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■2009/04/11 (Sat)
シリーズアニメ■
狭い独房の中は暗く、じめっとした雨の音で満ちていた。
少女は1107番と書かれた囚人服を脱ぎ捨てて、セーラー服に着替えた。2年ぶりに身につける女子高時代の制服は、今も体にぴったりだった。
「1107番、出ろ!」
看守の命令する声が聞こえた。
少女は両手に手錠をかけられて、独房を後にした。
すると、沈黙していた通路が一斉にざわめき始めた。ざわめきはすぐに「國子」と少女を呼ぶ合唱に変わった。
こうなるともう看守がいくらとどめようと合唱はおさまらない。國子は合唱の花道を背中に受けながら、悠然と通路を歩いていった。
間もなく、目の前に出口に繋がる扉が見えた。
そこで、國子は一度足を止めた。
「みんな!」
國子が声を変えると、ざわめきは瞬時に止まった。
「北条國子は、本日出所します!」
國子が宣言すると、拍手喝采が監獄内をいっぱいに満たした。
アニメ『シャングリ・ラ』は少女更正センターから物語が始まるが、SF物語である。
舞台は、近未来の東京。
京都議定書で決定されたCO2削減目標達成のために、東京都市は機能が完全停止するまでに森林化。
高層ビル群はジャングルに飲み込まれ、繁華街は水没してしまった。
かつての東京の住人は、空中都市《アトラス》へと移ったが、ほとんどの人はジャングルとスラムに残され、独自に地域社会を構築していった。
アニメーションは、パースを正確に引くだけでも見違えて説得力のある世界観を描き出すとことができる。あとはとにかく線を引くだけだ。天才的な美意識のない者は、努力で成功する以外にない。
『シャングリ・ラ』の物語は少女更正センターから始まり、水路から見上げたジャングル化した東京都市を捉え、その向うのスラムの風景を見せる。
世界の変化を台詞に頼らず映像で語り、見る者を自然な感性のまま条理世界からSF的世界へと誘おうとしてる。
崩壊したSF的風景は、ありがちな退廃のビジョンだが、街の風景や住人に暗い影はない。
むしろ活気に満ちており、お祭り的非日常的空気が全体に溢れている。
経済原理が世界の姿そのものが変化させてしまう。新たな世紀末ビジョンは、科学文明ではなく、市場原理の結果として描かれる。スラム化した地域社会はディオニソス的異空間が描かれる。アニメでは、しばしばこの状態が人間主義の理想として描かれる。
いかにもデザイナーが奔放にイメージを膨らませたように見えるが、底辺の部分では経済サスペンスの様式が採用されている。
炭素税取引をはじめとする経済ミステリーが世界観の底流に流れ、ビジュアルの背景を支えている。
もちろん、そこにもアニメーション的なケレンが張り巡らされている。
世界の頂点に立つ黒幕は、むっさい親父どもではなく、可憐な乙女達だ。
主人公の少女を含めると、『シャングリ・ラ』を動かしているのは、美しい女性たちだといえる。
ケレン味に満ちた世界観だが、ドラマの流れは弱い。アクションはどのカットも重量感不足。後半のクライマックスも、急激なドラマの流れを作り出せていない。デザインは素晴らしいが、ゴンゾーの美点と弱点が今回も現れてしまっている。
SF的虚構世界は、常に緊張が孕み、アクションの切っ掛けを作ろうとする。
少女國子の周囲には何かしら陰謀の影が暗躍し、時に実力行使を下そうと刺客が送り込まれる。
國子の姿は弱々しい少女の姿で描かれている。
あまりにも細く、頼りなげな少女らしい身体。かわいらしい丸顔の容姿に、美しい白い肌。短いスカートから伸びる脚はスラリと長く、フェテッシュな感性をそそる。
だがアクションが始まると、少女は重力を無視して跳躍し、どこまでも自由に、奔放に駆け回る。
堅牢に構築された世界観と、跳躍したアクションが高次元に融合している。
日本アニメーションらしいケレンとフェテッシュが同居する作品だ。
作品データ
監督:別所誠人 原作:池上永一
キャラクターデザイン:村田蓮爾 デザインワークス:草薙琢仁 飯田馬之介
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:石井久美
メカニカルデザイン:佐山善則 片貝文洋 川原智弘 美術デザイン:佐藤肇
美術監督:池田繁美 色彩設計:三笠修
撮影監督:佐藤勝史 編集:重村建吾
音楽:黒石ひとみ 脚本:大野木寛 題字・オープニング絵コンテ:樋口真嗣
アニメーション制作:GONZO
出演:高橋美佳子 井口裕香 有賀由衣 石川真
石塚理恵 京田尚子 堀内賢雄 五十嵐麗
櫻井孝宏 平川大輔 中村悠一 福山潤
鈴森勘司 柿原徹也
少女は1107番と書かれた囚人服を脱ぎ捨てて、セーラー服に着替えた。2年ぶりに身につける女子高時代の制服は、今も体にぴったりだった。
「1107番、出ろ!」
看守の命令する声が聞こえた。
少女は両手に手錠をかけられて、独房を後にした。
すると、沈黙していた通路が一斉にざわめき始めた。ざわめきはすぐに「國子」と少女を呼ぶ合唱に変わった。
こうなるともう看守がいくらとどめようと合唱はおさまらない。國子は合唱の花道を背中に受けながら、悠然と通路を歩いていった。
間もなく、目の前に出口に繋がる扉が見えた。
そこで、國子は一度足を止めた。
「みんな!」
國子が声を変えると、ざわめきは瞬時に止まった。
「北条國子は、本日出所します!」
國子が宣言すると、拍手喝采が監獄内をいっぱいに満たした。
アニメ『シャングリ・ラ』は少女更正センターから物語が始まるが、SF物語である。
舞台は、近未来の東京。
京都議定書で決定されたCO2削減目標達成のために、東京都市は機能が完全停止するまでに森林化。
高層ビル群はジャングルに飲み込まれ、繁華街は水没してしまった。
かつての東京の住人は、空中都市《アトラス》へと移ったが、ほとんどの人はジャングルとスラムに残され、独自に地域社会を構築していった。
アニメーションは、パースを正確に引くだけでも見違えて説得力のある世界観を描き出すとことができる。あとはとにかく線を引くだけだ。天才的な美意識のない者は、努力で成功する以外にない。
『シャングリ・ラ』の物語は少女更正センターから始まり、水路から見上げたジャングル化した東京都市を捉え、その向うのスラムの風景を見せる。
世界の変化を台詞に頼らず映像で語り、見る者を自然な感性のまま条理世界からSF的世界へと誘おうとしてる。
崩壊したSF的風景は、ありがちな退廃のビジョンだが、街の風景や住人に暗い影はない。
むしろ活気に満ちており、お祭り的非日常的空気が全体に溢れている。
経済原理が世界の姿そのものが変化させてしまう。新たな世紀末ビジョンは、科学文明ではなく、市場原理の結果として描かれる。スラム化した地域社会はディオニソス的異空間が描かれる。アニメでは、しばしばこの状態が人間主義の理想として描かれる。
いかにもデザイナーが奔放にイメージを膨らませたように見えるが、底辺の部分では経済サスペンスの様式が採用されている。
炭素税取引をはじめとする経済ミステリーが世界観の底流に流れ、ビジュアルの背景を支えている。
もちろん、そこにもアニメーション的なケレンが張り巡らされている。
世界の頂点に立つ黒幕は、むっさい親父どもではなく、可憐な乙女達だ。
主人公の少女を含めると、『シャングリ・ラ』を動かしているのは、美しい女性たちだといえる。
ケレン味に満ちた世界観だが、ドラマの流れは弱い。アクションはどのカットも重量感不足。後半のクライマックスも、急激なドラマの流れを作り出せていない。デザインは素晴らしいが、ゴンゾーの美点と弱点が今回も現れてしまっている。
SF的虚構世界は、常に緊張が孕み、アクションの切っ掛けを作ろうとする。
少女國子の周囲には何かしら陰謀の影が暗躍し、時に実力行使を下そうと刺客が送り込まれる。
國子の姿は弱々しい少女の姿で描かれている。
あまりにも細く、頼りなげな少女らしい身体。かわいらしい丸顔の容姿に、美しい白い肌。短いスカートから伸びる脚はスラリと長く、フェテッシュな感性をそそる。
だがアクションが始まると、少女は重力を無視して跳躍し、どこまでも自由に、奔放に駆け回る。
堅牢に構築された世界観と、跳躍したアクションが高次元に融合している。
日本アニメーションらしいケレンとフェテッシュが同居する作品だ。
作品データ
監督:別所誠人 原作:池上永一
キャラクターデザイン:村田蓮爾 デザインワークス:草薙琢仁 飯田馬之介
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:石井久美
メカニカルデザイン:佐山善則 片貝文洋 川原智弘 美術デザイン:佐藤肇
美術監督:池田繁美 色彩設計:三笠修
撮影監督:佐藤勝史 編集:重村建吾
音楽:黒石ひとみ 脚本:大野木寛 題字・オープニング絵コンテ:樋口真嗣
アニメーション制作:GONZO
出演:高橋美佳子 井口裕香 有賀由衣 石川真
石塚理恵 京田尚子 堀内賢雄 五十嵐麗
櫻井孝宏 平川大輔 中村悠一 福山潤
鈴森勘司 柿原徹也
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