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■2015/10/05 (Mon)
創作小説■
第4章 王の宝
前回を読む
9
セシルは宝箱を地下まで運び、エクスカリバーが保管庫に置かれるのを確認すると、階段を戻った。そこに、待ち構えている男がいた。
ブラン
「浮かない顔をしておるな、友よ」
セシル
「ブランか。来ていたのか」
セシルとブランが抱擁する。
ブランは、ブリタニアの使者だった。ガラティアとブリタニアの関係は希薄だったが、ブランの一族とは親しい付き合いにあった。
ブラン
「ついに見付けたらしいな」
セシル
「ああ、我が国の宝だ」
ブラン
「しかし、あちらも同じように言っておる。宝を返せ、でなければ国を寄越せ」
セシル
「宝だと言いつつ、泉の底で腐らせていた連中が何を言うか。あれはそもそも我らの一族が鍛えし剣だ」
ブラン
「お宝の奪還なんぞ、奴らにとってはただの口実に過ぎん。ブリテンが欲しいのは、ガラティアの土地そのものだ。挑発に乗るなよ。挑発に乗れば、奴らの思う壺だ」
セシル
「わかっている」
ブラン
「気をつけるんだぞ。ブリテンのヘンリー王は強欲でしかも狡猾だ。気を許せば何でも掠め取っていく。特に海上では連中は無敵だ。海の上では決して戦うなよ」
セシル
「承知しておる」
ブラン
「とりあえず、我々はお前たちの味方のつく。ブリタニア政府も同様だろう。俺達とお前は、似たもの同士だからな。違うところもあるようだが」
セシル
「お前たちは気障だ。そこが違う」
ブラン
「否定はしないよ。我々が最も大事にしているのは力でも権力でもなく、美しい婦人と腰の剣だからな」
セシル
「おまけに下品だ」
ブラン
「それも否定しない。我々にとっての誇りだからな。――そちらは内戦続きで戦力不足だ。ブリテンの戦いなら我々が引き受けよう」
セシル
「すまない」
ブラン
「ブリテンが大陸を手に入れれば、我々とて無事に済まない。我々の連合がブリテンを包囲しているが、そのいずれかが崩されれば、大陸は一気にブリテンに奪われる。礼には及ばんよ。さらば友よ。そちらの戦いも無事に終わることを祈っておるぞ」
ブランはおどけたような挨拶を残して去って行った。
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