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■2009/10/08 (Thu)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P079 終章 華やかな少女写真誌

私たちは男爵の屋敷を出た。時刻は午後3時過ぎといったところ。でも鬱蒼とした前庭は、晴れた夏の午後とは思えないくらい薄暗い闇を落としていた。荒れ放題に伸びた藪と、オークの垂れ落ちる枝に囲まれた煉瓦敷きの通りは、お化け屋敷雰囲気で重たく沈黙していた。
「ねえ、先生。可符香ちゃんの本当の名前って、結局なんだったんですか?」
私は可符香を意識するように、声を潜めて糸色先生に訊ねた。可符香は私たちより少し先に進んだところで、あびるや藤吉と一緒に並んで歩いていた。
「さあ、知りませんよ」
糸色先生は何でもないできごとのように、さらっと言葉を返した。
「知らないって、先生、裁判所に行ったんじゃないんですか?」
私はびっくりしたけど、それでも声を抑えた。
「いえ、調べたのは赤木杏さんの名前だけです。なんせ時間に限りがありましたから。可符香さんの本当の名前を調べるには、本人確認の印鑑とか必要になるんじゃないですか?」
糸色先生はいつもの頼りない大人みたいに、無関心そうな口ぶりだった。
「先生、いいんですか? 本名不明の生徒がクラスにいて。そういうの、きっちりしてください。」
千里が私たちの会話に気付いて、さりげなく近付いてきた。
「まあまあ。もういいじゃありませんか。事件は解決したんですから」
糸色先生は優柔不断な微笑を浮かべて、私と千里を宥めようとした。
可符香がなんだろう、というみたいに私たちを振り返って、かわいらしく首を傾げた。私はごまかすように微笑み、それから溜め息を落とした。かっこいい糸色先生はどこに行ったのかしら?
私は、歩きながら男爵の屋敷を振り返った。そういえば赤木杏はどうしたのだろう。赤木杏の寂しげな表情が、私の胸に留まっていた。でもあの部屋を出て行ったきり、赤木杏の姿は見えなくなってしまっていた。
振り返ると、夥しい数の窓が光を宿すのが見えた。そのどこかに、赤木杏がいないか、こちらを見ていないかと探した。もし見ていたら、手を振ってあげよう。いや、声をかけてあげよう、と思っていた。“一緒に学校に行こうね”って。
どこからか視線が向けられるのを感じた。でも、どこにも赤木杏の姿はなかった。赤木杏は、はじめて見たときと同じような印象で、白昼夢の中に消えていってしまったみたいだった。
私は諦めて視線を前に戻した。糸色先生が私の肩に手を置いた。顔を上げると、気遣わしげに微笑む糸色先生の顔があった。
ようやく屋敷の敷地の外に出た。門の前には、陰気な空き地の風景が広がっている。そこも男爵の庭みたいな感じだったけど、私たちは解放感を感じて、皆で足を止めて背伸びをしたりした。
「臼井君、やったじゃない。大手柄だよ!」
藤吉が臼井の背中をばーんと叩いた。強烈だったらしく、臼井がふらふらと吹き飛びそうになっていた。
いや、別にそれほどのものでも
臼井は調子に乗ってふんぞり返り始めた。
「ねえ、他にどんな写真撮ったの? 見せてよ」
藤吉は言いながら、臼井のデジカメを分捕った。私たちは興味半分で集って、デジカメを覗き込んだ。
ああ、駄目!
臼井が慌ててデジカメを奪い返そうとした。藤吉が的確な後ろ蹴りで、臼井を退けた。
藤吉がデジカメの電源を入れた。はじめに、ニセ時田が可符香を引きずり出すあの写真が現れた。次の写真を写すと、びっくりするものが現れた。着物姿の私たちが胸元を晒し、太股を大開にして眠っている写真だった。
すぐに私は思い出した。見合いの儀が終了したあの朝。奇妙な機械音。正体は、臼井がデジカメのシャッターを切る音だったのだ
写真はそれだけではなかった。臼井はずっと私たちと一緒だったのだ。続きを見ると、信じられないくらい恥ずかしい場面や、親に見せられないようないけない写真が次から次へと出てきた。
「何よ、これ?」
千里と藤吉が、臼井を振り返った。二人の背中に、不動明王が浮かぶのが見えた気がした。
いや、これは、その、できごころというやつで……
臼井がしどろもどろに言い訳をしようとしていた。
後の惨劇については、あえて言うまい。とりあえず、今回の事件でただ一人、病院送りになった者がいた、とだけ説明しておこう。
振り向くと、糸色先生が一人で歩きだろうとしていた。私は糸色先生の側へ走り、その手を握った。
「一緒に帰ろう、先生」
私は少し恥ずかしい気持ちを感じながら、微笑みかけた。
「駄目よ」
いつの間にか側にまといが現れて、私の頬に掌を当てて押しのけようとした。
「え、まといちゃん?」
私は動揺してしまって、ふらふらと糸色先生から離れた。
昨夜は見逃してあげたけど、あれは特別だから。もう事件は解決したのよ。いつまでも先生とべたべたしないで」
「できれば、あなたもべたべたしないでほしいのですが……」
まといは刺のある言葉を私に向けて、糸色先生を後ろから抱きしめた。糸色先生が笑顔を引き攣らせていた。
「昨夜って、ええ?」
私はびっくりして、口をぽかんと開けた。
「私たちが気付かなかったと思っていたの? なんなら、録音したものを聞かせようかしら」
まといが懐から小さな録音機を引っ張り出した。
私は全身の血がいきなり沸騰したような気分になって、慌てて首を振った。
「そうよ。抜け駆けは許さないんだから。あの夜は、仕方がないから許してあげたけど、ちゃんと順番というものがあるんだから、きちんと守ってください。先生とお付き合いしたければ、まず、私たちと勝負して、勝ってからじゃないと駄目よ。」
千里が乱れた髪をさらっと直しながら、私たちの前に進み出てきた。
「……辞退します。私、普通の女の子だから」
私は千里とまといの二人に睨まれて、プライドが折れる気分で遠慮した。というか、死にたいくらい恥ずかしかった。糸色先生と私だけの思い出だと思っていたのに……。
「まあまあ、皆で一緒に帰りましょうよ。私には、皆さんを無事に家まで送り帰す義務もありますから。それに、明後日から始業式です。また皆で会えますよ」
糸色先生が私たちを宥めるように、間に入ってきた。
「ウソ! 始業式って、そんな、今日って何日?」
私はあまりにも意外な事実に、糸色先生に身を乗り出させた。
「何を言ってんのよ。よく考えなさい。見合いの儀で先生の家に行ったのが8月24日でしょ小石川に戻ったのが26日。その後、男爵の家で二日監禁され、その翌日。だから今日は8月29日でしょ。」
千里は呆れたふうに説明した。
「ええー、宿題、ぜんぜん終ってないー!」
私は頭を抱えて、その場でぺたりと座り込んでしまった。しかも、両腕は男爵にやられて動かせないままだった。
そんな私の姿を見て、糸色先生が思いついたように微笑んだ。
「おお、そうだ。こんな時ですから、みんな一緒にどうですか。さあ、皆で一緒に。せーの、

絶望した!

〇〇〇


こちらの作品は以下の書籍を参考にさせていただきました。
『子供たちは屋敷に消えた』ロバート・カレン著 広瀬順弘訳 早川書房
『悪徳の栄え 上』マルキ・ド・サド著 澁澤龍彦訳 河出文庫
『悪徳の栄え 下』マルキ・ド・サド著 澁澤龍彦訳 河出文庫

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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最後までありがとうございました。

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