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■2009/09/14 (Mon)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P054 第5章 ドラコニアの屋敷

12

セーラー服姿の可符香が、可符香を抱き上げて連れて行ってしまった。私は床に尻をついたまま、茫然と見送ってしまった。セーラー服姿の可符香は、部屋の外の廊下を悠然と進んで行き、向こうの角を左に曲がった。
ようやく私は、じわりと思考が戻ってくるのを感じた。扉が開いている。逃げられる。そこまで考えが至ると、私はゆっくりと体を起こした。
部屋の外に出た。部屋の外に、真っ黒な通路が伸びていた。明かりもなく、装飾もなく、ただ長方形に切り取られただけのような通路だった。どこからか明かりが射し込んできて、廊下の形を淡く浮かび上がらせていた。
いったい何が起きたというのだろう? あのセーラー服姿の可符香は? 今ならある程度冷静に考えられる。あれは糸色家を去るとき、廊下で見た少女だった
しかし、あの少女は何者なのか。どうしてこの屋敷の地下にいるのか。いや、そもそもどうして糸色家にいたのか……。それに、可符香の本当の名前とは。
考えてもやっぱり何もわからなかった。私は考えるのをやめて、廊下を進んだ。
通路は先のほうで左右に分かれていた。私はそこまで進み、左右を見ようとした。
突然、地面が抜けた。私は床の下に落ちてしまった。
落ちたそこは水だった。真っ黒な水が、全身に這い回ってくるのを感じた。私は慌ててもがいた。天井に見える、自分が落ちてきた穴に手を伸ばそうとしていた。
すぐに最初のパニック状態が過ぎ去った。水は浅かった。私の太ももを浸す程度だった。私は水の中に立ち、顔にかかった水滴を払って頭上を見上げた。真っ黒な天井に、自分を落とした穴が白く浮ぶのが見えた。高さは3メートル強。どうにかして届くような高さじゃなかった。
私は部屋の周囲を見回した。部屋は飾りのない長方形。ある一片だけ、壁がくり貫かれて滑り台のような坂道になっていた。その滑り台の先に、明らかに開きそうな継ぎ目のある壁があった。
どうにかなるかもしれない、と私は滑り台のほうに向かおうとした。しかし、太ももに何か触れるものがあった。私は、何だろうと目を向け手で払おうとした。
人骨だった。私はさっと全身に凍えるものを感じて、周囲を見回した。ひたひたと黒い色を浮かべる水面に、いくつもの人骨が浮んでいた。それだけではない。靴の裏に感じる感触も、多分、人骨だ。
私は再びパニックになった。もがくように水の中を進んだ。だけど、急に深いところに足を踏み入れてしまった。私の体が水の中に沈む。私は水を掻き分けて、前方に進んだ。
すると、滑り台の先の壁が開いた。そこから、淡い光が差し込んでくる。私はその光に希望を感じて、滑り台まで進んだ。滑り台まで辿り着き、急な斜面を這い進んだ。
滑り台を登りきって、その向うを覗きこんだ。そこは広い空間だった。部屋はほぼ円形で、何本もの柱が部屋を囲んでいた。私は柱の後ろの陰にいた。
円形の部屋の床に、紋章のような図案が描かれ、柱と同じような間隔で、背の高い燭台が置かれていた。頭上を見上げると、幾何学模様のように梁が折り重なり、そのうえから緩い白色灯の光が当てられていた。その光に、梁から釣り下がるロープのようなものが揺れているのが見えた。
そんな部屋の中央に、男爵が一人で立っていた。男爵はこちらを向いて、手を後ろに回していた。
「ようこそ、美しき乙女よ。歓迎するよ。ここは人間の法が及ばぬ、あらゆる道楽が許される地下の空間だ」
男爵の静かだが朗々とした声が、空間一杯に染み渡るようだった。
私は思わず後ろを振り返った。そこに滑り台が落ちて、黒い水に浮ぶ人骨が見えた。
「ここは自由が許される場所だ。だから君の自主性を重んじようと思う。その下の部屋に留まりたいというなら、止めはしない。そちらは使い物にならなくなった玩具を捨てる場所だがね。だが、あえてここはこちらに来るほうをお勧めしよう。来たまえ」
男爵が右手を上げて、私を誘うように呼びかけた。
私は、滑り台を這い登り、部屋のなかへ入っていった。ふらふらと、呪い師に催眠術を掛けられたように、男爵の前に進んで行った。多分、他にすがるものはなかったし、男爵が助けてくれそうな気が、ほんの一瞬だけしたから。
私は柱の向うの空間に入っていった。足元に、紋章のような図案が描かれている。何の図案かわからないけど、どことなく宗教的で、邪悪なものが感じる気がした。
「君は利口そうだ。少し考える機会を与えよう。“教育と幸福”とは何だと思うかね。君の知性の働きを見たい。答えたまえ」
男爵は手を下ろして、親しみを込めた微笑を浮かべた。
「……教育とは、学校で学ぶものです。幸福とは……わかりません」
私は模範解答と思える答えをした。男爵を真直ぐ見られず、上目遣いにしておずおずと口にした。
だが男爵は、穏やかな顔をにわかに曇らせ始めた。
「退屈な思考だ。欠伸が出るね。君は他人から押し付けられた美徳を、何一つ疑いもなく受け入れるのかね。君自身の主体性や、君がこの世界にいるという痕跡はどこにあるのかね。惜しい話じゃないか。若いうちは、あらゆる罪悪を知り、経験せねばならない。若者が持つ情念は、その機会を得るためにあるのだよ」
男爵はかつかつと靴音を鳴らして紋章の上を歩き、私に説教するように諭した。
男爵の言葉は、どこか魅力的だった。声色のせいか、啓発的な言葉のせいか。私の心が、男爵の側に引き摺られるようなものを感じた。でも私は、抗うように首を振った。
「そんなの、駄目です。だって、それはただの犯罪です!」
私は手を振り回して、男爵に怒鳴った。だけど私の声は私が思う以上に弱く、空間に吸い込まれていった。
「いかんね。さっきも言ったが、ここは人間の法が及ばぬ場所だ。いわば一切の自由が許される場所だ。窃盗、強姦、殺人。どんなタブーを犯しても咎め人はいない。いわば、我々一人一人が神かあるいはカリギュラの立場にあるというわけだ。そんな場所にいるのに、君は何を躊躇うのかね。何を踏みとどまっているのかね。さあ、再教育と行こう。それを取りたまえ。私を、ちょっと殺してみたいと思わないかね」
男爵は私の前に進むと、後ろ手に持っていたらしいナイフを、私の足元に放り出した。
ナイフはちゃんと鍔があり、柄には細かなレリーフが施されていた。刀身は真直ぐな両刃で、長さは10センチほどだった。それでも、立派な凶器に思えた。
「できないです」
私はナイフを見て後ずさりをしてしまった。
「何故かね?」
男爵が上目遣いに私を見た。その眼光が鋭く、私の表面を抉って内面まで覗きこむように思えた。私はまた後ずさりしてしまった。
「……恐いです。人を殺すなんて、恐いです」
私はうつむいて、消え入りそうな声で訴えた。目に涙が滲んで、泣き出しそうだった。
「人殺しなんて、ただの作業に過ぎない。君だって肉くらい食べるだろう。君が恐れているのは、もしや罰則かね? 犯罪というのは、法律と呼ぶものに対する、形式的な違反に過ぎない。確かに法律、ひいては国家を反逆したが、それがなぜ罪悪の意識と結び付けねばならんのかね? 相手が腐敗した政治なら、君の考える罪悪はむしろ英雄的と呼ばれるべきではないかね」
男爵は朗々とした調子で、啓蒙的な演説を始めた。
「……何を……言っているんですか」
私の体が、恐怖に捉われて動けなくなるのを感じた。動悸が早鐘のように打っている。喘ぐように息をしていた。

次回 P055 第5章 ドラコニアの屋敷13 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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