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小説・さよなら絶望先生 ~赤い瞳の少女~ P050

2009.09.10 - 創作小説
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P050 第5章 ドラコニアの屋敷


私たちは男爵が消えた部屋の中へ進んだ。入口の枠はやけに広く、高かった。両側にかつて蝶番があったらしい跡が残っていた。多分、大きな両扉だったのだ。
入ってみると、広い部屋に繋がっていた。右の空間に赤い絨毯が敷かれ、絨毯の中央にテーブルが置かれていた。テーブルの上に燭台が置かれ、無数の蝋燭の炎が暗闇に揺れていた。
赤い絨毯は左手と奥に伸びて、別の部屋に続く扉と繋がっていた。暖炉も置かれていたが、もちろん火は入っていない。
「好きな席に座りたまえ。ただし、そちらの端は私の席だ。それ以外なら、自由に座っても良い。私は、少し食事の準備をしてくるよ」
男爵が赤絨毯に立って説明した。男爵の席は奥のお誕生日席だった。
それから男爵は、執事みたいな恭しいお辞儀をすると、奥の扉へと消えていった。
私たちは、少し躊躇うように互いに顔を見合わせた。やはり千里が一番にテーブルに向かって歩き出した。それに続くように、私たちはテーブルに進んだ。
窓を背にする席に千里が座り、その左隣にまといが座った。さらに左の、男爵と向かう角席にはあびる。次に藤吉。テーブルを折り返して私、可符香という席順だった。テーブルは横に長く、男爵の席と一番離れた場所に皆固まって座った。
汚い屋敷だったけど、テーブルと椅子はまあまあ綺麗だった。座る前に椅子を確認したけど、埃などの汚れはとりあえずない。椅子は背が高く、私の身長と同じくらいのところで鋭角的に切り取られていた。クッションの色は赤だった。
テーブルは濃いブラウンで、使い古しているらしく、傷が一杯に刻まれていた。だが、そのうえからコーティングを被せているらしく、触れても傷の感触はなかった。
テーブルの上で、燭台の蝋燭が輝いていた。燭台は銀製で、アールヌーボー様式の装飾が施されていた。蝋燭の光で、みんなの顔が一人一人仄暗く浮かび上がった。
間もなくして、奥の両開きのドアが開いて男爵が入ってきた。男爵は白いエプロンをつけてカートを押していた。同時に、肉料理らしい芳しい臭いが漂ってきた。
「すまないが刑期を終えたばかりで、まだ使用人も料理人も雇っておらんのだよ。だが、料理の味は保障しよう。料理は専門店で調理され、週に2回、私の屋敷に配送される仕組みになっておる。私は料理人と顔を合わせず、ただ調理を過熱するだけ、というわけだ。私が味付けをしたんじゃないから、皆も安心だろう」
男爵は言いながら、私たちに料理を盛りつけた皿を並べていった。
「あの……、僕の分は?」
皿は三つ。チキンスープを入れた皿に、ライス。三つ目は、肉料理とサラダを盛りつけた皿だった。それから、グラスに入れられた水が添えられた。
「あなたは、糸色先生とどういう関係なんですか?」
千里が男爵を振り返って訊ねた。
「あれは10年前の話だ。糸色望は当時、高校2年生。17歳だったな。あの頃の糸色望は、まあ若いせいだろうが、なんでも首を突っ込み、無茶に挑戦する無謀な少年だった。今より余程の覇気のある男だったよ。だから、私にも挑戦を挑んだのだろう」
男爵はエプロンを外しながら、少し昔を懐かしむように語った。
私は男爵の話を聞きながら、また17歳だと思った。糸色先生が今みたいな根暗な性格になった理由。10年前の事件。そう、男爵と関わっているんだ、と確信した。
「勝負ってどんな?」
千里が情報を聞き出すように追求した。
「下らない話さ。私が負けて、糸色望が勝つ。あれは一生かけても消えない屈辱だった。話なら糸色望本人から聞くといい。私自身に、屈辱の物語を話させるつもりかね」
男爵は冗談めかして言うと、エプロンをカートの中に押し込んだ。

次回 P051 第5章 ドラコニアの屋敷9 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次

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