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■2009/10/05 (Mon)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P076 第7章 幻想の解体


頭をふらふらさせながら、私は自分のソファに戻った。ぐったりと背に体を預ける。まだ胃の中が気持ち悪くて、お腹に手を添えた。他のみんなも、椅子に戻って顔を青くしたりうなだれたりしていた。人肉料理の事実は、あまりにも強烈だった。
「それで、人の肉をうっかり食べてしまった私は、何かの罪に問われるのかね?」
男爵が楽しげな微笑を浮かべながら糸色先生に訊ねた。
「さあ、どうなんでしょう。何の罪に問われないでしょうね。知らずに食べた肉ですから。ただ、厨房に残っている肉は回収させてもらいます。しかるべき場所に提出し、DNA鑑定に掛ければ蘭京太郎の肉であると明らかになるはずです」
「好きにしたまえ」
糸色先生は慎重に言葉を返すが、男爵はもう興味がないみたいに、簡単に許可を与えてしまった。
私は口元を押えながら、これ以上はないくらいの不愉快な気持ちで男爵を睨み付けた。人肉を食べてしまっても、驚くどころかあんなふうに笑っていられる人間の気持ちが理解できなかった。
「先生、あの、えっと、……それじゃ、男爵と遠藤喜一の接点を説明できるんじゃないんですか。男爵からの指示があったから、遠藤さんは行動したわけでしょう? これまでの話で、それを証明できるんじゃないですか。」
千里は口元をハンカチで拭いながら糸色先生に尋ねた。千里は本当に具合が悪そうで、顔が縦線を引いたみたいに青くなっていた。
「いいえ、無理でしょう。どう考えても男爵と遠藤喜一には接点があり、指示を受けていたのでしょう。でも、遠藤が指示を受けたのは10年前、男爵が逮捕される直前です。それ以降、二人は一切顔を合わせていないはずです。男爵は周到な男ですから。10年前の会話内容を証明するなんて、不可能です。今回の蘭京太郎の殺害は、遠藤喜一が独自に、勝手に行動した結果です。そうですね、男爵」
糸色先生は千里の意見を否定して、男爵を振り向いた。
「いかにも。私は私の生徒に、10年間、一度も顔を会わせていない。私自身、10年前、生徒にどんな話をしたかなんて、憶えていない」
男爵が一度頷いた。
「しかし望ぼっちゃま、問題があります。望ぼっちゃまの推測は憶測であり、どれも決定的ではないと思います。なぜ私が偽者であり、男爵に協力していたと言えるのか。根拠に欠けると思うのですが」
時田がはじめて、私たちの会話に割って入ってきた。その言葉が、苛立ちを込めたように重かった。
私は時田を振り返った。人の良さそうな老人の顔が、険しく皺の数を増やしている。私には、いまだに時田が偽者だなんて、信じられなかった。
糸色先生が、にやりと口元をゆがめて、指を一本突き立てた。
「ありますよ。決定的な証拠なら。あまりにも決定的で、誰もが納得する証拠があるんですよ」
「それはいったい……」
時田の顔が緊張で引き攣り始めた。
「それはそこにいる彼です!」
糸色先生は勢いよく振り返って指をさした。私たちは、全員で糸色先生が指した方向を振り返った。
「ふう、やっと僕の出番ですか」
糸色先生の右後方、私の左横の空間だった。でもそこには、何もなかった。少し向かったところに、灰と埃の詰まった暖炉が設置されているのが見えた。人の気配どころか、重要そうな何かがあるような感じもなかった。
「誰もいないじゃないか?」
一番に言ったのは男爵だった。
ここにいますよ、ちゃんと!
私たちも同じ意見だった。何のつもりなんだろう、と私は糸色先生を振り返って、意図を探ろうとした。
「先生、こんなところで変なボケを入れないでください!」
千里が糸色先生を叱るように身を乗り出させた。
「おっかしいなぁ。確かにそこにいたような気がしたんですが……」
糸色先生自身、困惑するように頭の後ろを掻いて、何か探すように見回していた。
ここですよここ! ちゃんといますよ! なんですか、この扱いは。せっかくかっこいい場面なのに
何となく、不快な空気が辺りに漂うような感覚があった。私は無意識に自分の腕をさすっていた。
「なんか、空気が淀んでいるよね。窓開けない?」
藤吉が隣に座っている千里に声をかけた。
「そうね。みんな吐いちゃったことだし。」
千里が同意して頷いた。
千里と藤吉が二人で席を立って、窓の前まで進んだ。窓は大きく、曲線を持ったフレームの、両開き式のものだった。その窓を開けると、冷たい風が足元をなでるように流れ込んできた。心地よい風ではなかったけど、部屋一杯に漂う据えた異臭から少し解放される気がした。
すると私のすぐ側で、何かがぱたぱたとはためいている感じがした。なんだろう、と振り向くと、いつの間にか私の側に少年がぼーっと立っていた。手にデジカメを持った臼井影郎だった。はためいていたのは、臼井のハゲ散らかした頭皮だった。
「キャア! いつからそこにいたのよ!」
私はびっくりして、ソファから飛び上がりそうになるくらいのけぞった。
ずっと一緒にいたじゃないか。一緒の新幹線に乗って蔵井沢にも行ったし、男爵の家でも一緒だったし、先生の家にも泊まったじゃないですか!
臼井は逆上したように私に言葉を返した。
「そーいう気持ち悪い嘘はやめてよ! あんたたださえキモイんだから、一緒に泊まったとかそういうの本当にやめて。側にも立たないで!」
私はこれでもかと不愉快な感情をぶつけて、虫でも追い払うように手で払った。
そんな。だいたい僕のおかげでみんな助かったんだよ? 皆が男爵に閉じ込められた時、僕が鍵を見つけて扉を開けたんだから。そうでしょ?
臼井は逆襲のように、私たちみんなに言い、最後に千里を振り返った。
「……誰?」
千里が自分の椅子の前まで進み、首をひねった。
ひどい! 2のへ組の委員長の臼井ですよ!
臼井が自分を指さして主張した。
「こんなの、いたっけ?」
千里が臼井を指さして、誰かに意見を求めるように振り返った。藤吉もまといも、本当に知らないみたいに首を振った。
ちなみに、千里やまといたちの意見によれば、扉の鍵が勝手に開いたのだそうだ。私は当然、臼井より千里たちの意見を信用した。
「まあ、冗談はさておき、話を元に戻しましょう。脱線しすぎです」
糸色先生が改めるように私たちに声をかけた。私たちは冷静な気分に戻って、糸色先生を注目した。臼井はがっかりうなだれて、糸色先生の背後に回った。
「男爵は赤木杏に改造手術を施しました。男爵は当時、東大附属植物園の研究員であり、屋敷では人体実験が行われていました。男爵は赤木杏をある目的のために、人体実験の技術を応用して改造手術を行ったのです。人体に独自に生成した葉緑体を合成させ、10年間ある場所に隠して仮死状態で眠らせるためです。10年後、計画をスタートさせるために。そのある場所こそ、私の実家でした。灯台下暗し、とはこのことを言うのでしょう。しかし計画をスタートさせるには、誰かがそのある場所へ行き、赤木杏を引き上げねばなりません。男爵自身が私の家まで来るわけには行きません。目立ちすぎますし、私たちも警戒します。そこで、ニセ時田が登場です。私の実家では、8月25日になると“見合いの義”という風変わりな行事が毎年催されていますこの期間中、無用な事故を避けるため、屋敷にいるほとんどの使用人がいなくなります。さらにニセ時田は、地下に作られた警備室で、屋敷内の人間の正確な動きを把握することができた。だからニセ時田は誰にも気付かれず、密かに赤木杏さんが眠る場所へ向かい、引き上げ、覚醒状態にして必要な栄養を与えることができた。しかし、遠藤さん。あなたは一つ見落としをしていました。あなたはその場所に向かう途上でも、充分注意したでしょう。でも世の中には、信じられないくらい存在感の薄い人間がいるのですよ。さあ、臼井君。皆に見せてやってください。決定的な証拠を!」
糸色先生は長い説明の後に、促すように臼井を振り返った。
はい
臼井が私たちの前に進み、デジカメのディスプレイに画像を写した。画面は、朝の霧がぼんやりと包む沼の風景だった。その沼から、時田が何かを引き上げようとしていた。全身が黒い泥に濡れた、裸の赤木杏だった。時田が赤木杏の両脇に手を回し、引き上げようとする瞬間だった。泥の落ちかけた赤木杏の肌ははっきりと緑色になっていて、植物の根がその体に絡みついていた。

次回 P077 第7章 幻想の解体7 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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