退け! 退かぬと地獄でも味わえぬ恐怖を喰らわすぞ!」
爆音が轟いた。大門が吹っ飛び、ネフィリムが粉々になって弾け飛んだ。
爆煙の中から、バン・シーが飛び出してきた。生き残ったネフィリムを踏みつぶして、城から脱出する。
背後で、落雷のような凄まじい咆吼が轟いた。どうやら地底の魔物は、バン・シーの魔術に怒ったらしい。
――急がねば。
バン・シーは馬を急がせた。
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