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■2009/04/13 (Mon)
シリーズアニメ■
創聖学院の拡張工事の途上で、古い遺跡が発掘されたらしい。
親父からその話を聞かされた僕は、さっそく創聖学院へと向かった。
場所は広い学園の脇に置かれた森の中。そこをずっと進んだところに、問題の現場はあった。
その一画はすでに木々が切り崩され、くり貫かれたみたいになっていた。そんな場所の只中に、いかにも曰くありげな木の祠が聳え立っていた。
幸いにも、工事現場の人たちは工具を残したまま、その周囲を立ち去っていた。工事は中断されたままの状態らしい。
僕は立ち入り禁止の柵を潜り抜けて、祠の側に近付いた。
まるで大きな墓標のような祠だった。祠には、消えかかった古い文字で「太転依(たゆたい)」と記されてあった。
僕が近付くと、凄く強い霊力を感じた。半人前の僕でも、全身にひりひりと感じるくらいだった。これをこのまま放置していては危険だ、と直感的に理解した。
「こら! スライトリーの生徒だな。こんなところで何をしている!」
すると、背後から鋭い声が飛びついた。
僕はギクッとして振り向く。きっとフローレスの執行部員だ。
創聖学院には女子学部だけの「フローレス」と、男女共学の「スライトリー」とに分けられている。女の子が着ているのは、フローレスの制服だった。
「えっと、何でグランド拡張工事が延期になったのか、気になっちゃって……」
僕はもどかしく言い訳の言葉を捜した。
「だからって、中に入る奴があるか。さあ、行くぞ」
ちょっとおっかない。ここは大人しく退散したほうが良さそうだ。
夜が遅くなってから、創聖学院に忍び込むことに決めた。
「なんや、急に呼び出して」
「なに? お祓い?」
呼び出したのは河合アメリと要三九郎の二人だ。いろいろ大仕事になるかもしれないから、協力してもらつもりだ。
僕らは諸々の道具をバイクに詰み込んで、あの工事現場へと直行した。
工事現場の周囲には明かりはなく、月明かりだけで暗く浮かんでいた。日暮れ時より、遺跡の周囲は影を濃くして、悪霊の気配を強めていた。
「事件になる前に片付けたほうがいい。あんなにはっきり霊の姿が見えるなんて、異常だよ」
といいながら、僕は必要な道具を準備した。神主の衣装に着替えて、御神酒と榊を用意する。
「ちょっと霊とか、やめてよ!」
「神社の息子に言うことか」
アメリが怯えた声をあげて、三九郎が突っ込みを入れた。タイミングのよさはさすが関西人だ。
僕はすぐにでも祝詞を唱え始めた。厳粛な空気が辺りを重く張り詰め、沈黙がどこまでも深まっていくようだった。
祝詞が終わる頃には、風の音すらとまっていた。
「違うよこれ。時間が止まってる!」
アメリが空中を指して声をあげた。見ると、宙を漂う木の葉が、そこで動きを止めていた。
突然に、祠が強い光を放った。僕はうっと目を閉じて、光から目を背けた。やがて強い光が収まり、もう一度目を開けると、祠の上に、大きな影が現れていた。
真っ白な髪をした、女神だった。
「太転依さま?」
「私は大和の東を統べたる綺久羅美守毘売(きくらみかみのひめ)と申す」
綺久羅美守毘売は厳粛な空気を湛えながら名乗った。
綺久羅美守毘売……家の神社で祭っている神様じゃないか!
「ここには、大小様々な太転依が封じられています。千五百種。総数にして数万匹。解き放たれれば、現世は大変な騒ぎになりましょう。断じて、この繭を別の場所に移しても、破壊してもなりません」
「難儀な場所やったんやな……」
三九郎が茫然と呟いた。
僕は同意して、重く頷いた。理事長たちにはよく話して理解してもらうしかない。
その時だ。静止していた風が動き始めた。風は強く、不自然な渦を巻き始めた。
強烈な風と共に、底のほうから邪悪な気配が立ち昇ってくるのを感じた。
「アメリ! バイクでここを離れるんだ!」
これは危険かもしれない。僕はすぐにアメリに避難するように指示した。
アメリは大人しく従って、バイクに跨った。だが、キーを捻ってもバイクは動き出さない。いや、エンジンはかかっている。いくらレバーを握っても、バイクは空回りするばかりだった。
突然に、バイクが暴走した。バイクはアメリを振り落として、勝手に前方に進みだした。
あっと思う間もなく、バイクは祠に激突した。祠の中央に、真っ二つに亀裂が走った。
邪悪な気配は一気に強くなった。彼らを押しとどめておくものはなくなり、一斉に夜の闇に溢れ出した。綺久羅美守毘売の姿も、闇に捉われるように姿を消してしまった。
「綺久羅美様!」
僕は綺久羅美守毘売を失ってはいけない、と強く叫んだ。
すると、
「はーい」
この場にふさわしくないくらい、軽い返事が返ってきた。
振り向くと、そこに小さな女の子がいた。長い銀髪に和装姿で、狐の耳と尻尾を持っていた。それから、自分よりも大きなハンマーを持っていた。
「だ、誰?」
僕は困惑して、少女に尋ねた。
「みんな、お仕置き!」
少女は僕の疑問には答えず、強い眼差しであたりを漂う悪霊を睨みつけた。
男性キャラクターより、女性キャラクターのほうが圧倒的な印象をもたらす。いわゆる、ハーレム・アニメだが、主人公の少年がやたら持てる理由は、例によって不明である(そこはただの願望の実現なので、論じる意味は不要であるが)。
ところで、泉戸祐理はどうして河合アメリと要三九郎を連れてきたのだろう。役に立っていないどころか、問題しか起こしていないのだが?
深い森の中に封印された、太古の悪霊。
それが解かれしとき、災いもたらす悪霊が世にはびこり、戦いのドラマが始まる。
『タユタマ』の物語には妖怪奇譚ものの背景があるが、中心となるのはコミカルなキャラクター達だ。
作品に厳粛な雰囲気が漂う瞬間もあるが、可愛らしいキャラクターが瞬時に作品の色調をリセットし、独特の空気感を作り出してしまう。
この種の様式化されたキャラクターは横顔ほど特徴が出る。シルエットは横を向いているが、瞳が正面に向けらているのがわかるだろう。常に見る側の視線を意識したデザインだ。『らき☆すた』と較べてみると面白いかもしれない。
キャラクターたちは極端に潰しと伸ばしを繰り返し、独特な感性で構築されている。
小さな顔に、大きな瞳。キャラクターに付属された装飾は大袈裟なくらい過剰で、アクションは重力から解き放たれて、自由に飛び交う。
それでいながら、キャラクターたちには独特の様式美が貫かれている。
アニメーションヒロインの形式としては、普遍的な勢力を持ったジャンルである。
この種のヒロインの特徴は、過剰に性的であることだ。キャラクターデザインは性的な部分を過剰に大きく描き、キャラクター同士のやり取りの中でも、セクリャシティを喚起する言葉が連発する。大きなお友達用アニメの特徴だ。
だが、この種のデザインは過剰な様式化のために、演技空間に一定の制限が加えられている。
静止画のイラストレーションにおいては躍動感を持ったキャラクターたちも、パースティクティブを持った動画作品になると、むしろ奔放な魂を失ってしまう。
キャラクター同士の演技も立体的な感覚が乏しく、どの構図も平面的になってしまっている。
それが映像作品として、ひどく平凡な印象を与えてしまっている。
第1話後半からして、妖怪奇譚ものの色彩は完全に消滅する(というか、もののけデザインが可愛すぎるので、妨害者としての印象が弱い)。街に散った妖怪ほったらかしで、泉戸祐理の取り合いを始める。
作家の狙いは、厳密な演技空間を持ったドラマではなく、可愛らしいヒロイン達の戯れだろう。
美しいヒロインが華麗に宙を飛び交い、一人の青年を巡って奪い合いを繰り広げる。
作品の独特の色調は、作家の意図によって自由に操作されている。
コミカルな美少女が飛び交うヒロイック・ファンタジー。
だが、できれば夜中に一人でこっそり見たいアニメだ。
作品データ
監督:元永慶太郎 原作:Lump of Sugar
キャラクター原案:萌木原ふみたけ キャラクターデザイン:大河原晴男
クリーチャーデザイン:門智昭 秋山由樹子
プロップデザイン:野田めぐみ 大梶博之 総作画監督:大河原晴男
色彩設計:末長康子 美術監督:下山和人
撮影監督:笠井亮平 音楽:大川茂仲 蓑部雄祟
アニメーション制作:SILVER LINK
出演:日野聡 力丸乃りこ 下田麻美 置鮎龍太郎
伊藤静 若本規夫 丹沢晃之
水見はるか 岸尾だいすけ 中川理江
親父からその話を聞かされた僕は、さっそく創聖学院へと向かった。
場所は広い学園の脇に置かれた森の中。そこをずっと進んだところに、問題の現場はあった。
その一画はすでに木々が切り崩され、くり貫かれたみたいになっていた。そんな場所の只中に、いかにも曰くありげな木の祠が聳え立っていた。
幸いにも、工事現場の人たちは工具を残したまま、その周囲を立ち去っていた。工事は中断されたままの状態らしい。
僕は立ち入り禁止の柵を潜り抜けて、祠の側に近付いた。
まるで大きな墓標のような祠だった。祠には、消えかかった古い文字で「太転依(たゆたい)」と記されてあった。
僕が近付くと、凄く強い霊力を感じた。半人前の僕でも、全身にひりひりと感じるくらいだった。これをこのまま放置していては危険だ、と直感的に理解した。
「こら! スライトリーの生徒だな。こんなところで何をしている!」
すると、背後から鋭い声が飛びついた。
僕はギクッとして振り向く。きっとフローレスの執行部員だ。
創聖学院には女子学部だけの「フローレス」と、男女共学の「スライトリー」とに分けられている。女の子が着ているのは、フローレスの制服だった。
「えっと、何でグランド拡張工事が延期になったのか、気になっちゃって……」
僕はもどかしく言い訳の言葉を捜した。
「だからって、中に入る奴があるか。さあ、行くぞ」
ちょっとおっかない。ここは大人しく退散したほうが良さそうだ。
夜が遅くなってから、創聖学院に忍び込むことに決めた。
「なんや、急に呼び出して」
「なに? お祓い?」
呼び出したのは河合アメリと要三九郎の二人だ。いろいろ大仕事になるかもしれないから、協力してもらつもりだ。
僕らは諸々の道具をバイクに詰み込んで、あの工事現場へと直行した。
工事現場の周囲には明かりはなく、月明かりだけで暗く浮かんでいた。日暮れ時より、遺跡の周囲は影を濃くして、悪霊の気配を強めていた。
「事件になる前に片付けたほうがいい。あんなにはっきり霊の姿が見えるなんて、異常だよ」
といいながら、僕は必要な道具を準備した。神主の衣装に着替えて、御神酒と榊を用意する。
「ちょっと霊とか、やめてよ!」
「神社の息子に言うことか」
アメリが怯えた声をあげて、三九郎が突っ込みを入れた。タイミングのよさはさすが関西人だ。
僕はすぐにでも祝詞を唱え始めた。厳粛な空気が辺りを重く張り詰め、沈黙がどこまでも深まっていくようだった。
祝詞が終わる頃には、風の音すらとまっていた。
「違うよこれ。時間が止まってる!」
アメリが空中を指して声をあげた。見ると、宙を漂う木の葉が、そこで動きを止めていた。
突然に、祠が強い光を放った。僕はうっと目を閉じて、光から目を背けた。やがて強い光が収まり、もう一度目を開けると、祠の上に、大きな影が現れていた。
真っ白な髪をした、女神だった。
「太転依さま?」
「私は大和の東を統べたる綺久羅美守毘売(きくらみかみのひめ)と申す」
綺久羅美守毘売は厳粛な空気を湛えながら名乗った。
綺久羅美守毘売……家の神社で祭っている神様じゃないか!
「ここには、大小様々な太転依が封じられています。千五百種。総数にして数万匹。解き放たれれば、現世は大変な騒ぎになりましょう。断じて、この繭を別の場所に移しても、破壊してもなりません」
「難儀な場所やったんやな……」
三九郎が茫然と呟いた。
僕は同意して、重く頷いた。理事長たちにはよく話して理解してもらうしかない。
その時だ。静止していた風が動き始めた。風は強く、不自然な渦を巻き始めた。
強烈な風と共に、底のほうから邪悪な気配が立ち昇ってくるのを感じた。
「アメリ! バイクでここを離れるんだ!」
これは危険かもしれない。僕はすぐにアメリに避難するように指示した。
アメリは大人しく従って、バイクに跨った。だが、キーを捻ってもバイクは動き出さない。いや、エンジンはかかっている。いくらレバーを握っても、バイクは空回りするばかりだった。
突然に、バイクが暴走した。バイクはアメリを振り落として、勝手に前方に進みだした。
あっと思う間もなく、バイクは祠に激突した。祠の中央に、真っ二つに亀裂が走った。
邪悪な気配は一気に強くなった。彼らを押しとどめておくものはなくなり、一斉に夜の闇に溢れ出した。綺久羅美守毘売の姿も、闇に捉われるように姿を消してしまった。
「綺久羅美様!」
僕は綺久羅美守毘売を失ってはいけない、と強く叫んだ。
すると、
「はーい」
この場にふさわしくないくらい、軽い返事が返ってきた。
振り向くと、そこに小さな女の子がいた。長い銀髪に和装姿で、狐の耳と尻尾を持っていた。それから、自分よりも大きなハンマーを持っていた。
「だ、誰?」
僕は困惑して、少女に尋ねた。
「みんな、お仕置き!」
少女は僕の疑問には答えず、強い眼差しであたりを漂う悪霊を睨みつけた。
男性キャラクターより、女性キャラクターのほうが圧倒的な印象をもたらす。いわゆる、ハーレム・アニメだが、主人公の少年がやたら持てる理由は、例によって不明である(そこはただの願望の実現なので、論じる意味は不要であるが)。
ところで、泉戸祐理はどうして河合アメリと要三九郎を連れてきたのだろう。役に立っていないどころか、問題しか起こしていないのだが?
深い森の中に封印された、太古の悪霊。
それが解かれしとき、災いもたらす悪霊が世にはびこり、戦いのドラマが始まる。
『タユタマ』の物語には妖怪奇譚ものの背景があるが、中心となるのはコミカルなキャラクター達だ。
作品に厳粛な雰囲気が漂う瞬間もあるが、可愛らしいキャラクターが瞬時に作品の色調をリセットし、独特の空気感を作り出してしまう。
この種の様式化されたキャラクターは横顔ほど特徴が出る。シルエットは横を向いているが、瞳が正面に向けらているのがわかるだろう。常に見る側の視線を意識したデザインだ。『らき☆すた』と較べてみると面白いかもしれない。
キャラクターたちは極端に潰しと伸ばしを繰り返し、独特な感性で構築されている。
小さな顔に、大きな瞳。キャラクターに付属された装飾は大袈裟なくらい過剰で、アクションは重力から解き放たれて、自由に飛び交う。
それでいながら、キャラクターたちには独特の様式美が貫かれている。
アニメーションヒロインの形式としては、普遍的な勢力を持ったジャンルである。
この種のヒロインの特徴は、過剰に性的であることだ。キャラクターデザインは性的な部分を過剰に大きく描き、キャラクター同士のやり取りの中でも、セクリャシティを喚起する言葉が連発する。大きなお友達用アニメの特徴だ。
だが、この種のデザインは過剰な様式化のために、演技空間に一定の制限が加えられている。
静止画のイラストレーションにおいては躍動感を持ったキャラクターたちも、パースティクティブを持った動画作品になると、むしろ奔放な魂を失ってしまう。
キャラクター同士の演技も立体的な感覚が乏しく、どの構図も平面的になってしまっている。
それが映像作品として、ひどく平凡な印象を与えてしまっている。
第1話後半からして、妖怪奇譚ものの色彩は完全に消滅する(というか、もののけデザインが可愛すぎるので、妨害者としての印象が弱い)。街に散った妖怪ほったらかしで、泉戸祐理の取り合いを始める。
作家の狙いは、厳密な演技空間を持ったドラマではなく、可愛らしいヒロイン達の戯れだろう。
美しいヒロインが華麗に宙を飛び交い、一人の青年を巡って奪い合いを繰り広げる。
作品の独特の色調は、作家の意図によって自由に操作されている。
コミカルな美少女が飛び交うヒロイック・ファンタジー。
だが、できれば夜中に一人でこっそり見たいアニメだ。
作品データ
監督:元永慶太郎 原作:Lump of Sugar
キャラクター原案:萌木原ふみたけ キャラクターデザイン:大河原晴男
クリーチャーデザイン:門智昭 秋山由樹子
プロップデザイン:野田めぐみ 大梶博之 総作画監督:大河原晴男
色彩設計:末長康子 美術監督:下山和人
撮影監督:笠井亮平 音楽:大川茂仲 蓑部雄祟
アニメーション制作:SILVER LINK
出演:日野聡 力丸乃りこ 下田麻美 置鮎龍太郎
伊藤静 若本規夫 丹沢晃之
水見はるか 岸尾だいすけ 中川理江
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