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■2010/01/04 (Mon)
映画:外国映画■
〇男の掌が、黄金色に色づいた麦の穂先をなでていた。
〇男は古里を夢に見て、時間のはざかいを彷徨っていた。
〇 ここは何処か。戦いは終わったのか。平穏はいずこ。
〇 妻よ、子よ、そこにいるのか。
マルクス・アウレリウス皇帝によるゲルマニア遠征は、最後の段階を迎えていた。
将軍マキシマスは、兵士を集結させて、使者が戻るのを待っていた。
交渉がまとまれば、平和が訪れる。
しかし戻ってきたのは、首のない使者を乗せた馬だった。
交渉は破断した。戦いが始まろうとしていた。森の蛮族たちが姿を現し、獣のような雄叫びを上げていた。蛮族たちはすでに戦意で燃え上がっていた。
「私の合図で地獄の釜を開け」
マキシマスは戦士たちに指示を与え、自身は馬にまたがり森の中へと入っていった。
森に入ると、そこに騎士団たちが密かに集結し、整列していた。
間もなく戦いが始まった。森の外では鬨の声が上がっていた。火のついた矢が乱舞する。兵士たちが隊列を組んで蛮族の軍団とぶつかり合っていた。火の粉を散らすように、兵士の命が戦場に散っていった。
マキシマスは騎士団を引き連れ、炎に包まれる戦闘の中へと突入していった。
戦いは勝利に終わった。
蛮族たちは鎮圧されマルクス・アウレリウスの敵は消え去った。渾沌の時代が終わり、間もなく平和が訪れようとしている。
しかし、マルクス・アウレリウスには懸念があった。自身は高齢で、すでに死を予感していた。平和を得たローマを、誰かの手に託さねばならない。
腹黒い元老院か、先進的に未熟なコモドゥスか――。
マルクス・アウレリウスは、将軍マキシマスに帝位を譲る決断をする。
コモドゥスは父からこの決定を聞き、激しく動揺した。
自身が皇帝になるはずだった。父は自分を、時期皇帝に任命してくれると信じていた。
コモドゥスは動揺と錯乱に揺り動かされ、衝動的にマルクス・アウレリウスを殺害する。
その後コモドゥスは、何食わぬ顔で皇帝の座が自分に移されたと宣言した。
マキシマスはアウレリウスの死がコモドゥスの手による暗殺であると、すぐに察した。マキシマスは新皇帝であるコモドゥスに忠誠を述べず、一瞥して去っていく。
コモドゥスはマキシマスを危険と判断して、反逆の罪を着せて処刑しようとする。
だがマキシマスは処刑人の手から逃れて、急ぎ古里の家族の下へ向った。自分が逃亡したと知られたら、間違いなく家族が人質にされるはず……。
マキシマスは休みなく馬を走らせ、故郷への道のりを急いだ。
しかし駆けつけたときには、農園に炎が吹き上がっていた。妻と子は、すでに殺されていた。
マキシマスはすべての気力を失い、妻と子の墓標を作り、その前で果てようとした。
そこに何者かが現れた。何者かはマキシマスの体を掴み、連れ去ってしまう。生きる気力もないマキシマスは、運命に流されるままに、連れ去られてしまう。
俳優オリバー・リード(左)はこの映画の撮影中に事故死した。後半の出演シーンは、別のシーンのために撮影したものを台詞やカットを入れ替えたりして対話しているように見せかけた。
舞台は、ローマだ。
かつて何度も映画の中で描かれてきた時代。知らぬ者がいない栄光の時代。
そのローマが、最新の技術と最高に才能によって再び映画のスクリーンに帰って来た。
しかも『グラディエーター』の主要な舞台となったのは、まさかのコロッセオだ。
誰もが知り、それでいて映画の中で描かれることのなかった、あのコロッセオだ。
モロッコのコロッセオは死の世界の象徴だ。プロキシモはマキシマスを死の世界から引き摺り戻した死神といったところだろう。
ある男が復讐を実現するまでの物語だ。
マキシマスは一度死んだ。雪の舞う森の中で、処刑人の手にかかり死んだ。
しかし怨念が男をあの世から引きずり戻した。
ローマ室内セットは以外にも1つしか作られていない。セット撮影の節約術の1つだ。家具や柱の位置を入れ替えて繰り返し撮影したわけだ。詳しく見ると、階段や壁の位置が一緒だ。よく確認して見たい。
生命が再生する瞬間、画面には異界のイメージと獣の声で満たされる。男はもはやかつての将軍ではない。獣として、剣闘士として甦ったのだ。復讐のために、死神から幾日かの猶予が与えられたのだ。
この作品を切っ掛けにリドリー・スコット監督の作風は劇的に変わった。独特の美意識とエンターティメント性が融合し、ドラマが激しく展開する。この一作で、リドリー・スコットはマイナー監督から巨匠へと格上げされた。
映画において、ローマは常に最大級を約束する題材である。
壮大な建築。華麗な美術品。贅を凝らした調度品や衣装の数々。かつて世界の中心であった場所。世界で最も繁栄をもたらした場所。
たとえ虚構の映画の中ですら、ローマの再現は困難を極めた。巨大なセットが必要だし、それを埋め尽くすエキストラ。衣装や俳優達の食事代。
ローマは壮大であるが故に、再現は困難を極めた。
技術力の進歩が、ようやくローマを再現を実現させた。栄光のローマは映画の魔術によって、ほんの2時間だけ、輝きを持って再生されるのだ。
映画記事一覧
作品データ
監督:リドリー・スコット 音楽:ハンス・ジマー
脚本:デヴィッド・フランゾーニ ジョン・ローガン ウィリアム・ニコルソン
出演:ラッセル・クロウ ホアキン・フェニックス
〇 コニー・ニールセン オリヴァー・リード
〇 リチャード・ハリス デレク・ジャコビ
〇 ジャイモン・フンスー スペンサー・トリート・クラーク
第73回アカデミー賞 作品賞/主演男優賞/衣装デザイン賞/視覚効果賞/音響賞受賞
第58回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞/音楽賞受賞
〇男は古里を夢に見て、時間のはざかいを彷徨っていた。
〇 ここは何処か。戦いは終わったのか。平穏はいずこ。
〇 妻よ、子よ、そこにいるのか。
マルクス・アウレリウス皇帝によるゲルマニア遠征は、最後の段階を迎えていた。
将軍マキシマスは、兵士を集結させて、使者が戻るのを待っていた。
交渉がまとまれば、平和が訪れる。
しかし戻ってきたのは、首のない使者を乗せた馬だった。
交渉は破断した。戦いが始まろうとしていた。森の蛮族たちが姿を現し、獣のような雄叫びを上げていた。蛮族たちはすでに戦意で燃え上がっていた。
「私の合図で地獄の釜を開け」
マキシマスは戦士たちに指示を与え、自身は馬にまたがり森の中へと入っていった。
森に入ると、そこに騎士団たちが密かに集結し、整列していた。
間もなく戦いが始まった。森の外では鬨の声が上がっていた。火のついた矢が乱舞する。兵士たちが隊列を組んで蛮族の軍団とぶつかり合っていた。火の粉を散らすように、兵士の命が戦場に散っていった。
マキシマスは騎士団を引き連れ、炎に包まれる戦闘の中へと突入していった。
戦いは勝利に終わった。
蛮族たちは鎮圧されマルクス・アウレリウスの敵は消え去った。渾沌の時代が終わり、間もなく平和が訪れようとしている。
しかし、マルクス・アウレリウスには懸念があった。自身は高齢で、すでに死を予感していた。平和を得たローマを、誰かの手に託さねばならない。
腹黒い元老院か、先進的に未熟なコモドゥスか――。
マルクス・アウレリウスは、将軍マキシマスに帝位を譲る決断をする。
コモドゥスは父からこの決定を聞き、激しく動揺した。
自身が皇帝になるはずだった。父は自分を、時期皇帝に任命してくれると信じていた。
コモドゥスは動揺と錯乱に揺り動かされ、衝動的にマルクス・アウレリウスを殺害する。
その後コモドゥスは、何食わぬ顔で皇帝の座が自分に移されたと宣言した。
マキシマスはアウレリウスの死がコモドゥスの手による暗殺であると、すぐに察した。マキシマスは新皇帝であるコモドゥスに忠誠を述べず、一瞥して去っていく。
コモドゥスはマキシマスを危険と判断して、反逆の罪を着せて処刑しようとする。
だがマキシマスは処刑人の手から逃れて、急ぎ古里の家族の下へ向った。自分が逃亡したと知られたら、間違いなく家族が人質にされるはず……。
マキシマスは休みなく馬を走らせ、故郷への道のりを急いだ。
しかし駆けつけたときには、農園に炎が吹き上がっていた。妻と子は、すでに殺されていた。
マキシマスはすべての気力を失い、妻と子の墓標を作り、その前で果てようとした。
そこに何者かが現れた。何者かはマキシマスの体を掴み、連れ去ってしまう。生きる気力もないマキシマスは、運命に流されるままに、連れ去られてしまう。
俳優オリバー・リード(左)はこの映画の撮影中に事故死した。後半の出演シーンは、別のシーンのために撮影したものを台詞やカットを入れ替えたりして対話しているように見せかけた。
舞台は、ローマだ。
かつて何度も映画の中で描かれてきた時代。知らぬ者がいない栄光の時代。
そのローマが、最新の技術と最高に才能によって再び映画のスクリーンに帰って来た。
しかも『グラディエーター』の主要な舞台となったのは、まさかのコロッセオだ。
誰もが知り、それでいて映画の中で描かれることのなかった、あのコロッセオだ。
モロッコのコロッセオは死の世界の象徴だ。プロキシモはマキシマスを死の世界から引き摺り戻した死神といったところだろう。
ある男が復讐を実現するまでの物語だ。
マキシマスは一度死んだ。雪の舞う森の中で、処刑人の手にかかり死んだ。
しかし怨念が男をあの世から引きずり戻した。
ローマ室内セットは以外にも1つしか作られていない。セット撮影の節約術の1つだ。家具や柱の位置を入れ替えて繰り返し撮影したわけだ。詳しく見ると、階段や壁の位置が一緒だ。よく確認して見たい。
生命が再生する瞬間、画面には異界のイメージと獣の声で満たされる。男はもはやかつての将軍ではない。獣として、剣闘士として甦ったのだ。復讐のために、死神から幾日かの猶予が与えられたのだ。
この作品を切っ掛けにリドリー・スコット監督の作風は劇的に変わった。独特の美意識とエンターティメント性が融合し、ドラマが激しく展開する。この一作で、リドリー・スコットはマイナー監督から巨匠へと格上げされた。
映画において、ローマは常に最大級を約束する題材である。
壮大な建築。華麗な美術品。贅を凝らした調度品や衣装の数々。かつて世界の中心であった場所。世界で最も繁栄をもたらした場所。
たとえ虚構の映画の中ですら、ローマの再現は困難を極めた。巨大なセットが必要だし、それを埋め尽くすエキストラ。衣装や俳優達の食事代。
ローマは壮大であるが故に、再現は困難を極めた。
技術力の進歩が、ようやくローマを再現を実現させた。栄光のローマは映画の魔術によって、ほんの2時間だけ、輝きを持って再生されるのだ。
映画記事一覧
作品データ
監督:リドリー・スコット 音楽:ハンス・ジマー
脚本:デヴィッド・フランゾーニ ジョン・ローガン ウィリアム・ニコルソン
出演:ラッセル・クロウ ホアキン・フェニックス
〇 コニー・ニールセン オリヴァー・リード
〇 リチャード・ハリス デレク・ジャコビ
〇 ジャイモン・フンスー スペンサー・トリート・クラーク
第73回アカデミー賞 作品賞/主演男優賞/衣装デザイン賞/視覚効果賞/音響賞受賞
第58回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞/音楽賞受賞
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