■ 最新記事
(08/15)
(08/14)
(08/13)
(08/12)
(08/11)
(08/10)
(08/09)
(08/08)
(08/07)
(08/06)
■ カテゴリー
お探し記事は【記事一覧 索引】が便利です。
■2010/04/06 (Tue)
シリーズアニメ■
「イースト・トーキョー・ユナイテッド(ETU)」はサッカーチームの中でも弱小と知られていた。平均観客動員数が8000人を下回り、台東区がホームタウンからの撤退を検討している。負け続けのチームに監督は次々と入れ替わり、サポーターは荒れる一方だった。
もうこれ以上、負けるわけには行かない。経営陣は起死回生の望みにすがり、達海猛をチーム監督に抜擢する。
達海猛はかつて、ETUのチームリーダーだった男だった。引退後は監督に転身し、各地を点々としつつサッカーを盛り上げてきた。アマチュアリーグであるイーストハムをFAカップベスト32まで導いた功績をもつ男だった。
だが達海猛には曰くつきの過去があった。達海猛はかつてETUの監督を引き受けていたが、突如チームを見捨てて海外のチームの監督に就任。達海猛に見捨てられたチームは惨敗し、結果として2軍に地位を落としてしまっていた。
そんな過去を持つ達海にサポーターたちは納得せず、チームにも不穏な空気が漂う。
達海猛は監督就任初日、ひたすら30メートルダッシュだけをやらせ、そのタイムだけで新しいレギュラー候補を決めてしまう。それはベテランを省いた若手中心のチームだった。
納得の行かないベテラン陣から不満の声が上がる。達海猛はならば、と試合をしようと持ちかける。もし負ければ考え直すが、勝てばレギュラー交代、という条件だった……。
サッカーを題材にしたアニメや漫画は、野球に較べると少ない。その内容も、すべてにおいて選手に光が当てられ、チームの団結と葛藤、勝利がテーマの中心だっただろう。
アニメや漫画はしばしばヒーローを求め、シンボリックなイメージと度外れた力を描き出す。そんなファンタジーに対し、スポーツ選手は現実的な世界に実在するヒーローである。だからこそ作家はスポーツ選手を好んで描いてきた。
だが『GIANT KILLING』はそんなセオリーと系譜から一歩視点を変え、「監督」を主人公に据えた珍しい作品である。
試合中の動きにはデジタルが使用されているが、一目でアニメーターの動きではないとわかる。走る瞬間に地面を蹴っておらず、躍動感がまったくない。ロングサイズの集団をデジタル処理で済ませる事例は増えているが、表現手法としてではなく技術としての未熟さが目に付いてしまう。まだまだこれからの分野だ。
主人公が「監督」であるから、今までのスポーツアニメ・漫画では描かれなかった側面が深く掘り下げられるようになった。経営陣の苦悩やサポーターとの葛藤。スポンサーとの契約の話まで出てくる。
考えてみれば、裏方とはいえ「監督」はスポーツにおいて重要なファクターであったのに、その描き方は極端にシンボリックな存在であった。シンボリックな父親であり、指導者であり、生々しい人間として描かれてこなかった。
それだけに、『GIANT KILLING』の平均年齢は極めて高い。主人公である監督は35歳。経営陣は白髪の混じる壮年。今時珍しい、若いヒロインの登場しないアニメ作品である。
高速で移動する選手の脚の動きを描写するのは至難の技だ。走りの動きは教科書通りなら一歩3枚(原画1動画2)。さらにその脚を常に意識的に操作し、ボールを蹴り続けねばならない。とてつもなく難易度が高い作画になり描けるアニメーターは僅少。演出家はスタッフ技術の低さをごまかすために様々な手管を用いてきた。サッカーをフェティッシュなレベルで完成させられたアニメーターは、日本アニメ史においてもいまだ前例がない。
サッカーは野球と違って、原作人気が切っ掛けで映像化される例は稀である。常に時代的な影響を受けて、ようやく映像化されるという感じだ。例えばワールドカップでサッカー人気が盛り上がるたびに、そのタイミングに合わせてアニメの企画が提出されるが、しかしそれほど有名なサッカー漫画が都合よくあるわけではない。
例えば2001年ワールドカップの年に制作されたアニメ『オフサイド』がそれだ。この作品はすでに1992年に終了しており、映像化された当時、制作を担当したアニメーターの誰も漫画『オフサイド』の存在を知らなかった。『キャプテン翼』なんていうアニメ作品は、唯一の例外であるといっていい。
一時的な世相の影響で制作されるために、予算はその他の作品より遥かに低く抑えられ、おそらく誰も聞いたことがないであろう中小アニメ会社が実際の制作を引き受けていたりする。
『GIANT KILLING』もやはり同じ切っ掛けをもつらしく、Jリーグの試合中継と連動して放送されているようだ。サッカーアニメの前途はまだまだ続くようである。
『GIANT KILLING』が達海猛のように強力な牽引役としてサッカーアニメの系譜を変えてもらいたい。
作品データ
監督:紅優 原作:ツジトモ 原案・取材協力:綱本将也
シリーズ構成:川瀬敏文 キャラクターデザイン:熊谷哲矢
美術監督:東潤一 色彩設計:北爪英子 撮影監督:近藤慎与
編集:松村正宏 音楽:森英治 音響監督:高橋剛
アニメーション制作:スタジオディーン
出演:関智一 水島大宙 置鮎龍太郎 川島得愛
〇 浅野真澄 ふくまつ進紗 後藤哲夫 デビット・レッジス
〇 儀武ゆう子 蔵合紗恵子 野浜たまこ 多田野曜平
〇 広田みのる 魚建 宮内敦士 伊藤健太郎
〇 中川慶一 深津智義 武藤正史 川野剛念
〇 佐藤献輔 中田隼人 島崎信長 井田国男
〇 岡哲也 廣田誌夢 早坂愛
もうこれ以上、負けるわけには行かない。経営陣は起死回生の望みにすがり、達海猛をチーム監督に抜擢する。
達海猛はかつて、ETUのチームリーダーだった男だった。引退後は監督に転身し、各地を点々としつつサッカーを盛り上げてきた。アマチュアリーグであるイーストハムをFAカップベスト32まで導いた功績をもつ男だった。
だが達海猛には曰くつきの過去があった。達海猛はかつてETUの監督を引き受けていたが、突如チームを見捨てて海外のチームの監督に就任。達海猛に見捨てられたチームは惨敗し、結果として2軍に地位を落としてしまっていた。
そんな過去を持つ達海にサポーターたちは納得せず、チームにも不穏な空気が漂う。
達海猛は監督就任初日、ひたすら30メートルダッシュだけをやらせ、そのタイムだけで新しいレギュラー候補を決めてしまう。それはベテランを省いた若手中心のチームだった。
納得の行かないベテラン陣から不満の声が上がる。達海猛はならば、と試合をしようと持ちかける。もし負ければ考え直すが、勝てばレギュラー交代、という条件だった……。
サッカーを題材にしたアニメや漫画は、野球に較べると少ない。その内容も、すべてにおいて選手に光が当てられ、チームの団結と葛藤、勝利がテーマの中心だっただろう。
アニメや漫画はしばしばヒーローを求め、シンボリックなイメージと度外れた力を描き出す。そんなファンタジーに対し、スポーツ選手は現実的な世界に実在するヒーローである。だからこそ作家はスポーツ選手を好んで描いてきた。
だが『GIANT KILLING』はそんなセオリーと系譜から一歩視点を変え、「監督」を主人公に据えた珍しい作品である。
試合中の動きにはデジタルが使用されているが、一目でアニメーターの動きではないとわかる。走る瞬間に地面を蹴っておらず、躍動感がまったくない。ロングサイズの集団をデジタル処理で済ませる事例は増えているが、表現手法としてではなく技術としての未熟さが目に付いてしまう。まだまだこれからの分野だ。
主人公が「監督」であるから、今までのスポーツアニメ・漫画では描かれなかった側面が深く掘り下げられるようになった。経営陣の苦悩やサポーターとの葛藤。スポンサーとの契約の話まで出てくる。
考えてみれば、裏方とはいえ「監督」はスポーツにおいて重要なファクターであったのに、その描き方は極端にシンボリックな存在であった。シンボリックな父親であり、指導者であり、生々しい人間として描かれてこなかった。
それだけに、『GIANT KILLING』の平均年齢は極めて高い。主人公である監督は35歳。経営陣は白髪の混じる壮年。今時珍しい、若いヒロインの登場しないアニメ作品である。
高速で移動する選手の脚の動きを描写するのは至難の技だ。走りの動きは教科書通りなら一歩3枚(原画1動画2)。さらにその脚を常に意識的に操作し、ボールを蹴り続けねばならない。とてつもなく難易度が高い作画になり描けるアニメーターは僅少。演出家はスタッフ技術の低さをごまかすために様々な手管を用いてきた。サッカーをフェティッシュなレベルで完成させられたアニメーターは、日本アニメ史においてもいまだ前例がない。
サッカーは野球と違って、原作人気が切っ掛けで映像化される例は稀である。常に時代的な影響を受けて、ようやく映像化されるという感じだ。例えばワールドカップでサッカー人気が盛り上がるたびに、そのタイミングに合わせてアニメの企画が提出されるが、しかしそれほど有名なサッカー漫画が都合よくあるわけではない。
例えば2001年ワールドカップの年に制作されたアニメ『オフサイド』がそれだ。この作品はすでに1992年に終了しており、映像化された当時、制作を担当したアニメーターの誰も漫画『オフサイド』の存在を知らなかった。『キャプテン翼』なんていうアニメ作品は、唯一の例外であるといっていい。
一時的な世相の影響で制作されるために、予算はその他の作品より遥かに低く抑えられ、おそらく誰も聞いたことがないであろう中小アニメ会社が実際の制作を引き受けていたりする。
『GIANT KILLING』もやはり同じ切っ掛けをもつらしく、Jリーグの試合中継と連動して放送されているようだ。サッカーアニメの前途はまだまだ続くようである。
『GIANT KILLING』が達海猛のように強力な牽引役としてサッカーアニメの系譜を変えてもらいたい。
作品データ
監督:紅優 原作:ツジトモ 原案・取材協力:綱本将也
シリーズ構成:川瀬敏文 キャラクターデザイン:熊谷哲矢
美術監督:東潤一 色彩設計:北爪英子 撮影監督:近藤慎与
編集:松村正宏 音楽:森英治 音響監督:高橋剛
アニメーション制作:スタジオディーン
出演:関智一 水島大宙 置鮎龍太郎 川島得愛
〇 浅野真澄 ふくまつ進紗 後藤哲夫 デビット・レッジス
〇 儀武ゆう子 蔵合紗恵子 野浜たまこ 多田野曜平
〇 広田みのる 魚建 宮内敦士 伊藤健太郎
〇 中川慶一 深津智義 武藤正史 川野剛念
〇 佐藤献輔 中田隼人 島崎信長 井田国男
〇 岡哲也 廣田誌夢 早坂愛
PR