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■2009/08/15 (Sat)
映画:日本映画■
間宮兄弟の弟、徹信は小学校の用務員。
間宮兄弟の兄、明信はビール会社の商品開発研究員。
二人はいつも仲良しで、一緒に暮らしている。
もういい大人だだけど、いつまでも子供みたい。
この映画をどう捉えるべきか。「ただの癒し映画」と見るのもいいだろう。そういう楽しみ方は間違いではない。しかし、それでは簡単すぎるし、映画監督が題材として選ぶ根拠になりえない。
ある日、弟の徹信がぽつりと提案する。
「この部屋で、カレーパーティをやろうか。先生にも、誰か女の友達連れてきてもらって」
「うん。まず、自分の住んでいるところを見てもらうのが大切だからな」
と兄の信明もすぐに同意して頷く。
でも、他に誰をパーティーに誘うおうか?
「そうだ。あの、直美ちゃんを呼ぼう」
間宮兄弟がいつも行っているビデオショップの店員。僕らに微笑みかけてくれる、最年少の女の人。本間直美ちゃん。
「ビデオショップの? まあ、呼べたら、すごいけど。……安全と思うかな。僕たちを」
徹信は頷きながら首を捻った。
こんな調子で、間宮兄弟の部屋でカレーパーティが開かれることが決まる。
いつも間宮兄弟二人きりの部屋に、女の人がやってくる。
綺麗に整理され、見た目にも美しいコレクション。現代ではこの種の集収癖を「無駄」や、「オタク」といった蔑称が与えられる(まあテレビが悪い)。かつての「趣味人」といった趣で語られなくなった。将来的は、文化の伝達、継承を担う立場になるはずなのだが。
『間宮兄弟』は独特のぬくもりを持った映画だ。
主人公の間宮兄弟は、のっぽとちび。
漫画ならありそうなキャラクターだし、主役を演じる二人の俳優は、漫画的なキャラクターを見事に体現している。
そんな間宮兄弟が暮らす部屋は、小さいけど色んなものが詰まっている。
ふと、子供のおもちゃ箱を連想する。
色んなものが一杯詰まっていて、それでいて小ぎれいに整理されている。きちんと大人になった人間の子供部屋、という感じだ。
この部屋の空気感が映画全体の色調を決定的にしている。
内の世界、外の世界とまったく別種の空気感で描かれている。右は徹信の学校の教室。黒板に登校拒否児童の書いた落書き。“みんなに迷惑かけないようにひとりぼっちになったほうがいい…”作品のテーマの核心を描く場面だ。
しかし、間宮兄弟の部屋の外は、現実の社会だ。
みんな複雑なものを抱えて、精神的な迷いを抱えて、悩んでいる。
うまく行かない人間関係。憎みあったり、喧嘩したり。好きなのに離れたり、嫌いなのに離れられなかったり。
どうしていいのわからなくて、みんな悩んでいる。
間宮兄弟が、自分たちが周辺の社会意識とずれていると気付いている。周りの同世代に合わせて、同様に振る舞ったほうがいいのか?
実は、間宮兄弟にとって、外の世界は憧れの世界だった。
外の世界では、みんな自由で恋をして、大人の世界を生きている。
なのに、自分たちはいつまでも子供のまま。
ちょっと現実の世界に出てみようか。
恋もしてみたいし。
『間宮兄弟』で描かれた“世界”と現代社会が持っている空気の差。人間関係を含めて、何もかもに刺激を求める現代。屈折しているのは、間宮兄弟でなく、現代の社会認識のほうかもしれない。
悩んでも傷ついても、間宮兄弟の部屋に戻ると、二人が温かく迎えてくれる。
どことなく、母親の胎内に戻るような、そんなぬくもりに満ちている。
そんな場所だから、ちょっと皆で集まろうか、なんて気分になる。
ちょっと集ってカレーパーティーでも。
そんな気軽さで見たい映画だ。
映画記事一覧
作品データ
監督・脚本:森田芳光
原作:江國香織 音楽:大島ミチル
出演:佐々木蔵之介 塚地武雅 常盤貴子 沢尻エリカ
北川景子 戸田菜穂 岩崎ひろみ 佐藤隆太
横田鉄平 佐藤恒治 桂憲一 広田レオナ
加藤治子 鈴木拓 高嶋政宏 中島みゆき
間宮兄弟の兄、明信はビール会社の商品開発研究員。
二人はいつも仲良しで、一緒に暮らしている。
もういい大人だだけど、いつまでも子供みたい。
この映画をどう捉えるべきか。「ただの癒し映画」と見るのもいいだろう。そういう楽しみ方は間違いではない。しかし、それでは簡単すぎるし、映画監督が題材として選ぶ根拠になりえない。
ある日、弟の徹信がぽつりと提案する。
「この部屋で、カレーパーティをやろうか。先生にも、誰か女の友達連れてきてもらって」
「うん。まず、自分の住んでいるところを見てもらうのが大切だからな」
と兄の信明もすぐに同意して頷く。
でも、他に誰をパーティーに誘うおうか?
「そうだ。あの、直美ちゃんを呼ぼう」
間宮兄弟がいつも行っているビデオショップの店員。僕らに微笑みかけてくれる、最年少の女の人。本間直美ちゃん。
「ビデオショップの? まあ、呼べたら、すごいけど。……安全と思うかな。僕たちを」
徹信は頷きながら首を捻った。
こんな調子で、間宮兄弟の部屋でカレーパーティが開かれることが決まる。
いつも間宮兄弟二人きりの部屋に、女の人がやってくる。
綺麗に整理され、見た目にも美しいコレクション。現代ではこの種の集収癖を「無駄」や、「オタク」といった蔑称が与えられる(まあテレビが悪い)。かつての「趣味人」といった趣で語られなくなった。将来的は、文化の伝達、継承を担う立場になるはずなのだが。
『間宮兄弟』は独特のぬくもりを持った映画だ。
主人公の間宮兄弟は、のっぽとちび。
漫画ならありそうなキャラクターだし、主役を演じる二人の俳優は、漫画的なキャラクターを見事に体現している。
そんな間宮兄弟が暮らす部屋は、小さいけど色んなものが詰まっている。
ふと、子供のおもちゃ箱を連想する。
色んなものが一杯詰まっていて、それでいて小ぎれいに整理されている。きちんと大人になった人間の子供部屋、という感じだ。
この部屋の空気感が映画全体の色調を決定的にしている。
内の世界、外の世界とまったく別種の空気感で描かれている。右は徹信の学校の教室。黒板に登校拒否児童の書いた落書き。“みんなに迷惑かけないようにひとりぼっちになったほうがいい…”作品のテーマの核心を描く場面だ。
しかし、間宮兄弟の部屋の外は、現実の社会だ。
みんな複雑なものを抱えて、精神的な迷いを抱えて、悩んでいる。
うまく行かない人間関係。憎みあったり、喧嘩したり。好きなのに離れたり、嫌いなのに離れられなかったり。
どうしていいのわからなくて、みんな悩んでいる。
間宮兄弟が、自分たちが周辺の社会意識とずれていると気付いている。周りの同世代に合わせて、同様に振る舞ったほうがいいのか?
実は、間宮兄弟にとって、外の世界は憧れの世界だった。
外の世界では、みんな自由で恋をして、大人の世界を生きている。
なのに、自分たちはいつまでも子供のまま。
ちょっと現実の世界に出てみようか。
恋もしてみたいし。
『間宮兄弟』で描かれた“世界”と現代社会が持っている空気の差。人間関係を含めて、何もかもに刺激を求める現代。屈折しているのは、間宮兄弟でなく、現代の社会認識のほうかもしれない。
悩んでも傷ついても、間宮兄弟の部屋に戻ると、二人が温かく迎えてくれる。
どことなく、母親の胎内に戻るような、そんなぬくもりに満ちている。
そんな場所だから、ちょっと皆で集まろうか、なんて気分になる。
ちょっと集ってカレーパーティーでも。
そんな気軽さで見たい映画だ。
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作品データ
監督・脚本:森田芳光
原作:江國香織 音楽:大島ミチル
出演:佐々木蔵之介 塚地武雅 常盤貴子 沢尻エリカ
北川景子 戸田菜穂 岩崎ひろみ 佐藤隆太
横田鉄平 佐藤恒治 桂憲一 広田レオナ
加藤治子 鈴木拓 高嶋政宏 中島みゆき
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