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■2015/10/15 (Thu)
創作小説■
第5章 蛮族の軍団
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5
長城の再建計画より先に、兵士たちが住まう住居の見直しから始まった。兵士が増えたというのもあるが、現状ではそのままで工事を進めるのは困難に思えたからだ。まず泥を掻き出して土を均し、その上に住居を建設した。住居の建設が終わるまで、兵士たちはテントで暮らした。
周囲の森も必要以上に繁茂していて、伐採が必要だったが、それには僧侶のお祓いが必要なので、その訪問を待った。
兵士たちは過酷な労働条件だったが、休みなしで働き詰め、1週間後には土地の再整備は終わり、住居の建設が始まろうとしていた。
いまだ敵の動向に関する知らせはなく、再建は日々順調だった。そんな時に、ようやく僧侶がやってきた。
しかしあまりにも思いがけない人物の訪問に、オークの驚きは大きかった。
ソフィー
「お久しぶりです、オーク様」
現れたのはソフィーだった。ソフィーは自分よりはるかに年上のドルイドを配下に従え、久し振りの再会に目をキラキラと輝かせていた。
ソフィーとの再会はオーク自身喜ぶべきだったが、それ以上に戸惑いがあった。
オーク
「久し振りです。しかしいったいどういうわけですか? まさかあなたが来るとは聞いていませんでしたが……」
ソフィー
「それは変ですね。ドルイドを派遣するという知らせは届いていたはずですが」
オーク
「それは間違いなく聞いていましたが……」
ソフィー
「あら、ひょっとしてご不満でしたか? 私にはこの任務は務まらないと?」
オーク
「いいえ。あなたの神通力がいかに強力かは知っております。しかし……」
ソフィー
「若すぎる、と」
オークに限らず、誰もがドルイドと聞けば年老いた老人を思い浮かべる。それはただの先入観の話ではなく、あらゆる伝奇や祝詞を口伝のみによって継承するために、その全てを習得し、一人前になる頃には大抵髪は白くなり、腰が曲がる頃であるからだ。
しかしソフィーは明らかに若過ぎだった。まだまだあどけなさの残る少女だ。しかもソフィーは、自分の祖父というくらいのドルイドを配下として従えているのである。何かの冗談としか思えなかった。
オーク
「いや、それは……」
ドルイド僧
「ご安心くだされ。この者は我らの教えが始まって以来の才人。過去の偉大な老師たちの中ですら例を見ない稀なる者でございます。老師たちの語った言葉は一度聞けばたちどころにすべて覚えてしまい、多くの弟子達が苦労して理解する呪文や学問や歴史の全ても何の苦労もなく覚え、なおかついつでも自由に引き出す能力も持っています。それにソフィー様は幼少の頃より物の名前を呼び誤ったことがなく……」
ソフィー
「じい。それくらいで。恥ずかしいですわ」
ドルイド僧
「これは失礼しました。とにかくも、ソフィー様は確かにまだ若い年頃ですが、もうすでにあのパンテオンにおいて学ぶべきものがないのです。だから我々としては、狭い寺院に押し込めておくより、外へ出してより広く見聞を求め、ドルイドに新しい道を切り拓いてほしい……。そういう思いで、このたびソフィー様を派遣することに決めたのです」
オーク
「そうでしたか。知らぬとはいえ、見た目で判断してしまいました。申し訳ありません」
ソフィー
「いいえ」
ドルイド僧
「しかしソフィー様。これからは責任ある行動を心がけてください。我々の保護から離れたとはいえ、自由の身ではありませんぞ。あなたは行く先々で寺院を代表すべき人間としての責任がかかっておるのです」
ソフィー
「わかっております。同じ言葉を27回も繰り返さなくてもきちんと心得ています。私は才女なのですよ」
ドルイド僧
「やれやれ」
オーク
「それよりも皆様、長旅で疲れたでしょう。今日はゆっくり休んでください。食事の準備をさせます」
ソフィー
「ありがとうございます。でもその前に、少し森を見せてください。案内してくださる? オーク様」
とソフィーはオークの掌を握った。老僧たちが呆れるのを尻目に、ソフィーはオークを引き連れて森の中へと入っていく。
ドルイド僧
「戻ったら説教が必要じゃな」
次回を読む
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