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■2015/11/16 (Mon)
第6章 キール・ブリシュトの悪魔

前回を読む
 螺旋の廊下は果てしなく続き、そのまま地獄に繋がっているように思えた。そんな廊下を、2人は靴音を鳴らしながら下りていった。
 すると向こうの方から、誰かが靴音を鳴らしながらこちらに向かってきた。
 とっさにオークは腰元の柄に手を伸ばした。しかしセシルがそれをとどめた。現れたのはローブ姿の老人だった。この地下宝物庫の管理人だ。管理人は杖と手燭を持ち、魔術の炎の点検をしているところだった。

管理人
「おお、坊ちゃま。この頃はよくお越しになられる。そちらの方は、オーク殿でございますな。武勇はこんな暗いところまで届いておりますぞ」

 老人が頭を下げた。オークも頭を下げる。その物腰から、老人がただの管理人ではなく、魔術師であると同時に賢者であると察した。

セシル
「すまないが爺さん。この者にあれを見せてやってはくれないか。暗くて居場所を見失ってしまいそうだ」
管理人
「はいはい。では案内して差し上げましょう。こちらへ――」

 管理人が先頭に立って歩く。間もなく、それまでの扉とは明らかに違う、巨大な扉が現れた。管理人が鍵を開けて、重い重い鉄扉を……老人には重すぎるらしく、途中からセシルとオークが手助けをしてやっと開いた。
 すると、その向こうに思いもよらない広い空間が現れた。しかしそこに宝と呼べるものは一切なく、ただ驚くべき巨大な石像が3体、置かれているだけだった。
 石像を見て、オークは畏敬の念に打たれた。

オーク
「これは……。クー・フリンにライドリッヒ・ハイル。それにアーサー王!」

 それはケルトなら誰もが知る、「最も偉大な英雄」の3人だった。石像はいずれも伝承で語られているとおりの姿で鎧を身にまとい、胸に剣を抱いていた。堂々たる姿で、訪ねる者を見下ろしている。
 それ以上に驚くべきは、石像を目の前にする台座に置かれた3本の剣だ。

オーク
「セシル様、あれはまさか……」
セシル
「そうだ。あれこそは我が国の最大の宝だ」
オーク
「……おお。まさか、この目で見る機会が来ようとは」

 オークは感動に震え、その前に膝を着きたい衝動に囚われた。

クー・フリン=聖剣ゲー・ボルグ
ライドリッヒ・ハイル=聖剣ダーンウィン
アーサー王=聖剣エクスカリバー

 まさに伝説の中でのみ語られる幻の剣だった。

セシル
「クー・フリンの聖剣ゲー・ボルグは鞘から抜けば魔の者を引き寄せる力がある。ライドリッヒ・ハイルの聖剣ダーンウィンは斬りつける者に火を放つ。しかし正統な持ち主、つまり我が血族以外の者が柄を握れば、その者は焼き殺されるだろう。これだけは戯れに触れてはならん。そしてアーサー王の聖剣エクスカリバー。神が鍛えし最強の剣だ。……そしてこれらの剣は、王の血族が持たねば、真の力は発揮せぬ」
オーク
「つまり、王族以外にクロースの悪魔は倒せない」
セシル
「そういうことだ。悪魔は聖剣以外の武器がほとんど効かぬか、あるいはまったく効かぬ。それが、我らが王族足りうる理由だ。我が一族は、力や権威ゆえに王になったのではない。この武器を扱える血族を守るために、ケール・イズの大洪水の後、王という地位が与えられたのだ」

 セシルは首を振り、話を続けた。

セシル
「父上は40年掛けてこの宝を全て集めた。失われた伝承を蒐集し、それが指し示す場所を突き止め……気が遠くなる作業だっただろう。しかし父上は、悪魔を倒すために宝を集めたのではない」
オーク
「では一体……」
セシル
「父上はこれらの宝を民に示したかったのだ。父が執り行ってきた政治ははっきりいえば恐怖政治だ。何人もの臣下が首を落とされ、火あぶりにされた。貴族連中が未だに父上を恐れるのは恐怖心からだ。しかしそうでもしない限り、誰も王なんぞに従おうとはしない。特に貴族連中を黙らせるには、恐怖しかない。しかし父は恐怖政治など望んでいない。父が本当に望んでいたのは、真実からくる尊敬だ。大地に根を張る草木のような心だ。それだけが我々が共有すべきものであり、帰属すべき魂なのだ。今のままでは、王もいないと同じだ。人々は国も王も持たぬただの漂流民だ。だから父は、我が民に示しうる本物の宝を求めたのだ。――しかし見よ」

 セシルはエクスカリバーを手に取り、その鞘を払った。

セシル
「これが我が国の姿だ」
オーク
「まさか、そんな……」

 その剣から湧き出る神々しいまでの威風は、まさしく伝説の宝剣である証明だった。オーク自身、あの港で初めて目にした時の直感で、それと確信させたほどである。
 しかしその刃はぼろぼろに朽ちようとしていた。

セシル
「父が40年掛けて望んだ想いもここに果てた。後は滅びに任せるだけだろう。反逆者か、悪魔か、それともネフィリムか……」

 セシルはゆっくりとエクスカリバーを鞘に戻した。

オーク
「セシル様……どうして私にそんな話を?」

 しかしセシルは答えず沈黙した。

セシル
「明日までにあと13人であったな。人選は私が行おう。そなたはゆっくり休め」
オーク
「……はい」

 セシルの声に、悲しげな失望が込められていた。


※ ゲー・ボルグ 正しくは槍。剣・剣・槍だとバランスが悪いので、剣に変更した。「魔を引き寄せる力」などは実際の伝承にはない。

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