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■2010/01/05 (Tue)
……夜が明ける。
552a15a8.jpg木の陰に光が差し込み、小さな蕾が淡い色づきを取り戻す。獣たちもそろそろと目を覚まし、食事を求めて茂みの中を彷徨い始めた。
穢れなき野原が一日の活動を始めようとする。
そんな森に、邪な陰が横切った。まるで夜の闇を引き摺るように、醜4dd593aa.jpg悪な子鬼が姿を現した。
子鬼が向った先は毒を吹く沼地だった。その中心に、恐ろしい気配を背負った古城が聳え立っていた。
――魔王が住む城だ。
219ea08b.jpgトム・クルーズとミア・サe7c8bc87.jpgラ。どちらも若い。トムはこの次作品にトニー・スコット監督の『トップガン』に出演する。特に言及する資料はないが、関連を想像してしまう。
e18c421c.jpg森は午後の穏やかなぬくもりに抱かれていた。草や花は色鮮やかに色づき、競うように芽吹いている。鳥たちが枝から枝へ飛びながらさえずり歌っていた。
穏やかさに満ちた、豊かな時間だった。
そんな森の小道を、ドレス姿の少女が歌いながら走っda445d52.jpgている。リリー王女だ。
リリーはドレスの裾を掴みながら、森の深いところに入っていく。下草はリリー王女と同じ背丈まで伸びて、その姿を色とりどりの花で包み隠そうとしている。
リリー王女は誰かを探すように首を伸ばし、きょろきょろと森を見回していた。
「ジャック。どこにいるの、ジャック?」
不意に、ちょっと向うの岩場に誰かが飛びついた。リリー王女は驚いて目を背けた。
だけどすぐに怒ったように頬を膨らませて振り返った。岩場に現れたのはジャックだった。
その森はジャックとリリーの2人きりの場所であり、2人きりの秘密の時間だった。
75c5203c.jpgc94d2094.jpg後に『ブレードランナー ディレクターズカット最終版』で使用されたのはこのユニコーンだ。

219ea08b.jpgその日、ジャックはリリーに「特別なもの」を見せたいと森のさらなる奥へと連れて行く。
人気の絶えた場所だった。獣のざわざわとした声で満ちていた。しかしそこに射し込む光は人里近い麓よりはるかに眩く煌き、むしろ神聖な気持ちに包まれるようだった。
そんな場所で待っていたのは2頭のユニコーンだった。
リリーはユニコーンの美しさに心捉われてしまう。
「リリー、近付いちゃ駄目だ。ユニコーンに触れてはいけない」
しかしリリーはジャックの忠告を聞かず、ユニコーンを歌声で誘いその鼻先を撫でる。
0b00e549.jpgその時、何かが起きた。
風が強く吹き、太陽は厚い雲の向こうにかき消された。世界は闇に封じられ、冷たい吹雪が渦を巻き始める。
ユニコーンに触れた事によって、時間が凍り付いてしまったのだ。
6029d4a5.jpgcdf812ff.jpgゴブリンに指輪。改めて見ると『ロード・オブ・ザ・リング』に似たモチーフそっくりな構図が見られる。ピータージャクソン監督はやはりこの作品を見たのだろう。
d557e052.jpgファンタジーとは絶対的な世界だ。
夜の夢のように自由で途方がなく、不条理でどこかに必ず狂気が潜んでいる。なのにファンタジーは我々の心を捕らえて決して離させなくさせる。なぜならファンタジーには、物語自体に魔法使いの呪いが掛9579ba1a.jpgけられているからだ。
ファンタジー作りは難しい。
ファンタジーには作り手の全てが試される。作り手の生まれてから得た全ての知識と美意識。
c3e8752f.jpgファンタジーには一片でも隙があってはならない。なにもかもが小さな世界の中で原理的な自己完結をしなければならない。英雄の冒険に求められるものと同様に、知恵と美の力が問われるのだ。
ccdeeff5.jpgファンタジーの創造を失敗する――それは作家の無能を晒すという意味だ。
0d7e0af7.jpgこの映画では異世界の特徴を描くために、様々なイメージがレイヤリングされる。左の場面ではシャボン玉。なぜシャボン玉なのかわからないが美しい。
137d944f.jpg
物語は森のずっと深い場所で始まる。
森の奥。暗闇がどこかに潜む場所。文明の支配から遠く逃れた場所。そこがリリー王女と森の住人ジャックとの秘密の場所だった。
b8f59b10.jpg森は古来より、魔物が住む場所と信じられてきた。そんな場所だからこそ、最も気高きものとおぞましきものが同居している。
a84d6eae.jpg物語はご都合主義のように、淀みなくストンと流れ落ちてしまう。魔王という絶対的な困難を前にしているのに、見ている側はそれほど大きな障壁に感じないのが欠点だ。

b261f556.jpg神聖さの象徴であるユニコーンは決してその背に人間を乗せない。人間は存在自体が不浄――それは人間が文明を得たと同時に達成された1つの意識である。
ただし例外がある。
まだ生理を迎えていない処女。肉体も魂も汚されていない幼き娘。
そんな少女だけが、神聖なるユニコーンに手を触れる資格が得られる。ユニコーンは穢れなき乙女にのみ、その背に乗ることを許す。
神聖さの象徴であるユニコーンを、恐ろしき魔物が影を潜めて狙っている。聖と魔は常に表裏一体だ。ユニコーンは神聖なる神であると同時に、恐ろしき魔王の属性を持っている。
リリーが不純な動機でユニコーンに触れた瞬間、異変が起き、影を潜めていた子鬼たちが公然と姿を現す。
リリーが手を触れた結果、ユニコーンから神秘と神聖さが失われ、魔物へと姿を変えたのだ。
c4842b3a.jpgガンプ、それから妖精ウーナ。いずれも実に妖精を思わせる容姿をしている。よく見つけてきた、といったところか。物語やキャラクターは北欧神話からイメージを得ている。デザイナーの1人に『指輪物語』の挿絵画家アラン・リーがいる。ということはやはり『ロード・オブ・ザ・リング』に近い起源を持つのだ。
4b030b69.jpgユニコーンの角が折られ、大きな異変が起きてしまう。と同時に、森は様々な秘密を明らかにしていく。
魔王の存在。それから森に潜むガンプやブラウン・トムといった精霊たちだ。
92bed21d.jpgすでに日常の時間や意識は崩壊した。リリーとジャックは、過ちを犯した結果、見えざる妖精世界へと足を踏み入れてしまったのだ。
aa4ea36f.jpg間に魅了されて踊りだすリリー。抵抗するが、あまりにも美しい光景、軽やかなメロディに誘われて、つい一緒に踊ってしまう。リリーが“堕ちる”瞬間である。映画中でも美しさが際立つシーンだ。


53cb792b.jpg『レジェンド 光と闇の伝説』の物語は普遍的な少年と少女の冒険物語だ。
少年が困難に打ち克ち、愛する乙女を手にするまでの物語。少年ジャックは恐ろしき魔王に立ち向かうために、男性としての全ての資質を得る。
459363a0.jpg力。責任。友情。信念。理性。
一方で少女も困難に挑戦する。
魔王の宮殿には美しい宝石や鮮やかなドレス、舌を喜ばせる美食に満たされている。美を愛する少女は、常に美しいものに心を奪われる。それは少女自身の欲望――不純な精神との対立を表している。
少女は美を愛で、永遠の美との同化を望む。しかしその背後には恐ろしい魔王が身を潜めて、清らかな魂を汚し、肉体を陵辱しようと待ち構えている。
96a195b4.jpg魔王は堂々たる全身メイク。迫力は凄まじい。ところで『ドラクエ』シリーズにそっくりのモンスター・キャラクターが登場するが偶然の一致だろうか。


物語の時間は、リリーが池に指輪を投げ入れた瞬間、全てが静止する。
ジャックが池に飛び込んだ時点で、物語は現実的なパースティクティブを喪い、精神世界に突入している。
無限に延長された精神世界の物語。
少年と少女は、その最中に夫として、妻として必要な資質のすべてを試されている。
ジャックは全ての困難を達成できたからこそ、池の底で指輪を発見できた。その瞬間、時間は再生され全てのものは新しく萌え生まれる。
b261f556.jpg『レジェンド』は究極の手作り映画だ。ほとんどはセット撮影で作られている。リドリー・スコット監督は当時の手法、自身の感性のすべてを注ぎ込み、おそらくは美術家としての資質を試そうとしたのだろう。前期リドリー・スコット作品において、もっとも美しい作品となった。だが一方で、惜しい作品であった。(下の「続き」を参照)
『レジェンド 光と闇の伝説』はどこまでも美しい映画だ。
美術家としての研ぎ澄まされた感性が見事に結集している。
『レジェンド 光と闇の伝説』は今も魔法の輝きに満ちている。

映画記事一覧

作品データ
監督:リドリー・スコット 原作・脚本:ウィリアム・ヒョーツバーグ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:トム・クルーズ ミア・サラ ティム・カリー
  ダーヴィット・ベネント アリス・プレイトン
  ビリー・バーティ コーク・ハバート



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■2010/01/05 (Tue)

死者だけが戦争の終わりを見た
                    プラトン
cfd77951.jpg
1992年。ソマリア。
577247ed.jpg部族間の抗争は絶えず、30万人の民間の餓死者を生んだ。
最強の部族を率いるアイディード将軍は、首都モガディシオを占拠。間もなく国際世論が動き、米国海兵隊2万人が投入された。
翌年8月。
84c9cc6e.jpg米国は、精鋭デルタ・フォースを投入し、アイディード逮捕に乗り出した。
だが6週間、事態は進展しなかった。
4da1b4fb.jpgアイディードに武器提供を行っていた商人。この男のa3f3be2a.jpg逮捕によって、事態は進展するはずだった。


アイディード支配地区。バカラ・マーケット。
e059935b.jpg米国はいまだにアイディードの所在を突き止められなかった。だがその日、バカラ・マーケットにアイディード派の幹部が集り、会合が開かれるという情報を得る。
米国は現地人をスパイに雇い、その正確な所在を特定。最強と謳わ9024d9ce.jpgれるブラックホークで突入させ、逮捕する計画を立てた。
イージーな作戦で1時間後には終了し帰還する――予定だった。
しかしそれは、地獄の始まりだった。
81f6ad60.jpgこの地域でアメリカはとことん嫌われている。単に政治的問題に関わらず、いきなりやってきては市や一族のトップを“犯罪者”として逮捕する。80613ba6.jpgそのついでのように住人を大量に銃殺する。

若者はいつだって戦争を軽んじる。
954f4030.jpg「たいしたことはないさ」
「すぐ戻ってこれるさ」
戦場には子供の頃、寝物語で聞かされたような心躍る冒険が待っている。自分たちは必ず戦いに勝利し、英雄として帰還する。それに相9b46d14f.jpg手は武器すら持っていない一般の住人に過ぎない。自分たちは充分以上の訓練を積んでいる。
だから、どんな作戦も余裕さ。
その期待は失望と絶望で裏切られる。戦争という現実を前に、若者e4037f0e.jpg達は初めて恐怖を知り、状況を前に茫然と立ち尽くす。
デルタ・フォースの兵士たちは、そんな若者の典型だ。
戦争を軽んじ、そこで起きようとする事件を理解できず、予測もできない。
a909cb50.jpg兵士たちは戦争の訓練を受けたプロだが、実際の戦争がどんなものであるのか、何一つ知らない。
6ec7f152.jpgこのロバは実際にいたようだ。この銃撃戦に関わらず生き延び“幸運のロバ”の愛称が与えられた。だが7832bc1e.jpg最後には死亡が確認されている。

舞台となるモガディシオはいわゆるスラムだ。道行く人はファッションのごとく軽機関銃を持っている。
d2d9b1fa.jpg略奪や拷問、虐殺するら起こる場所だ。我々が勝手に考えている文明人の条理などここにはない。すべてから解放された渾沌だけがここにはある。
だが不思議なくらい、都市の外には静かな風景が広がっている。
24b80bfe.jpg「妙な気分だよ。美しいビーチ。美しい太陽。バカンスだったら最高だ」
そこは天国にもっとも近い場所なのだ。
それでも人々は、望んで塀に囲まれた地獄を住まいにする。
e2338749.jpgガリソン少将が見ているモニターは衛星中継されたものだ。ガリソン少将は衛星中継で見た画像で状況を判断し、中継ヘリに連絡、中継ヘリが現場の兵士に連絡するシステムだ。当然のように状況は変わっているし、“本当の現場の状況”は無視されてしまう。これが延々繰り返されてしまう。
54fdd937.jpg“ソマリア強襲作戦”はたった一つにミスにより、大きな失敗を引き起こした。兵士たちはかつて経験のない激しい戦いの中に身を投じていく。
容赦なく迫り来る地獄を前にして、米国兵士たちは現実を乖離させてb00b1fc1.jpgいく。
何人死んだ?
何人負傷した?
何人殺した?
64278b7a.jpg戦争の実体はいつだって非現実的なものだ。そこに投入された兵士にとっても、“戦争”という実体を発見できない。もし“戦争”というものがあったとして、いつからいつまでが“戦争”だったのか。後に語られる機会はあっても、それは飽くまでも断片化された物語ないし状況に573a4d6f.jpg過ぎない。子供たちにとっては、父親達が寝物語に語る英雄譚になってしまうだろう。
だが戦争は、すでに始まっているのだ。彼らは始めから地獄の中にいたのだ。
522b03cd.jpgそうだと気付くのが少し遅かった。
兵士たちは何が起きたかわからないまま、煮だった地獄の鍋の中を這い進む。
ここは地獄だ。だが側には天国も同居している。
bde7e882.jpg兵士たちにできる手段は、できるだけ早く、最も激しい渦の中から遁走することだけである。
bbb01bec.jpgソマリア住人達がアメリカ兵氏の死体を裸にして吊るし上げにする。この場面がCNNで報道されたのが映9ba337b5.jpg画製作の切っ掛けとなった。

戦争が題材にされているが英雄映画ではない。激しい戦闘が延々続くが、何が起きているのか見ているだけではほとんどわからない。
7c86f6e0.jpg有名な俳優が何人も出演している。ジョシュ・ハーネットや、オーランド・ブルーム。ユアン・マクレガー、エリック・バナ。いずれも主役をやれるビッグ・スターだ。
だが戦闘が始まると、すぐに誰なのかわからなくなる。みんなメットをa5b8f59a.jpg被り、ゴーグルをかけ、顔は泥まみれで汚れる。戦闘の場面があまりにも激しく、その兵士がいったい誰なのか考えるゆとりすら与えない。
なぜなら『ブラックホークダウン』は、状況を描き出すことだけを目的と2960f71b.jpgしているからだ。
ただただ混乱と危機と破壊と死だけが留まらず迫り来る。映画の鑑賞者も彼らが置かれている状況に飲み込まれ、茫然と眺めているしかできなくなる。
終わりなき地獄の中へ。
いつか終ると信じて、兵士たちとともに心は走り出す。
4e3b252e.jpg

映画記事一覧

作品データ
監督:リドリー・スコット 原作:マーク・ボウデン
製作:ジェリー・ブラッカイマー
音楽:リサ・ジェラード ハンス・ジマー
脚本:ケン・ノーラン スティーヴン・ザイリアン
出演:ジョシュ・ハートネット ユアン・マクレガー
  トム・サイズモア サム・シェパード
  エリック・バナ ジェイソン・アイザックス
  ジョニー・ストロング ウィリアム・フィクトナー



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■2010/01/04 (Mon)
8a34ce23.jpg刑事ニックは押収品の横領を疑われていた。6月の事件で得た押収品の一部が消えている。
ニックは妻と離婚し、慰謝料と子供の養育費で相当の出費があるはずだ。内務捜査官は、ニックが押収品を横流しし、それで得た金を慰謝料と養育費にしていると考えていた。
もちろんニックは容疑を否認。そんなはずはない、と完全否定した。

c224988c.jpge8b7fd60.jpg査問が終わり、ニックはレストランで同僚のチャーリーと合流する。
そこで和やかに昼食――というわけ77bddb50.jpg7d690710.jpgにはいかなかった。レストランには日本のヤクザも居合わせていた。ニックとチャーリーはヤクザを気にしながら食事を続ける。
そこに、黒いコートの男が現れた。佐藤だ。
2553b076.jpg佐藤はヤクザの一団の中へ入っていくと、何かを奪って立ち去ろうとする。だがその時、日本人のうちの誰かが佐藤に何か言った。
これに佐藤は逆上した。レストランに集ったヤクザ2人を殺害し、去っていく。

74e2b391.jpgニックとチャーリーはただちに佐藤を追跡した。
格闘戦の末、ニックたちは佐藤を現行犯逮捕する。しかし佐藤の身柄はただちに日本に送られることになった。日本大使館員が介入してきたのだ。
ニックとチャーリーはしぶしぶ佐藤を日本まで護送する。
2f4982a0.jpg日本に到着したところで偽の警官が現れ、ニックは疑いを抱かず書類にサインし、佐藤を引き渡してしまう。
日本まで来て佐藤を逃がしてしまった失態に、日本の警察は激怒。ニックとチャーリーは捜査の権限を奪われ、さらに松本警部補の監視下に置かれる。
f1b55ab0.jpgそれでもニックは、佐藤逮捕を諦めず果敢に事件に挑む。
0a9bc5b2.jpg日本にやって来た最初のカット。『ブレードランナー』のようだがこの風景は映画のフィルターを通さずとも実際に見られる。伊勢丹空港周辺の工業地帯を晴れた夕暮れ時に走るとこの通りの風景が見られる。
f7d25be8.jpg舞台は日本。しかも大阪だ。もちろん日本でロケーションされた映画だ。
だが『ブラック・レイン』で見る日本は、馴染みのある場所ではな7149ec11.jpgい。どこか奇妙で、知らない世界のようにすら見える。『ブラック・レイン』が描く日本の風景はあまりにも猥雑で、騒々しく、あちこちで不浄のガスが渦巻いている。まるでSF映画でも見ているような奇妙な印象すらある。
b0cca111.jpg道頓堀周辺らしき場所。ロケのほとんどはここで撮影された。奇妙な漢字の並ぶシーンはセット撮影だ。日本人出演者が間違いを指摘してもよかったと思うのだが。日米合作映画とはいえ、現実的にはアメリカ主導で制作されたとよくわかる。
ebb64e61.jpg欧米人にとって、日本は未だに遠い国である。
サムライが国を治め、ニンジャが裏社会を暗躍し、ゲイシャが夜を慰める……。
769ce597.jpg欧米人による日本人の印象なんてその程度だ。いまだ日本と中国の区別が難しいらしく、背景に奇妙な漢字が並ぶ。大量の自転車が横切ったりなど、中国のステレオタイプ的風景も登場する。
b313b9ab.jpg日本でロケーションされているが、映画はあえてなのか日本を親しみある場所として描いていない。遠い、どこかにあるかも知れない――あくまでも異界としての日本なのだ。
『ブラック・レイン』での日本とは飽くまでも“素材”なのであって、描こうとしたのはリドリー・スコットの感性が描く“異世界”なのである。
4b51b36d.jpg1846c8f2.jpgこの映画でも対決の構図が描かれている。


984f63a1.jpg物語はわかりやすい典型的な異界冒険譚として描かれる。
セオリー通りに物語がはじまり、事件が起き、アメリカ人が介入することによって解決する。事件解決のご褒美は当然、美女の6a8ddf26.jpgキッスだ。実にハリウッド・エンターティメントとして行儀のいい作品である。
この映画で新鮮な印象をもたらすのは、リドリー・スコットがイメージして見せた“異界”としての日本であって、その物語にはない。
8895920b.jpg643701be.jpg31d91a9a.jpg
それからもう1つ。この映画において語らねばならないのは松田優作の存在だ。
松田優作の演技は素晴らしく、出演時間は短いものの強烈な印象を残す。不良刑事であるニックですら、松田優作が演じる佐藤の前では平凡な優等生に見えて、映画の枠組みの中に埋没している。
松田優作だけが映画のフレームを飛躍して自由に奔放に振舞い、強烈な印象を残して去っていく。
もしこの映画が心に残るとしたら、松田優作の存在感によるものだろう。

映画記事一覧

監督:リドリー・スコット
脚本:クレイグ・ボロティン ウォーレン・ルイス
撮影:ヤン・デ・ボン 音楽:ハンス・ジマー
出演:松田優作 マイケル・ダグラス 高倉健
  アンディ・ガルシア ケイト・キャプショー
  若山富三郎 内田裕也 國村隼
  安岡力也 神山繁 ガッツ石松



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■2010/01/04 (Mon)
レクターが姿を消して十年が過ぎた。
レクターは今どこにいるのか――死んでいるのか生きているのか、誰も知らない。
あれから十年。
その間、誰も悲鳴を上げず、悪夢を見ることもなかった。
静かに平和な時が過ぎ――しかしどこかに悪魔が眠っている気配を感じていた。

293b2688.jpg映画は静かなメロディと共に始まる。場所はどこかの屋敷のようだ。バーニーが招待を受け、醜い顔をした男と対談している。
醜い顔の男はメイスンだ。かつてレクター博士に手ひどい仕打ちを受け、復讐のためにその消息を追っている。
バーニーが招かれたのは、レクター博士の情97fcde4f.jpg報を売るためだった。レクター関連の遺物は、その筋のマニアに高く売れるのだ。バーニーはあの隔離病棟を去る時に、多くのハンにバル関連の品々を持ち出していた。バーニーはそれらを売って、日々の糧にしていた。
去り際にバーニーは、レクターがかつてつけていた仮面を差し出す。その仮面を前にして、メイスンは興奮して息を喘がせた。――まるで性的興奮を覚えたように。
d2dce035.jpg68cae1f5.jpgメイスンはレクターの手に掛かり、顔面を失い、全身麻痺という障害を負った。しかしメイスンはレクターに感謝している。狂うくらい憎めるものを与えてくれたのだから。
67d14271.jpg
メイスンはレクターを憎んでいる。レクターに顔面の顔を剥がされ、再生不能になっただけでなく、半身不随を負ってしまった。
だが同じくらいに、メイスンはレクターを欲求していた。
3494255c.jpgレクターと興じた、あの短い一時が忘れられない。自ら顔の肉を引き裂き、血を噴出し、微笑みあうと共に絶頂を達していた。あの時の興奮が忘れられない。
メイスンの愛は深く、憎しみも同時に強い。
50a32308.jpg極めて屈折した感情だが、相反する感情はメイスン自身を引き裂かず、不純に交じり合っている。
きっとメイスンは、夢の中でレクターを引き裂き、その妄想で何度も勃起したはずだ。まだ不能になっていなければ、だが。
90431164.jpgフィレンツェの宮殿でロケーションが行われた。レクター博士はフェルとして司書の仕事に雇われるところだった。パッツィ刑事は、行方不明になっているフェルの前任者を探して面会を求める。


98c1a8b2.jpgレクターはフィレンツェに潜伏している。レクターが過ごす場所としては相応しいだろう。レクターの美意識に応え、どこまでも磨いてくれる場所だ。
フィレンツェでは殺人鬼すら、優れた美意識を持つようだ。
dab7b5ba.jpgレクターは品性のない人間を嫌う。礼儀のない人間も。
だからクラリスは相応しい。クラリスは決して汚れない。その肉体も、汚職まみれの組織を身を投じながら、高潔な意思を失わない。
精神の純潔と魂の純潔。クラリスはその両方を持つ、d5b60eab.jpg稀な女だ。
だからあの女がいい。
生涯の伴侶とし、永遠の忠誠を誓わせ、快楽を無限に引き出すために。
8bf1b695.jpgクラリスは純潔の象徴だ。レクターとメイスンはクラリスを中心において対立する。2人は、いずれもクラリスを自分の下へ引き寄せ、クラリスの純潔を汚そうとする。だがクラリスは、最後まで自身の純潔を失わなかった。

5d6bf6a2.jpg我々の誰もが、時に抑えられない欲求を身の内に感じ、悶える瞬間がある。
愛するものを陵辱し、殺す欲求だ。
愛するものが憎しみに顔を歪め、悲鳴を上げて、血にまみれ376dbc8d.jpgて、その肉をソテーにして夕食をいただく。
彼女の顔は裏切られたショックのままで硬直しているだろう。いや、あなたを憎しみで睨みつけた姿のまま、果てたかもしれない。どちらにしても、興味をそそられるシチュエーションだ。
11c25056.jpgだが現実的には法という障害に阻まれ、なかなか実行できる者は少ない。度胸のない我々の多くは、夢想の中で何度もその瞬間を思い巡らし、シーツを汚すだけだ。
我々の多くは、そういった行為が社会規範に反すると刷り込まc254b78a.jpgれ、夢想に留めようとする。両親は我々に、罪や後ろめたさなどという規範を刷り込ませ、快楽を得るのを遠ざけようとする。
凡庸な親が子が芸術の道に進むのを拒むのは、恐怖心からだ。芸術はタブーに挑み、規範の脆さを揺さぶる活動からだ。
aafb3b48.jpgレクターは我々の憧れを、何の躊躇いもなく実行する。
レクターは快楽に正直に生き、自らの感性をどこまでも極めようとする。時にその楽しみを他人に分け与えつつ、行為を完成させようとする。
59a51330.jpgまさに我々が思い描くヒーローそのものである。
f9ed5fc5.jpg美しきものは、陶酔と同時に堕落をもたらす。美しき使者は暗黒世界からの使者である。美しき妻は美しいもd7ddac3a.jpgのを貪欲に求めるし、レクターの美意識とも通じ合える。

芸術は一種の倒錯行為だ。
abfa225f.jpg芸術家は、美しい対象、美しい瞬間を永遠にするために石膏の中に封じ込めようとする。そうして、その瞬間がもたらす陶酔を、無限の中に留めようとする。あの言葉にならない、心が充足に満たされ、世界のすべてと混じり合う尊き瞬間を。
8a3189c1.jpgの一瞬を切り取ろうと、芸術家はどこまでも対象を見詰め、時に実体をメスで切り取りコラージュする。ぎりぎりまで引き絞られた緊張の瞬間を。最高のポジションを見つけ出すために、すべてを投げ打つ。
2abbc5ce.jpg芸術家は陶酔を意識的に操作し、他人に提供する職業だ。
9895aac1.jpgクラリスはレクターに父親のようなものを感じている。レクターは事実、クラリスの父となって手紙で親身に慰め、自身の存在をちらつかせてクラリスに手柄を与えようとする。


『ハンニバル』はリドリー・スコット作品の中でも最も幻想的な空気を持つ。
映画が描く光景は美しく、幻想的で心が奪われる。
恐怖映画ではなく、官能映画だ。
その他のハンニバル・レクターの映画は、作り手の才能が凡庸だったのか頭が悪かったのか、原作の官能的な部分は見逃してきた。
リドリースコットだからこそ、『ハンニバル』を官能映画として描けたのだ。
e33bbee2.jpgもしもその存在に気付いても目を向けてはならないし、近付いてもならない。
ただし、覚悟があるなら止めはしない。



人はどこまでも堕ちて行く。
だがレクターは一番深い闇の奥で微笑んでいる。
さあおいで。
怖くないよ、と。
暗い影にこそ、最も美しい光が射し込んでくる。
本当に美しく、気高い魂を得たいのなら、さあ、ここだ。
もっと側に――。

映画記事一覧

作品データ
監督:リドリー・スコット
原作:トマス・ハリス 音楽:ハンス・ジマー
脚本:デヴィッド・マメット スティーヴン・ザイリアン
出演:アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア
  ゲイリー・オールドマン ジャンカルロ・ジャンニーニ
  フランチェスカ・ネリ フランキー・フェイソン
  レイ・リオッタ イヴァノ・マレスコッティ



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■2010/01/04 (Mon)
テルマとルイーズ。二人の女の物語だ。

d536c2cd.jpg4501148b.jpgその日、テルマとルイーズの二人は旅行へ行く計画を立てていた。
しかしテルマは傲e3036829.jpg慢な夫から旅行の許可を得られない。夫はテルマが常に家庭にいて、家政婦のように振る舞うのが当然だと考えていた。
結局テルマは夫に黙って旅行に出てしまう。

ceb44e3d.jpgテルマとルイーズは、旅行の途上で休息を取ろうとバーに入る。
そこでテルマは、出会った男に強姦されかけてしまう。
ルイーズは、とっさに拳銃を手にテルマを救い出す。
が、男は「早く突っ込んでやればよかった」と暴言を吐65fae3cb.jpgく。
逆上したルイーズは、衝動的に男を撃ち殺してしまう。

旅行の計画は、一発の銃弾で何もかも変わってしまった。テルマとルイーズは殺人犯として逃避行を始める。
292af184.jpgだが2人の旅行は、そもそも逃避行であると予告されていた。テルマは部屋のすべてを鞄に詰めて持ち出そうとしていた。その光景は、旅行というより家出のようであった。
もう帰らない。
94469a10.jpgどこかへ行くつもり。
はじめから、帰還を予感させない旅だった。
d168710a.jpg男性の登場シーンは色彩を削除してもあまり印象が変わらない。『テルマ&ルイーズ』には必ず、どこかしらに男性の影がある。テルマとルイーズは、男性の存在の横で揺れ続けている。
19e7d39f.jpgテルマとルイーズが逃避するのは、男性の社会からだ。
社会とは、男性が規範を作り出し、運営することでなり立っている。男女平等がいくら叫ばれようとも、実際は男性が中心であるし、女性の社会進出が進んでももとb1da1ad1.jpgもとの形質が変化するわけではない。
その中で女性の役割は、ただ女性に隷属し、決して社会の中心的成員ではない。飽くまでも男性の添え物か補助物だ。男は女が家政婦として働くのを当然の要求だと信じているし、でなければただの性の対象だ。そこ83206378.jpgに他者としての意思は認められていない。
その利用価値がなくなれば、男は女をポイッとゴミ捨て場にでも捨ててしまう。
テルマとルーズは、そんな男の社会からの反逆を試みる。
f2b8852f.jpg40851c34.jpgブラッド・ピットはこの映画を切っ掛けに注目されたと言われている。


そんな2人の前に現れるのが、謎の男J.D.である。
J.D.は“オズ”などではない。異界からの使者――サタンだ。
サタンであるJ.D.は、テルマとルイーズに女性としての性を朗らかに認め、尊敬を与える。
9c8f47fe.jpgJ.D.が2人に与えたのは、女性という以上に、人間としての喜び。解放だ。
サタンは規範的な男性の社会に属していない。
だからこそ、ありのままの価値観を与えられるのだ。
5717af3a.jpgリドリー・スコット独特の映像感が、ドラマと融合し始める頃の映画だ。それ以前は知る人ぞ知る監督だったが、徐々に注目され始める。


293be93a.jpg映像は、美しく、独創的な感性で描かれる。
どの場面も凄まじいディティールで描かれるが、猥雑はさなく、一貫性のある映像美のうえに成立している。
色彩の使い方が素晴らしい。
前半は、特に男性が登場する場面では色彩7482d936.jpgは抑えられ、モノトーンに近い色彩で描かれる。
後半の2人の逃避行に移ると、色彩はビビッドに描かれ、疾走感のある移動カメラが解放的な気分を与える。
この色彩の構造は、冒頭のカットですでに示唆されている。
冒頭の、砂漠に一本道の道路が貫かれているカット。初めはモノクロームだが、次第にセピアに変わり、最後には色鮮やかなグリーンが現れる。
二人の女は社会から弾かれ、追い詰められていくほどに覚醒していく。
どこかでテルマとルイーズの2人は、あの色彩豊かな世界を見たのだろう。
最も美しく、情熱に満ちた瞬間を感じながら。

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作品データ
監督:リドリー・スコット
音楽:ハンス・ジマー 脚本:カーリー・クーリ
出演:スーザン・サランドン ジーナ・デイヴィス ブラッド・ピット
  マイケル・マドセン クリストファー・マクドナルド
  スティーヴン・トボロウスキー ハーヴェイ・カイテル
第64回アカデミー賞 脚本賞受賞
第49回ゴールデングローブ賞 脚本賞受賞



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