忍者ブログ

89c79c73.png
■ コンテンツ ■

ad17d9bc.png 2f3a1677.png c1a81a80.png 9452a147.png 5350f79a.png 01b9b1e8.png 29aa8305.png d5525adf.png 0e6a6cf4.png b76ca7e7.png fea5d7ae.png
■ Twitter ■

■ ブログランキング

にほんブログ村 アニメブログ アニメ感想へ
■ ショップ

DMM.com DVD通販、レンタルなどの総合サイト
■2025/01/23 (Thu)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

にほんブログ村 アニメブログへ
■ [34]  [35]  [36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  ■


■2016/02/07 (Sun)
第9章 暗転

前回を読む
 オーク達は隊列を組んで進んでいく。空は暗く濁り、風景が灰色に沈んでいる。隊列に対話はなく、妙な静けさが漂っていた。風の音だけが際立っている。
 オークは妙な気配に捕らわれるように、辺りを見回しながら、馬を進めた。
 丘を登っていくと、不意に海が見えた。海は灰色に煌めいて、静かに凪いでいる。浜辺に小さな要塞が築かれていた。あれがオークが任された北方の砦だった。

 オーク達が砦に入っていくと、駐在していた住人達が迎え入れた。

パッツォ
「オーク殿、よくぞおいでなすった。砦の管理を任されておる、パッツォと申す者です。長旅でお疲れでしょう。さあどうぞ」
オーク
「出迎えご苦労。ずいぶん荒廃していますね」
パッツォ
「長年使われておりませんでしたからな。ブリデンの船が時々偵察に来るのを見ます。ここは僻地で、あちらにとっても遠征になりますからすぐに狙って来ないとは思いますが、いずれは……」
オーク
「急いだほうがいいようですね。建築家を呼んでください。明日にも仕事が始められるようにします」
パッツォ
「はい」

 翌日には砦の補修作業が始まる。
 埃だらけになった建物の清掃。ひびだらけになった道路を剥がして敷き直す。涸れた井戸をさらに掘り進めて水が出るようにする。海に向けた防壁を補修。防壁に備えられた大砲の補修。試し打ちで、ドーン! ドーン! と海に大砲を撃ち込む。オークは地図を見ながら、兵士達に次々と指示。
 仕事には兵士だけではなく近隣の村の住民達も協力する。砦は徐々に復旧し、新しい建物が築かれ、生命を取り戻し始める。

 復旧作業が一段落したある日の夕暮れ。
 パティオに豪華な食事が運ばれていた。兵士達が村人達と和やかに食事の時間を楽しんでいる。吟遊詩人たちの演奏が宴会を華やかに飾る。暖かな夕暮れの光がパティオを照らしていた。夜の時間に移り変わる最中で、じわじわと蝋燭の明かりが際立ち始めている。
 オークはそんな様子を、2階のバルコニーから見下ろしていた。

ソフィー
「ここに来てから2ヶ月。大きな事故もなく、順調に進んでいますね」
オーク
「ええ。困難な時期です。国の守りを、少しでも強くしなければなりません」
ソフィー
「順調に進みますよ。オーク様が指揮していますから……」
見張り兵士
「敵襲! 敵だ!」

 突然、見張り塔の兵士が声を上げた。
 兵士達に緊張が走る。オークも武器を手にして、砦の外壁に飛びついた。兵士達がそれぞれの配置に着き、攻撃の準備に入る。
 見ると、騎士団の隊列が砦に向かってくるところだった。その数は50騎ほど。しかし、戦闘を始める気配はなかった。

見張り兵士
「何者か! 名を名乗れ!」

 騎士の1人が前に進み出た。

流浪騎士団
「待て! 武器を収めろとは言わん。旅の者だ。用心棒を雇わぬか。しばしの滞在を認めてくれたら、街を守ってみせるぞ」
オーク
「もしかして……流浪騎士団ですか」
流浪騎士団
「おう! まさしく我こそ流浪騎士団。俺は団長のアレスだ!」

次回を読む

目次

拍手[0回]

PR
にほんブログ村 アニメブログへ
■ [34]  [35]  [36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  ■


■2016/02/06 (Sat)
第5章 Art Crime

前回を読む

36
 ツグミは廊下に出て、手摺りを掴んで階段を降りた。
 頭の中に、色んな考えが駆け巡っていた。やっぱり正直に言って、謝ろう。謝らなくちゃ。
 でも、何となく怖い。黙って、コルリ自身から言い出すのを待つべきだろうか。いや、もう見ちゃったから、嘘はつけない。ちゃんと話して謝った上で、詳しく聞こう。
 頭の中で、別の自分と議論しているみたいだった。
 ちょうど1階に降りたところで、パタッと音がした。画廊の、ガラス戸が閉じる音だ、と思った。
 コルリが帰って来たのだろうか。
 ツグミは廊下を横切って、画廊の前までやって来た。
 画廊は真っ暗だった。台所の明かりを背中にして、床にツグミの影が落ちていた。
 画廊に、人の気配はないように思えた。ひどく気味悪く感じる沈黙がそこに佇んでいた。
「ルリお姉ちゃん、帰っとん?」
 ツグミは画廊の中を見回して、喉の奥に引っ込みかける声で呼びかけた。正直、怖かった。コルリが悪戯で隠れている、そんなオチを期待した。
 でも、画廊にはそもそも隠れられるような場所はない。壁に3枚の絵が掛けられ、テーブルが1つ置かれているだけだった。身を隠そうと思えば、天井に張り付くしかない。
 気のせいだったのだろうか、と台所を振り向こうとした。
 その時、画廊に何かあるのに気付いた。
 ガラス戸のすぐ下、暗闇に紛れるように、カメラが1つ置かれていた。コルリ愛用のEOSだった。
 そのEOSのディスプレイが、僅かに色を浮かべていた。目線を合わせたその時、バックライトがオフになった。それで気付いたのだ。
 今は赤ランプが1つ点いているだけで、画廊の暗闇に同化しかけていた。
 ツグミは靴を履いて、画廊に入った。
 慎重に辺りを見回しながら、闇の中を進んで行った。自分の家なのに、知らないどこかを這い進んでいるような緊張感があった。
 ツグミはEOSの前まで行き、カメラを拾い上げた。手に持つと、意外に大振りで、ずっしりとした重さがあった。コルリは毎日、こんなものを持ち歩いているのか、と感心した。
 ディスプレイを覗き込んだが、もう暗くなっていて、よく見えなかった。
 ツグミはEOSのコンソールを探ってみた。使い方がよくわからない。適当に押すと、偶然にもバックライトがオンになった。
 思わず、ぎょっとした。
 ディスプレイ一杯に、顔面が映っていた。顔に痛々しく殴られた跡がくっきり浮かび、顎の形が歪んでいた。
 気持ち悪い写真だった。絶対にコルリのセンスではない。コルリは自分の美意識にかなりのプライドを持っている。だから、冗談でもこんな写真は撮らない。
 ツグミは、EOSの電源を切ろうとコンソールを探った。
 しかし、間もなくはっとした。
 コルリ自身の顔だ、と気付いた。あまりにも醜く見えたので、すぐにはわからなかった。コルリが何者かに殴られて、押さえつけられて、その場面を撮られたのだ。
 日付を確認した。たった今。3分前だった。
 ツグミは頭から力を失うのを感じた。手から杖が滑り落ちて、慌てて壁に手をつく。
 他に何か写っていないだろうか。カーソルの右を押した。 
 すると、宮川大河の顔が現れた。カメラの前で、不気味な微笑を浮かべ、おどけるように手を振っていた。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

拍手[0回]

にほんブログ村 アニメブログへ
■ [34]  [35]  [36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  ■


■2016/02/05 (Fri)
第9章 暗転

前回を読む
 見張りの兵士が任務を怠って、座り込んだままの姿勢でうつらうつらとさせていた。
 冷たい風が頬を撫でていく。まるで何かに触れられるような冷たさに、兵士はぼんやりと意識を取り戻しかける。
 薄く目を開けると、奇妙な心地に捕らわれた。
 冷たい風が辺りを巡っていた。そのくせ、妙に静かだった。
 次に、訳のわからない動揺が心臓を掴んだ。兵士は辺りを見回し、仲間を探した。一緒に任務に当たっていたはずの兵士がいない。
 ここはどこだ。みんなどこへ行った。
 動揺が全身を捉えた。だが水の中に放り込まれたように、もどかしく体が重かった。
 そこに、何かが現れた。
 生者ではなかった。髑髏の頭に、ボロを身にまとっていた。首に様々な宝石をちりばめた首飾りをかけていた。骨だけになった指にも、指輪がつけられていた。右手には、恐ろしく大きな鎌が握られている。
 紛れもなく、死神であった。

死神
「イーヴォール……イーヴォール……」
見張り兵士
「ち、違う。……そ、そそんな名前の女……知らない……」

 兵士は恐怖に囚われて、言葉がうまく出なかった。
 死神がはっと兵士を振り返った。暗い髑髏の眼球に、赤く光るものがあった。

死神
「ならば……お前のをよこせ。お前の魂……よこせ」

 死の使者が兵士に手を伸ばしてきた。


                                      ◇


見張り兵士
「ぎゃあああ!」

 兵士が悲鳴を上げた。眠っていた兵士達が慌てて飛び起きた。武器を手に殺到する。敵襲か!
 だが駆けつけてみると、見張り兵士の他に何もいない。

オーク
「何事か!」

 オークも剣を抜いて飛びついてきていた。

兵士
「なんだ何もいないじゃないか」
兵士
「こいつ、寝ぼけていたな」

 集まってきた兵士は、拍子抜けな気分になって、戻っていった。

見張り兵士
「……あ、……あ、……化け……化けもの……」

 見張り兵士は恐怖に囚われた声で、オークに縋り付いた。
 ソフィーもやってきた。

ソフィー
「何がありました?」
見張り兵士
「……ソフィー様。助けて。死の使いが現れた。俺、連れて行かれるんですか?」
兵士
「どうせ夢でも見てたんだろ。ちゃんと仕事しろ!」
見張り兵士
「違う! 本当に見たんだ。そこに、不気味なやつが……」
ソフィー
「疑いません。私も気配を感じていました」
オーク
「どんな姿をしていたか、覚えていますか?」
兵士
「ああ。骸骨の頭をしていて……不気味な声で……イーヴォールという女の名前を呼んでいた」
オーク
「…………。少し警戒を強めましょう。何かいるようです」

 オークが兵士達に指示を出す。ソフィーが兵士に魔除けの祝福をかけた。
 オークとソフィーは、しばらく2人で周囲を歩いた。

ソフィー
「きっと迷える魂を求めていたのでしょう。でも見付からななくて、彷徨っているのだわ」
オーク
「死神はイーヴォールという名の者を探していたようです。心当たりはありますか?」
ソフィー
「いいえ」
オーク
「私もです」
ゼイン
「オーク殿、お忘れかな。イーヴォールという名はケール・イズ伝説に登場する魔術師の名であるぞ」

 テントに近付くと、ゼインが声をかけた。

オーク
「……そうでした。なぜ忘れていたのでしょう」
ゼイン
「わしも疑問なんじゃよ。前から不思議に思って、イーヴォールという名前について調べてみたが、……ケール・イズ伝説は誰もが知っておるのに、重要な登場人物の名前であるイーヴォールを誰も記憶しておらんのだ。子供達に語って聞かせている時には出てくるのだけど、後で思い出そうとすると、どうしても思い出せん。物語を聞いたばかりの子供に訊ねてみても、霞みが掛かったように、そこだけぼんやりしておる。語り手に、「今の魔法使いの名前は何ですか」と訊ねても出てこない。なのに、ケール・イズ伝説を語り始めたその時にはイーヴォールの名前は出てくる」
オーク
「奇妙ですね。今はこの通りイーヴォールの名前を覚えているけど、明日の朝には……」
ゼイン
「夜明けとともに忘れておるじゃろう」
オーク
「それはなぜですか」
ゼイン
「わからん。だが1つ思うんじゃがな……。イーヴォールはまだ死んでおらんのじゃないかな。名前を隠して死神を欺き、まだ生きておるんじゃないかな」
オーク
「まさか。千年も前の話です。ケール・イズの時代から彷徨い続けていると?」
ゼイン
「ソフィー殿はどう思われるかな」
ソフィー
「え! 私ですか? え、えっと……。わかりません」

 ずっと考え事をするようにうつむいていたソフィーだが、急に声をかけられて、驚いたような声を上げた。

ゼイン
「そろそろお休みになったほうがよろしいかな。我々も眠ろう」
オーク
「そうですね。明日も旅は続きます」

次回を読む

目次

拍手[0回]

にほんブログ村 アニメブログへ
■ [34]  [35]  [36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  ■


■2016/02/04 (Thu)
第5章 Art Crime

前回を読む

35
 ツグミは杖をついて、廊下に出た。
 廊下はもう暗い。突き当たりに小さな窓が1つあるけど、そこも暗く沈んでいた。
 そんな廊下に、淡い光が漏れていた。書斎のドアが僅かに開いたままになっていて、中の明かりが廊下に落ちていた。
 書斎のドアは外開きで、寝室を向いているから、さっきは気付かなかったのだ。
 ツグミはドアを開けて、書斎を覗き込んだ。
 コルリの机のスタンドが点けっぱなしだった。多分、コルリが何かパソコンで仕事をして、それきり消し忘れたのだろう。
 ツグミは書斎に入った。スタンドの明かりを消そうと、机に近付いた。
 そこで、コルリの机の上に、図版が2冊、重ねて置かれているのに気付いた。図版の端に、書道用の半紙がちらと覗かせている。
 ツグミはすぐに、写真が挟んであるな、と思った。
 インクジェットで印刷された写真は、写真用紙にインクを定着させる必要があった。半紙など吸収のよい紙を間に挟みこんで、ちょうど図版のような重さのもので24時間プレスする。それでやっと、写真はできあがるのだ。
 ツグミに、悪戯心が湧き起こった。こっそり写真を見てやろう。
 インクが定着する前に図版を動かしたら、コルリは怒るだろう。でも、この頃、ツグミに秘密をして撮影しているものが何なのか、知りたかった。
 ツグミは杖を机の脇に置き、椅子に座った。上に乗せられた図版を、慎重にのける。下に、半紙が現れた。4枚の写真が、うっすらと浮かび上がる。普段のズボラさからは想像もつかないくらい、きちんと2列に並んでいた。
 ツグミは胸をドキドキさせながら、半紙をめくった。
 まず、右列の、上の写真を見た。
 どこかの地下駐車場だった。無個性的で、どこにでもありそうな地下駐車場――に見えた。
 ツグミは何だろう、と写真を覗き込んだ。
 そこで、はっとした。あの時のだ。宮川大河に初めて会った、あの時の地下駐車場だ。
 その下の写真に目を向けた。
 地下駐車場の、エレベーターが開いたところが写されている。やはり、どこにでもありそうな、銀色の壁をしたエレベーター。
 その正面の壁に、小さく落書きがあるのが見えた。ツグミは顔を寄せて、じっと目を凝らした。
『ミヤ子、愛シテル』
 もう間違いなかった。あの駐車場だった。
 ツグミは息が詰まりそうになった。あの時の事件が生々しく体に甦ってきて、胃がムカムカして吐きそうになった。
 ツグミはやっと、コルリの「ナイショの任務」の意味を理解した。コルリは1人で、宮川のアジトを探し、突き止めていたのだ。
 ツグミは残りの2枚を見た。
 1枚は周辺の風景を入れ込んだ、ビルの全体像だった。
 もう1枚は、そのビルの入口らしき場所だ。ビルに入っている会社名と、住所が書かれたプレートがばっちりと写されていた。
『クワンショウ・ラボ』
 住所は『京都府京都市下右京……』と書いていた。
 間違いなく、宮川のアジトだ。
 ツグミはひどい罪悪感に捉われた。見てはいけないものだった。
 ツグミは写真の上に半紙を掛け、さらに図版を載せた。始めに見た状態とまったく同じにした。
 それから、逃げるように部屋を出た。結局、スタンドは点けたままだった。

次回を読む

目次

※ 物語中に登場する美術家、美術作品、美術用語はすべて空想のものです。

拍手[0回]

にほんブログ村 アニメブログへ
■ [34]  [35]  [36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  ■


■2016/02/03 (Wed)
第9章 暗転

前回を読む
 森を横切る小道を、オーク達の小隊が列を作って進んでいた。まだ昼の時刻だが、辺りは暗く影を落としている。冷たい風がざわざわと音を立てていた。
 ソフィーはそっと、背後を振り返る。灰色の森の一角が、何か潜んでいるようにざわざわと揺れていた。
 ――何かいる。
 ソフィーはその方向をじっと見詰めた。すると暗い枝の影から、ぬっと何かが現れた。それは真っ黒で、虚ろに影を定めなかった。

兵士
「どうかなされましたか、ソフィー様」
ソフィー
「……い、いえ。何でもありません」

 ソフィーはごまかすように言うと、視線を前に定めて馬を進めた。




 夜。
 オーク達の一行は、テントを作って野営を始める。風が冷たく、囁くような声を上げている。焚き火の炎も、風の強さに斜めを向いていた。
 オークはテントにランプを吊し、テーブルに地図を広げて部下たちと打ち合わせをしていた。

オーク
「予想されていたネフィリムの襲撃はなく、旅は順調に進んでいます」
兵士
「このまま行けば、1日早く北方の砦に到着しますが、しかし油断してはなりません。これまで通り用心するべきでしょう」
オーク
「兵士達には緊張してもらわなければなりませんね……」

 側で、ソフィーが話を聞きながら、うつらうつらとしはじめる。

オーク
「ソフィー、もう眠りなさい」
ソフィー
「あ、はい。……でも」
オーク
「大丈夫。今夜はもうドルイドの助言は必要ありません。あなたは先に休んでください」
ソフィー
「そうですか。……では」

 ソフィーは一同に丁寧な挨拶をしてテントから離れていく。

兵士
「オーク殿。お節介を申し上げるようだが、彼女とはまだ……」
オーク
「こんな暗い時代です。祝福されるべきではありません」
兵士
「いや、しかしですな……」
オーク
「個人的な問題です。議論するつもりはありません。話を続けましょう。東に村があるはずですが……」




 ソフィーは自分用に用意されたテントに入る。

侍女
「おやすみなさい、ソフィー様」

 先に寝ていた侍女の少女が、ちょっと目を覚ましてソフィーに挨拶をする。

ソフィー
「ええ、おやすみなさい」

 ソフィー自身も布団に潜って、眠りについた。


 ――しばらくして。
 テントの外を風が絶えず流れている。まるで何かを一定速度で引き摺っているように、ざわめく草の音が変わらなかった。
 そんな音に、何かが混じる。何か軽いものが、草を踏んでいる。布状の何かを引き摺っている。兵士の靴音ではない。
 ソフィーは目を閉じながら、音の行方を追った。静寂が、音の存在を、くっきりと浮かび上がらせていた。音はテントの側に近付き、何か探るようにうろうろと同じ場所を巡り始めた。
 ソフィーは密かに杖を握った。
 音は、さらりさらりと草を撫でながら、ゆっくりとテントから遠ざかっていった。

次回を読む

目次

拍手[0回]

にほんブログ村 アニメブログへ
■ [34]  [35]  [36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  ■


■ ブログの解説 ■

漫画・アニメ・キャラクターを中心に取り扱うブログです。 読みたい記事は、左の目次からお探しください。

QLOOKアクセス解析


■ ブログ内検索  ■

私が描きました!

アマゾンショップ

アマゾンのサイトに飛びます
フィギュア

アニメDVD

新刊コミック

ゲーム

ライトノベル

楽天

アマゾン<シャッフル>ショップ

私が描きました!

Template by Crow's nest 忍者ブログ [PR]