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■2009/08/20 (Thu)
映画:外国映画■
ジェシー・ジェームズには、いくつもの伝説があった。
16歳で、南北戦争に参加し、殺人と強盗の方法を学んだ。
除隊後、その経験を生かし、数々の強盗に17件の殺人を犯した。
そして、世界で最初の銀行強盗を成功させた男だった。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』は日本公開時、テーマの重さからか、作品の静けさからか、ブラッド・ピット主演にも関わらずほとんど注目されなかった。だが、見るべき一作である。
誰もがジェシーを注目していた。
ジェシーは生きている間から、人々のヒーローだった。
毎日のように新聞はジェシーの悪事を書き、そのいくつかは物語にもなった。
そんなジェシーに憧れる若者がいた。
ボブ・フォードもその一人だった。
ボブは、ジェシーに憧れるあまり、彼の一団に加わり、列車強盗を働く。
物語はボブの視点で描かれていく。ボブはジェシーへの憧れを語り、自分自身を認めて欲しいと願っていた。「周囲の人間が本当の自分がわかってくれない」これがボブの潜在的な葛藤だった。
ボブは、自分には才能があると信じていた。
もっと注目されるべきだ。もっと称賛されるべきだ、と思っていた。
しかし、現実のボブは、誰も注目しない。いつも、からかわれてばかり。
イメージの中の自分と、現実の自分。そのギャップが受け入れられない。
若い時には、誰もが陥る葛藤を、ボブは強く抱いていた。
印象的な画面や、象徴的な台詞の多い作品だ。美しい画面に見蕩れてもいいが、その背景にある作家の意味を読み取りたい作品だ。
そんなボブに対し、ジェシーは英雄だった。
誰もがジェシーを知りたいと思っていたし、ジェシーの周囲には人が集った。
ボブにとってジェシーは、憧れの存在である以上に、理想の自分だった。
ジェシーはボブの内面を冷徹に審査して、こう問いかける。
「俺みたいになりたいのか。俺になりたいのか」
ボブにとって、ジェシーは絶対的な存在“神”であった。だが、ジェシーは「いつかボブが裏切る」と予告する。ボブは自分を受け入れて欲しいと願っていたが、ボブ自身は、ジェシーを受け入れていない。
現実は違った。
ジェシーは物語で描かれるような英雄ではなかった。
疑り深く、凶暴で、容赦のない男だった。
ジェシーは、誰も信頼していなかった。誰もが、自分を殺そうとしていると思っていた。一方で、殺してくれる誰かを待っていた。
間もなくジェシーは、ボブを恐れるようになる。
いつしかボブは、ジェシーを殺す計画を立てるようになっていた。
次第にジェシーが冷徹な男であると判明する。通俗的な愛や情など通じない男。自分への裏切りがあると察すると、容赦なく暴き出し、顔色一つ殺す。ボブはジェシーへの尊敬と恐れの間で葛藤していく。
ボブは激しく葛藤していた。
ジェシーを愛しているのか、恐れているのか。
……彼に愛されたいたのか。
偉大なジェシーにとって、ボブは矮小な人間でしかない。ボブは神の座を願ったが、与えられたのは孤独だった。映画の後半、孤独を象徴するカットが多くなる。印象的な後味を残す映画だ。
ボブは、孤独だった。愛されたかったし、信頼されたかった。
ジェシーは、何人殺そうとも、英雄だった。誰からも愛されていた。
ボブは、ジェシー自身になりたかった。
しかし、望みは裏切りで返される。
注目されるようになると、人は悲しい目で地平を眺め、死を望むようになる。
いつか誰かが殺しに来る。
そんな日を恐れながら、望みをもって待ち続けるのだ。
映画記事一覧
作品データ
監督 アンドリュー・ドミニク 原作 ロン・ハンセン
音楽 ニック・ケイヴ ウォーレン・エリス
出演 ブラッド・ピット ケイシー・アフレック
サム・シェパード メアリー=ルイーズ・パーカー
ジェレミー・レナー ポール・シュナイダー
16歳で、南北戦争に参加し、殺人と強盗の方法を学んだ。
除隊後、その経験を生かし、数々の強盗に17件の殺人を犯した。
そして、世界で最初の銀行強盗を成功させた男だった。
『ジェシー・ジェームズの暗殺』は日本公開時、テーマの重さからか、作品の静けさからか、ブラッド・ピット主演にも関わらずほとんど注目されなかった。だが、見るべき一作である。
誰もがジェシーを注目していた。
ジェシーは生きている間から、人々のヒーローだった。
毎日のように新聞はジェシーの悪事を書き、そのいくつかは物語にもなった。
そんなジェシーに憧れる若者がいた。
ボブ・フォードもその一人だった。
ボブは、ジェシーに憧れるあまり、彼の一団に加わり、列車強盗を働く。
物語はボブの視点で描かれていく。ボブはジェシーへの憧れを語り、自分自身を認めて欲しいと願っていた。「周囲の人間が本当の自分がわかってくれない」これがボブの潜在的な葛藤だった。
ボブは、自分には才能があると信じていた。
もっと注目されるべきだ。もっと称賛されるべきだ、と思っていた。
しかし、現実のボブは、誰も注目しない。いつも、からかわれてばかり。
イメージの中の自分と、現実の自分。そのギャップが受け入れられない。
若い時には、誰もが陥る葛藤を、ボブは強く抱いていた。
印象的な画面や、象徴的な台詞の多い作品だ。美しい画面に見蕩れてもいいが、その背景にある作家の意味を読み取りたい作品だ。
そんなボブに対し、ジェシーは英雄だった。
誰もがジェシーを知りたいと思っていたし、ジェシーの周囲には人が集った。
ボブにとってジェシーは、憧れの存在である以上に、理想の自分だった。
ジェシーはボブの内面を冷徹に審査して、こう問いかける。
「俺みたいになりたいのか。俺になりたいのか」
ボブにとって、ジェシーは絶対的な存在“神”であった。だが、ジェシーは「いつかボブが裏切る」と予告する。ボブは自分を受け入れて欲しいと願っていたが、ボブ自身は、ジェシーを受け入れていない。
現実は違った。
ジェシーは物語で描かれるような英雄ではなかった。
疑り深く、凶暴で、容赦のない男だった。
ジェシーは、誰も信頼していなかった。誰もが、自分を殺そうとしていると思っていた。一方で、殺してくれる誰かを待っていた。
間もなくジェシーは、ボブを恐れるようになる。
いつしかボブは、ジェシーを殺す計画を立てるようになっていた。
次第にジェシーが冷徹な男であると判明する。通俗的な愛や情など通じない男。自分への裏切りがあると察すると、容赦なく暴き出し、顔色一つ殺す。ボブはジェシーへの尊敬と恐れの間で葛藤していく。
ボブは激しく葛藤していた。
ジェシーを愛しているのか、恐れているのか。
……彼に愛されたいたのか。
偉大なジェシーにとって、ボブは矮小な人間でしかない。ボブは神の座を願ったが、与えられたのは孤独だった。映画の後半、孤独を象徴するカットが多くなる。印象的な後味を残す映画だ。
ボブは、孤独だった。愛されたかったし、信頼されたかった。
ジェシーは、何人殺そうとも、英雄だった。誰からも愛されていた。
ボブは、ジェシー自身になりたかった。
しかし、望みは裏切りで返される。
注目されるようになると、人は悲しい目で地平を眺め、死を望むようになる。
いつか誰かが殺しに来る。
そんな日を恐れながら、望みをもって待ち続けるのだ。
映画記事一覧
作品データ
監督 アンドリュー・ドミニク 原作 ロン・ハンセン
音楽 ニック・ケイヴ ウォーレン・エリス
出演 ブラッド・ピット ケイシー・アフレック
サム・シェパード メアリー=ルイーズ・パーカー
ジェレミー・レナー ポール・シュナイダー
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