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■2016/07/09 (Sat)
第7章 Art Loss Register

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17
 川村はぶらりと出かけた散歩の最中のように歩いた。そのまま、ツグミの側を通り抜けていった。
「やっぱり、私のお父さんが切っ掛けだったんですね。ごめんなさい。こんな事件がなかったら、川村さんは、きっと……」
 きっと「偉大な画家になれたはず」とツグミは言いたかった。誰も手にできないような名誉を、いくつも手にできたはず。間違いなく絵画史に残る人間になれたはず。
 こんな事件に巻き込まれさえしなければ……。
 が、ツグミは言えなかった。こんな生活に堕ちてしまった川村に言うのは残酷に思えたし、責任の一端が自分の父親にあると思うと、つらかった。
「僕に恐れはない。迷いも、不安も。むしろ感謝している。余計なものは、全て僕から去ってくれたから。この事件のおかげで、僕は絵描きとして自由を得たんだ」
 川村はツグミを慰めようといているのか、言葉が優しかった。
 川村は広場の端まで進んで、足を止めた。川村の目の前に、暗い海が広がっていた。太陽が水平線に落ちかけて、光が失われようとしていた。
 ツグミはっとした。川村の姿、川村の立っている場所。それが、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画と重なった。
 そっちに行っちゃ駄目……。
 そう言いたかったけど、声が出なかった。手を伸ばしたかったけど、そこに釘付けになって動けなかった。
 ツグミは、ずっと川村に遭いたいと思っていた。そして、やっと遭えたのに、その背中に近付くことすらできなかった。まるで、絵画を見ているように。川村が絵画の向こうに思えた。
 ツグミにとって川村は、初めて会った時から特別な存在だった。今でもツグミは、川村を特別だと思っている。
 しかし、今は何かが違う……何かが違うと感じていた。川村の存在があまりにも遠くに思えた。以前より遠くに感じた。川村のことを、前より多く知っているのに。近くにいるのに、川村がはるか遠くに感じられた。
 あなたは……誰なの?
 ツグミは唐突にその疑問に行き当たった。
 川村……カワムラ……かわむら……。
 その名前は、目の前に立っている男の何を指し示しているのだ? あそこに立っている男は、いったい何者なのだ? どんな存在なのだ……。
 私は……あの人を何も知らない。
 知識で知っているとかそういう話ではない。顔を知っているとか、体を知っているとか、そういう話ではない。もしもそれを深く知っていたとしても、きっと知り尽くすことはできない。ツグミの手では、決して捉えることのできない大きな存在。
 ツグミは、はっと我に返った。
「そうだ、警察に……」
 ポケットの中に放り込んでいた携帯電話を引っ張り出した。川村に出会った、今のタイミングで通報しなくちゃいけない。今しかなかった。
 しかし、案の定、携帯電話は電波の届かない場所だった。アンテナは1本も立っていない。携帯電話を手に周辺をうろうろとしても、ぴくりとも反応しなかった。
「川村さん、逃げてください。奴らが来ます。川村さん、本物の『合奏』を持ってるんでしょ。『合奏』を持って、警察に……」
 ツグミは興奮して捲し立てた。
 川村は振り向きもしなかった。
「警察は駄目だ。どこかで必ず宮川の手に渡ってしまうから。警察と宮川の繋がりを絶たねば、『合奏』はどこにも持ち出せない。まして、持ち主に返すなんて、不可能だ」
 ツグミははっとした。警察に委ねられるのなら、初めからやっている。警察を頼れないのは、宮川が間に立ち塞がっているからだ。
 その後で、川村はぽつりと付け足した。
「それに、僕はフェルメールの本物を持っていない」
 ツグミは「えっ」と動揺した。ツグミは2歩前に進み出た。
「それじゃ、どこですか。私のお父さんが、誰かに売ってしまったんですか」
 ツグミは川村が本物の『合奏』を持っていると考えていた。川村に会えば、本物の『合奏』が手に入ると思っていた。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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