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■2015/12/20 (Sun)
創作小説■
第7章 王国炎上
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9
セシルたちの軍は城壁を背に防衛戦を敷いて、弓兵で牽制しつつ、ガラティア、ブリタニア両騎士団が列を作って一点集中攻撃を加えた。そこに突破口を作り、歩兵がしらみ潰しにネフィリムを駆逐する作戦だ。ところが、この作戦は失敗だった。敵の軍勢は想像以上に厚く、勢いの強い攻撃に突撃の力が削がれ、ついにはその中腹で、騎士団は完全に勢いを失ってしまった。
ネフィリムたちが騎士達の上に次々と被さってくる。瞬く間に黒だかりの山に飲み込まれてしまった。騎士達の後方に続いていた歩兵も勢いが続かず、押し返される結果となった。敵に取り囲まれた騎士達を取り返すことはできず、次なる突撃で取り返せたのは、彼らの亡骸だけであった。
問題なのは、敵の異様なまでの数と、兵士の疲労であった。それゆえに勢いが続かず、五分五分どころか、じりじりと後退しはじめていた。
地平の果てまで続くネフィリムの軍団は、歩兵の集団を完全に取り囲んで、セシル達のいる本陣へと横殴りに攻撃を加えた。
セシルの対応は迅速であった。セシル達はただちに本部を捨てて全員を馬に乗せると、東から向かってくるネフィリムに正面から突撃を加えた。ネフィリムの軍勢の先端を切り崩すと、素早く方向転換して西側から回り込もうとする一団に攻撃を加えた。
しかしそれですら充分な攻撃とは言えず、ともかく数という面では圧倒的なネフィリムを足止めするには至らなかった。
ネフィリムは絶えず押し寄せてくる。セシルの軍勢は取り囲まれてしまった。平原は完全にネフィリムに埋め尽くされて、人間とネフィリムがまだらに混じり合う乱戦の様相を呈した。
時間は刻々と過ぎていく。太陽は一度も光を見せずに、西の空に没しようとしていた。
ネフィリムの勢力も数もとどまることなく続き、短期決戦の作戦は完全に崩壊していた。戦いは終わりが見えず、誰の目にも明らかな劣勢だった。
夜を手前にして、雨が止んだ。それまで雲に隠れていた太陽が、ほんの一瞬姿を見せた。しかし風景をこれでもかというくらい不吉な赤に染めた。そんな最中、人々はあの咆吼を聞いた。地獄の底から使者が放たれた事態を示す、この世で最も不気味で禍々しい唸りだった。
地平線の向こうに現れたのは、悪魔が率いるネフィリムの第3陣の軍団だった。その数は例によって多かった。中心を歩くのは巨大な身体を持った悪魔だった。悪魔は暮れかけた太陽の光に、その巨体を真っ黒な影に変えていた。
それは、まさしく人々の希望が奈落の底に叩き落とされる瞬間だった。
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