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■2015/08/27 (Thu)
第2章 贋作疑惑

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11
『ミレー・バルビゾン派展』の開催当日がやって来た。六甲駅から降りて港方面へ数分。それからちょっと大通りから逸れた場所に神戸西洋美術館はあった。
 ツグミとコルリは開館時間に合わせてやってきたのだけど、神戸西洋美術館前には長蛇の列ができあがっていた。
「しょうがないね。1番後ろ行こう」
 コルリは早くも気分を入れ替えて、ツグミの手を握って最後尾へ向った。
 行列は入口から数メートル続き、角を曲がったところでやっと終わっていた。その辺りまで行くと、周囲はごく普通の住宅街だった。神戸西洋美術館は住宅街に紛れるように建っている小規模な美術館だった。大通りからも逸れているので、地元でない限り、地図を見ないとわかりにくい場所に建っていた。
 ツグミの今日の格好は明るいピンクのチュニックに、ベージュのスティックパンツを穿いている。今日はダッフルコートにした。
 これでもツグミなりに色々考えてオシャレしてきたつもりだった。なのに、コルリは凄かった。
 コルリはナイロン素材の男性用ジャンパーに、下は裾のほつれたジーンズ。メイクはなしで、5分で準備を済ませてしまった。
 そんな有様なのに、コルリのほうが洗練されたファッションのように見えるのが不思議だった。やはりコルリがもともと持っているルックスの良さなのかスタイルの良さなのだろうか、とツグミはコルリの格好を見て、悩んでしまった。
 行列の進みはすこぶるゆっくりだった。住宅街の角を曲がり、家並みの向こうに美術館の外観がやっと見え始めた。神戸西洋美術館は延床面積4000平方メートル。美術館としてはかなり小振りな造りだ。外観はイタリアの貴族屋敷《パラッツォ》が意識され、赤レンガの外壁に1階部分が奥詰まり、アーチ状の柱が並んでいた。
 入口は重厚な鉄の両扉になっていて、その脇の小窓が受付になっていた。
 行列は若者が多い印象だった。1人だけとか友人連れがほとんどで、若い女性がぽつぽつと混じっている印象だった。かなり広告に力を入れていたみたいだから、意外と注目されているのかもしれない。
 いつになったら入れるのだろう。ツグミはちょっと首を伸ばして、前の方を見た。小さな美術館で、収容人数もさして多くないのに、明らかに出て行く人間よりも入って行く人間の方が多かった。遠くで見ていても、入口あたりで「詰まってる」感がよくわかる。
 ふとツグミは、鼻先にぽつりと冷たいものが落ちるのに気付いた。空を見上げると、雲がどんよりと影を落とし、強めの風に早く流れていた。降り出す前に、美術館に入りたいな……。
「……ふうん。主催と提供《暗黒堂(※)》なんや」
 コルリはあまり感心した様子ではなく、退屈だから口にしたという感じだった。
 ツグミはコルリが見ているものを振り返った。美術館の外壁に貼られているポスターだ。あの『干草を束ねる人』がプリントされていた。明朝体で『ミレー・バルビゾン派展』と書かれた横に、細々とした文字で《主催・提供 暗黒堂》と続けてあった。
「うん。今の神戸西洋美術館の館長が、前に《暗黒堂》におった人なんや。だから、神戸西洋美術館の運営資金元は《暗黒堂》から出とぉねん」
 ツグミも退屈だから、話題を掘り下げてみる。
「私、経営とかそういうの、よくわからへんけど。中国の企業だっけ? 《暗黒堂》って」
 コルリがツグミを振り返って訊ねた。ツグミは首を横に振った。
「違う違う。社長が中国の人っていうだけで、日本の企業のはずや」
 といっても、ツグミ自身詳しく知っているわけではなかった。うろ覚え知識で、話しを進めていった。
 コルリはへえ、と感心したようにまたポスターを振り返った。
「ヒナ姉、最近仕事の話、してくれへんよね」
 コルリは何となく声を沈ませて、ツグミを振り返った。
「そうやね。2年前、急にこっちに移ってから、何かずっと忙しそうにしとおしねぇ」
 ツグミはぼんやりと宙を仰ぎながら言った。
 ヒナはもともと、神戸西洋美術館に勤めていたわけではない。その以前は、神戸近代美術館(※)に勤めていた。それがある日、唐突に神戸西洋美術館に移ったのだ。神戸近代美術館は兵庫を代表する美術館であるのに対し、神戸西洋美術館は規模も小さく、お給料のほうもかなりランクが落ちる。
 ツグミはずっと以前に神戸西洋美術館を訪ねたことがあったが、シルクスクリーンがメインで、信じられないことに贋作が当り前のように展示していた。2度と来るまい……そう心に決めた美術館はここだけだった。
 といっても、シルクスクリーンがメインの美術館は今どき珍しくない。バブル景気の時代、日本人はあちこちで名画を買い漁った。しかし展示するべき美術館が建設される前にバブルが弾け、蒐集された美術品は倉庫に封印されたり、維持できなくなって売却されたりとか散々な有様だった。
 ようやく美術館が建っても、展示する美術品がなく、地元無名の作家を取り上げたり、素人作家の個展にしたりと、お茶を濁した感じでやっと維持経営している状態だった。美術館自体が、時代の負の残滓みたいなになって、地域の財政を圧迫していた。
 神戸西洋美術館もそういった美術館の一つで、看板に“西洋”と掲げておきながら、実際に“本物の西洋画”が並ぶのは今回が初めてだろう。
「ヒナ姉、私たちに相談してくれんかったよね」
 コルリは残念そうなものを滲ませて、ツグミに同意を求めるみたいに言った。ヒナが突然に違う美術館に移ったことだ。
「そうやね。きっとヒナお姉ちゃんも忙しいんやろ。私たちで応援してあげよう」
「そうやね」
 ツグミは釣られる気持ちで声を沈ませるけど、それでもコルリを元気づけるように言った。コルリはゆるやかに微笑んで頷いた。

※ 暗黒堂(あんこくどう) 架空の化粧品会社。物語中の創作。
※ 神戸近代美術館 兵庫県神戸市に実在する美術館の名前だが、あくまでも物語上の空想という設定。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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