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■2015/09/13 (Sun)
創作小説■
第3章 秘密の里
前回を読む
10
森の中を山賊の一団が歩いていた。先頭を、山賊のボスが立っている。隠し砦を破壊された後だというのに、その顔には憂いはまったくなく、獣のような殺気をまとっていた。ボスに付き従って、山賊達が続く。山賊達は戦に備えて、武装していた。森の下草を遠慮なく踏みつぶして、まっすぐに進む。
赤毛のクワン
「お頭! お頭!」
赤毛のクワンが横から飛び出してきた。
山賊のボス
「どうだった」
赤毛のクワン
「へえ。見付かりやした。墓場に間違いなく魔法の杖が隠されていやした」
山賊のボス
「そうか、よくやった。ただちに西へ行け」
赤毛のクワン
「はあ? でもこれから戦いが」
山賊のボス
「だから、だ。俺は死ぬかも知れん。ここの連中全員もだ。それでも避けるわけにはいかん戦いだ。俺達の名誉がかかっているからな。だがお前は生き残らねばならん。お前が知り得た情報は、確実に同胞の許に送り届けなければならん。俺達が長年探し求めていたお宝だからな」
やがて森を抜ける。その向こうに草原が現れた。草原の向こう側には、すでにオーク達率いる村の一団が集まっていた。
山賊のボス
「さあ行け! お前は俺達と同じ運命を歩くな! 使命を果たせ!」
赤毛のクワン
「お頭……」
赤毛のクワンは、ボスに1つ頭を下げると、その場から脱出した。
◇
オークがたちが山賊の一団を迎えた。オークが率いる村の人達と、山賊が向かい合った。オークの傍らに、鎧姿のステラの姿もあった。
オーク
「下がっていてください」
ステラ
「私にも守るべき名誉がある」
オークとステラが進み出た。山賊のボスも進み出る。
山賊ボス
「良い心がけだな。その女を妻として差し出すのなら、見逃してやってもいいぞ」
ステラ
「貴様にくれてやるものなぞない」
山賊ボス
「ならば土地を捨てて出て行くんだな。でなければ村の宝を差し出せ」
オーク
「あなたに差し出すものはありません」
山賊のボス
「だったら奪うまでだ。全部蹴散らしてな」
オーク
「奪うというなら戦います」
山賊のボス
「はっはっはっ! お前ほど気分が合う奴は珍しい! よーし、殺し合うぞ! お前ら!」
山賊のボスが仲間達に向かって唸り声を上げる。山賊達が声を上げて応じた。
山賊のボスが自分の陣営に戻る。オーク達も自分たちの陣営に戻った。
村人
「いったいどうすれば」
村人
「戦うんですか」
オーク
「とにかく全力でぶつかって。数の上ではこちらが勝っています。あなたたちには若さがあります。とにかく戦って、生き延びてください」
村人達
「はい!」
山賊達が威勢良く声を上げた。野太い声が平原一杯に広がる。
オーク達も声を上げた。村人達の若々しい声が山賊達の声を圧倒する。森がざわめき、草原の草が揺れる。
両陣営が突撃を始めた。全力で走り、肉薄する。激しくぶつかり合う。剣と剣がぶつかり合う。血が飛び交い、肉が弾け飛び、死体が折り重なる。若者と蛮族のぶつかり合いは混迷を深めていく。
そんな最中――。
草原の彼方からもう1つの声が木霊した。武装した一群が、戦いに加わった。
オーク
「ステラ……」
ステラ
「近隣の村に、協力を要請した。私にも譲れぬものはある」
思いがけない助けに恵まれ、村の若者達がますます活気づく。山賊達を圧倒し、一気に追い込んでいく。
山賊達は戦力を削がれ、いよいよ散り散りになって森に逃げていく。村人達が追撃する。山賊達の勢力は、まさに風前の灯であった。
草原から強烈な風が過ぎ去ろうとする。戦いは今まさに終わろうとしていた。
山賊のボスが、村の若者達の中にオークの姿を見付けた。オークも山賊のボスの姿に気付く。山賊のボスは狂気の目でじっとオークを睨み付けた。後ろに垂らした獣の髪を逆立てる。オークも山賊のボスに狙いを定めて、向かい合った。
かくて両陣の頭領がぶつかり合う。剣が激しく重なる。唸り声と疾風がぶつかり合った。それは剣士と獣の戦いであった。
剣が火花を散らし、鉄片が弾け飛ぶ。剣の戦いはオークが圧倒した。オークは山賊の剣を押しやり、弾き飛ばし、最後にその首を叩き落とす。
オークは山賊の首を掴み、掲げた。若者達が熱狂の声を上げた。山賊達が驚愕を浮かべる。村人達が勝利を勝ち得た瞬間であった。
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