■ 最新記事
(08/15)
(08/14)
(08/13)
(08/12)
(08/11)
(08/10)
(08/09)
(08/08)
(08/07)
(08/06)
■ カテゴリー
お探し記事は【記事一覧 索引】が便利です。
■2009/08/31 (Mon)
創作小説■
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判】
16
昼近くになって、みんなようやく目を覚ました。その頃になると、使用人たちは戻ってきていて、屋敷の中は元の賑やかさを取り戻していた。
私たちは女中に案内されて、まずお風呂に入った。お風呂はやはりというか、私たち全員が同時に浸かれるくらい広かった。窓が大きくて、露天風呂のように庭園の風景が望めた。お風呂は二階に設置されていたので、私たちは誰かから覗かれる心配もなく、ゆったりと二日分の泥と汗を落とし、疲労を癒した。
お風呂を上がると、やってきたときに着ていた服が準備されていた。念入りにクリーニングされていて、買ったばかりの服を着るような爽やかさだった。ちなみに、まといだけはあのチャラチャラした服ではなく、袴姿だった。
次に客間に戻ると、食事の用意が整っていた。私たちはそれぞれの場所に座って、豪華で栄養豊富そうな懐石料理を頂いた。
「それで、見合いの儀ってどうなったの?」
可符香は茶碗を手にしながら、誰となく訊ねた。
「あんなの無効よ。同性同士でも人間以外でも成立しちゃうなんて、ただの嫌がらせじゃない。」
千里が怒りを込めて答えを返した。
「本当、馬鹿馬鹿しい。時間を無駄にしたわ」
カエレが漬物を茶碗に載せながら、ぶつぶつと不満を訴えた。正座が苦手らしいカエレは、姿勢を崩して胡坐をかいている。カエレは糸色先生が好きらしい、という私の情報は間違っていたのだろうか。
「そう? 私は結構充実してたけどな。ここ、珍しい尻尾がたくさんいたから」
あびるだけ機嫌良さそうに声を弾ませていた。
「あなた、見合いの儀に参加してなかったじゃない。」
千里がきっとあびるに目を向けた。あびるは微笑で千里の目線を受け流した。
《ここ田舎杉だ 携帯で12時間2ちゃんやってたぜ 廃人になる前に帰ろうぜ》
みんなの携帯が同時に鳴った。芽留からのメールだった。食事中にメール打つのはよくないよ。
「で、“見合い”ってなんだったんだ?」
マリアが無邪気な声でみんなを見回した。マリアは箸をナイフかフォークのように掴み、頬に米粒をつけていた。
私はどんよりと視線を落とした。みんなも暗い顔をしてため息をついていた。やっぱりマリアは“見合いの儀”を理解していなかった。
「勝負はこれからよ」
「当り前よ。負けたと思ってないから。」
まといが千里を挑発するように睨んだ。千里もまといを睨んで返した。
この二人は、仲が悪くなったままだった。だったら、隣同士に座らなきゃいいのに。
私は、呆れるような気持ちで千里とまといに目を向けた。マリアの言うとおり、見合いの儀ってなんだったのだろう、とこの数日間を思い返した。ただの夏休みの一幕。楽しいイベントの一つ。そんなふうに捉えればいいのだろうか。
次回 P041 第4章 見合う前に跳べ17 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
P040 第4章 見合う前に跳べ
16
昼近くになって、みんなようやく目を覚ました。その頃になると、使用人たちは戻ってきていて、屋敷の中は元の賑やかさを取り戻していた。
私たちは女中に案内されて、まずお風呂に入った。お風呂はやはりというか、私たち全員が同時に浸かれるくらい広かった。窓が大きくて、露天風呂のように庭園の風景が望めた。お風呂は二階に設置されていたので、私たちは誰かから覗かれる心配もなく、ゆったりと二日分の泥と汗を落とし、疲労を癒した。
お風呂を上がると、やってきたときに着ていた服が準備されていた。念入りにクリーニングされていて、買ったばかりの服を着るような爽やかさだった。ちなみに、まといだけはあのチャラチャラした服ではなく、袴姿だった。
次に客間に戻ると、食事の用意が整っていた。私たちはそれぞれの場所に座って、豪華で栄養豊富そうな懐石料理を頂いた。
「それで、見合いの儀ってどうなったの?」
可符香は茶碗を手にしながら、誰となく訊ねた。
「あんなの無効よ。同性同士でも人間以外でも成立しちゃうなんて、ただの嫌がらせじゃない。」
千里が怒りを込めて答えを返した。
「本当、馬鹿馬鹿しい。時間を無駄にしたわ」
カエレが漬物を茶碗に載せながら、ぶつぶつと不満を訴えた。正座が苦手らしいカエレは、姿勢を崩して胡坐をかいている。カエレは糸色先生が好きらしい、という私の情報は間違っていたのだろうか。
「そう? 私は結構充実してたけどな。ここ、珍しい尻尾がたくさんいたから」
あびるだけ機嫌良さそうに声を弾ませていた。
「あなた、見合いの儀に参加してなかったじゃない。」
千里がきっとあびるに目を向けた。あびるは微笑で千里の目線を受け流した。
《ここ田舎杉だ 携帯で12時間2ちゃんやってたぜ 廃人になる前に帰ろうぜ》
みんなの携帯が同時に鳴った。芽留からのメールだった。食事中にメール打つのはよくないよ。
「で、“見合い”ってなんだったんだ?」
マリアが無邪気な声でみんなを見回した。マリアは箸をナイフかフォークのように掴み、頬に米粒をつけていた。
私はどんよりと視線を落とした。みんなも暗い顔をしてため息をついていた。やっぱりマリアは“見合いの儀”を理解していなかった。
「勝負はこれからよ」
「当り前よ。負けたと思ってないから。」
まといが千里を挑発するように睨んだ。千里もまといを睨んで返した。
この二人は、仲が悪くなったままだった。だったら、隣同士に座らなきゃいいのに。
私は、呆れるような気持ちで千里とまといに目を向けた。マリアの言うとおり、見合いの儀ってなんだったのだろう、とこの数日間を思い返した。ただの夏休みの一幕。楽しいイベントの一つ。そんなふうに捉えればいいのだろうか。
次回 P041 第4章 見合う前に跳べ17 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
PR