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■2009/09/26 (Sat)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P066 第6章 異端の少女


真っ暗だった。
暗闇がすべてを覆っていて、自分がどこに立っていて、どこを向いているのかもわからなかった。そうすると身体の感覚は失われて、ぼんやりとした闇にすーっと溶けていくようだった。
かーごーめー
〇〇〇かーごーめー……
女の子の歌声が聞こえた。歌声は細く伸びきって、闇に消え入りそうだった。
私は歌声の主を探した。不安が私を取り巻いていて、女の子の歌声にすがるような気持ちだった。
かーごのなーかのとーりはー……
女の子は、すぐ側にいた。幼稚園くらいの小さな女の子だった。
私は女の子を同じ目の高さで見ていた。つまり、私も幼稚園くらいの女の子になっていたのだ。
とーなーりーのばーんーにー……
私は女の子に声をかけようとしていた。でも言葉を封じられたように、どんなに頑張っても私の喉から声は出なかった。それ以前に、私は私の身体を捕まえることができなかった。
うしろのしょーめんだぁーれだ
女の子が振り返った。可符香の顔だった。でも可符香が見ていたのは私ではなった。私の後を、楽しげな笑顔で指をさしていた。
私は背後に、気配を感じた。背中に撫でられるような感触があって、私に振り向くように誘っているようだった。
振り向いてはいけない。
でも私は、強い好奇心に捉われていた。見てはいけないという直感とは裏腹に、私は振り向きたいという衝動をとどめられなかった。
振り向いた。そこに、高校生の風浦可符香がいた。でも可符香は逆さまだった。下の暗闇からロープが伸びて、可符香の首に絡み付いていた。
可符香は苦しげに歪んだ表情のまま凍りついていた。目は大きく開かれて瞳に生命はなく、舌は空気を求めるように突き出ている。何もかもが逆さまなのに、可符香の髪の毛と服だけが、下方向に垂れ下がっていた。
可符香の死んだ目が動いた。赤い瞳に、裸の私が映っていた。舌を突き出した口が歪み、にやりと笑うように吊り上げた。

私はそこで目を覚ました。布団をはねのけて、飛び上がるように上体を起こす。
心臓が脈打つ感覚をはっきりと感じた。息が苦しくて、ぜいぜいと空気を求めた。
目を見開いた瞬間に意識は覚醒していたけど、私の心は夢の中に置き去りにされていた。不安が私を取り巻いていた。暗闇が渦を巻いて、私に流れ込んでくる錯覚を感じた。
私は困惑しながら、意識を際立たせて、そこがどこなのか確かめようとした。糸色先生の借家だった。二間続く居間に、布団が一杯に並んでいる。私の左隣に、まといが眠っていた。右隣にはあびるが眠っていた。みんな浴衣姿だった。辺りは静かで、みんなの寝息が一杯に満たされていた。
明かりが欲しかったけど、みんなを目覚めさせてはいけない。私は胸を両掌で押さえ、目をつむった。祈りを唱えるように、自分に落ち着けと言い聞かせようとした。
ふと暗闇に気配を感じた。私は祈りを打ち切られたような思いで顔をあげた。
襖が全開にされていた。廊下の雨戸も全開にされていて、そこに月の青い光が廊下に落ちていた。その廊下に、影法師のような気配が佇んでいた。
私は一瞬、胸の鼓動が感じられなくなった。男爵だと思っていた。でもそこにいたのは、糸色先生だった。糸色先生は廊下で気楽そうに姿勢を崩して座り、夜の風を浴びていた。
「日塔さんですか。眠ったほうがいいですよ」
糸色先生が私に気付いて振り返った。表情は暗く落ちていて、輪郭線に青い光が当っていた。
「……はい」
私は返事を返すけど、憂鬱にうつむいた。
「まだ、恐いのですか?」
糸色先生が私の気持ちを探るように、少し声を抑えて訊ねた。
私は返事の代わりに、うつむいたまま小さく頷いた。
「それでは少し話でもしましょう。恐い気持ちも鎮まりますから。さあ、こちらへ」
糸色先生のシルエットが動いた。手招きしているようだった。
私は体を起こし、糸色先生の側へ向かった。足元がふらふらする感じで、眠っている女の子を踏んでしまわないように、慎重に月の明かりを探りながら進んだ。
廊下へ行くと、糸色先生の顔が淡い光に浮かぶのが見えた。眼鏡を掛けていなかった。
私は糸色先生の側へ行き、姿勢を崩して静かに座った。でも言葉を交わさなかった。夜の涼しい風を感じた。今さらだけど体が熱を持っているのに気付いた。
「夜の風が気持ちいですね」
糸色先生が心地良さそうな声で呟いた。
「先生は、何をしていたんですか?」
私は糸色先生を見上げて訊ねた。糸色先生の鋭角的に切り取られた輪郭線が見えた。いつもより柔らかく輝いているように思えた。
「これまでに聞いた情報を整理していました。まだ私の頭の中で全てが繋がったわけではありませんし、欠落している部分もたくさんあります。明日の予定も立てる必要がありますしね」
糸色先生が目を開けて、小さな庭を見詰めた。眼差しに、いつもにはない強い意思が感じられた。
「考えて、どうにかなるんですか?」
私はうつむいて、消極的な意見を示した。
「男爵は冷酷な男ですが、ゲームには絶対のフェアプレイを求めます。ゲームマスターは男爵ですから、一見すると、こちらが不利のように設定されているように見えます。ですが、必ずどこかに抵抗の手段が残されているはずです。男爵はそういう男です」
糸色先生の言葉は落ち着いていて、それでいて強い気持ちが現れていた。
でも私は、希望を見出せなかった。心をどんよりと黒いものがとぐろを巻いていて、それがあらゆる肯定的な光を飲み込んでいくような気がした。
「日塔さん、大丈夫ですか?」
糸色先生が気遣わしげな声をかけてきた。
「先生……。可符香ちゃん、帰ってきますよね」
私は顔を上げて、糸色先生の顔を見詰めた。
「ええ。必ず取り戻します。でも、私が訊ねたのはあなた自身についてです。大丈夫ですか。恐くありませんか?」
糸色先生は体ごと私に向けて、視線を返してきた。
「……先生。私、先生の側にいますよね。なんだか私、まだ体半分が男爵の側にいるような気がするんです。あの地下の部屋で、男爵に捉われているような気がするんです。ねえ、先生。私、ここにいますよね。先生の側に、いますよね」
私は引き込まれるように糸色先生の黒い瞳を見詰めていた。私の沈黙していた感情が、小波のように押し迫ってきて、気持ちが高ぶっていくのを感じた。知らない間に、私は糸色先生にすがり付こうと手を伸ばしていた。
糸色先生が私の手を掴んだ。私ははっとして、体をこわばらせていた。
「気持ちを静かに。明日、決着をつけます。風浦さんと一緒に、あなたを男爵から救い出します」
糸色先生は静かな決意を込めて言うと、私をその胸に引きこんだ。
私は糸色先生の体に自分を預けた。糸色先生の胸は意外に大きく、暖かなぬくもりがあるように思えた。糸色先生の胸があまりにも心地よくて、私はまどろみに吸い込まれていくのを感じた。

次回 P067 第6章 異端の少女8 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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