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■2016/01/06 (Wed)
創作小説■
第7章 王国炎上
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17
その時、魔法が発動した。瞬間、衝撃が起きた。
時間が止まっていた。何もかもが静止し、兵士が振り上げた剣はその瞬間で止まり、魔族の鋭い爪先が軌跡を描いた瞬間で止まり、吹き飛ぶ血潮も、崩れ落ちる建物も、何もかもがその瞬間静止していた。
そんな静止した瞬間の中、ソフィーがただ1人の住人となって、呪文の最後の一節を唱えていた。
時間が再び動き始めた。同時に光が広がった。地面の下から白く輝く渦が立ち上り、城下は真っ白な光に包み込まれた。闇の住者は光に囚われ、その体が宙に浮かび始めたかと思うと、その体が爆ぜ飛んだ。
兵士達は光に包まれていく街を茫然と見ながら、不思議な祝福に抱かれているのを感じていた。今まさに最後の一撃を与えようとしていたネフィリムが、光に押し潰されて消滅していく様を、ぽかんと見ていた。奇怪な現象が起きているのに、兵士達に恐怖はなく、心と体が同時に癒やされるのを感じた。
◇
ゆっくり昇ってゆく光に、悪魔が目を眩ませた。
セシルはその一瞬の隙を逃さず、その懐に飛び込んだ。ダーンウィンの一撃を食らわせた。
致命傷だった。悪魔の絶叫が轟いた。悪魔がよろよろと後退した。そこに、光が迫った。
悪魔は光に飲み込まれた瞬間、体が引き裂かれ、炎が噴き上がり、その炎で自らが燃え上がった。悪魔の巨体は持ち上げられ、ばらばらに崩れ、灰となり、灰が光の粒になり、最後には光に飲み込まれて消滅した。
◇
バン・シーは光に包まれる街と、術者の姿を見ていた。
バン・シー
「……やったか。そなたなのか……ソフィー」
そう言いながら、一人で頷いていた。
◇
街は光に包まれ、その光はゆっくりと見えざる何かに引っ張り上げられるように上昇した。その光の中心で、美しき乙女が両掌を高く空へ掲げる。両掌に、2つの光の輪が煌めいていた。
光は人々を驚かせたが、しかし恐ろしさは感じず、むしろ暖かな安らぎがあった。
光はゆっくり時間を掛けて街全体を包み込み、すべてのネフィリムを倒し、悪魔を飲み込むと、そのまま天へと昇っていった。光が雲に触れると、弾かれるようにさっと散り、空に数日ぶりの光が射した。それを最後に、魔法の光は消滅した。暗雲が晴れると、夜明けだった。
勝利だった。
しかし喜びの声を上げる者はなく、ただ人々は驚くべき奇跡の前に立ち尽くしていた。
オーク
「……終わった。ソフィー。よくがんばりました」
オークがソフィーを振り向いた。ソフィーは意識を失って、ふらりと崩れる。
オーク
「ソフィー!」
オークはソフィーの側へと走った。
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