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■2009/08/15 (Sat)
映画:日本映画■
春が巡ってきた。
ある晴れた日。青い空を、一機の航空機が横切る。
「来た」
季節が巡るように、サクラさんはやってくる。
季節が巡るようにサクラさんはやってくる。
長回しの多い映画だが、編集速度は一定間隔のリズムを持っている。このカットスピードが『めがね』という映画が持つ秘密だろう。
後を追うように、もう一人、島にやって来た。
タエコだ。
旅は何となく、思いつきで始まり、思いつきの方向に進む。
タエコも、特別な理由もなく、島にやって来た。
島には、島にしかない独自の空気と、時間が流れている。
タエコは、初めは島の空気に馴染めなかった。
だがやがて、のんびりと風景を眺め、
のんびりと時を過ごすようになる。
ここでは、なにもかも、のたり、のたり。
画面のあちこちに登場するワンコロのコージがいい感じだ。のんびりしているようだが、手入れは隅々まで行き届いている。心地よい清潔感が全体にある。映画はむしろ“汚し”で存在感やリアリティを演出しようとするから、その逆をいく映画だ。
『めがね』には全体を通して、独自の空気が流れている。
言葉の数は少なく、画面のディティールはすっきりと整理されている。
台詞の一つ一つは、なんらかのドラマを予感させず、解説もされない。
ただ、その場の気分だけを描き出している。
なのに、不思議と退屈はしない。
むしろ、気持ちのいい朝の目覚めのように充実した気分になる。
荻上直子監督作品『かもめ食堂』と同じく、『めがね』でも食事シーンは素晴らしい。献立がクローズアップされるカットは少ないが、どれも強烈に食欲がそそられる。見終わった後には、自然と「ご飯でも食べよう」という気分になる。
映画には、やかましいものがない。
言葉の一つ一つは、充分で居心地のよい間合いを作っている。
すっきりとした青い空が広がり、砂浜に波が打ち寄せている。
この映画に描かれているのは、静かな余白だ。
心の汚濁を浄化するような、静寂と静謐で満たされている。
のんびりと、静かにそこに佇む映画。映画とは無関係だが、『どうぶつの森を』連想してしまった。もしかしたら、発想が近いのかもしれない。
“休憩のための映画”
それも、エンターティメントの種類としてあり得るだろう。
くつろぐために鑑賞する映画。
見る者は、映画が紡ぎだす時間に、逆らわずゆったりと身を委ねればいい。
だが、そんなくつろぎの時間も、いつか終わる。
休憩は永遠には続かない。映画の魔術は、いつも2時間で終わる。
『めがね』は決して押し付けがましくなく、拒絶もせず、ただ静かに佇んでいる。
誰かがふらりとやってきて、同居するのを決して拒まない。
そんな時間もやがて過ぎ去って、いつか現実に戻らねばならないときがやってくる。
『めがね』は我々を静かに、優しく現実に引き戻してくれる。
『かもめ食堂』の記事もあります。
映画記事一覧
作品データ
監督・脚本:荻上直子
音楽:金子隆博 主題歌:大貫妙子
撮影:谷峰登 編集:普嶋信一
出演:小林聡美 市川実日子 加瀬亮 光石研
もたいまさこ 橘ユキコ 中武吉 荒井春代
吉永賢 里見真利奈 薬師丸ひろ子 ケン
ある晴れた日。青い空を、一機の航空機が横切る。
「来た」
季節が巡るように、サクラさんはやってくる。
季節が巡るようにサクラさんはやってくる。
長回しの多い映画だが、編集速度は一定間隔のリズムを持っている。このカットスピードが『めがね』という映画が持つ秘密だろう。
後を追うように、もう一人、島にやって来た。
タエコだ。
旅は何となく、思いつきで始まり、思いつきの方向に進む。
タエコも、特別な理由もなく、島にやって来た。
島には、島にしかない独自の空気と、時間が流れている。
タエコは、初めは島の空気に馴染めなかった。
だがやがて、のんびりと風景を眺め、
のんびりと時を過ごすようになる。
ここでは、なにもかも、のたり、のたり。
画面のあちこちに登場するワンコロのコージがいい感じだ。のんびりしているようだが、手入れは隅々まで行き届いている。心地よい清潔感が全体にある。映画はむしろ“汚し”で存在感やリアリティを演出しようとするから、その逆をいく映画だ。
『めがね』には全体を通して、独自の空気が流れている。
言葉の数は少なく、画面のディティールはすっきりと整理されている。
台詞の一つ一つは、なんらかのドラマを予感させず、解説もされない。
ただ、その場の気分だけを描き出している。
なのに、不思議と退屈はしない。
むしろ、気持ちのいい朝の目覚めのように充実した気分になる。
荻上直子監督作品『かもめ食堂』と同じく、『めがね』でも食事シーンは素晴らしい。献立がクローズアップされるカットは少ないが、どれも強烈に食欲がそそられる。見終わった後には、自然と「ご飯でも食べよう」という気分になる。
映画には、やかましいものがない。
言葉の一つ一つは、充分で居心地のよい間合いを作っている。
すっきりとした青い空が広がり、砂浜に波が打ち寄せている。
この映画に描かれているのは、静かな余白だ。
心の汚濁を浄化するような、静寂と静謐で満たされている。
のんびりと、静かにそこに佇む映画。映画とは無関係だが、『どうぶつの森を』連想してしまった。もしかしたら、発想が近いのかもしれない。
“休憩のための映画”
それも、エンターティメントの種類としてあり得るだろう。
くつろぐために鑑賞する映画。
見る者は、映画が紡ぎだす時間に、逆らわずゆったりと身を委ねればいい。
だが、そんなくつろぎの時間も、いつか終わる。
休憩は永遠には続かない。映画の魔術は、いつも2時間で終わる。
『めがね』は決して押し付けがましくなく、拒絶もせず、ただ静かに佇んでいる。
誰かがふらりとやってきて、同居するのを決して拒まない。
そんな時間もやがて過ぎ去って、いつか現実に戻らねばならないときがやってくる。
『めがね』は我々を静かに、優しく現実に引き戻してくれる。
『かもめ食堂』の記事もあります。
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作品データ
監督・脚本:荻上直子
音楽:金子隆博 主題歌:大貫妙子
撮影:谷峰登 編集:普嶋信一
出演:小林聡美 市川実日子 加瀬亮 光石研
もたいまさこ 橘ユキコ 中武吉 荒井春代
吉永賢 里見真利奈 薬師丸ひろ子 ケン
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