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■2016/06/14 (Tue)
創作小説■
第13章 王の末裔
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12
荒れ野にゆるく雨が降り始めた。王の死は人々に伝えられ、テントの周りが嘆きに包まれた。泣くまいと決めていた者も、雨に濡れた振りをして泣いた。
人々に見守られながら、セシルの遺体が棺に入れられて運び出された。棺は簡素で、遺体は傷が隠れる程度に化粧が施されていた。その胸には、木剣が握らされていた。
ソフィーが死を慰める祝詞を唱え、その後、遺体は土葬にされた。
全てが終わると、天が見守っていたように雨を止めた。
オーク
「……ヴォーティガンを引き継ぎます。兄上の遺言通りに。鍛工師に王冠を作らせてください」
オークの宣言に、誰も異を唱えなかった。皆が証人だったし、誰もがオークこそ王に相応しいと考えていた。
2日後、荒れ野で戴冠式が行われた。鍛工師に作らせた王冠は粗末なリングでしかなかった。儀式も質素を極めていた。オークは僅かな忠臣だけを集めて、ソフィーが儀式の進行役を務めた。
ソフィーは儀式用の祝詞を唱え、新たな王の戴冠の可否をすべての精霊に訊ねた上で承認し、オークの頭に王冠を置いた。
その場面を、荒れ野にいた全員が見守っていた。日々の仕事を滞らせないように、オークは呼びかけをしなかったが、荒れ野にいた全ての人々がこの瞬間を見ようと集まっていた。オークの頭に王冠が載せられた時は、希望なきこの場所に、ささやかな祝福の拍手に包まれた。
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