忍者ブログ

89c79c73.png
■ コンテンツ ■

ad17d9bc.png 2f3a1677.png c1a81a80.png 9452a147.png 5350f79a.png 01b9b1e8.png 29aa8305.png d5525adf.png 0e6a6cf4.png b76ca7e7.png fea5d7ae.png
■ Twitter ■

■ ブログランキング

にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
■ ショップ

DMM.com DVD通販、レンタルなどの総合サイト
■2024/11/22 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

にほんブログ村 アニメブログへ
■ [1214]  [1213]  [1212]  [1211]  [1210]  [1209]  [1208]  [1206]  [1205]  [1204]  [1203]  ■


■2016/07/05 (Tue)
第7章 Art Loss Register

前回を読む

15
 5時を回る頃、詫間港に船が入ってきた。ツグミはチケットを買い、船に乗った。ここの船は3時間に1本しかない。絶対に逃してはならない1本だった。
 粟島行きの船は小さかった。甲板には20人も乗れば一杯になる感じだった。船の客はツグミ1人きりだったけど。
 船が詫間港を離れた。船はのんびりした感じで、粟島に向かった。
 15分ほどで、粟島の港に到着した。港はいくつもの漁船が繋がれていた。まだ夕暮れだけど、桟橋の周囲にはもう人の気配はなかった。
 粟島は小さな島だった。人口は僅かに400人。ツグミの不自由な足でも、1時間もあれば余裕で町を一回りできそうなくらいだった。
 ツグミは町を右手にして、海岸沿いの道を歩いた。タクシーの運転手に教わったとおりに城山方面へと向かった。
 ツグミは限界の速度で進んだ。時計を持っていないから余計に焦った。約束の6時に間に合わないかも知れない。
 町は静まり返っていた。通りには人影すら全然ない。どの家も古めかしい瓦葺き屋根だった。家同士の境に塀すら立っていなかった。電柱もまばらで、現代の風景とは思えない様子だった。
 町の風景は、間もなく見えなくなった。結局、人とすれ違うことはなかった。代わりに右手に鬱蒼とした森が現れた。左手には砂浜が続いている。
 ツグミは、道は合っているのだろうか、と不安を感じたが、そのまま真っ直ぐ歩いた。ツグミが急いで進む道路に、車は一台も走らなかった。人の気配ともすれ違わない。風だけが、ざわざわと音を立てていた。
 海は夜の闇に溶け始めている。夕日の光はほとんど残っていなかった。
 しばらくして、車道の脇に立て札が立っているのに気付いた。朽ちかけて、見落としそうな立て札だった。立て札に近付くと、消えかけてた文字で「新山寺」と書かれていた。見落とさなくて本当に良かった。
 立て札の背後は鬱蒼とした森で、真っ暗だった。覗き込んでみると、確かに小道があって、階段があるのが見えた。
 ツグミはためらいなく、森と闇の中に入っていった。夢中になっていて、恐いと感じるゆとりもなかった。
 階段は自然の斜面に、板を当てて階段状にしただけのものだった。時々、藪が行く手を遮っていた。
 階段があまりにも長く思えた。見上げても森が深くて、闇ばかりが続いた。ゴールが見えなかった。振り返ると、やってきた道が闇に包まれ、森が帰り道を隠しているみたいだった。
 もう引き返せない。ツグミは急に恐いという気持ちに捕らわれた。この階段はどこに向かっているのだろう。なぜか階段が別世界に繋がっているように思えた。
 ツグミはすぐに不安を掻き消した。行く先が一つしかないのなら、進むしかなかった。階段を登り切るのに、使命感のようなものを感じていた。
 体力は限界まで来ていた。体も脚も重い。しかし脚は停まらなかった。休もうという気にもならなかった。何か別の力が、ツグミの背中を押しているようだった。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

拍手[0回]

PR
にほんブログ村 アニメブログへ
■ [1214]  [1213]  [1212]  [1211]  [1210]  [1209]  [1208]  [1206]  [1205]  [1204]  [1203]  ■


■ ブログの解説 ■

漫画・アニメ・キャラクターを中心に取り扱うブログです。 読みたい記事は、左の目次からお探しください。

QLOOKアクセス解析


■ ブログ内検索  ■

私が描きました!

アマゾンショップ

アマゾンのサイトに飛びます
フィギュア

アニメDVD

新刊コミック

ゲーム

ライトノベル

楽天

アマゾン<シャッフル>ショップ

私が描きました!

Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]