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真・恋姫無双 第1話

2009.10.10 - シリーズアニメ
第1席 馬超、悶々とするのこと

bad6e79e.jpg馬超はゆったりと湯の中に体を沈めた。戦で緊張した体が、湯の暖かさに解けていくような心地で、思わず溜め息を漏らしてしまった。
「賊退治の後の風呂は、また格別だぜ。宴の料理もうまかったし、言うことなしだな」
それから馬超は、ぷっと噴き出してしまった。
e2481ca5.jpg「けどおかしかったな、張飛のやつ。よりによって、璃々に子供みたいって言われちゃって」
宴の出来事を思い出した。孔明が張飛の口元に何かついているのに気づいて、ハンカチで拭う。
まるで小さな子供のやり取り――それが孔明と張飛くらい幼い容姿の二人がすると、おままごとの一場面にしか見えない。
しかし、馬超はふと思い出した。
351785ef.jpg「うん? いつの間に張飛のやつ、孔明のこと真名で呼ぶようになったんだ。私がここに来てすぐの頃は違ったような。つうか何であたしのことを真名で呼んでくれないんだ! 仲間だろ、友達だろ、戦友だろ! ……いや落ち着け。私だってあいつのことを真名で呼んでないわけだし、そうだよな。何となく切っ掛けがなくてまだ真名で預けあってなかったんだよな。だからって今さら改まって、ってのもこっぱずかしいし……」
馬超は度外れて長い独り言を呟いた後で、湯の中に顔を沈めた。しばらく泡をぶくぶくと吹き上げる。
b4d212a2.jpgそれからいきなり顔を上げて、拳を振り上げた。
「よし! 風呂から上がったら、鈴々って呼んでみるか! 案外『馬超が鈴々のこと真名で呼んだから鈴々も馬超のことを翠って真名で呼ぶのだー!』とかってなったりしてな! うん!」
馬超は充分なシミュレーションを終えて、やっと風呂から上がった。

4a4490aa.jpg馬超は浴衣を身にまとって、廊下を歩いた。考え事をしていたから、少し体が熱くなりすぎた。馬超は浴衣の胸元を大きく開いて、夜の風を入れながら歩いた。
「あ、馬超!」
「ギクッ!」
いきなり現れる張飛。張飛は馬超の前まで進み、その顔を覗き込んできた。
「お風呂どうだったのだ?」
「ああ、いい湯加減だったぜ」
馬張は動揺をなんとか治めながら答えた。
「じゃあ、鈴々も入って来るのだ!」
張飛は元気よく廊下を駆け出していった。
馬張はその張飛の後ろ姿を見ながら、――絶好の機会じゃないか、と心を弾ませた。
「ああ、ちょっと、り……」
「なんなのだ」
張飛がきょとんとした顔で振り返った。
大きなつぶらな瞳。その瞳を前にして、馬張は思わず言葉が詰まってしまった。
「り、り、り……」
胸の中でどくんどくんと血が巡り走った。
「ちゃんと言ってくれないとわからないのだ」
979cee6c.jpg張飛が馬超の前まで進み、首を傾げながら覗き込んでくる。
馬超は頭の中で何かが噴火するのを感じた。
「だあ~! 何でもない! 本当に何でも!」
馬超は目を固く閉じて、叫ぶように怒鳴った。
「変な馬超なのだ。おっふろ~、おっふろ~」
張飛はすぐに気分を改めて、スキップして廊下を進んだ。

bd5fe380.jpg0a21cc96.jpg結局、張飛を鈴々と呼べなかった。落ち込む馬超は、練習しようと思いつく。張飛そっくりに書いた紙を枕に貼り付け、それを見立てにして「鈴々」と呼ぼうとする。しかし、どうしても恥ずかしくなって「鈴々」ff270ee5.jpg187ad343.jpgと呼べなかった。
そんなふうに悶々と唸っているさまを見た仲間たちが、馬超はどうしたのだろうと話し合う。ストレスから来る気鬱ではないだろうか、と孔明が考える。
9ccd7c9d.jpg6efa0010.jpg翌日も馬超は、枕に向かって「鈴々」と呼ぶ練習を続けていた。その中へ張飛は入っていき、
「馬超は西涼に帰ったほうがいいのだ!」
b2fa70f7.jpgと唐突に言い出し始める。
馬超は拒絶されたのだと思い、張飛と喧嘩。馬超は屋敷を出て行ってしまう。
張飛は馬超を気にしつつ、槍の鍛錬を積んでいた。そんな張飛に、璃々が仲直りの方法を教える。
69dd0b4b.jpg張飛はさっそく教えられた方法を実践しようと、馬超の元へ急いだ。馬超は、川辺でひとりきりで佇んでいた。
張飛は馬超の前まで飛びついていき、その頬にいきなりキスをした。
馬超はむしろパニックになった。
「ばかー! ばか! ばか! ばか!」
馬超は興奮して叫ぶと、衝動的に駆け出していった。森の中に飛び込んでいき、前も見ずに走った。そうして――木の枝に顔をぶつけ、倒れてしまった。
一度は帰った超飛だったが、仲間たちと話しているうちに不安になり、森の中へ馬超を探しに行く。
d21bb06b.jpg1c5a65a9.jpg馬超は張飛が自分を探している声に気付いて目を覚ました。茂みを越えて張飛の元へ行こうとすると、森の斜面から猪が猛然と駆け下りてくるのが見えた。
「鈴々、危ない!」
ca16d239.jpg馬超は張飛の前に飛び出した。猪から逃れようと、二人で森の中を走っていく。
馬超と張飛は、猪から逃げおおせた。いつの間にかあたりは夕暮れの光が落ちていた。
「やれやれ、これだから鈴々は……」
eb3cf2c6.jpgそう呟いて、馬超は「あれ?」と気付いた。いつの間にか張飛を鈴々て呼んでいる。
「あ、あのさ……」
「うん?」
馬超は言い出しにくいみたいに、もじもじとした。
8b5df30e.jpg「あたし、その、真名で鈴々て呼んじゃってるけど、いいのかな?」
「馬超がそうしたいなら、鈴々は構わないのだ。だって馬超は、鈴々の友達だから」
張飛は元気一杯の微笑で言葉を返した。
「そっか。そうだよな。鈴々とあたしは友達だもんな」
馬超はほっとして笑い声を上げた。笑いながら、目の端に涙を浮かべた。
なぜ張飛は馬超だけ真名で呼ばなかったのか。
e698f87d.jpg朝雲から「西涼の民は血の繋がりのない者に真名で呼ばれると、馬になるって言うから……」と聞かされたからだった。
これを機会に、孔明は結束を強めるためにも改めて、お互いの真名を預けあおうと提案。皆は全員で順番に名乗り合い、絆を確かめた。

作品データ
監督:中西伸彰 原作:BaseSon シリーズ構成:雑破業
キャラクター原案:片桐雛太 八葉香南 かんたか 日陰影次
〇〇〇〇〇〇〇〇さえき北都 しのづかあつと くわだゆうき
メインキャラクターデザイン:大島美和 キャラクターデザイン:平塚知哉
美術監督:高須賀真二 色彩設計:石黒けい
撮影監督:伊藤邦彦 編集:田村ゆり
音響監督:ハマノカズゾウ 音響効果:中野勝博 音楽:多田彰文
アニメーション制作:動画工房
出演:後藤麻衣 黒河奈美 西沢広香 鳴海エリカ
〇〇〇本井えみ 小林眞紀 雨宮侑布 澄田まりや
〇〇〇堂坂晃三 矢部雅史 蓮岳大 麻上洋子
★★★★(素晴らしい) ★★★☆(すごい) ★★☆☆(とても良い) ★☆☆☆(良い)


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