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■2015/12/14 (Mon)
創作小説■
第7章 王国炎上
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6
セシルを筆頭に、騎士団はネフィリムの大群に猛然と突進した。荒ぶる騎士の激突が魔の軍団を踏み散らし、槍が敵をなぎ払う。銃眼からの攻撃も激しく、大地を覆うネフィリムたちに次々と矢を放った。しかし邪悪なる者に恐れや怯えはなく、いくらその眷属が倒され、殺されようともその勢いは衰えず、むしろ人間への怒りと憎しみを強力にさせて攻撃を続けた。やがてネフィリムの死体があちこちで山と築かれたが、ネフィリムは同族の死などなんとも思わず、自らそれを踏み越えて、あるいは蹴り倒して進撃を続けた。
ネフィリムは数ばかり多く、軍団を束ねる者もいなければ、規律と作戦すら持たない。ただ人間への怒りと殺戮の快楽のみで集まった烏合の衆に過ぎなかった。数は圧倒的だったが、知恵と力という面で、人間は勝っていた。騎士達の攻撃は指揮者によって統率され、西へ東へと素早く動いて敵を攪乱させつつ、攻撃した。
しかし戦いは果てしなく続いた。ネフィリムの数は尽きることはない。騎士は一瞬でも留まらず走り続け、槍を振るい続けた。銃眼の兵士達も休みなく矢を放ち続けた。
魔の眷属達は神の定める時の流れなど無関係であるかのように、勢いを決して衰えさせず向かってきた。
やがて夕暮れが迫り、暗い雲に閉ざされた大地は急な勢いで夜に飲み込まれた。いよいよ魔の者が本当の力を得る時間に至り、ネフィリムたちはますます勢い付いて、いまだ光を残す西の空に、不快極まりない怒号を上げた。
その時だ。
見張り
「待て! あれは!」
見張り塔の兵士が叫んだ。地上の騎士達には見えなかったが、銃眼の兵士達はそれに気付いて喝采を上げた。
闇に落ちかけるかすかな地平の光の中に、その彼らは白銀の鎧を身にまとい、松明と光の国璽を記した旗を翻させながら、ネフィリムの大群を背後から強襲した。
ブラン率いるブリタニアの騎士団であった。その数は2000騎。乗り手はブラン騎士団の中でも屈強の戦闘集団である重騎兵であった。
突然の攻撃と凄まじい突撃に、ネフィリムの軍団はブラン騎士団に蹴散らされた。ブラン騎士団はまるで大海を分ける預言者の如く一気に王城を目指して突き進んだ。
セシルたちもブラン騎士団に気付いた。セシルは騎士団を指揮すると、ネフィリムの軍勢の只中を突き進み、もう1つの奇跡のように大群を2つに引き裂いた。そしてその中腹で、両軍の指揮官は視線をすれ違わせた。
ブラン
「ブラン騎士団、今ここに参上せり!」
セシル
「助かった。そなた達には勝者の取り分を与えよう」
ブラン
「堅苦しい歓待などいらん。ブリタニアは前衛的な生き方を望むのでな。城の守りが無防備であるぞ!」
セシル
「うむ。一気にカタをつけよう」
形勢逆転。ブリタニア騎士団の援護を得たガラティア軍は勢いを取り戻し、ネフィリムたちを圧倒した。騎士団は魔の軍勢を強引に突き崩してその足並みを狂わせ、さらにその上に歩兵団が投入された。
ネフィリムの軍団は急速に勢いを弱めていく。あの平原を埋め尽くさんばかりだったネフィリムは瞬く間に数を減らし、終わりがないと思えた戦いは急速に展開し、深夜を過ぎる頃、セシルは一応の勝利宣言をした。
※ 勝者の取り分 猪料理のもっとも美味い部分。戦の功労者に与えられる。
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