■ 最新記事
(08/15)
(08/14)
(08/13)
(08/12)
(08/11)
(08/10)
(08/09)
(08/08)
(08/07)
(08/06)
■ カテゴリー
お探し記事は【記事一覧 索引】が便利です。
■2015/09/19 (Sat)
創作小説■
第4章 王の宝
前回を読む
1
オークは南へ南へと馬を走り進めていった。雲は暗く影を落として、晴れ間を見せない。風が不穏な気配をまとっていた。ようやくオークは、古里に辿り着いた。しかしそこにあったのは廃墟だった。家は崩され、畑は荒らされ、炭になった家の残骸が、まだ煙を残していた。
オークは村の中へと入っていった。村人の名を呼ぶが、返ってくる声はない。寂しげな廃墟に、オークの声が孤独に返ってくるばかりだった。
誰もいない。それこそ、村が壊滅した証だった。
やがて雨が降り始めた。オークは馬と共に、屋根の残っている建物の陰に入る。雨は勢いが強く、雷鳴を連れて来た。
風が壁のない建物の中に吹き込んでくる。オークはマントをまとい、雨に濡れる村の風景を眺めていた。そうして、しばし考える。
オーク
「……村は壊滅した。……しかし村人の死体は見当たらない。まだどこかで生き延びている……。だが何処に……」
オークは王子から授かった指輪に目を落とす。
オーク
「王子に奉公して名を上げれば、村の人達が私に気付くかも知れない……」
オークは空を見上げた。灰色に濁った空が、にわかに晴れつつあった。雨も勢いを弱めつつある。
オークは馬に跨がって雨の中に飛び出した。進路を北に向けて馬を走らせた。
次回を読む
目次
PR