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■2009/09/10 (Thu)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P051 第5章 ドラコニアの屋敷


男爵が角席に座り、首にナプキンをかけた。
「それはそうと、食べたらどうかね。うまい食事は話の潤滑油だ。君たちには私に言いたいことがあって来たのだろう。食事をしながら、ゆっくり話し合おうじゃないか」
男爵の声が、いくらか柔らかくなった。フォークで肉を突き刺し、一口食べる。
私は、改めて食事に目を向けた。赤い色のチキンスープにはバジルが浮かんでいる。サラダはレタスとセロリ、それからにんじんを大きめに切って煮込んだものだ。少し香り付けしているらしく、甘く匂うものがあった。肉はなんだろう。私はフォークで肉を転がした。豚でも牛でも鳥でもない。私の知らない、例えば羊あたりだろうか。
私たちは躊躇うように周りのみんながどうするか見ていた。藤吉が躊躇いもなくフォークで肉を刺し、口に移そうとしていた。
「食べちゃ駄目! ……絶対に食べちゃ駄目!」
あびるが叫ぶような声で警告した。
振り返ると、あびるが肉を凝視したまま震えていた。蝋燭の光でもわかるくらい、顔を青ざめさせていた。
藤吉が肉を口に入れようとした瞬間で止めた。思いなおしたように、肉を皿に戻した。
私もナイフとフォークを置いた。その代わりに、グラスの水を一口飲んだ。少し喉が渇いていた。他のみんなも、同じようにナイフとフォークをテーブルの上に置いていた。
「失礼な意見だが、それも客人の自由だ。好きにしたまえ。うむ、うまい」
男爵は軽く言って、肉を一口頬張った。
肉の芳ばしい香りが漂ってくる。駄目、と言われても肉料理は堪えきれないほどの食欲が促すものがあった。それに糸色家から食事を口にしていない。でも私は、そこはかとない違和感を感じて、食べるのを差し控えた。
しばらく男爵一人の食事が続いた。空腹で沈黙する私たちの耳に、食事を続ける男爵の咀嚼音が聞こえてきた。それがやはり空腹を刺激する。私はテーブルの食事から目を逸らして、自分の太ももを見下ろした。
あびるは、あれからずっと顔を青ざめさせてうつむいていた。千里とまといと藤吉は、目で相談するようにちらちらと互いを見ていた。私の左隣の可符香は、静かにうつむいていた。表情を見ると、どこが具合悪そうに見える。そういえば屋敷に入ってから一度も可符香の声を聞いていない。可符香もやはり恐いのだろうか。
男爵がナイフとフォークを置いて、口元をナプキンで拭った。グラスの水で、口の中の物を喉に流し込む。
「せっかく来たんだ。少し教養ある話をしよう。民俗学の話だ。ある民族では、本当の名前を隠す習慣がある。本当の名前が明らかにされると、森や大地に潜む悪霊に魂を奪われると考えているからだ。例えば、日本ではアイヌがこの習慣をかつて持っていた。アイヌは本来、家族同士でも親しい友人同士でも決して名前では呼び合わない。一般的には“小父さん”を意味する“アチャポ”や、“母”を意味する“ハポ”といった言葉を使う。唯一教えていいのは、生涯の伴侶と決めた相手だけと考えていた。なかなかロマンチックな話ではないか。生涯の伴侶にだけは、自身の最も重大な秘密を預けるわけだ。これは決して野蛮な土人に限った話ではない。我々の社会でも、名前こそがその人間の本質と考える場合がある。もしうっかり名前を奪われてしまったらどうかね? その人間の本質と実体、つまりアイデンティティを失ってしまうだろう。具体的に言えば、まったく別の人間が、君たちに摩り替わって生活できてしまう。ネット社会のほとんどが自衛を目的に匿名を使っている理由も、ここにある。おっと、日本では新聞も匿名だったな。現代においても、名前はその人間の本質であり、実体を封印する鍵というわけだ。だから忠告するのだが、決して、安易に本当の名前を明かしてはならない。名前を奪われると、その人間から魂が抜き取られ、操り人形のように意思を失ってしまうだろう」
男爵の話は長く長く、とりとめがないように続き、それに意味があるようには思えなかった。
男爵の話を聞いているうちに、私は何となく意識がクラクラするものを感じた。始めは気のせいだと思っていたが、やがて眩暈がするように視界が滲み始めた。校長先生の長い話を聞いているように、意識が暗いところに霞み始める。
「それと……何の関係が……。」
千里が擦れた声で言葉を綴った。
見ると、千里も頭をふらふらとさせていた。目蓋が重いらしく、必死で睡魔と戦っているみたいだった。他の女の子たちも、同じような感じだった。
私は改めて食事に目を向けた。甘く漂うに香りに気付いた。でも、気付くにはもう遅すぎだった。
「現代の合理社会は、なんでもかんでも無駄を遠ざけようとする傾向にある。だが、問題を解くヒントは常に無駄の中に用意されている。特に、難解と思える問題ほど、無駄が重大な価値を持つ。無駄にこそ、目を向けるべきだよ」
男爵は悠然と答えると、肉をもう一口、フォークで刺して口の中に放り込んだ。
「……何か、おか……しい」
まといが声を擦れさせていた。立ち上がろうとテーブルに両手をつくが、腰から下に力が入らないらしい。手がずるっとテーブルの上を滑って、チキンスープをひっくり返した。
「やれやれ。注意深い少女たちだ。肉料理に上等な睡眠薬を使ったというのに、無駄になってしまった。サラダに麻酔効果のある香水を振り掛けておいてよかったよ。水にも痺れ薬を入れておいた。念には念を入れるべきだ。なに、安心したまえ。命を落とすような薬品は使っていない。とはいえ、すっかり眠らせるには、直接手を下さねばならぬようだな」
男爵が襟からナプキンを取り払い、口元を拭って立ち上がった。その手許に、透明の瓶とハンカチがあった。男爵は歩きながら、瓶の液体をハンカチに湿らせた。
「やめ……て……。」
千里が男爵の気配を感じて、手を振り上げようとした。しかし、その手に力はなかった。男爵は右手で千里の腕を掴み、椅子に体を押し付け、しげしげとその体を観察した。
「まず君からだ。ふむ、いい体をしている。幼いが、そのぶん肌のきめが細かく美しい。まるで絹のような手触りだな。芸術作品として扱うと、見栄えがするタイプだな。楽しませてもらうぞ」
男爵は千里の体を品評すると、その口元にハンカチを押し当てた。千里が一瞬反抗するように身をよじらせた。だがすぐに目蓋が落ちて体から力を失った。千里の体が崩れかけるのを、男爵が支えて椅子に座らせた。
「次は君だ。常月まとい、だったね。ほう、なかなか活動的な性格だな。挑戦的な眼差しがよい。美しい顔立ちだ。肌も柔らかく、抱くともっちりと吸い付くタイプだ。味わいがありそうだな、これは」
男爵はまといの顎を掴み、じっくりその顔を覗き込んだ。それからまといの口にハンカチを押し当てる。まといは静かに意識を失って椅子に体を預けた。
男爵は、次にあびるの前に進んだ。
「これはなかなかだな。長身でスタイルがいい。手足が長いが、それを抜きにしても理想的なプロポーションだ。それに体の傷がいい。こいつは痛ぶりがいがありそうだ」
あびるは青ざめたまま、もう抵抗の意識もないようだった。男爵がハンカチを押し当てると、あびるはテーブルの上に顔を落とした。
途端に何かが落ちる音がした。振り向くと、藤吉が椅子から転げ落ちていた。逃げようと、絨毯の上をもどかしそうに這い回っていた。
「どこへ行くのかね。せっかちはいかん。ほほう、これは上物だ。発育もよく、充分な筋肉もついている。今時は痩せてさえいればいいなどと考える風潮があるが、あれはいかん。痩せてたるんだ体型ほど醜いものはない。この少女の体格と美しさなら、どんな芸術にも快楽にも応じるだろう。ただし、遊び好きは感心できないな。楽しみは、多くで共有するものだ」
男爵は藤吉の腕を掴み、自分の側に引き寄せると、その口にハンカチを押し当てた。晴美の体から力が失われ、絨毯の上に転がった。
次は私だった。男爵が私を振り向いて、にやりとした。
私は涙を滲ませて、首をゆるゆると振った。
「可符香……ちゃん……」
隣にいる可符香に助けを求めようと振り返った。でも可符香は、すでに眠りに落ちていた。
背後に、気配が立つのを感じた。振り向くと男爵が側にいて、その顔を肌がふれあうギリギリの距離まで近づけてきた。
「ふむ。……普通だな」
「普通……て、……いう…な……」
男爵がハンカチを私の口に押し当てた。意識が一気に遠ざかって、暗闇に吸い込まれるのを感じた。

次回 P052 第5章 ドラコニアの屋敷10 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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