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■2009/03/07 (Sat)

8a81c529.jpg貫くような霧笛の音が、少女の眠りを覚ました。
少女は目をこすりながら、自身の掌を見詰める。
いつの間にか、朝の光が射していた。
少女は毛布を羽織ったまま、ベッドから這い出て、光が射し込む階段を昇った。
入口の穴から外を覗くと、赤く染まる空が見えた。冷たく迫る風が、少女の白い髪を踊らせる。
少女は、頬杖をつきながら、そこから見下ろせる街を見詰めた。
bccd8928.jpg『天使のたまご』は押井守監督にとって、大きな転換点となった作品だ。それ以前は『うる星やつら』などわkりやすい作品の監督を務め、それなりの成功を収めてきた。だが、『天使のたまご』にはその残像はどこにもない。


『天使のたまご』には言葉はない。
登場人物は、わずかに二人だけ。具体的な物語も、リズムのよい音楽もない。
ただただ、静寂の時間だけが流れていく。
『天使のたまご』には、現実世界よりもはるかに静かな瞬間に満ちている。
そんな場所で少女は青年と出会い、なにかが変化し、目覚めの時を迎える。
d9786ff0.jpg押井守監督が『天使のたまご』で得たものは多く、大きい。まず、映画製作は、集る人間によって決定されるということだ。本作は、当初はコメディを制作するつもりだったが、画家・天野義孝の才能が加わることによって、大きく方向性が変わることとなった。


a35a0a2d.jpg少女はショールを羽織り、お腹にたまごを抱えた。身支度はいつもそれだけ。
少女は寝床を走って飛び出し、街を目指した。
街には、人間の影はない。
かつて人が住まう場所であり、人が通る道だった街。人間のために作られ、その痕跡をどこかに残した廃0118e39d.jpg墟。
今は、少女ひとりきりの場所。
だが、どこかに気配がする。
窓という窓、路地という路地。街を巡る空気の中に、人の気配がくっきりと残っている。その気配が、少女を取り囲み、覗き込み、ひそひそと言葉を交わしている。
f1852b4c.jpgまた、美術監督の小林七郎との出会いも会った。小林七郎との仕事が、後に“レイアウト法”を構想する切っ掛けとなった。ちなみに、小林七郎を指名する切っ掛けとなったのは、『カリオストロの城』の人と仕事がしたかったからだそう。


少女は街の中心地から離れた。
向かったのは、もっと古い時代の遺跡だった。
9bf49846.jpg建物は半ば崩れ、人の痕跡はもう感じられない。崩れかけた階段の下には雨水が溜まり、セイタカアワダチソウが茂っている。
少女はジャムを食べて空腹を満たす。
腹から卵を下ろして、少し向こう側にある階段へ散策に行った。
52a7ac33.jpg古いトンネルを抜けると、階段の下が、プールのように水に浸されていた。
水面は、ゆるやかな風に、小波を立てていた。
少女は、水面の側まで降りて、しばらく楽しげに波が作り出す光と影を見詰めていた。
そろそろ戻ろう。すると、そこに知らない男の人がいた。
「あなたは、だれ?」
e76d8e61.jpgだが、『天使のたまご』は悲惨なくらい商業的に恵まれなかった。現在、ようやく作品が見直されてきたが、以前はビデオを入手することすら困難だった。この作品が災いして、押井守は以後4年間、仕事を失う。



dad93491.jpg永遠に続くと思えた静寂のなかで、少女と青年は出会った。
しかし、少女と青年は言葉を交わさない。濃密なふれあいもない。
ただ一度、「あなたは誰?」と訊ねるだけ。
『天使のたまご』の映像と感性を、他に例えるべき作品a7c5a708.jpgがない。
言葉はなく、すべてが余白として時間が流れていく。
描きこまれた美しい風景。天野義孝の手による、秀逸な美術。
そうしたなかで流れいく映像は、不思議と“詩”のような手触りを持ち始める。
『天使のたまご』は“言葉”ではなく“映像”で綴る詩であるのだ。
b61d2373.jpgそれでも、結局は4年間の失業期間は押井守に様々なものをもたらしたようだ。どの人間と仕事をすると、どんな結果の映画になるか。ちゃんと商業的な配慮も必要だということ。映画監督に必要なものは、すべてこの4年間の空白期間によって得たものだ。それにしても、どうやって生活して来たのだろう。

cbded041.jpgやがて少女は、青年と打ち解けて、自分の住処へと招いた。
少女の棲家は、あの街よりも、もっと古い時代の遺跡だった。壁には思い出すこともできない時代の絵が描かれ、大きな獣の骨があちこちに散乱している。長い長い螺旋階段には、水を入れた瓶が、律儀に並んでいる。
f48825a1.jpg青年はふと、壁に描かれたレリーフの前で、足を止めた。
「これと、同じ木を見たことがあるよ。あれは、いつのことだったのか。忘れてしまうほど、遠い昔。音を立てて雲が流れていく空の下、真っ黒な地平線が、そのまま盛り上がって生まれた、大きな木。大地から生命を吸い上げて、脈打つ枝をのばし、なにかを掴んでいた。卵のなかの、眠り続ける、大きな鳥を」
我々はいつ目覚め、どうして言葉を綴り、どこへ向かって進んでいるのか。
我々が暮らしているそこも、思考も感情も、なにもかも幻ではないのか。
すべては廃墟が見ている夢ではないのか。
少女は、静かに答える。
「いるよ」と。
たまごのなかで、ひっそりと息をして、空を羽ばたく夢を見ている。
永遠に終わらない夢を
「あなたは、だれ?」
「きみは、だれだい?」
15f106d5.jpg今、見直すと、技術の未熟さが目立つ。線画は今ほど洗練されていないし、アニメカラーの数は少ないし、撮影のミスもある。もしこれが、現在の技術と感性で作ったら、どうなるだろう。きっと、この当時の幻想的な空気は消えてなくなるだろう。


cd7210c9.jpg永遠に続くと思えた夢は、いつか終わる。
思いがけない形で、唐突に打ち破られて、光が全身を包み込む。
我々が浮世として感じているこの恍惚は、目蓋が開かれるまでのほんの一瞬のできごとかもしれない。
『天使のたまご』の映像が何を意味しているのか、解説しづらい。
8b7fd1c9.jpg観る人によって、観る人の感性によって、あるいはそのときの感情によって、すべての印象が変わってしまう。
『天使のたまご』には、ただ静けさと不思議な手触りだけを持って、言葉なくそこにたたずんでいる。
誰からも忘れられた作品。
『天使のたまご』は、今もそこで、夢の終わりを待っている。


作品データ
監督・脚本:押井守
アートディレクション:天野義孝
美術監督:小林七郎 作画監督:名倉靖博
音楽監督:菅野由弘 音響監督:斯波重治
アニメーション制作:スタジオディーン
出演:根津甚八 兵藤まこ

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