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■2016/02/17 (Wed)
創作小説■
第9章 暗転
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11
間もなく夜の時間が訪れようとしている。西の空に淡いオレンジを残していた。夜空には星が小さく浮かんでいる。オーク達はソフィーやアレスを含む8人の小隊を結成して、馬に乗った。ゼインとルテニーが見送りにやってくる。
オーク
「では行ってきます。しばしの留守の間、砦を委ねます」
ルテニー
「ああ。俺の忠告忘れるなよ」
オーク
「ええ。そちらも。嫌な予感がします」
ルテニー
「余計なこと言うな。行け!」
ルテニーはオークが乗る馬の尻を蹴った。オークの馬が勝手に走り始める。それを合図に、オーク達の一団が駆け出した。
出発すると、ソフィーが杖の先に光を宿した。ささやかながらに辺りを照らす。その明かりを頼りに、馬を駈足くらいの速度で進ませた。
日が沈むと辺りは急速に暗くなる。夜の冷たさが、足下から広がっていくように感じられた。
復旧の進んだ道路が途切れて、荒れた道が現れた。管理されていないでこぼこの道に、草が深く生い茂っている。崩れかけた建物が、夜の闇にシルエットになって浮かび上がる。蔦や茨を絡めた木々が無秩序に生えていた。人の手を離れた陰気さが、風景全体に漂い始める。
オーク達一行は馬を下りて、側の木の枝に括り付けた。それからは周囲に警戒を払いながら、高い草むらに混じるように静かに進んだ。ソフィーが先頭に立ち、時々立ち止まっては杖の先を緩く振る。バゲインの気配を探っている様子だった。
オーク
「伏せて!」
オークは短く警告する。
兵士達が草むらに身を潜める。
行く手の闇に、霧が漂っていた。暗闇が白く霞んでいる。その只中を、何者か草むらを分けながら歩いている。人間のような姿をしていたが、昆虫のような鎧に全身が包まれていた。首がなく、肩の上に大きな頭を載せているようだった。それが3体ほど、草むらの中を歩いていた。
ソフィーが杖の明かりを消す。
ソフィー
「魔法のミストです。あの向こうに強い力を感じます」
ソフィーは草むらに潜みながら、霧の向こうを示した。
オーク
「行きましょう。アレス」
アレス
「任せろ」
オークとアレスは、兵士を引き連れて左右に分かれた。
鎧の怪物は、オーク達に気付かず、草むらの中を歩いている。ソフィーは行く末を見守った。
オークが草むらから飛び出した。同じタイミングでアレスも飛び出す。オークの剣は、迷いなく鎧の怪物を捉えた。鎧の怪物は、人ならざる奇怪な声を上げて倒れた。鎧の中は虚ろだったらしく、バラバラになって崩れる。アレスも標的を仕留めていた。
残りはもう1体。オークとアレスが接近する。鎧の怪物が剣を抜いた。オークとアレスが同時に攻撃する。鎧の怪物が最初の一撃を受け止めた。オークとアレスは素早く剣を繰り出す。鎧の怪物を切り裂き、ついにその頭が吹っ飛んだ。
戦闘の緊張が去り、ソフィーはふぅと息を吐いて草むらから頭を出す。
オーク
「ソフィー!」
オークが警告する。
ソフィーは振り向きざまに杖を突きだした。杖の先が白く光る。背後に鎧の怪物がいた。鎧の怪物は突然の光にのけぞる。ソフィーは杖で怪物を殴った。怯んだそこに、炎の塊をぶつける。鎧の怪物が倒れた。側にいた兵士が、剣でとどめを刺した。
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