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■2009/09/03 (Thu)
創作小説■
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判】
1
東京駅で新幹線を降りて、丸の内線に乗り換えた。電車の窓に、馴染みのある風景が見えてきて、私は日常に戻っていくのを感じた。旅もそろそろおしまいだ。
間もなく電車は小石川の駅に到着した。みんなで電車を降りて、駅前の広場に集合する。時刻は4時を少し過ぎた頃。夏の日は長く、まだ昼のような明るさが辺りを包んでいた。
「じゃあ、私は先に帰らせてもらうわ。家に帰って気分を変えたいから」
最初にカエレが手を振って、私たちから離れた。
《俺も帰るぜ 実家に連絡して迎えよこした》
芽留からのメールだ。
メールを見ていると、私たちの前に、黒塗りのメルセデス・ベンツがやってきて停まった。芽留は私たちにさっと手を振ると、ベンツの後部座席へ入っていった。
私はぽかんと芽留に手を振って返していた。芽留の実家も、意外とお金持ちかもしれない。
「マリアも帰る。仲間たち、待ってるから」
マリアの声に、いつもの元気はなかった。旅行疲れなのか、少しふらふらしている。一人で大丈夫だろうか、と思ったら迎えがあったようだ。マリアの行く先に、浅黒い肌の人が待っていた。浅黒い肌の人は、マリアと手を繋いで、親子のように対話しながら去っていった。
「では、私もそろそろこれで失礼したいと思います。一応、各家庭に連絡が届いているはずですが、みなさんも早く親元に戻ってください」
糸色先生が穏やかな声で、私たちに帰るように促した。
「奈美ちゃん、どうする?」
可符香が私を振り返った。
私は、どうしよう、と考えていた。体力もあったし、まだ旅を終らせたくない、というのが本音だった。でも、どうするべきなのか、すぐに言葉にまとまらなかった。
「私は先生を送ってから帰るわ。先生一人だと、なんだか心配だもの。」
「いえ、先生は平気ですから」
千里が糸色先生の左掌を握った。糸色先生が拒絶しているが、千里が聞くはずがない。
「私、先生とずっと一緒だから」
すると糸色先生の右腕に、まといがすがりついた。
千里とまといが、先生を挟んで睨みあった。二人の顔に、強烈な対抗心が浮かび上がっていた。
「私も方向一緒だから、途中までみんなと行くわ」
あびるが普段のクールさに戻って意見を伝えた。
「うふふ。じゃあ、私も一緒しちゃおうかな」
藤吉がニヤニヤした笑顔を浮かべ始めた。
「なに一人で笑っているのよ、気持ち悪い。」
千里が藤吉を振り返った。
「いや、なんかそーいうシチュエーションで一本描けるかなって。……冗談だから」
周りの全員がシラッとした目を向けるのに、藤吉は慌ててごまかした。でも、藤吉はそういうのを描くだろうなと私は思った。私の中の藤吉さんは、すでに“まんがメガネ”として定着していた。
「じゃあ、私も一緒に行っちゃおうかな」
私はちょっと手を上げてみんなの意見に乗っかった。もともと糸色先生の家に押しかけるつもりだったんだし、都合が良かった。
「じゃあ、みんな一緒だね。みんなで先生の家に押しかけちゃいましょう!」
可符香が号令のようにみんなに声をかけた。私たちは調子よく「オー!」と声を合わせた。
次回 P044 第5章 ドラコニアの屋敷2 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
P043 第5章 ドラコニアの屋敷
1
東京駅で新幹線を降りて、丸の内線に乗り換えた。電車の窓に、馴染みのある風景が見えてきて、私は日常に戻っていくのを感じた。旅もそろそろおしまいだ。
間もなく電車は小石川の駅に到着した。みんなで電車を降りて、駅前の広場に集合する。時刻は4時を少し過ぎた頃。夏の日は長く、まだ昼のような明るさが辺りを包んでいた。
「じゃあ、私は先に帰らせてもらうわ。家に帰って気分を変えたいから」
最初にカエレが手を振って、私たちから離れた。
《俺も帰るぜ 実家に連絡して迎えよこした》
芽留からのメールだ。
メールを見ていると、私たちの前に、黒塗りのメルセデス・ベンツがやってきて停まった。芽留は私たちにさっと手を振ると、ベンツの後部座席へ入っていった。
私はぽかんと芽留に手を振って返していた。芽留の実家も、意外とお金持ちかもしれない。
「マリアも帰る。仲間たち、待ってるから」
マリアの声に、いつもの元気はなかった。旅行疲れなのか、少しふらふらしている。一人で大丈夫だろうか、と思ったら迎えがあったようだ。マリアの行く先に、浅黒い肌の人が待っていた。浅黒い肌の人は、マリアと手を繋いで、親子のように対話しながら去っていった。
「では、私もそろそろこれで失礼したいと思います。一応、各家庭に連絡が届いているはずですが、みなさんも早く親元に戻ってください」
糸色先生が穏やかな声で、私たちに帰るように促した。
「奈美ちゃん、どうする?」
可符香が私を振り返った。
私は、どうしよう、と考えていた。体力もあったし、まだ旅を終らせたくない、というのが本音だった。でも、どうするべきなのか、すぐに言葉にまとまらなかった。
「私は先生を送ってから帰るわ。先生一人だと、なんだか心配だもの。」
「いえ、先生は平気ですから」
千里が糸色先生の左掌を握った。糸色先生が拒絶しているが、千里が聞くはずがない。
「私、先生とずっと一緒だから」
すると糸色先生の右腕に、まといがすがりついた。
千里とまといが、先生を挟んで睨みあった。二人の顔に、強烈な対抗心が浮かび上がっていた。
「私も方向一緒だから、途中までみんなと行くわ」
あびるが普段のクールさに戻って意見を伝えた。
「うふふ。じゃあ、私も一緒しちゃおうかな」
藤吉がニヤニヤした笑顔を浮かべ始めた。
「なに一人で笑っているのよ、気持ち悪い。」
千里が藤吉を振り返った。
「いや、なんかそーいうシチュエーションで一本描けるかなって。……冗談だから」
周りの全員がシラッとした目を向けるのに、藤吉は慌ててごまかした。でも、藤吉はそういうのを描くだろうなと私は思った。私の中の藤吉さんは、すでに“まんがメガネ”として定着していた。
「じゃあ、私も一緒に行っちゃおうかな」
私はちょっと手を上げてみんなの意見に乗っかった。もともと糸色先生の家に押しかけるつもりだったんだし、都合が良かった。
「じゃあ、みんな一緒だね。みんなで先生の家に押しかけちゃいましょう!」
可符香が号令のようにみんなに声をかけた。私たちは調子よく「オー!」と声を合わせた。
次回 P044 第5章 ドラコニアの屋敷2 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
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