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■2009/10/04 (Sun)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P075 第7章 幻想の解体


糸色先生は少し無言の間を置いた。私たちの気分が改まり、空気が入れ替わる感じがあった。全員が糸色先生を注目し、授業を受けるときの体勢になっていた。
「まず、蘭京太郎について話を始めましょう。我が校の生徒を殺害したのは、蘭京太郎です。これは小森さんの明確な証言があるので、覆りません。蘭京太郎は自らの快楽のために、生徒を殺し、体の一部をホルマリン漬けのコレクションにしていました。私の推測ですが、その時からニセ時田、遠藤喜一と蘭京太郎は接点があったのでしょう。同じ趣向を持つ者同士ですから、どこかしら惹き合い、交流を持つ切掛けがあったのだと思います。7月末頃、蘭京太郎は“使用済み”になった死体の処理に困っていました。夏に入ると、死体は匂いますからね。学校の花壇に埋めて隠そうとしていましたから、相当悩んでいたのでしょう。そこで遠藤喜一は死体の有効利用を思いつき、引き取り、その末で私の家に持ち込んで放置した。死体が発見されると、まず私に容疑が向けられるでしょう。刑事起訴に至らなくても、私の社会的信用や地位はガタ落ちになります。しかし、それがむしろ、あなたの墓穴を掘ることになりました。あなたはどうやら、余計なことをする癖があるようですね。あなたは男爵の指示するとおりに動いていたら、確実に私を殺せていたのです。この余計な工作のために、蘭京太郎は男爵と遠藤喜一の計画を知った。計画を知った蘭京太郎は、遠藤喜一を脅迫しようとした。そのために、面倒になった遠藤喜一は、蘭京太郎を殺害した……」
糸色先生の言葉に迷いはなかった。一度も詰まったり、曖昧にしたりもしなかった。何もかもが、糸色先生の言葉で明白になっていくような気がした。
「それで、どこでどうやって蘭京太郎を殺害したのかね。私が言うのもなんだが、死体を隠すのは難しい。死体はばらばらにして埋めても、いつか発見されてしまう。隠そうとしても、強烈な臭いが存在を主張する。沈めても浮かび上がってしまう。この世に、人間のいない砂漠は存在しない。余程の幸運がないかぎり、死体を運び出し、隠すことはできん。さて、蘭京太郎の死体はどこに消えたのかな?」
男爵はソファのクッションにふんぞり返るように体を預け、足を組み合わせた。あまりにも緊張感のない、いや、男爵は事件の真相に気付き、そのうえであんな態度を見せているのだろう。
「ええ、死体を隠すのは非常に難しいです。人間の死体ほど、隠すのにやっかいなものはありませんからね。でも、計画的に処理を行えば不可能ではありません。はっきり言いましょう。蘭京太郎が殺されたのは、この屋敷の中です。もっといえば、厨房で殺されました。男爵、あなたは自分ではまったく料理をしないそうですね。週に2回、厨房に調理済みの料理が配送され、あなたはそれを加熱するだけでいい、と。だから、どんな人物が厨房を出入りしているのか、それすら知らない
「いかにも」
糸色先生は確認するように男爵をじっと見て訊ねた。男爵はニヤついた微笑を浮かべて頷いた。
「おそらく、ニセ時田が蘭京太郎を厨房に招きいれたのでしょう。蘭京太郎は7月初め頃、日塔さんに秘密の部屋を暴かれて、潜伏する場所を必要としていた。蘭京さんには匿ってくれる親族もいませんでしたから。すでに交流があったのなら、遠藤喜一がこの屋敷に誘い込むのは簡単だったでしょう。厨房でどのように殺害されたのかまではわかりません。しかし、どのように処理されたかは、明らかになっています。私たちの中に、証言者がいますから」
糸色先生はさらに説明を続けた。
私は自分の膝を見詰めながら、少し自分の思考に捉われていた。
7月初めのあの朝。蘭京さんは、多分、自分のコレクションを見ようと秘密の部屋に入ったのだろう。朝の早い時間だから、誰も用務員室にはやってこない。そのしばし間、自分のコレクションに囲まれた、優雅な時を味わいたいと思ったのかもしれない。
でもそこに、私と可符香が用務員室に入っていった。慌てた蘭京太郎は、判断を誤った。秘密の部屋に隠れていればよかったのに、慌てて飛び出そうとした。しかも、部屋を隠す細工が間に合わず、パニックになって窓から飛び出してしまった。
そうして、私が秘密の部屋を発見した。一つの判断ミスが招いた事件だった。
「証言者? それは誰かね」
男爵が少し身を乗り出し気味になって、答えをせがむように問いかけた。話はまだ続いている。私は顔を上げて、糸色先生の話に再び集中した。
「小節さんです。小節さん、あなたはあらゆる動物を熟知している。動物がどんなふうに調理されるかも、その味も詳しく知っている。だから、まったく知らない肉を差し出されても、あなたはそれが何の肉なのか、即座に見当をつけられた。だからあの夜、小節さんは男爵に差し出された肉料理を見て、『絶対に食べてはいけない』と皆に警告した。小節さん。あの肉は、何の肉でしたか?」
糸色先生はあびるに諭すように話しかけた。
あびるは私の右隣で、装飾もクッションもないブラウンカラーのシンプルな椅子に座っていた。私が振り向くと、あびるは思い出したように顔を青ざめさせ、口元を引き攣らせていた。
「……ひ、……人の、人間の、肉でした」
あびるは何度もつっかえながら、消え入りそうな声で答えた。
私は、腹の底からうっとせりあがってくるものを感じた。それは一気に喉を駆け上っていき、私は慌てて口元を両手で押えた。でも、我慢できなかった。私は飛び上がり、ソファの後ろに回った。そこで膝が折れて、絨毯の上に朝食を撒き散らせてしまった。
他のみんなも同じだった。みんな座っていた椅子から転げ落ちて、絨毯の上に汚物を吐いてしまっていた。
男爵だけが笑っていた。これほど愉快なものはないと言いたげに、ソファから転げ落ちそうな勢いでふんぞり返って笑っていた。
「落ち着いて。皆さんは一口も食べませんでしたから。大丈夫ですから」
糸色先生が私たちを宥めようと声を張り上げていた。でも先生、手遅れだから。

次回 P076 第7章 幻想の解体6 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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