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■2009/08/30 (Sun)
創作小説■
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判】
15
〇〇……チジ
目を覚ますと、お花畑の中だった。
じゃなかった。私はふらふらする頭を起こして、目をこすった。私がいたのは客間だった。私の周囲で、可符香や千里やまといといったみんなが、布団も敷かず枕も置かずに眠っていた。
畳の上に、振袖の鮮やかな色彩が広がっていた。みんな思い思いの格好で、思い思いに手や足を伸ばして畳の上に転がっていた。艶やかな振袖の色彩が重なり合い、すらりと伸びた手と足がつる草のように絡み合い、それがお花畑のように見えたのだ。
〇〇〇〇〇〇〇……チジ
それにしても、みんな大胆な寝姿だった。胸元や太ももをはだけさせて、思い切り体を広げたり、側にいる女の子に絡みついたりしている。
改めて見るとエッチな光景だった。振袖の色彩が重なりあう様は美しいけど、際どく裾をはだけさせている姿は、同性でも胸をどきどきとさせるものがあった。
見ちゃいけない、と思いつつも、私は貪欲に、大胆に解放された胸元や、白く伸びた太ももが繋がる腰を充分に堪能した。
ふと冷たい空気が流れ込んでくるような気がした。振り向くと、庭と繋がる障子のひとつが開けたままになっていた。淡く色彩を抑えた空間に、そこだけくっきりとした光が輝く気がした。
私は立ち上がると、慎重にみんなを踏みつけないようにしながら、障子のそばへ向かった。
障子から外を覗くと、鮮やかに色づく緑が目についた。どうやら夜のうちに雨が降ったらしく、空気は冷たく張り詰めて、柔らかく包み込むような霧が漂っていた。
私は板間に出て、思い切り体をそらして深呼吸した。冷たく新鮮な空気が体一杯に満たされるのを感じた。
さらに私は、庭に出たいと思った。熱を持っている体を、外の空気で冷まそうとした。
そう思って靴脱ぎ石に目を向けるけど、草履はどれも汚れて、泥を被っていた。みんなこれであちこち歩いたし、雨が降ったせいもあるだろう。
綺麗な草履はないかと思ったけど、諦めた。えいや、と裸足のまま、庭の土の上に飛び出した。裸足に冷たく突き刺す感触があった。ちくちくして痛かったけど、ぼんやり寝ぼけた体にはちょうどいい刺激だった。
私はのんびり足を進めて、竹林の中へ入っていった。竹林に囲まれた細道は、全体が淡く霧が包んでいる。白く溶け込みかけた空間に、竹の緑が鮮やかに浮き上がっていた。敷石が濡れてひんやりと冷たく、踏んだ感触が心地よかった。
私は竹の香りに心地いいものを感じながら、ゆっくり風景を見ながら歩いた。なんとなく周囲の自然と一体になるような気持ちだった。
いきなり何かがぶつかってきた。私は自分を支えられず、尻を突いた。あまりにも唐突で、目の前をクラクラさせながら、ぶつかってきた誰かを探った。臼井だった。
「もう、何すんのよ!」
私は怒りに嫌悪をこめて、遠慮なく怒鳴りつけた。
臼井も尻を突いていた。私に怒鳴られて、臼井が顔を上げる。その顔が衝撃に張り付いていた。……ように見えた。
臼井は謝りもせずに跳ね起きると、そのまま逃げるように屋敷のほうへ走っていった。
「なんなのよ、あいつ。ああ、もうやだ。気持ち悪い」
私は全身に嫌悪を感じて、臼井が触れたと思う場所をぱっぱっと払った。立ち上がって尻についた泥を払った後も、私は念入りに着物についた臭いを手で振り払おうとした。
気分を改めるつもりで、私は細道のその先へ進んだ。間もなく竹林を抜けて、広大な庭園が現れた。どこまでも広がる空間に、淡い霧が塊となって漂っていた。森林の緑が、爽やかな色を浮かべている。風の感触はもっと自由で、軽やかに思えた。
そんな風景を前にして、さっきの嫌な気持ちも吹き飛ぶような心地になった。私は手をぶらぶらさせながら、庭園の中を進んだ。
足元に、短く刈り込まれた草が茂っていた。草には朝露の滴がきらきらと輝いていた。足が濡れて裾まで露を吸い込んだけど、それも心地よく思えた。
しかし、足の裏に異質な何かが触れた。ひどくぬめっていて、不快な感じだった。私はなんだろう、と足を上げた。足の裏が、黒く糸を引くもので汚れていた。泥だった。よく見ると、足元に茂る草の中に、黒く沈んだ色が混じっていた。
P040 次回 第4章 見合う前に跳べ16 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
P039 第4章 見合う前に跳べ
15
〇〇……チジ
目を覚ますと、お花畑の中だった。
じゃなかった。私はふらふらする頭を起こして、目をこすった。私がいたのは客間だった。私の周囲で、可符香や千里やまといといったみんなが、布団も敷かず枕も置かずに眠っていた。
畳の上に、振袖の鮮やかな色彩が広がっていた。みんな思い思いの格好で、思い思いに手や足を伸ばして畳の上に転がっていた。艶やかな振袖の色彩が重なり合い、すらりと伸びた手と足がつる草のように絡み合い、それがお花畑のように見えたのだ。
〇〇〇〇〇〇〇……チジ
それにしても、みんな大胆な寝姿だった。胸元や太ももをはだけさせて、思い切り体を広げたり、側にいる女の子に絡みついたりしている。
改めて見るとエッチな光景だった。振袖の色彩が重なりあう様は美しいけど、際どく裾をはだけさせている姿は、同性でも胸をどきどきとさせるものがあった。
見ちゃいけない、と思いつつも、私は貪欲に、大胆に解放された胸元や、白く伸びた太ももが繋がる腰を充分に堪能した。
ふと冷たい空気が流れ込んでくるような気がした。振り向くと、庭と繋がる障子のひとつが開けたままになっていた。淡く色彩を抑えた空間に、そこだけくっきりとした光が輝く気がした。
私は立ち上がると、慎重にみんなを踏みつけないようにしながら、障子のそばへ向かった。
障子から外を覗くと、鮮やかに色づく緑が目についた。どうやら夜のうちに雨が降ったらしく、空気は冷たく張り詰めて、柔らかく包み込むような霧が漂っていた。
私は板間に出て、思い切り体をそらして深呼吸した。冷たく新鮮な空気が体一杯に満たされるのを感じた。
さらに私は、庭に出たいと思った。熱を持っている体を、外の空気で冷まそうとした。
そう思って靴脱ぎ石に目を向けるけど、草履はどれも汚れて、泥を被っていた。みんなこれであちこち歩いたし、雨が降ったせいもあるだろう。
綺麗な草履はないかと思ったけど、諦めた。えいや、と裸足のまま、庭の土の上に飛び出した。裸足に冷たく突き刺す感触があった。ちくちくして痛かったけど、ぼんやり寝ぼけた体にはちょうどいい刺激だった。
私はのんびり足を進めて、竹林の中へ入っていった。竹林に囲まれた細道は、全体が淡く霧が包んでいる。白く溶け込みかけた空間に、竹の緑が鮮やかに浮き上がっていた。敷石が濡れてひんやりと冷たく、踏んだ感触が心地よかった。
私は竹の香りに心地いいものを感じながら、ゆっくり風景を見ながら歩いた。なんとなく周囲の自然と一体になるような気持ちだった。
いきなり何かがぶつかってきた。私は自分を支えられず、尻を突いた。あまりにも唐突で、目の前をクラクラさせながら、ぶつかってきた誰かを探った。臼井だった。
「もう、何すんのよ!」
私は怒りに嫌悪をこめて、遠慮なく怒鳴りつけた。
臼井も尻を突いていた。私に怒鳴られて、臼井が顔を上げる。その顔が衝撃に張り付いていた。……ように見えた。
臼井は謝りもせずに跳ね起きると、そのまま逃げるように屋敷のほうへ走っていった。
「なんなのよ、あいつ。ああ、もうやだ。気持ち悪い」
私は全身に嫌悪を感じて、臼井が触れたと思う場所をぱっぱっと払った。立ち上がって尻についた泥を払った後も、私は念入りに着物についた臭いを手で振り払おうとした。
気分を改めるつもりで、私は細道のその先へ進んだ。間もなく竹林を抜けて、広大な庭園が現れた。どこまでも広がる空間に、淡い霧が塊となって漂っていた。森林の緑が、爽やかな色を浮かべている。風の感触はもっと自由で、軽やかに思えた。
そんな風景を前にして、さっきの嫌な気持ちも吹き飛ぶような心地になった。私は手をぶらぶらさせながら、庭園の中を進んだ。
足元に、短く刈り込まれた草が茂っていた。草には朝露の滴がきらきらと輝いていた。足が濡れて裾まで露を吸い込んだけど、それも心地よく思えた。
しかし、足の裏に異質な何かが触れた。ひどくぬめっていて、不快な感じだった。私はなんだろう、と足を上げた。足の裏が、黒く糸を引くもので汚れていた。泥だった。よく見ると、足元に茂る草の中に、黒く沈んだ色が混じっていた。
P040 次回 第4章 見合う前に跳べ16 を読む
小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次
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