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■2009/09/24 (Thu)
この小説は、『さよなら絶望先生』を題材にした2次創作小説です。2次創作に関する法的問題については、こちらをご覧下さい。【著作物】【二次創作物】【パロディ】【パロディ裁判

P064 第6章 異端の少女


千里は考えを諦めるように、溜め息をひとつついた。
「男爵をどうにかするのはできない、というのは理解しました。それでは、あの少女は何者なのです。あの風浦さんそっくりの女の子。あれはどう見ても、風浦さんの双子か何かです。先生、そういうのに覚えはありませんか?」
千里は顔を上げて、次なる疑問を口にした。
「知らないです。そもそも私、風浦さんの家族構成なんてあまり知りませんから。複雑な家庭らしいのはわかっているのですが……」
糸色先生は頼りなげに頭をくしゃくしゃと掻いた。
私は糸色先生と終業式前に交わした会話を思い出した。糸色先生は、可符香の正しい住所すら知らない
でも、可符香の内情で知っているといえば、どれだけあるだろう。可符香は複雑な家庭環境にあるらしい。父は自殺未遂。母は悪霊に取り付かれ、霊媒師に救われた過去がある。おじさんは刑務所で過ごしていて、時々“出島”で会話しているという。それから、幼い頃はあちこち引越しばかりの生活をしていた
ここまでを整理すると、可符香には父と母と従兄の男性がいる。それが全てであって、「姉か妹がいる」なんて話は一度も出てきていない。
多分、他の誰かに聞いても新しい情報が出てきたりはしないだろう。もしかすると、本人に尋ねても、答えをはぐらかされてしまうかもしれない。可符香を覆うヴェールは、誰の手によってでも明らかにできないような気がした。風浦可符香の本当の名前を含めて……。
「いずれにしても、私は男爵のゲームを引き受けるつもりです。というか、もう逃げ道はありませんし、このまままごついていたら、私は殺され、風浦さんは殺人罪で捕まってしまいます。私は、風浦さんを警察に突き出すような真似はしたくありません。皆さんは被害者ですが、私に協力してくれませんか。皆さんの想いを、私に託してください」
糸色先生は私たち全員の顔を見て、落ち着いた言葉で説いた。いつも教壇で聞くより、ずっと頼りがいのある大人の男性の声に思えた。それが多分、17歳の頃の糸色先生が持っていた眼差しなのだろう、という気がした。
「もちろんよ。」
千里が一番に答えて頷いた。
「私も、可符香ちゃんを不幸にさせたくないから」
私も同意して追従した。
「同じく」
藤吉はちょっと手を上げて私に続いた。
「私も。先生が言うんだったら」
まといが糸色先生に熱い眼差しを送りながら頷いた。
「皆さん。ありがとうございます」
糸色先生は改まったふうにスツールの上で頭を下げた。
「それで、警察の手を一切借りず、お前は男爵に立ち向かうわけだ。どうするつもりだ。策はあるのか?」
命先生が試すように糸色先生に訊ねた。
「まずは情報です。ここで、全員の情報を共有しましょう。皆さんは事件の当事者です。事件を解決するためのヒントを、どこかで接していたり、目撃していたりするはずです。だからどんな些細なことでも構いません。最初の事件から今までの経緯をすべて私に話してください」
糸色先生はさらに説得するように言葉に力を込めた。
「それじゃ、困ります。どこから話すべきなのか、きちんと指定してください。私、生まれてから現在に至るまでの話をしますよ。」
千里は腕組をして、厳しく答えを返した。
「えっと、それじゃ……。そうですね。蘭京さんの事件、やはり気になりますね。では、7月5日から。日塔さんがあの秘密の部屋で蘭京さんの失踪に気付いたところからお願いします。特に日塔さんは、事件の最初から関わっていました。決定的な何かを見ているか、あるいは知っている可能性があります。お願い、できますね」
糸色先生が決断を迫るように私に真剣な目を向けた。
私は、脇の下に汗が浮かぶのを感じながら、重く頷いた。

次回 P065 第6章 異端の少女6 を読む

小説『さよなら絶望先生~赤い瞳の少女~』目次




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■2009/09/23 (Wed)
03dab34e.jpgマーキュリー・シューズはアメリカ最大のスポーツ・シューズ・メーカーだ。僕はその社員。シューズ・デザイナーだった。
会社に入っていくと、皆が僕を振り返った。部外者を見る目。異端者を見る目。
僕は微笑で返して、小さな声で呟く。
440d3713.jpg「大丈夫……大丈夫」
僕はこの会社に8年間務め、靴の研究に没頭し続けた。靴と簡単にいうが、靴は人と大地を繋ぐ。よりよい靴は、我々を高め、可能性を引き出してくれる。
僕には可能性があったし、可能性にかけていた。8年間、家族や友人に会わず、研究に研究を重ねてきた。最上の瞬間のために。
そうして、完成した。
魔法の靴。
雲の上を歩くような靴。
何もかもが成功しているように思えた。
d081de89.jpgところが数日後、僕が作った靴はトラックの荷台に載せて戻ってきた。1台や2台だけではない。アメリカだけではなく、世界中に出荷した靴が会社に戻ってきてしまった。
だから僕は、社長に呼び出された。クビを告げられるための儀式みたいなものだ。
ef594072.jpg「正直お手上げだ。予想される我が社の損失は9億7200万ドル。とんでもない金額だよ。四捨五入すれば、10億ドルだ。君がデザインした輝かしく画期的なシューズは、今週大々的に売り出されて、たちまち世界的な嘲笑を浴びて返品の山。こんなメモが寄せられた。DSC会長のバーロウ氏からだ。“人々は期待のこの新製品を履くよりは、むしろ裸足に戻ることを望むだろう……”」
92f80408.jpg誰かが言った。“失敗と大失敗の間には、天と地の差がある”。
失敗とは成功しないこと。失敗は誰にでもある。だが大失敗は――大失敗は神話的なスケールの災厄を意味する。その神話は人々の噂のタネになり、聞く人に喜びを与える。――自分じゃなくてよかった、と。
af26a3ad.jpg僕は大失敗で人生から脱落した。僕は悟った。成功がすべて。“偉業”は関係ない。人生は成功を積み重ねていくことで紡がれていく。でも僕の人生は、大失敗で踏み外した。転落した。もう元いた場所に這い上がって、歩くことはできない。何もかもが変わってしまった。
それで僕のしたこと?
e54ffe27.jpg家に帰って、家具をみんなゴミ捨て場に放り出した。それから、バイクに包丁を巻きつけて、そのうえに乗った。
さあ死ぬぞ! あの世へのフライトだ!
そんなとき、電話が掛かってきた。
「ドリュー、悪い知らせがあるの。パパが死んだの。心臓発作よ。ママは取り乱している。兄さんが行って来て。長男でしょ。責任がある79accb13.jpgわ」
54ed5cc7.jpg人生の終わり。そう思ったとき告げられたのは父の死だった。映画『エリザベスタウン』は二つのものが対立して描かれる。生と死。結婚と葬式。父と子。ドリューの立場はそのはざかいで、どっちつかずで彷d08e3274.jpg徨っている。
主人公ドリューは有名なシューズメーカーに勤めていたが、大惨事を引き起こした責任を取って解雇。自殺を決意するが、それを一歩先に進むように、父の死を知らされる。
父が死んだのは、遠い伯父の家だった。ドリューは父の遺体を回収6fbc019d.jpgするために、飛行機に乗る。その仕事が終ったら、もちろん部屋に戻って自殺するつもりでいた。
そんなドリューの前に現れたのがフライトアテンダントのクレアだった。クレアは短い会話からドリューの心理状況を察し、エリザベスタウンへの地図と自分の電話番号を託す。
efd16ecd.jpg世界は常に動き続けている。人は物語の主人公となって、世界の動きに加わるだけだ。いつかその世界の動きから外されてしまうときがくるかもしれない。しかしそれは、その人生のベクトルが変化しただけだ。ひょっとすると新しい人生の始まりかもしれない。人生に正解はない。どの道を進むべきか、その人間に委ねられている。

4f9cc5ce.jpg1fb51761.jpg自殺を決意した若者が、新たな人生の切っ掛けを得るまでの物語だ。
人生は一つの長い道である。だが、その道を最後まで行き進むだけが人生ではない。人生はいつか思いがけない節目を0c714e93.jpge3115d54.jpg迎える瞬間がある。一つの道を何度も往復する場合もあるだろうし、ひょっとしたら別の道を見つけ出し、その方向へ移るかもしれない。
ドリューの場合は、大失敗と挫折を切っa3092be8.jpg掛けに、これまで進んできた道を断念した。それは、ドリューにとって受け入れがたい現実だった。
自殺を決意したドリューは生と死の境目に突入していく。誰もいない飛行機。使者のように現れるクレア。
その向うに現われるのは、未知の世界。エリザベスタウンはいわば異界であり、ドリューは異界に迷い込んだ異邦人である。
ドリューは道に迷い、正しい道を探して彷徨し続ける。
5141e2cf.jpgドリューが乗る飛行機は異界に向かう船を象徴している。だからあの場面には誰もいない。現実的な風景ではないからだ。その向うに現れた『エリザベスタウン』は、生と死がやわらかに拮抗する場所である。ドリューはそこで一時の休息をとり、人生を再生させようと進みだす。


09ccc8a6.jpg映画『エリザベスタウン』には軽やかなリズムが全体を包んでいる。物語のトーンも、俳優の演技もみんな明るい。いかにもドラマしていますよ、という重苦しさはない。軽やかに、人生の瞬間を楽しむように物語が綴られていく。
映画の中心にあるのは、登場人物の言葉だ。画面の構成はほとん52546177.jpgどが俳優の顔と、台詞で埋められている。
キャラクターが次々に現れ、言葉を重ねていく。言葉を重ねている最中でも、人物は決して静止しない。常に動き続けて、鑑賞者を退屈させない。躍動を始める人生を象徴するように、人物は常に動き、騒ぎ、声をあげて物語を綴る。
4c2331d4.jpgそうやって動き続けているうちに、沈んだ心理は躍動する映画のリズムに乗せられるように、新たな人生が見出し巡り始める。
57e8339d.jpg一つ一つの言葉がうまく生きてドラマをつむぎだしている。どの言葉も希望的で、軽やかな気持ちで見られる映画だ。物語はご都合主義的なところはある5549fcc4.jpgが、異界世界の物語だと思えば不思議ではなくなる。
もうお終いかもしれない……。
しかしそう思ったときこそ、新たな何かが発見される。その瞬間を描いた映画だ。
映画『エリザベスタウン』には何か始まるかもしれないと29ab5e10.jpgいう希望と、浮きだつような軽やかさに満ちている。
大きな挫折や憂鬱な気分に捉われているときにこそ、観たい映画だ。
ひょっとしたら違う何かが始まるかもしれない。そんな気持ちを信じられる作品である。

映画記事一覧

監督・脚本:キャメロン・クロウ
音楽:ナンシー・ウィルソン 撮影:ジョン・トール
編集:デヴィッド・モリッツ
出演:オーランド・ブルーム キルステン・ダンスト
〇〇〇スーザン・サランドン アレック・ボールドウィン
〇〇〇ブルース・マッギル ジュディ・グリア
〇〇〇ジェシカ・ビール ポール・シュナイダー
〇〇〇ゲイラード・サーテイン ジェド・リース



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■2009/09/23 (Wed)
1d466730.jpg1972年9月5日未明。
ミュンヘン・オリンピック競技場内の選手村に、“黒い九月”と呼ばれるテロリスト集団が侵入した。
“黒い九月”はAK-47ライフルで武装し、イスラエル人選手が宿泊ecaaec49.jpgする部屋に乱入。
ほぼ二日間、イスラエル人選手を監禁し、イスラエルに収監されるパレスチナ人234名の開放を要求した。
その後、“黒い九月”はイスラエル人選手を人質に、空港へ移動。脱出用の飛行機を要求した。
だが空軍基地に到着したところで、ドイツの狙撃手と“黒い九月”による銃撃戦が勃発。
イスラエル人選手全員死亡という惨事を引き起こした。
5ad43535.jpgce2b4eee.jpg難解な作品ではないが、予備知識がないとちょっとつらい作品だ。鑑賞前に少し学習しておいたほうがいい。これまでのスピルバーグ映画と思って観ると、どこかで置いてけぼりをくうかもしれない。
27326045.jpgこのミュンヘン・オリンピック事件を受けて、イスラエルのゴルダ・メイア首相はただちに報復を決行。
パレスチナ・ゲリラの基地を空爆し、数百人のパレスチナ人を殺害した。
だがパレスチナ・ゲリラ基地の空爆は、誰も注目しなった。
もっと世界中が注目するようなセンセーショナルな事件が必要だ。
そう判断したゴルダ・メイア首相は、ミュンヘン・オリンピック事件に関与した11人のリストを作成し、暗殺計画を提案した。
いわゆる《神の怒り作戦》と呼ばれる暗殺計画だ。
b9e2e7f8.jpg09f308e0.jpg「暗殺はできれば爆弾で」というのが条件。ただ殺すのが目的ではなく、センセーショナルが目的。ただし一般人への殺人は認められないという条件も。殺人は罪だが、使命のための殺人は許される。
映画『ミュンヘン』は、ミュンヘン・オリンピック事件と、その後の暗殺事件の両方を描いた、長大でしかも複雑な映画だ。
主人公のアヴナーは、祖国と名誉のために暗殺計画を引き受けるが、やがて狙われる側になり、心理的に追い詰められていく。
全てが事実に基づいて描かれた作品ではないが、当事者の心理を詳らかに、生々しく描き重ねていく。
b7e61ef8.jpg9dab93a5.jpg映画は事実に基づくが、暗殺の実行犯などは創作だ。暗殺計画と殺された人間がいるのは事実で、その周辺のやり取りはフィクション、と見ればいいだろう。
1dfeccc4.jpg“平和の祭典”のはずであるオリンピックで起きた悲劇。
だが国家がぶつかり合い、宗教がぶつかり合うと、どこかに政治性が絡んでくる。
オリンピックの表面的な理想は、むしろ民族と政治性を際立たせる結0c8ad153.jpg果に終わった。
一つのルールを守り、共に走ろうという意思は、銃声と爆撃によって裏切られた。
戦争は終わらない。
戦争の残滓はあちこちに火種を残し、再び燃え盛るのを待っている。その火種を持っているのは他でもなく、我々の社会が継承する深層意識と国家への帰属意識の中に眠っている。
映画『ミュンヘン』での背景は、どれも平和な風景に見える。
暗殺の当事者は、どれも平凡な生活を営んでいるように見える。
だが平和という状況が、ただちに戦争ではない、という意味にはならない。
戦争は、いつも平和の仮面のうちに眠り続けているのだ。
8be4b638.jpg「無知」「無関心」こそが最大の罪だ、と映画は語る。イスラエル人もパレスチナ人も自分阿智の存在を知らしめるために犯行を重ねる。通俗的な勧善懲悪は通用しない(つまりイスラエル人を襲ったパレスチナ人は悪人だ、という即断)。「知らなければ平和」という理屈も、世界レベルでは通用しない。
e2d9f582.jpg映画『ミュンヘン』はエンターティメントの巨匠による、重さのあるドラマだ。
映画の内部には多くのものが描かれ、語られるが、もっとも強く描かれているのは“民族の悲劇”だ。
それから、あらゆる世界の悲劇に対する、我々の側による無関心だ。
ミュンヘン事件の決行者は、自分達の計画の正しさを信じている。多くの人が、“黒い九月”の存在を知ってくれたからだ。
《神の怒り作戦》の大きな本質は、暗殺にセンセーショナルな衝撃を与えることだった。
遠くの世界で、数百人爆撃しようとも、誰も気付きもしないし、関心を抱こうともしない。
だから、最も我々の身近に思える場所で、戦争の状況を出現させようとしたのだ。
だが、最終的にミュンヘン事件を世界に知らしめ、記憶に残したのは、スピルバークの映画であっただろう。

映画記事一覧

作品データ
監督:スティーヴン・スピルバーグ 原作:ジョージ・ジョナス
音楽:ジョン・ウィリアムズ 脚本:トニー・クシュナー エリック・ロス
出演:エリック・バナ ダニエル・クレイグ
〇〇〇キアラン・ハインズ マチュー・カソヴィッツ
〇〇〇ハンス・ジシュラー ジェフリー・ラッシュ
〇〇〇アイェレット・ゾラー マチュー・アマルリック



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■2009/09/23 (Wed)
建安13年(西暦208年)
時代の中心は曹操にあった。曹操は献帝を擁立し、圧倒的軍勢を率いて天下統一を目指していた。
曹操の軍勢はどこまでも勢力を伸ばしていき、間もなく南へと進軍する。
曹操の目的は、南方に陣を敷く劉備、孫権の二人の抹殺だった。
06bf49ae.jpg登場人物が多いためだと思うが、顔へのクローズアップが多い。りりしい顔立ちの俳優が、次々とクローズアップされ、映画を彩っていく。
金城武が演じる孔明は非常に若々しい。何となく孔明には仙人的イメージ(あるいはマーリーン)があるが、実際この頃の孔明は30代始め頃だったそうだ。『レッドクリフ』での孔明は若く描きすぎていると思うが、金城武の実年齢とほぼ同じくらいである。

e379a133.jpg曹操の80万人に及ぶ軍勢に攻め入られ、劉備軍はあえなく敗走。城を捨ててさらに南へと逃れるところであった。
だが民を守りつつ逃亡する劉備軍は、思うように進みない。行く先を険しい山岳に阻まれ、民の行進は滞りがちだった。
曹操の軍勢は、情け容赦なく迫ってくる。
8a8e1ca8.jpg劉備の忠実な家臣である張飛は、わずかな手勢を率いて平原に陣を敷く。背後にはまだ漢の民が残っている。曹操軍に対して多勢に無勢なのは明らかだが、退くわけにはいかなかった。
だが諸葛亮孔明は、奇策を練り曹操軍に足止めをさせ、関羽を中心とする千人に及ぶ援軍を投入させる。
まもなく民の安全を確信した孔明は、趙飛、関羽の軍勢を撤退させる。
ecb07a32.jpg中国の歴史は知らなくとも、三国志は日本でも漫画、アニメ、ゲームなどで高い知名度を誇る。もしそれらに接していなくとも、劉備や孔明、関羽といった名前は聞いたことあるはずだし、ここから生まれた名言などが、日本のことわざとして定着している。


3bbd214c.jpgb9f65c41.jpg劉備たちは民と共に逃亡を続け、ようやく夏口の街に落ち着く。
だが曹操の脅威は去ったわけではない。すぐにでも次の一手を考えねばならない事態だった。
そこで孔明は劉備に、孫権に援助を求めようと提案。
孫権も曹操と敵対する武将。同盟を申し出れば、必ず応じるはずだ、と。
劉備はこの提案に納得し、孔明を単身、孫権の元へ向かわせる。
c51d9953.jpg232936a6.jpgレッドクリフは前後編合わせて5時間に及ぶ。それでも、三国志という長いドラマのほんの一幕に過ぎない。あらためて、三国志の壮大さに圧倒される。現代のような作られた大作主義の中国ではなく、当時の中国は本当に壮大だった。
『レッドクリフ Part1』は三国志の物語の中でも、最も苛烈な赤壁の戦いを中心に描いた壮大な歴史絵巻である。
12761ed6.jpg映画の冒頭から、三国志の英雄はすでに集結している。
そこに至る余計な解説は思い切って省略され、物語は大きなクライマックスへ向かおうと進んでいる。
映画の舞台は赤壁を中心に組み立てられ、呆れるほど雄大で豪壮なセットが建築された。
戦場に集る群衆はかつてない規模で、見る者を圧倒させる。
何もかもが恐るべき雄大さで描かれた映画だ。
かつての英雄叙事詩を、最新の映画技術が壮大なドラマとしてスクリーン上に再現する。
9b8e60b4.jpg実写撮影はくすんだ色彩で、重量感を持って描かれるが、それに対してデジタルシーンはあまりにも色彩豊か。実景とかみあわず違和感が生じている。アクションも超現実的な跳躍が多く、やや飛躍しすぎた印象だ。


f98aae91.jpg三国志は実際の歴史物語だが、人間の描写にはひどく伝説めいた部分がある。
映画に描かれる英雄たちも、あまりにも超人的に描かれすぎて、現実的なものを失っている。
剣や槍の動きはあまりにも美しく描かれすぎているし、剛腕の関羽、張飛などの活躍はもはやファンタジーである。
アクションには京劇やカンフーの動きが取り入れられているが、それがかえって、自然主義的な力の流れを妨げてしまっている。
セットや風景は現実感あふれるディティールで描かれるが、活劇の部分はあまりにも跳躍しすぎで、少し違和感が残る。
18fd52bf.jpg0f8d55f6.jpg圧倒的スケールで描かれた作品。ジョン・ウー監督がハリウッドで儲けたお金で作られた。戦闘シーンはどれも奇抜だが、迫力充分。セットはあまりにも壮大すぎて、本当の歴史建築だと誤解した出演者もいたようだ。
618e8182.jpg『レッドクリフ Part1』は戦場に集う戦士達の物語である。
どの武将も、潔いまでに高潔な人間として描かれている。
戦士としての友情、仁義、忠義を強く描き、敵である曹操との対比を克明にしている。
一方で、戦士としての成長のドラマでもある。
赤壁の戦いに備え、戦士たちが集結し、絆を確かめあう。やがて迫り来る、最も苛烈な戦いを前にして、決意を固めるために。
壮大な歴史絵巻も、まだ途上である。

映画記事一覧

作品データ
監督・脚本:ジョン・ウー 音楽:岩代太郎
脚本:チャン・カン コー・ジェン シン・ハーユ
出演:トニー・レオン 金城武 チャン・フォンイー
〇〇〇チャン・チェン ヴィッキー・チャオ フー・ジュン
〇〇〇中村獅童 リン・チーリン ユウ・ヨン
〇〇〇バーサンジャプ ザン・ジンシェン ソン・ジア



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■2009/09/23 (Wed)
97734445.jpgモトラが仕事場を出て通りに出ると、突然、切迫した声がした。
「頼む、捕まえてくれ! 私の財布を引ったくった!」
モトラが振り向くと、足を引き摺りながら叫ぶ老黒人がいた。その手前を、財布を持った男が疾走している。
モトラは突然すぎて、ぽかんと引ったくりを見送ってしまった。するとそこに、ハンチングの若者が飛び出してきて、持っていたトランクを投げた。
引ったくりは、トランクをぶつけられて倒れた。その手から財布が落ちた。
引ったくりはすぐに起き上がって、ナイフを手に身構えた。
ハンチングの若者が、引ったくりに立ち向かおうと対峙する。モトラも、ここで応戦するようにハンチングの若者に並んだ。
引ったくりは二人の姿を見て、形勢不利と見て退散する。
モトラは財布を拾って、老黒人の下へ向かった。老黒人は足を怪我して、その場に倒れこんでいた。
6c52dc51.jpg「すまないが、この金をある場所に届けてくれ。実はこの金はマフィアの金なんだ。四時までに、ある場所に届けなければならないんだ。私は足を怪我してしまった。頼む、代わりに金を届けてくれ!」
財布の中には5000ドルのお金が入っていた。
モトラは了解して、財布を受け取った。だが、ハンチングの若者が、
「待って。さっきの奴が待ち伏せしているはずだ。ハンカチは持っていないか?」
f7bae60c.jpg老黒人がハンカチを持っていた。ハンチングの若者はハンカチを受け取り、財布を包んだ。
「君の財布もだ。君のも狙われるぞ。いいか。これを、こうやってズボンの中に入れるんだ。いいな。こうしたら安全だ」
ハンチングの若者は、モトラの財布もハンカチに包むと、ズボンの中に押し込んだ。
「わかった。キン隠しだな」
モトラは納得して若者からハンカチに包んだ財布を受け取った。若者に言われたとおり、モトラは自分のズボンの中に財布を押し込む。
モトラは駆け出した。そのままタクシーに飛び乗り、行き先を告げた。しかし、老黒人が言った住所とは、反対方向だった。
タクシーが走り出すと、モトラは大笑いした。
「どうしたんですか?」とタクシーの運転手が尋ねた。
「大儲けだ! 5000ドルが手に入ったぞ!」
モトラはズボンの中に入れていたハンカチを取り出す。開けてみると、そこに財布はなく、大量のちり紙が包まれていた。
……騙された!
7df56a54.jpg時代は1936年。アメリかは大恐慌の真っ只中だった。冒頭シーンなどに失業者が溢れる光景が描かれている。大金などお目にできないつらい時代だ。
ジョニーたちは、手に入れたお金をマフィアのお金だと知らない。通行人の財布を騙し取ったと思っていた。老齢のルーサーは引退を考えていた。



f89bec98.jpg実は、ハンチングの若者(ジョニー)、老黒人(ルーサー)、引ったくりの三人は、詐欺師だった。三人で共謀して、モトラを騙たのだ。
ジョニーたちは、こうしてモトラの財布を騙し取ったのだが、中から出てきたのは思いがけない大量の札束。
実は、その財布こそ、シカゴマフィアの金だったのだ。
間もなくジョニーたちは、シカゴマフィアから命を狙われるようになる。
ルーサーが殺され、ジョニーは命からがらシカゴから脱出する。
ルーサーの仇を誓ったジョニーは、稀代の詐欺師であるヘンリー・ゴンドーフに協力を申し出る。
こうして、史上最大の詐欺師たちのショーが始まる。
854511ac.jpgヘンリー・ゴンドーフとともに、詐欺ショーを共謀する事になったジョニー。だがジョニー自身、警察にもマフィアにも追われる身である。ジョニーは警戒して、アパートのドアに紙切れを挟み込む()。これをみて、「あっ!」と思ってしまった。『デスノート』の元ネタだ。




『スティング』は犯罪映画だが、暴力描写93752deb.jpgは少なく、安心して鑑賞できる作品だ。
詐欺師達の物語は軽妙で、リズムのいい音楽が心地よい。最近では見られないワイプが、物語の速度を早めている。
色使いも暖色系が中心で、落ち着いた印象がある。
ストーリーラインは複雑で、様々な思惑が錯綜するが、見ている側は物語を見失うことはない。
単純に物語を追っていける作品だ。
e3bd2c0b.jpgヘンリー・ゴンドーフ(左)は、まずポーカーでマフィアボスを騙す。ヘンリーを演じたポール・ニューマンは、吹き替えなしでトランプマジックを披露した。





7333816b.jpgb684308b.jpg『スティング』の登場人物は、ほとんどが詐欺師である。
主人公のジョニーをはじめとして、登場人物はことごとく詐欺師だ。
詐欺師たちは、皆それぞれ策を練り、罠を張り込み、誰かを陥れようとしている。
ジョニーは、シカゴマフィアを騙してやろとしているし、シカゴマフィアはジョニーの命を狙っている。稀代の詐欺師ヘンリー・ゴンドーフも、FBIに狙われている。
ジョニーたちは追跡する者たちを払いのけ、いかにして儲けを手にするのか。いかにルーサーの復讐を成功させるのか。
なかなか隙のない、優れたエンターティメントだ。

映画記事一覧

作品データ
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:デヴィッド・S・ウォード マーヴィン・ハムリッシュ
出演:ロバート・レッドフォード ポール・ニューマン
〇〇〇ロバート・ショウ チャールズ・ダーニング
〇〇〇アイリーン・ブレナン レイ・ウォルストン
〇〇〇サリー・カークランド チャールズ・ディアコップ
〇〇〇ダナ・エルカー ディミトラ・アーリス
アカデミー賞:作品賞受賞/監督賞受賞/脚本賞受賞/音響賞受賞
美術監督・装置賞受賞/ミュージカル映画音楽賞受賞/



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