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■2015/11/17 (Tue)
※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

第4章 美術市場の闇

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14
「ところでねぇ、ヒナちゃん、どうしてる? 元気ぃ?」
 かな恵は別の話題に切り替えた。
 ツグミはヒナとかな恵の関係は詳しく知らないけど、「ヒナちゃん」と呼んでいるからきっと親しい仲なのだろう。
「それが、研究所に行ったきり、何も連絡がなくて。かな恵さんのところにも何もないんですか?」
 ツグミはテーブルに肘を載せて、苦笑いしつつ答えた。
 ほんの一瞬、かな恵にあの夜の事件について、話してしまおうかと思った。だけど、かな恵を危険な事件に巻き込むわけには行かない。
 かな恵は沈んだ顔で首を左右に振って、泣き出すように顔を覆った。
「私のところにも何も……。私とヒナちゃん、あんなに深く好き合っていたのに。連絡もしてくれないなんて……」
「え? え? それは、えっと……」
 ツグミは困惑して、口の中でもごもごとしてしまった。今まで考えもしなかった2人の関係に、頭の中がいきなり破裂しそうになってしまった。
 ヒナお姉ちゃんとかな恵さんって、そんな関係やったの……?
 すると、かな恵はきょとんとした顔でツグミを振り返った。
「一緒にご飯を食べたり、絵を描いたりしてただけやけど。あかんかった?」
「あ、何だ……」
 ツグミは自分の勘違いに気付き、かぁと熱くなった顔を両掌で隠した。恥ずかしぃ……。
「でもねぇ、本当に心配なんやぁ。ヒナちゃん、ある日突然、別の美術館に移っちゃったやろ? 移籍になるなんて私、聞かされてなかったから」
 かな恵は不安そうな顔で、ツグミをじっと見詰めた。
「かな恵さんも聞いてなかったんですか? 実は、私やルリお姉ちゃんにも相談してくれなかったんです。ある日、突然仕事場が変わるから、って。かな恵さん、美術館内でそういう話はなかったんですか?」
 ツグミは何となく訝しげなものを感じて、身を乗り出して訊ねた。
「そうなんやぁ。ううん、何も。そもそも私、部署が違うから、そういう話まで入ってこおへんねんなぁ。噂では、ずっと上のほうで何かやりとりがあったらしくて、それでヒナちゃんが神戸西洋美術館に行くことになった、みたいに聞いたんやけど……」
 かな恵は頬杖を突きつつ、スプーンでコーヒーを撹拌しながら、不安をぽつぽつと語るように話を続けた。
 ツグミは何か引っ掛かるものを感じて、首を傾げてかな恵を覗き込むようにした。かな恵の話はまだ続いた。
「あの美術館、神戸西洋美術館って、良くない噂があるでしょう?」
 かな恵が顔を上げた。
 ツグミはドキッとして身を引いた。宮川大河やあの夜の事件を知っているのかと思った。
「いえ、知らないです。話してくれませんか。ヒナお姉ちゃんのこと、ちゃんと知りたいから」
 ツグミは動揺を留めつつ、慎重な感じに訊ねた。
 かな恵は、椅子をツグミの側に寄せて、身を乗り出して声を潜めた。
「あの美術館な、裏で贋作を作っているらしいんや。今の館長が中国の人っていうのは、知っとおよね? あの人な、その以前は中国で制作した贋作を、日本に輸入する仕事を請け負ってたらしいんやぁ。それで今は、日本国内で贋作を作り、販売するために館長に就任したって言われてるんや。ほら、日本の人って、美術品の価値判断ってあまりできへんやろ? 有名だったら何でも買っちゃう感じだから、日本のお金持ちって、ええお客さんらしいねん」
「本当ですか? それ犯罪です。どうして警察は……」
 ツグミもかな恵に顔を寄せ、ひそひそ話をする感じに声を低くした。
「あくまでも噂やから。証拠があるわけじゃないねん。ただ、今、日本中で贋作絵画が広まりつつあるらしいんや。それに釣られて、美術市場もどんどん下落しているらしくて。でも、贋作に引っ掛かった人って、皆どこか後ろ暗いところがあるし、引っ掛かったことにすら気付いていない人もたくさんいるやろ。だからなかなか表沙汰にならへんのや」
 かな恵はさらに声を低くして、話を進めていった。
 ツグミはぽかんとしてしまって、話が頭の中を通り過ぎてしまいそうになってしまった。
 美術の市場で、そんな異変が起きているなんて全く知らなかった。美術館同士で交わされている噂なんて知らなかったし、神戸西洋美術館の裏の顔なんて、考えもしなかった。
 ヒナお姉ちゃん、どうして何も相談してくれなかったんやろ……。
 ツグミは取り残されるような寂しさを感じて、暗い気持ちでうつむいた。
「ツグミちゃん、今の話、内緒な。噂やから。誰にも話したらあかんでぇ」
 かな恵はツグミを覗き込むようにして、唇に指を当てた。
「はい、もちろんです」
 ツグミは顔を上げて、2回頷いた。
 とはいえ、噂が本当だとすれば、納得できるような気がした。以前から、神戸西洋美術館の展示作品に、贋作が紛れ込んでいるのが気になっていた。学芸員が気付いていないのかと思ったけど、確信犯なら話は別だ。
 それに、宮川大河に鑑定を強要されたあの建物に、贋作が大量に置かれてあった理由もはっきりする。美術館内で贋作が作られていたのだ。
 そう考えているうちに、ツグミは何だか怖いような気持ちになった。知らない間に、大きな犯罪に巻き込まれているのかも知れない。
「ヒナお姉ちゃん、どうして何も言ってくれんかったんやろ……」
 ツグミはぽつりと呟いた。
「ヒナちゃんね、向うに移ってから、携帯の番号も変えちゃったみたいやねん。だから、ずっと連絡取れなくて……。ヒナちゃんがいなくて、私、すごく寂しい。ねえ、ツグミちゃん。今夜、家に泊まりに来おへん? ツグミちゃんはベッドで横になってるだけでいいから。臭い、嗅がせてくれるだけで、いいねん。それだけで、私、満足できると思うから」
 かな恵は辛そうな顔を浮かべて、ツグミの両掌を握って懇願した。
 ツグミはかな恵の掌から逃れて、テーブルに両手をついて頭を下げた。
「あ、あの……ごめんなさい」

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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