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■2016/02/18 (Thu)
創作小説■
第6章 フェイク
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6
と、そこまで話が進んだところで、高田がテーブルの側にやってきた。「お待たせしました」
高田は忙しそうにツグミの隣の席に座った。
それから、三白眼で真っ直ぐツグミを見る。
ツグミは、高田の獲物を狙わんばかりの眼光に「うっ」と身を引いてしまった。恐い。さっきの木野の話を、高田の三白眼で説明されると、緊張で堪えがたいものになっていたかも知れない。
「まず、ツグミさんに報告です。コルリさんが連れ去られた場所が明らかになりました」
「本当ですか!」
ツグミは思わず声を上げてしまった。
「ここからコンビニ方面に坂道を降りて、角を1つ曲がったところです。近所の人が目撃していました。聞き込みをしたところ、みんな「間違いなくコルリさんだった」と証言してくれました」
高田は、画廊の外の、事件があったらしい方向を眺めながら説明した。
不意に、ツグミの頭にイメージが浮かんだ。
青く影を落とす町の通りに、コルリが走っている。
角を曲がろうとしたところで、突然にワゴン車が飛び出した。そう説明されたわけじゃないけど、ツグミは黒のワゴン車だとイメージしていた。
コルリは足を止めて、身をすくめた。ワゴン車はコルリの前で駐まった。扉がばっと開き、巨人のような男が現れる。
コルリは慌てて引き返そうとした。回れ右をする。でも咄嗟のことで体が動かず、振り向こうとして転んでしまう。
その隙に、大男がコルリの体を掴んだ。多分、コルリは怯える姿を見せなかったと思う。掴まれながら、大男を振り返り、毅然と怒鳴ってみせただろう。大男の手から逃れようと、体を大きく揺さぶってみせただろう。
しかし男たちの腕は強く、コルリを力尽くで引き寄せ、ねじ伏せて、それから拳で殴りつけた。
コルリはプライドが強い。それでも決して悲鳴は上げず、あらん限りの声で大男を罵っただろう。
でも、抵抗はそこまで。コルリはワゴン車の中に放り込まれ、連れ去られてしまった……。
次回を読む
目次
※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです
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