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■2016/07/04 (Mon)
創作小説■
第14章 最後の戦い
前回を読む
9
アレスは山を下りていった。クロースの軍勢が、報告を待ち受けて待機している。アレスはクロースの軍団を押しのけるようにして進み、仲間達の許へと向かった。流浪騎士
「隊長……」
アレス
「もうたくさんだ。ここを離れよう」
流浪騎士
「しかし、それでは姫が……」
アレス
「…………」
ティーノ
「おい、ここを離れるのか?」
アレス
「何だ貴様」
ティーノ
「わしもリーフの奴に顎で使われるのはもううんざりだ。あの若造めが……。ここを抜けるぞ。今なら誰も咎めん!」
アレス
「なぜ貴様の意見に従わねばならん」
ティーノ
「へへへ、従ってもらうぜ。姫さんの命は我が手にあるんだからな。よし行くぞ。ついて来い!」
クロース兵
「ティーノ様、どこへ行かれる?」
ティーノ
「ジオーレ様が私を呼んでおられる。今すぐに行かねばならん!」
アレス
「ジオーレが?」
ティーノ
「そういう話にしておけ!」
◇
森の奥へ入っていくと、むせかえるほど緑が濃くなっていき、張り詰めるような静けさが包んだ。周囲の木々は、どれも樹齢百年を越す。図抜けて大きく、手の届かぬところで葉を茂らせていた。だが森には暗さはなく、清らかな美しさに包まれていた。
一見して、ただの森ではなかった。神聖な空気が漂い、自然と入り込む者の背筋を正させ、それでいながら抱かれるようなぬくもりを感じた。
地面も巨大な根が張り巡らされている。森を進む小道は、木々をうまく避けながら、奥へ奥へと続いていた。
オーク達は小道に沿って、その中を進んだ。やがて密林の向こうに、開けた場所が現れた。そこだけ木々が後退して、緑の光が射し込んでいた。不可思議な石の円柱が立てられていた。
その様式は、ドルイドの中で最も古かった。神秘的な空気はより濃く、誰もが心理の深いところで打ちのめされるような気分になった。神の降りてくる場所として、相応しく感じられた。
ソフィー
「ここがドルイドの本当の聖堂であり、最後の聖域です」
オーク
「こんな場所は初めて見ます」
クリアリングに立ち入った瞬間、得も知れぬ峻厳な空気に打たれるのを感じた。ほんの一瞬、オークに取り憑いた鬼神が影を薄めた。
ソフィー
「秘密ではありませんが、修行を積んだドルイドでない限り、立ち入れない場所です。私もここで修行をしました。でも、その禁止も今日限りです」
生き残った全ての僧兵が、クリアリングに集まった。その数、わずか百名。怪我していない者は1人もいなかったし、重傷の者もいた。誰もが疲労の限界を感じていた。しかしその顔に、諦めきれない闘気が浮かんでいた。
最後の老師が一同の前に進み出て、全員の顔を見回した。
老師
「……いつかこの日が来ると思っていた。この時が。南の邪教が世界侵略のために手を伸ばし、ここも戦火で焼き尽くされる。その時がやってきた。これ以降は、魔法戦になる。今日のこの日が、われらの最後の戦いだ。僧達よ戦え! 邪教どもに一生消せぬ恐怖を刻みつけてやるのだ!」
僧兵達が士気を奮わせて、声を合わせた。
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