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■2009/08/16 (Sun)
映画:外国映画■
未来都市ロサンゼルス。夜の闇を、煌びやかなイルミネーションが照らしている。
空は、ガスの混じった雲が覆い、時々雷鳴をとどろかせている。
吹き上げたガスの塊が、炎になって燃え上がっている。
都市の上空を、三輪のスピナーが飛び交う。
そんな様子を、レプリカントの冷淡な瞳が見詰めている。
カメラはゆっくり空中を進み、都市の中央にたたずむ、巨大なピラミッド状建築の中へと入っていく……。
繰り返し見て、知っているはずの映像。だが、そこから感じる印象は別作品。初めて『ブレードランナー』に接した日に戻った感覚すらある。ぜひとも、ブルーレイで体験してもらいたい鮮明さだ。
『ブレードランナー ファイナルカット』は、SFの古典名作『ブレードランナー ディレクターズカット最終版』にさらに手が加えられた新しいバージョンだ。
『ブレードランナー ディレクターズカット最終版』が原型とされているので、基本的な物語構成やカットの運びに変更はない。
『ブレードランナー ファイナルカット』はかつての映像をデジタル技術で洗浄され、映画監督の感性に可能な限り接近させた作品だ。
新たに洗浄された『ブレードランナー』の映像は、驚くほど鮮明だし、そこから得られる印象は鮮烈だ。
かつてぼやけて見えていた映像は、克明にディティールを描き出し、明暗の差はくっきりと浮かび上がり、色彩も音響もより鮮やかになった。
これが、リドリー・スコットが二十数年前に構想し、当時の技術では決して描き出せなかった映像なのだ。
基本的には『ディレクターズカット最終版』と同一の内容。追加は左の2カット。ユニコーンのシーンと、ホッケーマスクの奇妙なダンスシーン。
『ブレードランナー』は、リドリー・スコット監督の評価を決定付けた作品だ。
その映像は、カットの全体に霧がかかり、何もかもが曖昧な空間に光が煌き、暗闇が深いところから迫ってくる。
リドリー・スコットは、この作品において、“光と闇の魔術師”と呼ばれるようになったのだ。
だがあの映像は、本当の『ブレードランナー』ではなかった。
『ブレードランナー ファイナルカット』の映像には、どこにも霧がかかっていなかった。何もかもが克明に描き出され、何もかもが鮮明に浮かび上がる。
これが本当の『ブレードランナー』だったのだ。
我々は随分長い間、劣化した作品に満足し、曖昧だった映像を見てリドリー・スコットを知ったつもりになっていたのだ。
現代の技術はようやくリドリー・スコットの才能に追いつき、我々は本当の『ブレードランナー』を目撃する機会を得たのである。
映像に改編があったのは、左の2カット。左はスタントの顔面に、俳優の顔を合成。右の鳩の飛翔は、背景が差し替えられている。他にもあるかもしれないが、確認できたのはここまで。
『ブレードランナー』は、もうとっくに過去の遺物と思われていた作品である。
かつて『ブレードランナー』を繰り返し鑑賞し、自身の体内に取り込んでいった映画作家は少なくない。
“SFのオリジナル”という称号は、その後に氾濫したSF映画の中で繰り返し真似され、いくつものパロディが作られていくなかで形骸化していった。
この作品が、現代の若い観客に、どんな感動を与えられるだろうか。
『ブレードランナー ファイナルカット』は当時の映像と物語を、そのままの形で現代の観客に提示している。
また新たな世代が、繰り返し見る作品になるように。
『ブレードランナー ディレクターズカット最終版』の記事へ
映画記事一覧
作品データ
監督:リドリー・スコット
原作:フィリップ・K・ディック 音楽:ヴァンゲリス
脚本:ハンプトン・ファンチャー デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
出演:ハリソン・フォード ルトガー・ハウアー
ショーン・ヤング エドワード・ジェームズ・オルモス
ダリル・ハンナ ブライオン・ジェームズ
ジョアンナ・キャシディ M・エメット・ウォルシュ
ウィリアム・サンダーソン ジョセフ・ターケル
空は、ガスの混じった雲が覆い、時々雷鳴をとどろかせている。
吹き上げたガスの塊が、炎になって燃え上がっている。
都市の上空を、三輪のスピナーが飛び交う。
そんな様子を、レプリカントの冷淡な瞳が見詰めている。
カメラはゆっくり空中を進み、都市の中央にたたずむ、巨大なピラミッド状建築の中へと入っていく……。
繰り返し見て、知っているはずの映像。だが、そこから感じる印象は別作品。初めて『ブレードランナー』に接した日に戻った感覚すらある。ぜひとも、ブルーレイで体験してもらいたい鮮明さだ。
『ブレードランナー ファイナルカット』は、SFの古典名作『ブレードランナー ディレクターズカット最終版』にさらに手が加えられた新しいバージョンだ。
『ブレードランナー ディレクターズカット最終版』が原型とされているので、基本的な物語構成やカットの運びに変更はない。
『ブレードランナー ファイナルカット』はかつての映像をデジタル技術で洗浄され、映画監督の感性に可能な限り接近させた作品だ。
新たに洗浄された『ブレードランナー』の映像は、驚くほど鮮明だし、そこから得られる印象は鮮烈だ。
かつてぼやけて見えていた映像は、克明にディティールを描き出し、明暗の差はくっきりと浮かび上がり、色彩も音響もより鮮やかになった。
これが、リドリー・スコットが二十数年前に構想し、当時の技術では決して描き出せなかった映像なのだ。
基本的には『ディレクターズカット最終版』と同一の内容。追加は左の2カット。ユニコーンのシーンと、ホッケーマスクの奇妙なダンスシーン。
『ブレードランナー』は、リドリー・スコット監督の評価を決定付けた作品だ。
その映像は、カットの全体に霧がかかり、何もかもが曖昧な空間に光が煌き、暗闇が深いところから迫ってくる。
リドリー・スコットは、この作品において、“光と闇の魔術師”と呼ばれるようになったのだ。
だがあの映像は、本当の『ブレードランナー』ではなかった。
『ブレードランナー ファイナルカット』の映像には、どこにも霧がかかっていなかった。何もかもが克明に描き出され、何もかもが鮮明に浮かび上がる。
これが本当の『ブレードランナー』だったのだ。
我々は随分長い間、劣化した作品に満足し、曖昧だった映像を見てリドリー・スコットを知ったつもりになっていたのだ。
現代の技術はようやくリドリー・スコットの才能に追いつき、我々は本当の『ブレードランナー』を目撃する機会を得たのである。
映像に改編があったのは、左の2カット。左はスタントの顔面に、俳優の顔を合成。右の鳩の飛翔は、背景が差し替えられている。他にもあるかもしれないが、確認できたのはここまで。
『ブレードランナー』は、もうとっくに過去の遺物と思われていた作品である。
かつて『ブレードランナー』を繰り返し鑑賞し、自身の体内に取り込んでいった映画作家は少なくない。
“SFのオリジナル”という称号は、その後に氾濫したSF映画の中で繰り返し真似され、いくつものパロディが作られていくなかで形骸化していった。
この作品が、現代の若い観客に、どんな感動を与えられるだろうか。
『ブレードランナー ファイナルカット』は当時の映像と物語を、そのままの形で現代の観客に提示している。
また新たな世代が、繰り返し見る作品になるように。
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作品データ
監督:リドリー・スコット
原作:フィリップ・K・ディック 音楽:ヴァンゲリス
脚本:ハンプトン・ファンチャー デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
出演:ハリソン・フォード ルトガー・ハウアー
ショーン・ヤング エドワード・ジェームズ・オルモス
ダリル・ハンナ ブライオン・ジェームズ
ジョアンナ・キャシディ M・エメット・ウォルシュ
ウィリアム・サンダーソン ジョセフ・ターケル
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