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■2016/01/16 (Sat)
第8章 秘密都市セント・マーチン

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 オークを先頭に洞窟に入っていった。
 洞窟の内部は、かつてと様変わりしていて、軍隊が通行するのに充分な広さに整備されていた。ネフィリムの軍団がそこを行き来したであろう痕跡を見出すことができた。あの広間の落書き――十字の印もくっきりとした線に手直しされていた。どうやら魔界の住人達は、あのシンボルを自分たちのものとして再生したようである。
 軍団は慎重に奥へ奥へと潜っていった。あの時行き止まりになっていた断崖には、地下に向かっていく階段が作られていた。その先は、オークも知らない未知の場所だ。慎重すぎるくらいのゆっくりさで、軍団は降りていった。
 その先の通路はひどく狭く、暗い場所がしばらく続いた。通路は狭くなり、50人という軍団ではやや困難と思える場所を進んでいった。
 しばらくして、突如として開けた場所に出た。そこは驚くべき場所だった。広い空間に、石の住居が並び、交通が整備され、街としてのあらゆる設備が整えられていた。家々や柱には、かつての壮麗さを物語る彫刻が施され、決して明るくないものの、光苔で松明の明かりも不要なくらい淡い緑色に浮かんでいた。そここそ、バン・シーが語る幻の都セント・マーチンであった。
 しかしそこは、今やネフィリムの地下の根城であった。戦士達は地下都市でネフィリムたちと戦いになった。激しい攻防戦が繰り広げられ、ネフィリムを一掃して制圧した。その後は、地下都市を拠点にして、案内人のいない地下世界の調査を進め、地図を作りながらゆっくり奥へ奥へと進んだ。
 地下世界はネフィリムの数が多く、何度も戦いを経験したが、しかしバン・シーの考えたとおり、地下のネフィリムは地上ほど多くなかった。地上に出払っているためだと考えられる。
 洞窟探索が始まって20日が過ぎ、ついにセシル、バン・シー率いる東の軍団と合流した。セシル達も何度か悪魔との戦いを経験したらしく、満身創痍で多くの兵を失っていた。しかし兵士達の合流は、沈みがちだった意欲を再び鼓舞した。
 合流以後はバン・シーの案内の下、さらに奥へと進んだ。5日後にはウァシオが率いる西の軍団とも合流した。すでに兵士の数は随分減っていたが、百人からなる戦士達の連合は、彼ら自身にとって心強いものだった。
 そうして間もなく、一行はキール・ブリシュトの地下部分に到達した。
 キール・ブリシュトに入ると、おどろおどろしい空気が包み、兵士達の緊張が高まった。生き物の気配どころか、不自然なまでに物音のない異様な静寂の中、何かとてつもない気配がするのを誰もが感じていた。
 地下キール・ブリシュトは、セント・マーチンの建築を一部利用しているものの、明らかにそれとは違った直線を多用した洋式に、中央に巨大な正方形の室が置かれ、周囲に祈祷のための部屋がいくつも配されていた。それから真っ直ぐな階段が、中央部に向かって伸びている。
 一行は慎重に古代の遺跡に足を踏み入れていった。廊下も図抜けて広く、百人の兵士くらいゆうゆうと入って歩けるほどの広さがあった。床や壁に、禍々しい宗教的なサインがいくつも刻まれていた。
 進めば進むほどに空気は重くくぐもり、恐ろしげな気配が強まっていった。静寂なのに、唸り声のようなものが聞こえるような気がした。足下もぐらぐら揺れているような錯覚に陥った。風もないのに松明の火が弱くなり、闇が勢力を強めているように、辺りを照らさなくなった。得体の知れない恐怖に、豪傑で知られる兵士達が次々と気分を悪くして、倒れる者すら出てしまった。
 廊下の先に、扉が現れた。高さは10メートルはあるだろうか。王城の大門すら匹敵する巨大な門に、誰もが圧倒され、唖然とした。いったい何のために、これだけの門が必要なのか、誰も憶測すら口にしなかったが、なぜか誰もが1つの可能性に行き着いていた。
 大門の前で、バン・シーは足を止めた。

セシル
「――ここは?」
バン・シー
「悪魔の王がいる」

 一同にどよめきが走った。誰もがまさかと思ったが、いざ口にされると恐怖に囚われた。

兵士
「まさか、今からそいつと戦うというのでは……」
バン・シー
「安心しろ。我々がこれから戦う相手は、こいつに較べれば雑魚だ。セシルにオーク、従いて来い」
セシル
「うむ」

 バン・シーが大門脇の通用口を潜って、向こうの部屋に入った。セシルとオークは一瞬躊躇ったが、しかし魔術師とはいえ、女が1人で平然と入っていけるところに行かないわけにはいかず、2人は通用口を潜って中へ入った。2人を護衛しなければならない兵士は、任務を忘れてセシルとオークを見送った。
 内部に入ると、これまで以上に深く闇が漂っていた。しかしそこに何かがある。異様な気配が漂うのを、ひしひしと感じた。
 バン・シーが魔法の明かりを点ける。巨大な空間が、ささやかに照らされた。

セシル
「うわああああああ!」

 思わずセシルが叫んでいた。オークは言葉を失って、声すら出なかった。
 そこにいたのは、まさしく悪魔の王だった。誰の解説を受けるまでもなく、間違いないと確信できた。その圧倒的な形相は、とてもいま知られている言葉では表現できない。畸形に畸形を重ねたおぞましく恐ろしい存在だった。どうやら共食いの最中に石にされたらしく、掌に悪魔が一体掴まれた格好だった。その悪魔ももちろん数メートル級の大きさだが、悪魔の王はそれを一掴みにできる大きさだった。出入り口にあれだけの大門が用意されているが、おそらくはこれが出入りする時にはあの大門を破壊する必要があるだろう。何もかもが桁外れの存在だった。

セシル
「……これは、何と禍々しい。こんな姿、見たこともない」
バン・シー
「しかし形を与えたのは人間だ。呪うなら、その時代のクロースの想像力を呪うのだな」

 バン・シーの声も震えていた。彼女ですら恐ろしいのだ。

オーク
「こんなものを人間が空想するとは……」
バン・シー
「何でも作り出すのさ。人間の頭はな」
セシル
「こいつの封印を解く方法は?」
バン・シー
「もっとも厳重な封印だが、解くのは簡単だ。強い闇を作り出すには強い光を与えればいい。すなわち、『太陽』だ。太陽の光がここまで落ち、こいつに触れればたちどころに封印は解ける」
オーク
「それなら絶対にありえません。こんな深い闇の奥に光など……」

 俄に安堵した。ここに太陽の光を与えようなどと思えば、上の建物すべてを破壊し、固い岩盤を砕き、なおかつあの巨大な鉄扉を開けねばならない。ここに太陽の光を持ち込むのは、どんな技術でも不可能だった。

セシル
「バン・シー。いつか言っていたな。悪魔を倒すには『聖剣』と『封印』、そして『真理』が必要であると。聖剣が我が手にある『ダーンウィン』であろう。そして『エクスカリバー』だ。『封印』は城の地下に置かれているという、あの奇妙な『石版』に書かれている術のことであろう。わからんのは『真理』だ。いったい『真理』とは何を指すのだ?」
バン・シー
「真理とは武器や書物ではない。人間だ。その者はすべての名前をあらかじめ知り、全てのものに名前を与える。その者の前では決して名前を偽れない。悪魔の王を倒すには、必ず真理が必要になる」
オーク
「そうか。悪魔の王。本当の名前が隠されているから、決して攻撃できぬのか」
セシル
「バン・シーよ。お前にその能力が?」
バン・シー
「いいや。私にはその能力がない。その者は常に1人で生まれてくる。東洋ではこれを輪廻転生と呼んでいる。私がその力を持った者に最後に会ったのは400年前だ。しかしその時には聖剣と封印が用意できず、真理を持つ者は老いて死んでしまった」
セシル
「……400年前か。そなたが言うのなら、驚きはせんよ」
バン・シー
「もう行こう。仮にも敵の陣地だ」

 しかしオークが何か思い当たるふうに、バン・シーを呼び止めた。

オーク
「バン・シー殿。その真理を持った女性ならば、言葉を知らぬ子供の名前を言い当てることもできるのですか」
バン・シー
「…………」
オーク
「…………」

 バン・シーがオークを振り返った。厳しい顔で、じっとオークを見詰める。

バン・シー
「ソフィーか」
オーク
「それは告げられません」
バン・シー
「そうか」

 バン・シーは部屋を後にした。オークとセシルも後に続いた。

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