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■2009/08/20 (Thu)
映画:日本映画■
舞台は、島根県の、全校生徒6人の小さな学校だ。
そのうち中学生はたったの3人。右田そよは、一人きりの中学3年生だった。
その夏、東京から、男の子が転校してきた。
大沢広海。右田そよと同じ、中学3年生だ。
右田そよは、初めて接する同世代の男の子に戸惑い、やがて恋心に目覚める。
物語は、夏の場面から始まる。
カット全体に、青々とした色彩が広がり、建物も人間も、自然の風景に抱かれている。
風景は美しく、時間の流れはゆるやかで、人々の生活は穏やかに静止しているようだ。
桃源郷世界のように描かれた田舎。だが、実際の田舎は、映画で描かれるような楽園ではない。あくまでも映画の中の虚構、バーチャル的なものと受け止めたほうがいい。本当に田舎で過ごした人間から見るとあまりにもファンタジックだ。実際的な風景ではなく、都会人が抱きがちな幻想や理想を描いた作品であると受け取るべきだろう。
海への道を歩く子供たちが、自然の風の音に耳を澄ませる。
セミやふくろうの鳴き声に混じって、ごうごうと風の音が鳴る。
おおらかな風景と、風の音に包まれ、次第に物語の風景に抱かれるような、そんな錯覚を覚える。
都市に暮らす人にとって『天然コケッコー』の映像体験は、バーチャルな感覚をもたらしただろう。
主演の夏帆は、今時の少女としては素晴らしく清楚な印象がある。桃源郷世界の中心に立つ女神にふさわしい美しさだ。
そんな終わりも始まりもないと思える時間の流れは、どこかで変化を迎える。
右田そよの、恋の予感だ。
主演を演じた夏帆は、演技力というより、もっと自然な感性で右田そよという人格を体現した。
この年齢でしか持てない瑞々しさが、フィルム一杯にあふれていた。
修学旅行で東京に行く場面。田舎の穏やかさとわかりやすい対比を描いている。田舎者が都会に行くと、実際に映画で描かれているようなカルチャーギャップを体験する。
右田そよは、間もなく中学校を卒業して去っていく。
それは、ただ学校を去っていくというのではなく、子供時代との別離だ。
子供時代の奔放さを捨てて、もう一段階の成長。
恋の始まりは、恋愛の予兆ではない。
少女の成長を促し、性的な意識を覚醒させる、一つの段階でしかない。
少年の役割は、少女の成長を促し、異界へ誘うための使者だ。
青春の物語はいつか終る。もっとも、青春の輝きは、その当人で自覚できない。青春という情緒を表現し、留めておけるのはフィルムの中だけだ。
いつか、右田そよが学校に戻ってくる日が来るかもしれない。
でもそのときは、あの時と、きっと目線の高さが違っているはずだ。
だからといって、完全な大人になるわけではない。
ほんのちょっと、一歩だけ成長する物語だ。
映画記事一覧
作品データ
監督:山下敦弘 原作:くらもちふさこ
音楽:レイ・ハラカミ 脚本:渡辺あや
出演:夏帆 岡田将生 夏川結衣 佐藤浩市
柳英里沙 藤村聖子 森下翔梧 本間るい
そのうち中学生はたったの3人。右田そよは、一人きりの中学3年生だった。
その夏、東京から、男の子が転校してきた。
大沢広海。右田そよと同じ、中学3年生だ。
右田そよは、初めて接する同世代の男の子に戸惑い、やがて恋心に目覚める。
物語は、夏の場面から始まる。
カット全体に、青々とした色彩が広がり、建物も人間も、自然の風景に抱かれている。
風景は美しく、時間の流れはゆるやかで、人々の生活は穏やかに静止しているようだ。
桃源郷世界のように描かれた田舎。だが、実際の田舎は、映画で描かれるような楽園ではない。あくまでも映画の中の虚構、バーチャル的なものと受け止めたほうがいい。本当に田舎で過ごした人間から見るとあまりにもファンタジックだ。実際的な風景ではなく、都会人が抱きがちな幻想や理想を描いた作品であると受け取るべきだろう。
海への道を歩く子供たちが、自然の風の音に耳を澄ませる。
セミやふくろうの鳴き声に混じって、ごうごうと風の音が鳴る。
おおらかな風景と、風の音に包まれ、次第に物語の風景に抱かれるような、そんな錯覚を覚える。
都市に暮らす人にとって『天然コケッコー』の映像体験は、バーチャルな感覚をもたらしただろう。
主演の夏帆は、今時の少女としては素晴らしく清楚な印象がある。桃源郷世界の中心に立つ女神にふさわしい美しさだ。
そんな終わりも始まりもないと思える時間の流れは、どこかで変化を迎える。
右田そよの、恋の予感だ。
主演を演じた夏帆は、演技力というより、もっと自然な感性で右田そよという人格を体現した。
この年齢でしか持てない瑞々しさが、フィルム一杯にあふれていた。
修学旅行で東京に行く場面。田舎の穏やかさとわかりやすい対比を描いている。田舎者が都会に行くと、実際に映画で描かれているようなカルチャーギャップを体験する。
右田そよは、間もなく中学校を卒業して去っていく。
それは、ただ学校を去っていくというのではなく、子供時代との別離だ。
子供時代の奔放さを捨てて、もう一段階の成長。
恋の始まりは、恋愛の予兆ではない。
少女の成長を促し、性的な意識を覚醒させる、一つの段階でしかない。
少年の役割は、少女の成長を促し、異界へ誘うための使者だ。
青春の物語はいつか終る。もっとも、青春の輝きは、その当人で自覚できない。青春という情緒を表現し、留めておけるのはフィルムの中だけだ。
いつか、右田そよが学校に戻ってくる日が来るかもしれない。
でもそのときは、あの時と、きっと目線の高さが違っているはずだ。
だからといって、完全な大人になるわけではない。
ほんのちょっと、一歩だけ成長する物語だ。
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作品データ
監督:山下敦弘 原作:くらもちふさこ
音楽:レイ・ハラカミ 脚本:渡辺あや
出演:夏帆 岡田将生 夏川結衣 佐藤浩市
柳英里沙 藤村聖子 森下翔梧 本間るい
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