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■2009/04/06 (Mon)
シリーズアニメ■
都市の狭間の路地に、暗い影が落ちていた。夜が深まると、路地裏から人の声も気配も遠ざかっていく。
そんな場所に、男が一人、影に潜むようにうずくまっていた。男はアメストリス軍の青い装束を身に纏い、長く伸ばした髪を頭の後ろでまとめていた。
男は静かな路地裏に一人きりでうずくまり、石畳に練成陣を描く作業を、もくもくと続けていた。
間もなく男は練成陣を描く作業を終えて、体を起こした。
そうして、周囲を見回そうとしたとき、
「いたぞ! アイザックだ!」
警戒の声が、暗い路地裏に轟いた。
アイザックは、その名前を呼ばれて、軽く舌打ちをした。
アイザック・マクドゥーガル。かつてはアメストリスの軍人であり、錬金術師であった。現役であった頃は“氷結のアイザック”の愛称で呼ばれていた男だ。
だがアイザックは、イシュヴァール殲滅作戦の後、国家錬金術師の称号を返上し、反体制運動に身を置いた。
それで、今や指名手配人物として、軍隊に追われる身になっていた。
アイザックは、路地裏の深い闇の中を、全力疾走で突き進んだ。アイザックを追い詰める足音は、確実に接近している。
と、目の前の角から、二人の軍服姿の若者が現れた。
「止まれ! 止まらんと……」
若い軍人は、拳銃を水平に構えて、警告を発した。
だがアイザックは速度を緩めなかった。アイザックは、手甲に描かれた練成陣に念を込めた。練成陣が輝きだし、腕全体に青い稲妻が走る。
突然に、氷の刃が出現した。氷の刃は路地裏を走り、二人の軍人を突き飛ばした。
アイザックはそのまま真直ぐ走り、次の細道に潜り込もうとした。
どうやら逃げ道は失いつつあるらしい。角を曲がるたびに軍人が現れ、アイザックの足を止めようとする。
次に現れたのは、壮年の軍人だった。先の若い軍人と違って、警告もなしに発砲しようとしていた。
アイザックは壮年の軍人に接近し、銃を構える腕を掴んだ。次の瞬間、兵士の動きが止まり、全身に霜が浮かび始めた。全身の血液が凍り付いて、絶命したのだ。
壮年の軍人の側に、もう一人、若い軍人がいた。だが若い兵士は、先輩兵士の死に動揺し、戦慄していた。
アイザックは、悠然ともう一人の軍人の腕を掴み、練成術を発動させた。路地裏に悲鳴が轟いたが、すぐに声の根は凍りついた。
「氷結と沸騰。水の属性だ」
ようやく追跡の気配が周囲から消えた。どうやら、軍部は手駒を失ったらしい。
アイザックは落ち着いて路地裏を後にしようとした。
が、風を切る音に振り返った。
アイザックはっと後ろに下がった。突然、頭上から槍が投げいられ、石畳に垂直に突き刺さった。
次なる刺客として現れたのは、赤いコートを身に纏った金髪の少年だった。
「ひでぇこと、するな」
金髪の少年が、ぽつりと呟いた。
「大いなる仕事を成し遂げるのだ。そのための犠牲は、等価交換という奴だ」
「そんなもんが、等価交換な訳ねえだろ」
金髪の少年は、静かに、それでも強い怒りを湛えてアイザックを睨みつけた。
金髪の少年が、両掌を合わせた。青い雷が走り、その腕で石畳に突き刺さった槍を掴んだ。雷が槍に移ると、槍は変形し、鉄の棍棒に姿を変えた。
「練成陣もなしに……」
アイザックは、にわかに動揺した。
「見惚れている暇はねえぜ」
一方の金髪の少年は棍棒を両手に構えて、腰を落とした。
アイザックは、はっと気配を感じた。直感を信じて、身を屈める。
巨人の拳が、アイザックの頭上すれすれを掠めた。背後に、鉄の鎧を身に纏った巨人が立っていた。
さらに、金髪の少年がアイザックに肉迫した。鋼鉄の棍棒が容赦なく振り下ろされる。
アイザックは棍棒を手甲で防いだ。全身に衝撃が走る。だが、アイザックは棍棒を押し返し、同時に鎧の巨人を蹴りつけて牽制した。
アイザックは間を置かず、少年の腕を掴んだ。練成術が発動して、青い稲妻が火花を散らした。
金髪の少年が悲鳴を上げて、赤いコートが弾けとんだ。
だが、少年は二、三歩ふらふらと下がっただけで、無傷だった。
「バカな。練成術をかけたはず。沸騰するはずだ」
むしろアイザックが強く動揺した。
少年のコートの袖口が、はらりと飛んだ。その下から現れたのは、銀色に輝く艶だった。
「……コートが台無しじゃねぇか」
金髪の少年はにわかに怒りの調子を強めた。少年の右腕は、鋼鉄の金属だった。
「……オートメイル。練成術を使わない、天才錬金術師の噂。オートメイルの右腕。そうか、お前が鋼の錬金術師、エドワード・エルリックか!」
エドは、ばっとコートを脱ぎ捨てた。オートメイルの右腕が剥き出しになった。
エドは、静かに闘志を燃やしてアイザックを睨みつけた。
だがアイザックは、エドの緊張を逆なでするように、にやりと表情を崩した。
「オートメイルの体。空の鎧。……そうか、お前ら、禁忌を犯したな。人体練成を犯したな!」
エドの表情に、大きな動揺が現れた。平静に維持されていた緊張は失われ、動揺と怒りが交互に現れた。
そうだ。忘れもしない少年時代。エドは大きな過ちを犯した。
死んだ母を取り戻そうと、人体と使った練成を試みたのだ。
その代償で、エドは右腕と左脚を失った。弟のアルは全身を失い、現在も虚ろな鎧に、危なげに魂を宿している。
だが、エドもアルも、まだ諦めたつもりはなかった。
いつか、健全な肉体を取り戻すんだ。
そのために、戦い続ける日々を選んだのだ。
人気アニメの新シリーズ第1回は、冒頭から激しいアクションが次々に繰り広げられていく。
国家を裏切ったアイザックと、裏に秘密を抱える軍部。
その背後で、ホムンクルスと呼ばれる組織が暗躍する。
新たな戦いは、今まさに始まろうとしていた。
作品データ
監督:入江泰浩 原作:荒川弘
脚本:大野木寛 音楽:千住明 主題歌:YUI シド
作画監督:永作友克 美術監督:佐藤豪志 色彩設計:中尾総子
キャラクターデザイン:菅野宏紀 美術デザイン:金平和茂
路地デザイン:toi8 練成陣デザイン:荒牧伸志
アニメーション制作:ボンズ
出演:朴璐美 釘宮理恵 山寺宏一 柴田秀勝
三木眞一郎 藤原啓治 内海賢二 折笠富美子
吉野裕行 井上喜久子
そんな場所に、男が一人、影に潜むようにうずくまっていた。男はアメストリス軍の青い装束を身に纏い、長く伸ばした髪を頭の後ろでまとめていた。
男は静かな路地裏に一人きりでうずくまり、石畳に練成陣を描く作業を、もくもくと続けていた。
間もなく男は練成陣を描く作業を終えて、体を起こした。
そうして、周囲を見回そうとしたとき、
「いたぞ! アイザックだ!」
警戒の声が、暗い路地裏に轟いた。
アイザックは、その名前を呼ばれて、軽く舌打ちをした。
アイザック・マクドゥーガル。かつてはアメストリスの軍人であり、錬金術師であった。現役であった頃は“氷結のアイザック”の愛称で呼ばれていた男だ。
だがアイザックは、イシュヴァール殲滅作戦の後、国家錬金術師の称号を返上し、反体制運動に身を置いた。
それで、今や指名手配人物として、軍隊に追われる身になっていた。
アイザックは、路地裏の深い闇の中を、全力疾走で突き進んだ。アイザックを追い詰める足音は、確実に接近している。
と、目の前の角から、二人の軍服姿の若者が現れた。
「止まれ! 止まらんと……」
若い軍人は、拳銃を水平に構えて、警告を発した。
だがアイザックは速度を緩めなかった。アイザックは、手甲に描かれた練成陣に念を込めた。練成陣が輝きだし、腕全体に青い稲妻が走る。
突然に、氷の刃が出現した。氷の刃は路地裏を走り、二人の軍人を突き飛ばした。
アイザックはそのまま真直ぐ走り、次の細道に潜り込もうとした。
どうやら逃げ道は失いつつあるらしい。角を曲がるたびに軍人が現れ、アイザックの足を止めようとする。
次に現れたのは、壮年の軍人だった。先の若い軍人と違って、警告もなしに発砲しようとしていた。
アイザックは壮年の軍人に接近し、銃を構える腕を掴んだ。次の瞬間、兵士の動きが止まり、全身に霜が浮かび始めた。全身の血液が凍り付いて、絶命したのだ。
壮年の軍人の側に、もう一人、若い軍人がいた。だが若い兵士は、先輩兵士の死に動揺し、戦慄していた。
アイザックは、悠然ともう一人の軍人の腕を掴み、練成術を発動させた。路地裏に悲鳴が轟いたが、すぐに声の根は凍りついた。
「氷結と沸騰。水の属性だ」
ようやく追跡の気配が周囲から消えた。どうやら、軍部は手駒を失ったらしい。
アイザックは落ち着いて路地裏を後にしようとした。
が、風を切る音に振り返った。
アイザックはっと後ろに下がった。突然、頭上から槍が投げいられ、石畳に垂直に突き刺さった。
次なる刺客として現れたのは、赤いコートを身に纏った金髪の少年だった。
「ひでぇこと、するな」
金髪の少年が、ぽつりと呟いた。
「大いなる仕事を成し遂げるのだ。そのための犠牲は、等価交換という奴だ」
「そんなもんが、等価交換な訳ねえだろ」
金髪の少年は、静かに、それでも強い怒りを湛えてアイザックを睨みつけた。
金髪の少年が、両掌を合わせた。青い雷が走り、その腕で石畳に突き刺さった槍を掴んだ。雷が槍に移ると、槍は変形し、鉄の棍棒に姿を変えた。
「練成陣もなしに……」
アイザックは、にわかに動揺した。
「見惚れている暇はねえぜ」
一方の金髪の少年は棍棒を両手に構えて、腰を落とした。
アイザックは、はっと気配を感じた。直感を信じて、身を屈める。
巨人の拳が、アイザックの頭上すれすれを掠めた。背後に、鉄の鎧を身に纏った巨人が立っていた。
さらに、金髪の少年がアイザックに肉迫した。鋼鉄の棍棒が容赦なく振り下ろされる。
アイザックは棍棒を手甲で防いだ。全身に衝撃が走る。だが、アイザックは棍棒を押し返し、同時に鎧の巨人を蹴りつけて牽制した。
アイザックは間を置かず、少年の腕を掴んだ。練成術が発動して、青い稲妻が火花を散らした。
金髪の少年が悲鳴を上げて、赤いコートが弾けとんだ。
だが、少年は二、三歩ふらふらと下がっただけで、無傷だった。
「バカな。練成術をかけたはず。沸騰するはずだ」
むしろアイザックが強く動揺した。
少年のコートの袖口が、はらりと飛んだ。その下から現れたのは、銀色に輝く艶だった。
「……コートが台無しじゃねぇか」
金髪の少年はにわかに怒りの調子を強めた。少年の右腕は、鋼鉄の金属だった。
「……オートメイル。練成術を使わない、天才錬金術師の噂。オートメイルの右腕。そうか、お前が鋼の錬金術師、エドワード・エルリックか!」
エドは、ばっとコートを脱ぎ捨てた。オートメイルの右腕が剥き出しになった。
エドは、静かに闘志を燃やしてアイザックを睨みつけた。
だがアイザックは、エドの緊張を逆なでするように、にやりと表情を崩した。
「オートメイルの体。空の鎧。……そうか、お前ら、禁忌を犯したな。人体練成を犯したな!」
エドの表情に、大きな動揺が現れた。平静に維持されていた緊張は失われ、動揺と怒りが交互に現れた。
そうだ。忘れもしない少年時代。エドは大きな過ちを犯した。
死んだ母を取り戻そうと、人体と使った練成を試みたのだ。
その代償で、エドは右腕と左脚を失った。弟のアルは全身を失い、現在も虚ろな鎧に、危なげに魂を宿している。
だが、エドもアルも、まだ諦めたつもりはなかった。
いつか、健全な肉体を取り戻すんだ。
そのために、戦い続ける日々を選んだのだ。
人気アニメの新シリーズ第1回は、冒頭から激しいアクションが次々に繰り広げられていく。
国家を裏切ったアイザックと、裏に秘密を抱える軍部。
その背後で、ホムンクルスと呼ばれる組織が暗躍する。
新たな戦いは、今まさに始まろうとしていた。
作品データ
監督:入江泰浩 原作:荒川弘
脚本:大野木寛 音楽:千住明 主題歌:YUI シド
作画監督:永作友克 美術監督:佐藤豪志 色彩設計:中尾総子
キャラクターデザイン:菅野宏紀 美術デザイン:金平和茂
路地デザイン:toi8 練成陣デザイン:荒牧伸志
アニメーション制作:ボンズ
出演:朴璐美 釘宮理恵 山寺宏一 柴田秀勝
三木眞一郎 藤原啓治 内海賢二 折笠富美子
吉野裕行 井上喜久子
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