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■2016/04/26 (Tue)
第6章 フェイク

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40
 残すは《AMS》のテストだけだった。《AMS》のテストだけ、まだ終わらないようだった。
 研究員の1人が奥のドアに入っていった。様子見だったのか、すぐに戻ってきた。そのままマイクの許まで進んだ。
「《AMS》テストですが、終了まで1時間ほどお待ちください」
 声はマイクロスコープ・テストの時に聞いた、おばさんだった。実験室を見ていると、みんな同じ格好なので誰が誰なのかわからなくなる。
 ツグミは報告を聞いても、気分が落ち着かなかった。さっきまで抱いていた強気が、もう不安に置き換えられていた。
 検査に使用したのは、どの部分だろう。いや、そもそもあのキャンバスは、本当に17世紀のものだろうか。
 ツグミは、確かにキャンバスが古いもの、と確認した。それもちょっと見ての判断だ。実際はどうだったのかわからない。
 贋作を作る場合、その画家が活躍した当時のキャンバスを手に入れなければならない。17世紀の贋作を作ろうと思ったら、17世紀のキャンバスだ。そんな時代のキャンバスなんて、画材屋に行ったところで手に入るわけがないから、贋作師は同じ時代の無名画家の絵を手に入れ、絵具を落とし、その上から絵を描く。
 贋作を作るために削ぎ落とした無名画家の絵が、しばらくして実は贋作として作ろうとしていた絵以上の幻の名作だった……なんてことがあるわけだけど。
 川村はいったいどのようにして、『ガリラヤの海の嵐』の贋作を作ったのだろう。17世紀のキャンバスに描いたのだろうか。
 実験室にも休憩室にも、時計はなかった。ツグミも時計を持っていない。無機質な真っ白な空間のせいか、時間の流れがわからなかった。とにかく時間の進みがゆっくりに思えた。
 いきなりな感じで、実験室奥のドアが開いた。ツグミは顔を上げた。
 実験室の研究員も、待ちかねたという様子で顔を上げた。
「検査結果を報告しろ」
 二ノ宮の声に苛立った感じがあった。
《AMS》担当の研究員がマイクの前まで進んだ。
「キャンバスの繊維から、年代が判明しました。1630年から誤差30年です。『ガリラヤの海の嵐』が制作された年代と、一致します。全ての検査結果から、『ガリラヤの海の嵐』は、真画と判定されました」
 若い、男性の声だった。太い声だったけど、覇気がなかった。
 ツグミは全身からどーっと力が抜けて、杖に寄りかかった。
 二ノ宮は研究員の報告を聞いて、ニヤリとしていた。二ノ宮の場合、10億円の宝物を得た喜びだろう。
「撤収準備を始めろ。今夜限りでここを廃棄する。指紋1つ残すな」
 二ノ宮がマイクから指示を出した。
 実験室の研究員が動き出した。研究員はそれぞれ箱を手に取り、薬品や道具を詰め込んだ。
 と同時に、廊下から休憩室に3人の男が入ってきた。黒のワゴン車に『ガリラヤの海の嵐』を運び込んだ、あの作業服の男たちだ。どこか近いところで待機していたらしい。
 作業服の男たちは実験室の扉を開けて、中に入った。すでに実験室を無菌状態に置く意味もなくなったようだ。
 ツグミは茫然と、慌ただしくなる一同を見ていた。自分だけその場から取り残された感じだった。
 ふと二ノ宮の視線に気付いて、振り返った。
「これでお別れだな。私はこれきり姿を消す。もう2度と会う機会もないだろう」
 二ノ宮はニヤついた顔だったが、少し改まった感じだった。二ノ宮の役目は、レンブラントを手に入れた時点で終わりなのだ。
 二ノ宮はもうどこにも姿を現さないだろう。『ガリラヤの海の嵐』と共に、永久に姿を消すのだ。
 ツグミは清々する思いで、二ノ宮に頷いた。しかし、すぐに「あっ」と声を上げた。
「待って! コルリは? ルリお姉ちゃんはどこにいるんや。ここにいるんちゃうんか」
 ツグミは慌てた声を上げた。うっかり本来の目的を忘れて、二ノ宮を逃すところだった。
「そうか。姉妹対面がまだだったな。出て来たまえ。妹がお呼びだ」
 二ノ宮がにやりと嗤った。マイクに向かい、実験室の誰かに呼びかけた。
 実験室の1人が反応して振り返った。実験室を指揮していた、あの女研究員だった。
 女研究員は箱に薬品を詰める手を止めて、作業台に箱を置いた。側の研究員に短く言付けをした。
 女研究員は少し早足で、休憩室のドアを開けた。歩きながらマスクを外し、白帽を取り払った。
 白帽を外すと、長い黒髪がさらりと波打った。女性なら誰もが羨むような、見事なキューティクルだった。髪だけではない。口元の柔らかな唇。芸術的なまでに均整の取れた輪郭のライン。
 ツグミは、女研究員が誰なのか、すぐにわかった。というより、初めから予感がしていた。
 女研究員が休憩所に入ってきた。白衣を脱ぎ捨てて、畳まずにカウンターに放り出した。
「……やっぱりヒナお姉ちゃんやったんや」
 ツグミはヒナの顔を見上げてぽつりと口にした。ヒナは、いつもはしないような厳しい顔で、ツグミに頷いた。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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