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■2016/06/20 (Mon)
創作小説■
第14章 最後の戦い
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2
クロース軍の包囲網を抜けて、オークとソフィーは大パンテオンへと入っていった。そこは信じがたい光景だった。地面を埋め尽くさんばかりに死体が積み上げられていた。異界のレギオンのごとき屍体の塊になっていた。蹄で土を踏み付けると、吸いきれなかった血が溢れ出した。屍体は兵士だけではなく、町人や子供も交じっていた。
木々には火が点けられ、今まさに崩れ落ちようとめりめりと音を立てている。真っ黒な煙が視界を遮っていて、どこか別世界に迷い込んだような幻惑が包んでいた。
突然、何かが風を切った。馬が矢で射られたのだ。
馬が大きく跳ね上がり、倒れた。オークとソフィーが地面に投げ出される。
黒煙の向こうから、クロース兵士が飛び出してきた。その姿が、なぜか冥界の餓鬼に見えた。
すぐに2人は身を起こした。右の兵士をオークが斬り、左の兵士をソフィーが魔法で跳ね飛ばした。
クロースの兵士は次々と現れた。オークとソフィーは敵を振り切ってその向こうを目指した。黒煙の向こうに、石段が見えた。そこも、無数の兵士が待ち構えていた。戦闘の音があちこちから聞こえた。
ソフィー
「オーク様、こっちです!」
ソフィーはオークを道案内した。
後をクロースの兵士が追いすがった。オークは敵を斬り伏せながら、森の奥へと入っていった。
敵の追跡はいつまでも続いた。刃が迫り、矢が飛んだ。それも、窪地を越えていくうちに遠ざかっていった。ソフィーは土地の者しか知らない秘密の道を潜り、山脈の三合目まで出てきた。
そこにはまだ戦闘の手は及んでいなかった。ドルイド達が緊張した様子で、戦いの準備を進めていた。
ソフィーはそこまで這い上がってきたところで、汚物を吐いた。目に涙を浮かべていた。
僧兵
「ソフィー様ではありませんか」
ソフィー
「みんなまだ無事ですか」
僧兵
「ええ、なんとか……」
ソフィー
「老師様は?」
ソフィーは口元の汚物と目元を拭いながら訊ねた。
僧兵達は、オークとソフィーを石段のさらに上へと案内した。その途上で、オークは先行した30人の騎士達と再会した。オークは仲間達としばし別れて、老師の許へ急いだ。
石段を登っていくと、大きな広場になっていて、そこに参謀本部が置かれていた。偉大なるドルイドの老師達が討論を続けていた。老師達はソフィーに気付くと、議論を中断して迎えた。
ソフィー
「老師様!」
ソフィーは涙を抑えず、老師に抱きついた。少女の気持ちが落ち着くには、少し時間が必要だった。
ソフィー
「お久しぶりです、老師様。よくご無事でした」
改めてソフィーは老師達に挨拶した。
老師
「そちらこそよくぞ参られた。もはやこの大神殿も見捨てられたと思っていましたぞ。援軍感謝する。2人が加われば心強い。こちらでの状況は見ての通りだ。人々が不眠不休で異教徒と戦っている」
広場から、眼下の戦場の様子全体が見渡せた。クロース軍はすでに1合目を制圧し、戦いの中心は2合目へと移ろうとしている。敵の数は圧倒的に多く、山脈全体を覆うように兵を散開させ、じわりじわりと浸食しているようだった。
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