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■2015/10/29 (Thu)
第5章 蛮族の軍団

前回を読む
12
 オークは騎馬を連れて真っ直ぐ南へ下ると、間もなく人目に付きにくい森の中へと入っていった。馬から下りて、足を潜めるようにして、森の中を進む。
 すると森の斜面を降りたところに、敵の軍団の列が見えた。敵の数は圧倒的に多く、一山の列が草原をひしめき、ずっと向こうまで途切れることなく続いている。蛮族の軍団は手に武器を持ち、物々しい様子だ。馬に乗っている者もいた。王国の騎士ほど万全な装備ではないが、それでも数だけは圧倒的だったし、敵が本格的に国崩しを目論んでいるのは明らかだった。
 だが、異民族ばかりで構成された軍隊は、決して統率力が高くないようである。馬に乗った者が、走り回ってうるさく指示を与えていた。
 オーク達は敵軍に気取られないように、茂みに混じってゆっくりと接近した。そうして、しばらく敵軍の動きを見守った。無言で剣を抜き、それを仲間達への合図とした。

オーク
「目的は戦闘ではない。全力で走り抜けろ。いいな」

 オークは仲間達に指示を出す。仲間達が頷いた。
 オークが馬に乗った。仲間達も馬に乗る。一斉に森を飛び出した。
 敵も気付いた。異民族の言葉で、ぎゃあぎゃあ騒ぎ始める。だが遅かった。
 オーク達の騎馬が、敵軍に突撃した。蛮族達は突然現れる馬に蹴り倒され、疾風のごとき刃に倒れた。
 オーク達の一団は、そのまま走り抜けた。蛮族の列が、そこで寸断されてしまった。蛮族達は統制が崩れて、散り散りになり、何人かがオーク達を追いかけた。

蛮族の指揮官
「追うな! 追うな!」

 だが蛮族達は誰も指示を聞かない。
 オーク達は勢いを留めず、馬を走らせた。次の丘を駆け下りて、背の高い草むらの中へと入っていく。そこで方向転換した。

オーク
「よし戦うぞ!」

 オークが馬を左右に分けさせた。そのままぐるっと周を描き、追いかけてきた蛮族達の両翼に回った。
 蛮族達に困惑が浮かんだ。オーク達はその隙に斬り込んだ。
 騎馬が交叉する。光が走った。草原に血が飛び散り、蛮族達が倒れた。
 しかし蛮族達はまだまだ数がいた。オーク達騎馬隊を追いかけ、反撃に転じようとする。オーク達は蛮族達を戦った。今度は敵にも味方にも不利有利もない。純粋にそれぞれの武力の戦いである。
 蛮族達は、次々にやってきて戦闘に加わった。戦いは次第に激しさを増していく。草原に血が飛び、死体がいくつも転がった。兵士らの刃が何度も交叉した。
 間もなく蛮族達の勢いも途切れた。オークは仲間の騎士達を振り返った。死者はなかったが、全員五体満足というわけにはいかなかった。誰もが血を流し、血を浴びていた。だが、気力は充分だった。

オーク「もう一度行くぞ!」

 オークは丘を駆け上っていった。
 蛮族達の行列は、オークが駆け抜けたところから寸断され、まだ元通りになっていなかった。だが戦意を挫いたわけではなく、今度はオーク達の襲撃に備えて武器を手に待ち構えていた。
 オークは構わず馬の腹を蹴った。騎士達もオークに続いた。

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■2015/10/28 (Wed)
※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

第4章 美術市場の闇

前回を読む

 2人は9時に妻鳥家を出て、JR線に乗った。
 結局ツグミは、あのまま服を着替えず、上にトレンチコートだけ羽織って家を出た。
 一方のコルリは、黄ばみのついたポロシャツに、男物のベスト。よれよれで黒ずんだジーンズだった。雨の降る気配もないのに、なぜか黒い傘を持っていた。
 そんな格好でも、どこか格好いいと思えるコルリが羨ましかった。
 光太の家は西明石市だ。西明石駅から降りて、少し歩く。妻鳥家からおよそ1時間。ツグミにとっては、ちょっとした遠出だ。
 静かな住宅街に入っていくと、古い街並みは消えて、新しい家ばかりが現れる。光太の家はそんな中にあって、見た目は周囲の景観とさほど変わらない。若干、敷地面積は広めだが、規模としても佇まいとしても普通の家だった。
 それが玄関をくぐると、驚くほど広い空間が現れる。
 2階までの吹き抜けに、明るい光が目一杯射し込んでくる。高い位置にある窓が、モダンな唐草模様の透かし彫りになっていた。これが夕暮れになると、正面の白い壁に見事な影絵を写す。
 その正面の壁には、装飾は少なく、天野義孝(※1)のシルクスクリーン(※2)が一枚だけ飾られていた。知り合いを頼り、3万円という適正価格で手に入れたシルクスクリーンだった。
 ツグミとコルリが訪問すると、光太本人が出迎えてくれた。
「おお、よう来てくれたね。うん、いつ見ても可愛いねえ、2人は」
 光太はこれ以上ないくらい人の良さそうな微笑を浮かべた。
「こんにちわ、叔父さん。お邪魔します」
 ツグミとコルリは行儀よく声を揃えて、挨拶をした。
 光太の感じは美術家というより、学校の先生だ。
 髪を後ろに撫でつけ、鼻の下には口髭。いつも丸眼鏡を掛けているが、これがオシャレで、インテリの雰囲気を出していた。
 今日は気楽なワイシャツ姿だが、上にジャケットでも羽織れば、誰がどう見ても、学校の先生になる。
「まあ、上がってよ。アトリエに新しい絵があるから」
 先生みたい、とは言っても、ツグミたちが来ているときは、いつもデレデレしっぱなしだった。
 ツグミとコルリは、光太の後に従いて、廊下を右に進んでガラス張りのドアを潜り抜けた。
 すると、10畳を越える広々とした空間が現れる。ここが仕事部屋であるアトリエだ。
 光太の家は、普通の家と較べて変則的だ。1階の大部分のスペースがアトリエのために割かれているので、寝室、浴室、キッチンなどは全て2階に上げられている。
 1階にあるのは、アトリエと、後は美術品管理のための倉庫だけだった。
 それでも家が狭くならないのは、光太夫妻に子供がいないからだ。家族が2人きりだからこそ、こういった思い切った間取りができたのだ。
 アトリエは床暖房付きのフローリングだ。散らかっている様子はない。
 場所を取る画板は、全てサイズ別に棚に収まっているし、整理の難しい細々とした画材は小箱や収納家具を駆使して几帳面に片付けられている。スケッチや資料写真も、すべてカテゴリ別にカードを付けられて、書棚にきちんと並んでいた。
 画家のアトリエらしい風景は、現在進行形で絵が描き進められているキャンバスの周囲だけだった。
 そこだけ無造作に道具が散乱し、極彩色のパレットと黴臭い雑巾が置かれ、それに油の臭いがもったりと漂っていた。
 光太はいくつもの絵を同時に描き進める性質なので、キャンバスが掛けられたイーゼルが4つほど置かれていた。
「あ、叔父さん、もしかして、あれですか?」
 コルリがすぐに入口右手の、資料写真の棚の手前に置かれている絵に気付いた。
 キャンバスがイーゼルに掛けられているが、その周囲はきちんと片付けられている。ここで片付けられているのは、「完成品」を意味していた。
「そうだよ。見てごらん」
 光太は顔に誇らしげなものを浮かべて、「さあどうぞ」と手で示した。
 ツグミとコルリは、我先にと絵の前に向った。好きな作家を一番に見るドキドキが堪らない。コルリの顔にも、一杯の期待が浮かんでいた。
「へえ、これいいやん。叔父さん、傑作やで」
 コルリはお世辞ではなく、本当に感心したふうに称賛した。
 しかし、ツグミは顔をかぁ、と熱くしてしまった。
「何で? 叔父さん、これ私やん!」
 ツグミは光太を振り返り、抗議の声を上げた。
 キャンバスに描かれていたのは、青い空間に、黄色い雨合羽を着た少女だった。
 雨の感じが、淡い霧のように描かれている。ゆるい風に煽られるように、雨合羽の少女が軽く身をよじらせていた。どこか、踊っているような優雅さがあった。
 その少女がどう見ても、ツグミだった。フードを深く被り、顔のシルエットと目元がちらと見える程度だったが、間違いなくツグミだった。

※1 天野義孝 1952年生まれ。ファンタジーイラストの第1人者。アニメ・ゲーム・小説挿絵など、活動範囲は極めて広い。
※2 シルクスクリーン 孔版画技法の一つで、インクが通過する穴とインクが通過しない部分を作ることで、版画の版を製版し、印刷する技術。1950年代以降、アートに活用されるようになり、安価で良質な作品を大量に作ることができて、多くの人に販売することができるために広まった。日本では悪徳商法の一つである「絵画商法」のために評判はすこぶる悪い。美術品としての価値はない。

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※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

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■2015/10/27 (Tue)
第5章 蛮族の軍団

前回を読む
11
 伝令の馬は、城下町を全力疾走で横切り、王城に飛び込んだ。

伝令
「申し上げます! 蛮族の軍団が王城を目指して北上しております! ただちに兵士を!」

 知らせは、瞬く間に城の中へと広がった。セシルの耳にももちろん届き、セシルはただちに城内の動かせる兵士に指示を与えた。
 城内がにわかに慌ただしくなる。事態を了解した兵士達は、武器を手に持ち、馬に乗れる者は城を出て救援に向かい、それ以外の者達は来るべき戦闘に備えて城の防備を固めた。
 だが、それでは不充分だ……。敵軍がどれほどの規模かわからない。もしも大軍勢なら、今の備えだけでは城を守りきれない。
 そう判断したセシルは、貴族達を会議室に召集した。

セシル
「報告を」
伝令
「はっ。反乱軍がこの城を目指して北上中でございます。間もなく長城に到達するとの知らせです」
セシル
「首謀者は?」
伝令
「明かではありません。第一報は目を潰されて、重体。それ以上の子細はわかりません」
セシル
「ならば敵の規模は」
伝令
「恐れながらそれも明かではありません。ピクト人やヴァイキングを仲間に加えたゼーラ一族で、その数は相当なものに登ると報告されています」

 会議室に漏れたのはどよめきではなく、失笑だった。

貴族
「西方の異民族ばかりではないか。下らん。田舎者が徒党を組んでいるのを見て、大慌てで軍隊を動かそうというわけか」
貴族
「これは歴史上稀に見る、早とちりだぞ」
ラスリン
「ハハハッ! まさに。異民族が少々集まった程度で、我々が出て行かねばならない必要がわからん。長城には兵士が派遣されておるのだろう。それで充分ではあるまいか」
セシル
「長城はまだ防備の場所として充分な備えができていない。もしもの時を考えよ。これはれっきとした侵略戦争だ。異民族が攻撃を仕掛けようというのなら、これを迎え撃つのは我らと貴辺らの務めではないか」

 しかし、会議室に肯定的な空気は生まれなかった。セシルの反論の代わりに、また失笑が漏れた。

貴族
「ああ、下らん下らん。王子よ、そんなに戦争がしたいのなら、1人で勝手にやりたまえ。遊びなら、王子1人でやればよろしかろう」
セシル
「下らんだと……」
貴族
「下らんさ。戦争など、昔から王子の遊び道具と決まっておるだろう」
ラスリン
「王子は何もわかっておらん。軍隊を出すには相応のお金が掛かる。そうおいそれといつでも出せるものではない。しかも、それが取るに足らん小勢だったら? そんな相手に慌てふためいて軍隊を出したとなれば、王子は臆病者と民に笑い者にされるだけですぞ」
セシル
「おのれ貴様ら――」

 会議室の場に、セシルに進んで協力しようという者はいなかった。
 彼ら貴族達も、それなりに規模の大きな氏族を従えている。彼らが呼びかければ、その軍勢を仲間に加えることができる。セシルの軍団は、せいぜい城を守る程度の規模でしかなかった。もしも大規模な侵略があった場合、彼らの協力は必須だったのだが……。

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■2015/10/26 (Mon)
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第4章 美術市場の闇

前回を読む

 光太はテレビで神戸西洋美術館の事件を知って、ひどく心配したらしい。絵ができあがったというのはただの口実で、本音では事件の顛末を知りたがっているみたいだった。
「ああ、そうだっけ。でも、ちょっと遅くなってもいいでしょ」
 コルリはだらしなくテーブルに突っ伏した。コルリはとことん朝に弱い体質だった。
「駄目。いつもお世話になっている人やん。待たせたら、あかんよ。午前中に行くの」
 ツグミは食パンにマヨネーズを引き伸ばし、炒り卵を乗せた。
「うん、そうやね」
 コルリは観念したように顔を上げて、眼鏡を掛ける。眠たげな目をパチパチさせた。
「ねえ、ツグミ。昨日の夜な……」
 コルリがぼんやりした喋り方で切り出しつつ、パンの上にマヨネーズを塗りたくった。
「うん」
 ツグミはもぐもぐしながら顔を上げた。
「お父さんの夢、見とったんやろ」
 コルリが卵を乗せたパンを、ぱくりと食べる。
「……うん。私、うなされとった?」
 ツグミは視線を落とし、声も沈ませた。
 あの事件は、今も未解決のままだった。父の太一はどこの誰に誘拐されたかわからず、どんな種類の事件に巻き込まれたのかも不明で、杳として行方は知れなかった。
 ツグミは、あの事件を何度も夢の中で体験していた。夢を終えて目が覚めると、辺りはいつも真っ暗で、耐えがたい脚の激痛が夢ではない証みたいに残された。
 真っ暗闇に取り残されて誰も助けてくれない。切なくなる孤独。それきり死んじゃうじゃないかって思うような左脚の痛み。その暗闇と痛みも、ツグミにとって悪夢の一つだった。
「痛み止めはもう飲んだ?」
「うん」
 ツグミは立ち直れない気分で、小さく頷いた。
「大丈夫。お父さんはきっとどこかで生きとおから」
 コルリはいつもの日常会話の調子で、パンを食べながら言った。
 失踪してからすでに8年が過ぎていた。法的にはすでに死亡者という扱いだったが、妻鳥家では断固として葬式を拒否していた。死んだとは認めていないからだ。
「うん、ごめん」
 ツグミは溜息とともに呟いた。
「何で謝るん?」
 ふとコルリが顔を上げた。ツグミはコルリの顔を見て、あっとなった。
「あ、ありがとう」
 ツグミは首をすくめながら、もどかしく声を沈めた。でもコルリは、満足だったみたいに微笑んだ。
「ありがとう」は「ごめん」より言いにくい。ツグミはそんなふうに思っていた。
 ツグミは再びパンを食べ始めた。会話も途切れて、何となく周囲に目を向ける。いつもと変わらない台所の風景。
 しかし、何だろう。急に、違和感に囚われた。違和感の正体を探して、台所をぐるぐると見回す。どこを見ても、いつもと変わらない風景に見えた。
 書類用の棚のところで、目が止まった。よく見ると、ファイルの一つが、ほんの少し手前に出た状態になっていた。
 契約書類のファイルだ。川村の契約書を持ち出したあのとき以来、手を着けていないはずだ。
「どうしたん?」
 コルリがツグミの様子に気付いたみたいに、声を掛けた。
「ううん、別に?」
 ツグミにも自分が何を感じているのかわからなかった。
 ツグミはパンを置き、右脚に体重を掛けながら、椅子から立ち上がり、ファイルを引っ張り出した。
 開くと、一番上に川村の契約書があるはずだった。それが、なかった。

※ 普通失踪は7年目で死亡の扱いになる。

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■2015/10/25 (Sun)
第5章 蛮族の軍団

前回を読む
10
 オーク自身も馬に跨がった。

アステリクス
「オーク殿!」
オーク
「早馬を出して、今の報告をセシル王子の許へ。アステリクスは南へ。敵の規模を目視で確認して、知らせてください。戦が始まります!」

 それぞれがそれぞれの方向に散っていった。
 オークは仲間達を率いて、長城へと戻る。長城はすでに慌ただしく戦の準備が始まっていた。馬の直進を防止するための柵を立てたり、長城に弓兵を集めさせたりしていた。
 オークは馬を下りると、部下が用意した鎧を身につける。そこに、ソフィーが駆け寄ってきた。

オーク
「あの者は無事ですか」
ソフィー
「早急に手当をしました。しかしここでは危険ですので、村へ送りました。オーク様は無事でしたか」
オーク
「私はまだ敵に接していません。伝令は?」
ソフィー
「一番に早馬が行きました」
オーク
「そうですか」

 長城から王城までの道のりは思いのほか長い。軍隊を並ばせて進ませれば2日。しかし早馬ならずっと早いし、途中の村ではもしもに備えて伝令用の馬が配置されている。早ければ、半日で知らせが届くはずだが――。

ソフィー
「オーク様、行くのですか?」
オーク
「この砦の防備は万全ではありません。本日中に城に伝令が行きますが、兵を集めるまで1日、ここまで駆けつけるのに数日……。戦の準備が整うまで、早くとも3日後でしょう。その間、できるだけここで持ちこたえさせなければなりません」

 この砦を突破されたら、城までの道のりはほとんど無防備状態になる。途中の村では大規模な戦闘に耐えるだけの準備はできていない。もっとも、この砦もまだ完全な状態だと言い難い。
 オークはおおよその準備を整え、馬上用の大剣をベルトに取り付けた。オークと一緒に戻ってきた兵士達も、同じように準備を終えたようだ。

ソフィー
「オーク様。――どうかご無事でいて。もし危険を感じたら……」

 ソフィーは目に涙を溢れさせていた。

オーク
「心配しないで、ソフィー。しかし私を想っていてください」
ソフィー
「……はい」

 オークの短い別れの言葉に、ソフィーは子供のように頷いた。
 アステリクスが戻ってきた。

アステリクス
「オーク殿! 敵軍を確認しました。確かにピクト人やヴァイキングを仲間に加えたゼーラ一族の軍団です。規模は5000。真っ直ぐ長城を目指して北上しています!」
オーク
「よし。――馬に乗れる者、20名私に続け」

 オークは指示を出して、長城の通用口を潜った。長城には2つ、馬も人も頭を下げないと通行できない背の低い通路があった。長城の北側と南側を繋ぐ通路で、もちろん塞ぐことができる。
 が、今はその準備すら万全とはいえない。
 オークは長城を振り返って、その様子を眺めた。まだ修復の最中、堅牢なる壁は往時の姿を取り戻したとは言えない。騎馬の直進の勢いを削ぐくらいならできるが、それ以上の軍勢を止めるほどのものではない。破壊も容易だろう。
 だが、今はここで可能な限り、敵を足止めしなければならない――。
 間もなくして、オークの前に兵士と馬が集まってきた。その数が20人になったところで、オークは馬に乗った。

オーク
「行くぞ!」

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