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■2009/09/10 (Thu)
映画:日本映画■
時は戦国。争いあう三つの国があった。
野心の強い《山名》の軍勢は、莫大な富を抱える《秋月》を侵略。
激戦の果てに《秋月》を攻略した。
だが、《秋月》の城にあるはずの黄金は、どこにも見つからなかった。
《山名》は何としても黄金を手に入れようと、労働者を動員して、秋月城の地下を掘らせていた。
間もなくして、秋月城の地下から何かが噴出した。
もしや黄金か、と兵士たちが松明をもって集っていく。
だが、それを見た武蔵は「瘴気だ」と気付いて労働現場から脱出。
突如、爆発が起きた。ガスに火がついたのだ。
炎はどこまでも勢いをつけて、原形をとどめていた秋月城は木っ端微塵に吹き飛んだ。
労働者たちに騒動と叛乱が起き、武蔵は騒動のどさくさに紛れて脱出する。
リメイクされた『隠し砦の三悪人』はオリジナル版と違うイメージで制作されている。主人公二人からして、設定が違う。旧作はスターウォーズのR2-D2とC-3POの元ネタとなった。新しい主人公である武蔵は、はっきりと旧作にない人物だ。主体性を持ち、聡明で美形。旧作の農民キャラとははっきり違う。
武蔵はそのまま《山名》の軍団から逃げおおせるが、いつの間にか男がついてきていた。樵の新八と名乗る男だった。
武蔵と新八は、人で逃走を続ける。
やがて河原に行き着いて、水分を補給しようと水を飲んでいると、ふと黄金色に輝く流木に気付く。
なんだろう、と手に取ると、中から出てきたのは黄金であった。
まさか、《秋月》が隠した黄金か。
周囲を見回すと、黄金色に輝く流木はいくつもあった。
だがその直後、山に潜伏する野伏せりの男に、二人は捕まってしまう。
新しい雪姫も旧作とまったく違う人物だ。旧作は美や可憐さとは程遠いキャラクターだった。新しい『隠し砦の三悪人』では、ドラマ部分に深く介入するために、言葉を喋れる設定になっている。
武蔵と新八が連れてこられたのは、谷に隠された秘密の砦であった。
そこは、《秋月》の残党が潜む隠れ家。野伏せりの正体は、《秋月》の侍、真壁六郎太であった。
秘密を知った武蔵と新八は、真壁六郎太に殺されそうになるが、とっさの機転で「黄金を無事に運び出す方法」を真壁六郎太に教える。
武蔵の機転に感心した真壁六郎太は、役に立つかもしれない、と連れて行くことを決心。
同時に、《秋月》の兵士らも隠し砦の存在に気付き、300人の兵を率いて攻撃を開始。
真壁六郎太は、隠し砦に隠していた雪姫を引き連れ、武蔵と新八とともに脱出を試みる。
左のカットは明らかにダースベイダーだ。樋口真嗣監督は、はっきり『スターウォーズ』世代と公言している。だから『隠し砦の三悪人』のリメイクというよりは、『スターウォーズ』よりの描かれ方となっている。『スターウォーズ』の新邦訳という見方もあるだろう。
『隠し砦の三悪人』といえば、名匠黒澤明監督の代表作の一篇である。
困難な状況におかれた三人が、知恵と絞りあって切り抜けていく物語だ。
リメイク作品である『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』は、巨匠の傑作に大胆な改変を加え、新たな作品として再生している。
新しい『隠し砦の三悪人』は、実景をさらにデジタルエフェクトによって補強し、より空想的なビジョンを強めている。
リアリズムを持った戦国時代絵巻というより、まったくの空想物語として描くためだ。
映像も俳優も、より洗練されたイメージで描かれ、過去作品の野獣のような印象は薄まった。
俳優はより精悍で、女性は可憐に、男も女も美しく清潔な印象で描かれている。
旧作より明るく、親しみが感じられる映画に変わっている。
樋口真嗣は物語の進行を停滞させてでも、情緒を描き出そうとする。一方、黒澤明はカットの構成を重視しすぎる監督だ。隠し砦に潜む郎党達も、ほとんどがロングサイズで顔の判別がつかず、独白もなかった。一方、樋口監督は俳優にとことんカメラを接近させる。物語に重要でなくても、何かを語らせようとする。この監督の感性の違いが、新旧の違いである。
『隠し砦の三悪人』の本質は脱出にある。
あえて困難な状況が設定され、そこからいかに脱出を試みるか。
新しい『隠し砦の三悪人』は、あらすじとシチュエーションだけを旧作と同じに描き、「脱出方法」だけを新しく描きなおしている。
もしも、あの三人が違う方法で脱出したら。その場合、どのような物語の変化が訪れるのか。(ゲームでいうところの“2週目”的な内容だ)
新しい『隠し砦の三悪人』はそんな“もしも”を描き、大胆なデジタル技術でドラマを補強した映画だ。
新しい『隠し砦の三悪人』は、旧作が寡黙に思えるくらい、あまりにも雄弁だしずっとスピーディに物語が展開する。
旧作では緩慢に準備されていたあらすじは、わずか20分という剛速球でまとめられている。
どんな場面でも必ず伴奏音楽が演奏され、どのシーンも印象的にしている。
人間のドラマは、確実に情緒を強める方向で描かれている。
『隠し砦の三悪人』は、アクション巨編としてのダイナミズムはより過激に、ドラマはより濃厚に、エンターティメント映画として楽しめる映画として復活した。
映画記事一覧
作品のデータ
監督:樋口真嗣 音楽:佐藤直紀 脚本:中島かずき
オリジナル脚本:菊島隆三 小国英雄 橋本忍 黒澤明
撮影:江原祥二 編集:上野聡一
出演:松本潤 阿部寛 長澤まさみ 宮川大輔 椎名桔平
〇〇〇甲本雅裕 皆川猿時 小松和重 田鍋謙一郎 古田新太
〇〇〇坂野友香 中村橋弥 生瀬勝久 國村隼 高嶋政宏
野心の強い《山名》の軍勢は、莫大な富を抱える《秋月》を侵略。
激戦の果てに《秋月》を攻略した。
だが、《秋月》の城にあるはずの黄金は、どこにも見つからなかった。
《山名》は何としても黄金を手に入れようと、労働者を動員して、秋月城の地下を掘らせていた。
間もなくして、秋月城の地下から何かが噴出した。
もしや黄金か、と兵士たちが松明をもって集っていく。
だが、それを見た武蔵は「瘴気だ」と気付いて労働現場から脱出。
突如、爆発が起きた。ガスに火がついたのだ。
炎はどこまでも勢いをつけて、原形をとどめていた秋月城は木っ端微塵に吹き飛んだ。
労働者たちに騒動と叛乱が起き、武蔵は騒動のどさくさに紛れて脱出する。
リメイクされた『隠し砦の三悪人』はオリジナル版と違うイメージで制作されている。主人公二人からして、設定が違う。旧作はスターウォーズのR2-D2とC-3POの元ネタとなった。新しい主人公である武蔵は、はっきりと旧作にない人物だ。主体性を持ち、聡明で美形。旧作の農民キャラとははっきり違う。
武蔵はそのまま《山名》の軍団から逃げおおせるが、いつの間にか男がついてきていた。樵の新八と名乗る男だった。
武蔵と新八は、人で逃走を続ける。
やがて河原に行き着いて、水分を補給しようと水を飲んでいると、ふと黄金色に輝く流木に気付く。
なんだろう、と手に取ると、中から出てきたのは黄金であった。
まさか、《秋月》が隠した黄金か。
周囲を見回すと、黄金色に輝く流木はいくつもあった。
だがその直後、山に潜伏する野伏せりの男に、二人は捕まってしまう。
新しい雪姫も旧作とまったく違う人物だ。旧作は美や可憐さとは程遠いキャラクターだった。新しい『隠し砦の三悪人』では、ドラマ部分に深く介入するために、言葉を喋れる設定になっている。
武蔵と新八が連れてこられたのは、谷に隠された秘密の砦であった。
そこは、《秋月》の残党が潜む隠れ家。野伏せりの正体は、《秋月》の侍、真壁六郎太であった。
秘密を知った武蔵と新八は、真壁六郎太に殺されそうになるが、とっさの機転で「黄金を無事に運び出す方法」を真壁六郎太に教える。
武蔵の機転に感心した真壁六郎太は、役に立つかもしれない、と連れて行くことを決心。
同時に、《秋月》の兵士らも隠し砦の存在に気付き、300人の兵を率いて攻撃を開始。
真壁六郎太は、隠し砦に隠していた雪姫を引き連れ、武蔵と新八とともに脱出を試みる。
左のカットは明らかにダースベイダーだ。樋口真嗣監督は、はっきり『スターウォーズ』世代と公言している。だから『隠し砦の三悪人』のリメイクというよりは、『スターウォーズ』よりの描かれ方となっている。『スターウォーズ』の新邦訳という見方もあるだろう。
『隠し砦の三悪人』といえば、名匠黒澤明監督の代表作の一篇である。
困難な状況におかれた三人が、知恵と絞りあって切り抜けていく物語だ。
リメイク作品である『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』は、巨匠の傑作に大胆な改変を加え、新たな作品として再生している。
新しい『隠し砦の三悪人』は、実景をさらにデジタルエフェクトによって補強し、より空想的なビジョンを強めている。
リアリズムを持った戦国時代絵巻というより、まったくの空想物語として描くためだ。
映像も俳優も、より洗練されたイメージで描かれ、過去作品の野獣のような印象は薄まった。
俳優はより精悍で、女性は可憐に、男も女も美しく清潔な印象で描かれている。
旧作より明るく、親しみが感じられる映画に変わっている。
樋口真嗣は物語の進行を停滞させてでも、情緒を描き出そうとする。一方、黒澤明はカットの構成を重視しすぎる監督だ。隠し砦に潜む郎党達も、ほとんどがロングサイズで顔の判別がつかず、独白もなかった。一方、樋口監督は俳優にとことんカメラを接近させる。物語に重要でなくても、何かを語らせようとする。この監督の感性の違いが、新旧の違いである。
『隠し砦の三悪人』の本質は脱出にある。
あえて困難な状況が設定され、そこからいかに脱出を試みるか。
新しい『隠し砦の三悪人』は、あらすじとシチュエーションだけを旧作と同じに描き、「脱出方法」だけを新しく描きなおしている。
もしも、あの三人が違う方法で脱出したら。その場合、どのような物語の変化が訪れるのか。(ゲームでいうところの“2週目”的な内容だ)
新しい『隠し砦の三悪人』はそんな“もしも”を描き、大胆なデジタル技術でドラマを補強した映画だ。
新しい『隠し砦の三悪人』は、旧作が寡黙に思えるくらい、あまりにも雄弁だしずっとスピーディに物語が展開する。
旧作では緩慢に準備されていたあらすじは、わずか20分という剛速球でまとめられている。
どんな場面でも必ず伴奏音楽が演奏され、どのシーンも印象的にしている。
人間のドラマは、確実に情緒を強める方向で描かれている。
『隠し砦の三悪人』は、アクション巨編としてのダイナミズムはより過激に、ドラマはより濃厚に、エンターティメント映画として楽しめる映画として復活した。
映画記事一覧
作品のデータ
監督:樋口真嗣 音楽:佐藤直紀 脚本:中島かずき
オリジナル脚本:菊島隆三 小国英雄 橋本忍 黒澤明
撮影:江原祥二 編集:上野聡一
出演:松本潤 阿部寛 長澤まさみ 宮川大輔 椎名桔平
〇〇〇甲本雅裕 皆川猿時 小松和重 田鍋謙一郎 古田新太
〇〇〇坂野友香 中村橋弥 生瀬勝久 國村隼 高嶋政宏
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