■ 最新記事
(08/15)
(08/14)
(08/13)
(08/12)
(08/11)
(08/10)
(08/09)
(08/08)
(08/07)
(08/06)
■ カテゴリー
お探し記事は【記事一覧 索引】が便利です。
■2010/01/12 (Tue)
シリーズアニメ■
#01 震える夜
私立聖ミハイロフ学園敷地内聖堂――そこから学校へと至る道を織部まふゆが走っていた。その後ろを少し遅れて山辺燈が走って追いかけていた。
燈は走りながら頭を押さえていた。ゆっくりのペースなのに、燈はもう頬を真っ赤にして息を切らしていた。燈は育ちすぎのGカップのバストを足を振り上げるたびにゆっさゆっさと揺らしていた。あまりの大きな揺れに、体全体がつられて走りにくそうだった。
まふゆは走りながら、遅れて従いて来る燈に元気な声をかけた。燈が従いて来れるぎりぎりのペースを理解しながら、それより少し早い
「うん。まふちゃん、ありがと~」
燈は走りながら、朗らかな微笑を浮かべて手を振った。ひどく間延びした暢気な声に、まふゆは何となく笑みを漏らしてしまった。燈にも気持ちが移ったように笑った。いつの間にか2人で走りながら笑っていた。
まふゆと燈は並木通りを抜けて、庭園へと入っていった。するとチューリップの花壇の前に、ベリア=テレサが膝をついて座っていた。
均整の取れた顔に白く透き通るような美しい肌。それがぽつりと呟くさまはまるで人形だった。
マリアはチューリップを植えた鉢を持ち上げて、じっと観察していた。しかし無表情は動かず、何を考えているか読み取れなかった。
まふゆはテレサの前で足を止めて、挨拶をした。
とその横で燈が派手に転んだ。手で自分の体をかばうことすらできず、正面からバタンッと倒れた。
「織部まふゆ……さん?」
「そうそう。嬉しいな。やっと名前覚えてくれたんだね。今日もお勤めで欠席?」
まふゆはテレサの前に屈みこみ、親しげに話しかけた。
テレサは立ち上がると、無言で頷いた。それから別れの挨拶もせず、
そのテレサの後ろ姿を、まふゆと燈が茫然と見送った。
「テレサちゃんって、不思議な子だよね~」
燈がやっと身を起こして、ぽつりと呟いた。
「あんたが言う? 特待の編入生ってきっと色々あるんだよ。燈だっ
まふゆはちょっとからかうように微笑んでみせた。
「まふゆちゃんの意地悪~」
燈は不本意だったように頬を赤くして膨らませた。
「もう、しょうがないな。さあ、お手をどうぞ。お姫様」
「うん」
燈は頷いて、まふゆの掌を握った。まふゆは燈の体を引き上げるように立ち上が
「まふゆちゃんって本当の王子様みたい」
燈が目をきらきらさせて異性に向けるような熱っぽいまなざしを向けた。
「手のかかるお姫様の面倒を見ていますからね」
まふゆは燈の熱っぽい想いを心地よく受け止めて微笑みかけた。
山辺燈は聖ミハイロフ学園の前理事長である山辺雄大の一人娘だった。織部まふゆは雄大に拾われた孤児で、以来気弱で病気がちな燈の面倒を見ながら共に成長していった。
だがある日、雄大は「心配するな」という短い置手紙を残して失踪。以来まふゆと燈は頼るもののない2人きりの暮らしをしていた。
いやがらせの首謀者は辻堂美由梨。わ
そんなある日の下校時、まふゆと燈は道で倒れている銀髪の少年に出くわす。ボロボロの服に衰弱した体。助けようとまふゆと燈は学生寮の自分たちの部屋へ連れて帰る。
まふゆは燈に懇願されて、竹刀を手に仕方なく少年を探しに行く。その途上で、黒煙を吹き上げる聖堂に気付いた。
「あそこには伯父様の絵が……」
まふゆはせめて思い入れのあるイコンだけでも持ち帰ろうと思い、演壇の前へ急いで走った。
とそこに、銀髪の少年が助けに入った。
「……その顔の傷、聖痕者、神に愛され裏切られし者、致命者サーシャ!」
絶体絶命の危機に、テレサが助けに飛びつく。テレサは仮面の女を牽制して隙を作り出すと、サーシャを抱き起こし服を脱ぎ、乳房をむき出しにした。
唖然とするまふゆだったが、サーシャは構わずテレサの乳首に吸い
授乳で力を取り戻したサーシャは、仮面の女に戦いを挑み見事撃退する。
まふゆはサーシャの正体を知りたがったが、サーシャもテレサも多くは語らず夜の闇に去っていった。
その翌日、クラスにいきなりの転校生がやってきた。アレクサンドル=ニコラエビッチ=ヘル――サーシャである。
◇
いかにも仰々しい伝奇物語の空気を湛えているが、どうやらヒーローアクションも
物語の背景に悪の組織の存在があり、毎回エピソードの後半にはアクションが繰り広げられる。そしてヒーローは戦闘前の変身という儀式の変わりに、授乳と
『聖痕のクェイサー』は標準的なヒーローアクションよりはるかに暗く、官能的な空気を強く漂わせている。悪の組織の風貌はありきたりなスタイルだが、その行動
しかも悪の組織はうら若き乙女を標的とし、行為に及ぶ前に少女を陵辱し、その表情を羞恥で赤く染めそそられるような
官能的空気は悪の組織だけではなく、学園の風景そものにもさりげなく漂わせ
そんな物語の中心に立っているのはやはり少女達だが、そのルックスはなかなか強烈だ。女性の特徴を強調するかのような圧倒的なプロポーション。制服姿なのだが、その描かれ方はむしろ裸のラインを強調している。大きすぎのバストは圧倒する勢いで正面に突き出さ
物語の後半に挿入されるアクションは“戦い”というより、性的な饗宴
動きを封じられた少女は服を危険な刃で引き裂かれ、放送コードぎりぎりの裸をむき出しにし、羞恥で頬を赤く染め何ともいえない心地にさせる悲鳴を上げる。その表情の動きが実に性的な興奮を引き寄せてくれる。
キャラクターの動きもアクションとしてのぶつかり合いより、揺れ弾むバストやつややかに輝く太もものチラリズムが強調される。
そんなアクションのクライマックスにあるのが授乳シーンだ!
『聖痕のクェイサー』は放送コードのギリギリのラインに挑戦し、少女の官能を挑みかかるように描写する。その冒険が我々にどんな啓蒙と社会的止揚をもたらすのか、ある意味の注目作品である。
作品データ
監督:金子ひらく 原作:吉野弘幸 佐藤健悦
シリーズ構成・脚本:上江洲誠 脚本:待田堂子 森田繁 スーパーバイザー:名和宗則
キャラクターデザイン:うのまこと 総作画監督:杉本功 飯島弘也
色彩設計:鈴木依里 セットデザイン:青木智由紀 プロップデザイン:大河広行
美術監督:鈴木隆文 撮影監督:林コージロー 編集:廣瀬清志
音楽:加藤達也 音響監督:明田川仁
アニメーション制作:フッズエンタテインメント
出演:三瓶由布子 藤村歩 豊崎愛生 茅原実里
〇 平野綾 日笠陽子 川澄綾子 花澤香菜
〇 清水愛 高垣彩陽 千葉進歩 大川透
〇 斧アツシ 中村知子 岐部公好 荻野晴朗
PR
■2010/01/11 (Mon)
シリーズアニメ■
第1話 猫と少女とアレルギー
優人は眠る気になれず、頭の後ろに手を回して天井を見詰めていた。
――今日のあれは何だったんだろう。不思議な子が現れて、泰三がおかしくなって、それから……。
優人は今日のできごとを順番に頭の中に思い浮かべた。
朝の登校途中、突然あらわれた謎の女の子。長い黒髪に切れ長の目。でも瞳は大きく涙を溜めているように切なく揺れていた。それに、幼い顔に不釣合いなくらい大きなバスト……。
優人は女の子の姿を思い浮かべて、思わずにやけ顔を浮かべてしまった。
しかし、すぐに甘い気分は優人から去っていった。同じ日の昼頃、突然クラスメイトの柾木泰三がおかしくなった。体をふらふらとさせ、別人のような低く曇った声を出したかと思うと背中から蜘蛛の足のような節くれを生やし、優人と九崎凛子を襲い掛かった。
そんな場面に現れたのは今朝のあの女の子だった。女の子は真剣を手に泰三と戦いを挑んだ。泰三が気絶させられるとその体から怪物が分離した。怪物は女の子に襲い掛かったけどただちに女の子に叩きのめされ、真剣で串刺しにされてしまった。
次から次へと起こる奇怪な事件――。
優人は溜め息を吐いて考えを打ち消した。
「まあ、いいや。明日考えよう」
目を閉じて、眠りの中に入ろうとした。
「え?」
不意に布団の中から声がした。布団がもぞもぞと持ち上がり、女の子が顔を出した。
「ひゃぁ!」
女の子は優人に被さるように乗りかかっていた。白の薄い和装姿で、胸元が大きく開いていた。開けたそこから、女の子の腹が隠れるほど大きく膨らんだ胸が、重力と葛藤しながら垂れ下がっていた。
「なんじゃ、人を化け物のように」
「ああ、いや、あの、でも……」
優人は具体的な言葉が見つけられなかった。目線はふらふらと女の子の顔から胸元へ移る。女の子の体が僅かでも揺れるたびに、くっきりとした谷間を描いた乳房が確かな弾力を持って揺れていた。
女の子は優人の目線に気付いて、誘いかけるような微笑を浮かべた。
「ぬしがしたいのならば、遠慮せんでもよい。ぬしの望むとおり
女の子は喉の奥から声を出すように掠らせて、優人をやさしくベッドに押し倒した。女の子は優人の脚に自分の脚を絡め、胸を強調するように押し付けてくる。
「ちょ、おい……」
女の子の掌がゆっくり優人の太ももに沈み込んでいく。やわらかな指先がするすると内股のラインをなでてその付け根へと這い上がってきた。
そうしながら、女の子は優人の首筋をキスし、舌の先で撫でるように
「……う……うう……ああ……」
優人は歯を食いしばって、迫り来る快感に耐えようとした。だが理性の砦は確実に崩され、口から甘く熱のこもった吐息が漏れた。経験のない感触に全身がぞわぞわと熱を持って、身の内から果てしなく迫り来る快楽に溺れそうになった。
だがしかし、優人は女の子の肩を掴み、自分の体から引き剥がした。
優人は叫ぶように訴えた。しかし羞恥心から女の子をまっすぐに見られなかった。
「よかろう」
女の子はさっきまでの熱っぽい調子を改めて素に戻ると、パジャマのボタンを外していった。
「何で脱がすんだよ」
「やはり、枯れておるな」
女の子が指摘するのに、優人は自分の胸に目を向けた。優人の裸の胸に、御守りがあった。田舎のばっちゃんからもらったもので、眠るときでさえ常に携帯していた。その御守りに、女の子の目線が注がれていた。
女の子は優人をじっと見詰めたまま、静かに説明した。
――アヤカシ。優人はすぐに思い当たった。昼間、泰三に取り付いた謎の怪物……。あれがアヤカシなのだとすぐに了解した。
「でも、宿命って?」
優人はすべてを理解しきれず尋ねた。
「案ずるな。古の盟約により、今日よりぬしのことは私が守る。いや、盟約なぞなくとも、私はもうぬしの側から離れぬ」
女の子が優人の首に肩をうずめた。優人は女の子のぬくもりと香りを
だが女の子が優人の首にキスをするのに、早くも理性が飛びかけた。優人の口から少女のような吐息を漏れてしまう。
「ちょ、ちょっと待って。まだ肝心なことを聞いてない。君は、誰?」
それでも優人は、正気を強く保って女の子に尋ねた。
「緋鞠。名前は緋鞠。私もアヤカシ。かわいい猫じゃ」
緋鞠が楽しげに微笑むと、頭の上からぴょこんと大きな白い耳が現れた。
優人ははっくしょん、はっくしょんとくしゃみを連続させた。
とそんなところに、誰かが部屋のドアをノックした。
「優人? 遅くにごめん。あのさ、昼間のことなんだけど……」
「凛子! これは違う!」
優人は慌てて言い訳しようとした。
「なにしてんのよ! 信じられない! 離れなさい!」
凛子の逆鱗が落ちた。凛子の怒りで部屋のなかが揺れて、あらゆるものが凶器となって優人を飛び掛ってきた。凛子の怒りはもうしばらく収まりそうになかった。
◇
隣の家に住んでいるのは九崎凛子。優人とは幼馴染で、凛子は自分が優人の面倒を見てきたと思い込んでいる。
その日は優人の16歳の誕生日だった。優人の誕生日であり、父と
何かが大きく変わろうとしている。16歳の誕生日――それは大いなる節目であった。闇に潜んでいた魔物が公然と姿を現し、優人の日常を暗い影で覆い隠そうとする。
だが緋鞠が優人を慕っている理由は祖先への感謝だけではなかった。それはずっと幼い日々に逆戻り……。
親のいない家に1人きりで暮らす思春期の少年。美少女の登場と共に始まる非日常。
『おまもりひまり』は物語の展開や過程といった進展を重要視しておらず、ただそのシチュエーションのみがクローズアップされて描かれ
それはまるで、思春期の少年が退屈な授業時間に夢想する世界そのものであり、一つの関連性を持って連続する物語作品ではない。
物語の単調さをごまかすように挿入されるアクションはやはりカット間の連続する力はなく、ただポーズをモンタージュとして並べただけである。音楽が物語の転調を示唆しているが、アクションと呼ぶほどの勢いや肉弾的なぶつかり合いは感じられない。
『おまもりひまり』は物語やアクションといった通常の娯楽作品とは違う視点で作られた作品であり、見る側にも相応の心得が必要な作品だ。
『おまもりひまり』は現実世界では不可能に思える夢想の強く刻印している。あの作品の中では、現実世界では振り向きもしてくれない美
作品データ
監督:ウシロシンジ 原作:的良みらん
シリーズ構成:長谷川勝己 脚本:あみやまさはる、鈴木雅詞
キャラクターデザイン:磯野智 デザインワークス:岩永悦宣 山本篤史
総作画監督:磯野智 作画監督:臼田美夫 アクション作画監督:若野哲也
美術監督:小坂部直子 色彩設計:岩井田洋 撮影監督:口羽毅 編集:平木大輔
音響監督:えのもとたかひろ 音楽:橋本由香利 音楽プロデューサー:植村俊一
アニメーション制作:ZEXCS
出演:小清水亜美 平川大輔 野水伊織 真堂圭
〇 大亀あすか 松岡由貴 真堂圭 大亀あすか
〇 根谷美智子 鈴木達央 嶋村侑 瀧澤樹
〇 田坂浩樹 上坂龍也 岡哲也 美名
■2010/01/10 (Sun)
シリーズアニメ■
第1問 バカとクラスの召喚戦争
そんな花びらの雨の中を、吉井明久は息を弾ませながら走っていた。今日から2年生に上がる。だというのに、遅刻寸前の危機だった。
やっと校門の前にたどり着くと、大塚明夫声のいかつい教師が吉井を呼び止めた。
「ゲッ! 鉄人!」
西村はぎょっとした足を止めた。
西村宗一は封筒を吉井に差し出した。側にテーブルが置かれていたがその上には何もなかった。どうやら、吉井が本当に最後の1人らしかった。
「はーい!」
吉井は元気に返事して封筒を受け取った。中には二つ折りにされた紙切れが一枚。吉井はにわかに胸をドキドキさせて紙切れを摘み取った。
「吉井、今だから言うがな……」
西村はこれ以上のない力強さで断言した。
吉井は紙切れを摘み出し、開いてみた。そこに乱暴な走り書きで「F」の字が書き記されてあった。
その名も「試験召喚システム」だ。「試験召喚システム」とは科学とオカルトが組み合わされ、偶然の結果生み出されたシステムである。このシステムを使うと、召喚の主は自身の分身である「召喚獣」を呼び出せ、それを手先に戦いを挑むことができる。
Fクラスの環境はまさしく“最悪”のものだった。床は畳で机は卓袱
だがもちろんEクラスは簡単に教室を明け渡すつもりはない。かくして、教室の環境をかけた戦いが始まった。
◇
『バカとテストと召喚獣』は楽しい作品だ。
作品のアイデアはすでに他作品で提示されたアイデアを寄り合わせただけに過ぎない。“ありあわせ”の材料で作られた作品だといえる。
キャラクターの容姿や性格といった造形はライトノベルにありそうな定石をそのまま踏襲し、意外性は皆無。異色学園ものはすでにそれがスタンダートをされるほど使い回され、使い古されつつある設定である。その中心的なファクターである「召喚獣」も今時珍しいものではない。アニメ、漫画、ゲームといった分野でうんざりするほど見てきたアイデアだ。
だが『バカとテストと召喚獣』は思いがけない楽しさを提供する。ノリのいいキャラクターにテンポよく流れていく台詞、カット。「召喚獣」といった学問とはまるで無関係なアイデアをあえて学園物という題材と組み合わせ、意外な相乗効果を上げている。
また「召喚獣」を呼び出してでの戦闘シーンが楽しい。明るくて楽しく、それに子供っぽさが大人の視聴者に子供心を与えてくれる。
召喚獣はどんなキャラクターが登場するのだろうと思っていると、何のことはない、召喚主を2頭身に書き換えただけのキャラクターだった。ということは、召喚主のキャラクターとしての強さが、そのまま召
2頭身で示されるキャラクターはまるまるとして愛らしく、6頭身キャラクターよりはるかに生き生きとした躍動が与えられている。現実世界という制約を受けず、2頭身キャラクターは思い思いの衣装に武器を手に取り、作品世界の領域を自由に広げている。召喚獣のアイデア
戦闘シーンは徹底してテレビゲームの世界が再現されている。極端な俯瞰構図に色でより分けたサイトを強調する手法。対決場面はバ
ふとするとその描写は子供じみて見えるが児童向け作品とは明らかに違い、より高度で上質だ(というか日本の児童向け作品はできが悪い。おそらくこの分野で本気になって作品制作している人が僅少なのだろう)。見ていると子供心に戻ってキャラクター達に声援を送っている我々がいる。難しいことは考えさせず、楽しい、という気分させてくれる。
大人が子供に、あるいは少年の遊び心を引き戻すための作品だ。
作品データ
監督:大沼 心 原作:井上堅二 キャラクター原案:葉賀ユイ
シリーズ構成:高山カツヒコ キャラクターデザイン・総作画監督:大島美和
色彩設計:木幡美雪 美術監督:東厚治 美術:ST.ちゅーりっぷ
撮影監督:中西康祐 撮影:旭プロダクション 編集:たぐまじゅん
音響監督:亀山俊樹 音楽:虹音 音楽プロデューサー:斉藤滋
アニメーション制作:SILVER LINK.
出演:下野 紘 原田ひとみ 水橋かおり 鈴木達央
〇 加藤英美里 宮田幸季 磯村知美 竹達彩奈
〇 寺島拓篤 加藤英美里 平田真菜
〇 南條愛乃 津田健次郎 大塚明夫
■2010/01/09 (Sat)
シリーズアニメ■
第1話 響ク音・払暁ノ街
今その場所にひそひそと置き忘れているのは、小さな女の子の泣き声だけでした。女の子は何もない崩れた建物の隅っこで小さくうずく
ふと女の子は気配に気付きました。正面に、扉をなくした入口がありました。その向うの石垣に囲まれた原っぱの上に、女の人が1人立っていました。
女の子は導かれるものを感じて、立ち上がって扉の前に進みました。近付いてみると、女の人の手に金の喇叭があるのに気付きました。金の喇叭はこの色彩を失った灰色の世界の中で、希望のしるし黄金色に輝いていました。
女の人は驚くように目を丸くしていましたけど、相手が女の子だと気付いて微笑を浮かべました。
「どうしたの?」
「へえ、あんたはミストラルか。難儀なこった」
「でも、あっちは食いもんはうまいし、美人が多いって言うしな」
「休戦になってそろそろ半年か――。お互い無事に生き残れてよかったな」
男達がぽつぽつと言葉を交わしています。言葉に挟まれるように、ぱたぱたとカードを叩く音がしました。
女の子は自分の居場所を思い出そうと身を起こし、目をこすって顔を上げました。どうやらそこは貨物列車のコンテナの中のようです。空間一杯に積み込まれたコンテナが深い影を作り、その中に男達が幾人かいるのに気付きました。
「嬢ちゃん。起きたか」
不意に男達の騒ぎが収まって、声が女の子に向けられました。
「戦利品のおすそ分けだ」
「あ、キャラメル! こ、このような高価なもの、恐縮であります! えっと……軍曹殿!」
女の子は一気に目が覚めて、立ち上がって相手の階級を確認して敬礼をしました。
「なーに、喇叭手を親切にしとくと退却喇叭がよく聞こえるってな」
缶を投げ渡してくれた軍曹は、微笑みながらゲームに戻ってカードを一枚手に取りました。
「徴兵もなくなったってのに、新兵とは珍しいな。志願したのか?」
別の男が女の子に不思議そうに尋ねました。
女の子はちょっと興奮気味に声を上げました。
すると、男たちから「ええ!」と驚きの声が上がりました。
「じゃなくて……」
女の子は慌てて訂正しようとします。でももう遅かったようです。男達は声を上げて笑いました。
「ははははは! 正直でいいや」
女の子はいたたまれなくなって、しゅんと落ち込むように俯きました。
「二等兵。名前は?」
そう尋ねる声に、女の子は気分を改めて顔を上げました。
「カナタ――。空深彼方であります!」
カナタは元気一杯に胸を張って敬礼をしました。
◇
慌しいものや哀しいものはその世界のどこにもないと言うように――しかし彼らは軍人である。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』は軍人を主人公に描い
これは一昔前の漫画『のらくろ』のような、争いをほとんど描かず平和的でモラトリアル集団として軍隊を描いた兵隊物語に似た雰囲気を持っている。
◇
世界が今のように土で固まらず、風になびく草もなかった頃。街の谷底に翼を持った悪魔が住んでいました。
悪魔の喉から噴出される紅蓮の炎は何もかも焼き払ってしまいました。固まりかけた大地や人間の作りしあらゆるものは、悪魔の放つ業火の前に灰となって朽ちてしまいました。
悪魔の蛮行はとどまらず、砦の住んでいた乙女達をさらい、
けれど娘たちは諦めず、天主様から授かった金の角笛でお互いを呼び合いました。そうして娘たちは協力し合って地下の迷宮を脱出したのです。
娘たちは地上に這い出ると、巨大な蜘蛛の力を借りて悪魔を倒し、その首を討ち落としました。
すると悪魔の首は呪いを残すように炎を吹き出し続けまし
このままではすべて燃やされてしまいます。崖の上に作った村もそこに暮らす人々も、全て炎で燃やされてしまいます。
乙女たちは村のため人のため大地のために決心を定めました。燃え上がる獣の首を順番に抱き、呪いが絶えるのを待ったのです。
娘の体は炎で燃え上がり、腕と胸は火傷に爛れ、美しかった姿は黒い影法師のように変わりました。それでも娘たちは懸命に耐えて、順番に悪魔の首を抱き続けます。
村の人たちはそんな娘のために水を浴びせました。毎日毎日、火が絶えるのを待ちながら水をかけ続けました。
それが1年過ぎた頃――悪魔を覆っていた炎は消えました。悪魔の首は熱を失った炭のように黒く固まり、ぼろぼろと崩れ去りました。呪いは絶えたのです。
以来、村を救った霊を慰めるために、水かけ祭りを始めたのです。
◇
これはある意味、日本アニメにおける制服物の新しい分野であり、所属する場所を軍隊に視点を移した作品であると見るべきだろう。だからそこで演じられるモラトリアル空間は、その他のアニメで描かれたゆるやかさと性質は大きく変わらないだろう――もっともドラマが動き出せば、学園物ドラマとまったく違う展開がそこに見出せるはずだろう、という期待はある。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』はスペインの風景の上
軍隊物アニメ――というよりどこか童話的な温かみを感じさせる作品だ。
舞台は絶壁に接した環境の厳しそうな場所だが、人々の顔に屈託が
だがこの平和的な空気も嵐の前後にある静けさ、台風の目に入ったときの静かに凪いだ一瞬に過ぎないだろう。戦争の影が迫ってくるのか、岸壁下に眠った悪魔が再生するのかそれは読みきれないが――物語の時間は不穏な気配を目指してそろりと進み始める。
◇
いきなり怒鳴り声をするのに、カナタはぱっと目を覚ましました。すると目の前に、凛として美しいけど険しく怒った顔がありました。
カナタはびっくりして飛び起きました。それから次に困惑して辺りを見回しました。とても暗くて固い石の壁に囲まれていました。カナタ自身は寝袋で眠っていたようでした。
「あれ、ここって……」
カナタは不安になって女の人に答えを求めようとしました。
「いつまで寝ぼけてる、ここは《時告げ砦》。第112小隊の駐屯地だ」
「ああ……」
女の人は厳しく、今いる場所を説明してくれました。カナタは「ここがそうなのか」と声を上げて改めて周囲の風景を、自分が所属すべき場所を見回しました。
女の人は何も言わず、ランプを手に立ち上がりました。カナタはどうすべきだろうと女の人を見送りました。ランプの光が遠ざかっていき、暗い影がカナタの体に被さってきました。
「何をしている。従いて来い!」
女の人がふと足を止めて、カナタを怒鳴りつけました。
その峻厳な声に、カナタは改めて背筋をピンと伸ばし、寝袋から飛び出しました。それから、女の人の後を従いて行きます。
間もなくして、目の前にドアが現れました。ドアを開くと、視界が開け
「昨日はあの……ご、ご迷惑をおかけしました」
カナタは自分の喇叭を胸に抱きながら、タイミングを見計らって謝罪をしました。
「まったくだ」
女の人は呆れた顔で夜空を眺めていました。その横顔は厳しく固まっていました。空には星はなく、まばらに雲が浮かんでいます。そろそろ夜明け頃の時間でした。空気が軽やかで闇が深く、でも暗さによる不安な心地はどこにもありませんでした。
「すみません。でも……」
カナタはびくびくしてピシッと背筋を伸ばしました。でも、と言い訳を続けようと俯きます。
するとふと女の人が微笑みかけました。
「冗談だ。だが、もう無茶はするなよ。こんな鈴のために」
女の人はシャツの中に押し込んだ鈴を引っ張り出しました。首飾りに付けられた鈴が、シャラシャラと乾いた音を立てました。
ふとカナタは右の風景を見ました。湾を挟んで崖が険しく切り取られているのが見えました。そこに、セーズの街が沈黙して佇んでいました。夜の影で真っ暗に沈んで、街は休息の時間にまどろんでいました。
女の人が言うのにカナタは振り向きました。するとその手に、立派な喇叭が握られていました。
「トランペット!」
カナタは気分を一転させて心弾ませました。
女の人はそこで言葉を切って、街を振り向きました。喇叭をそっと唇に当てて、瞑想するように目を閉じました。
喇叭が音を吹き鳴らしました。それは見事なメロディとなって空へと広がって行きます。女の人の息吹が金の管を通り、魔法の音色に変
カナタは暗く沈んだ空を見ました。澄んだ空気が心地よく揺れているのを感じました。――空の音だ。カナタは空一杯に広がっていく音の形をはっきり感じました。それがあまりにも心地よくて、想いをそこに委ねました。
街は穏やかな光に包まれて、白い壁の色を浮かべました。続いて丘の緑や穏やかにゆらめく海の青が浮かびました。
「和宮梨旺――私の名だ。私が喇叭手としてお前を指導する」
女の人は改めて名乗りました。カナタは興奮で胸を躍らせて、リオの前に飛びつき頭を深く下げてお辞儀しました。
「よろしくお願いします。リオ総長殿!」
「リオでいい」
リオが素っ気なくいうのに、カナタはえっと顔を上げます。
リオはもどかしそうに言葉を探して空を見上げました。
「フェリシア……隊長の方針でな。ここでは階級は抜きだ」
「えっと、じゃあリオ先輩!」
カナタは言い改めてリオに微笑みかけました。
リオも軽く微笑みました。
「では、さっそく始めるとするか。起床喇叭、吹いてみろ」
リオは指導員の顔になって、厳しくカナタに指示を与えました。
「ええ!」
カナタは困ったように声を上げました。
それでも仕方なく喇叭を口にくわえます。しかしそこから出てきたのは……
途切れ途切れの奇怪な音でした。それでもリオは一生懸命頬を膨らませてぷうぷうと喇叭に息を吹き込みます。
その横で、リオが愕然と銃眼にもたれかかりうなだれていました。
作品データ
監督:神戸守 原作:Paradores
脚本:吉野弘幸 キャラクター原案:岸田メル キャラクターデザイン:赤井俊文
セットデザイン:青木智由紀 プロップデザイン:北田勝彦 メカニックデザイン:石垣純哉
色彩設計:中島和子 美術監督:甲斐政俊 撮影監督:尾崎隆晴
編集:瀬山武司 音響監督:清水勝則 音楽:大島ミチル
アニメーション制作:A-1Pictures
出演:金元寿子 小林ゆう 喜多村英梨 悠木碧
〇 遠藤綾 福圓美里 石塚運昇 八十川真由野
■2010/01/08 (Fri)
シリーズアニメ■
第1話 開口一番
笑わないで欲しい。小学校も中学校も修学旅行は欠席して、地元から一歩も出たことがなく、初めての東京に戸惑っている。でもこの4月
偏差値は中の上くらい。綺麗だし設備も整っている。というより、小学生からの親友に誘われたことが大きい。親には地元の公立に行くように反対されたけど、東京にも憧れていたし……。
でも今はむしろ不安を感じている。初めて来る場所にどうしていいかわからなかったし、周りを行く人はみんな無関心みたいな顔をした他人だった。――帰りたい。正直、それが今の思いだった。
主人公と主要登場人物を除いて、街を行く人たちは色彩のない灰色だ。
人ばかりで犇く都会においては、通りを行く人たちなどNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)程度の人格しか与えられていない。灰色の人間に灰色の人格。彼らがどんな内面を持っているのか、知る術はないし、知ろうという気すら起こらない。まさに砂漠の砂粒のようなものだ。
都会という場所は個人の人格が埋没する場所である。彼らがどんな人間でどんな人生を経てきたのか――主体は勝手にテレビで見たようなステレオタイプを押し当てて想定する。彼らはどうせ大したことは何もしていない。灰色の顔を浮かべる彼らがどんな人生を背負ってどんな哲学を抱いているのか――都会において最も困難に思えるのは、人間への感情移入である。特に通り過ぎて去っていく人たちに対して感情移入は難しい。
だから都会という場所にいると、得体の知れない優越感に捉われることがある。あの通り過ぎる有象無象に較べたら、自分のほうが遥かに優秀で素晴らしい人間性を獲得している――。
『デュラララ』のモブが灰色に描かれるのは単に作業上の理由だろう。だが確かに我々は、都会という場所を灰色の人間が通り過ぎる場所と見做している部分はある。『デュラララ』はそんな人間の主観的な意識を画像の中に描き出している。
誰? 僕は振り返った。
「え? あれ? ……紀田君?」
金髪の灰色のパーカ姿の少年だった。振り向いてみると、僕から30
「疑問系かよ。ならば答えてやろう。3択で答えよ。1、紀田正臣。2、紀田正臣。3、紀田正臣」
紀田正臣はノリノリで指を1本ずつ突き立てた。
「わあー、紀田君! 紀田君なの」
僕はやっと紀田だとわかって笑顔をもらした。
紀田は僕の胸をトンと叩いた。僕は懐かしさに嬉しくて笑いを漏らした。
「ぜんぜん変わってるからびっくりしたよ。髪の毛染めたりしていると
「そりゃ4年も経てばな~。ていうより、帝人は小学校からぜんぜん変わってないじゃんかよ。ていうか、さりげなく寒いとか言うな」
紀田は久し振りに会えた喜びを浮かべて、僕の頭をぺちぺちと叩いた。
これは僕の大親友、紀田正臣。小学校の時に紀田は転校してしまったけど、その後もずっとチャットで話し合っている仲だった。見た目は随分変わってしまったけど、彼の話しぶりや仕草はちっとも変わっていなかった。ギャグが寒いのも、あの頃のままだった。
紀田は歩きながら玄人の顔で僕に話しかけた。
「えーっと、サンシャイン60とか?」
僕はとりあえず池袋で知っている地名を挙げた。すると紀田は失笑するような笑いを浮かべた。
「今から? 行くんなら彼女の1人でも連れていったほうがいいぞ」
「じゃあ、池袋ウエストゲートパークとか……」
「普通に西口公園って言えよ」
「え? 池袋人はみんなそう呼んでいるんじゃ」
「何だよ池袋人って。あ、何? 行きたい?」
紀田は僕の前に飛び出して足を止めた。僕はえっとなって紀田の顔を見詰めた。
紀田は有無言わさず、僕の手を掴んで地下鉄出口のエスカレーターへと乗った。
「やめようよ。もう夜だよ。カラーギャングってのに殺されちゃうよ」
僕はおどおどとして紀田に訴えかけた。
「マジでそんなこと言われても困る。つうかまだ6時だぞ。ったく、臆病なのも相変わらずだな」
紀田は携帯を引っ張り出して、僕を安心させるように笑いかけた。
そうか――と僕は今さらながらに思った。この4年間、紀田は僕とはまったく違う人生を歩んできた。この街で、この都会で。紀田はちょっと見るとあの頃のままだけど、やはりどこか違う。僕の知らないずっと遠いところにいて、そして今、彼は僕を自分たちの場所に引きこもうとしてくれている。
だがあえてだろう、『デュラララ』の風景は極端なくらい影が深く、闇夜に浮かぶ窓の光や看板の色彩を克明に浮かぶように描かれている。その風景は陰鬱で猥雑でいかがわしさに溢れ、都会というより魔都という印象だ。異界の登場人物たちが集る舞台として相応しく、普
映像を見ていると、池袋の街が『バットマン』のゴッサムシティのようにすら見えてくる。
作り手の感性と物語の都合に合わせて、池袋の街は大胆に再構築されている。『デュラララ』に描かれた池袋は、豊島区のあの池袋ではなく、あくまでも『デュラララ』の池袋なのだ。
紀田は頭の後ろに手を回しながら、少し退屈そうな口ぶりで説明した。
「じゃあ、今の池袋は安心なの?」
僕はへえーと人ごみが珍しくてきょろきょろと辺りを見ていた。
「す、すみません……え?」
僕は頭を上げて改めてぶつかった相手を見た。
まるで絵に書いたように張り付いた笑顔――というか絵だった。道の真ん中に、お店でよく見るような等身大ポップが置かれていたのだ。
等身大ポップの後ろから、何だと2人の男女が顔を出した。
「あ、紀田君じゃん」
女が紀田に気付いて声を上げた。
「あ、狩沢さんに遊馬崎さん。どーもです」
「いやいや、久し振り」
遊馬崎さんと呼ばれた男が紀田に手を振った。
「そっちの子は誰? 友達?」
狩沢と呼ばれた女が僕を指さし、紀田に尋ねる。
「へえ、そうなんだ」
狩沢が軽めに声を上げた。
この人は狩沢絵理華。一緒にいるのが遊馬崎ウォーカー。
向い側の道路にワゴン車を止めているのは門田京平に渡草三郎。
彼らは通り過ぎる人間達とは生い立ちも人間としての種類も違う。もっと個性的で、リアルに描きこまれた風景から浮かび上がるくらい強烈な属性を備えた人たちだ。
だが『デュラララ』はそんなごまかしの個人主義を意義申し立てするように、個人をどこまでも力強く描いている。現実世界にありえない組み合わせに、剛腕に、首なしライダーが当り前のように登場する。
そういったキャラクター達が複雑に折り重なる不純な群像劇――それが『デュラララ』が目指している空間だろう。
板前の格好をしたロシア人の黒人であるサイモンのことや、絶対に怒らせてはいけない平和島静雄。他にも絶対会ってはいけない人物として折原臨也という男のことも話した。
「ああ、あとな、ダラーズっていう連中にも関わらないほうがいいぜ。
紀田はふと思い出したようにその名前を口にした。
「ダラース?」
と僕は鸚鵡返しにしながら、ワンダラーズって何だ? と考えていた。
「俺も詳しいことはわかんねえんだけどよ。とにかく人数が多くて、線が一本ぶち切れたチームらしい。カラーギャングらしいんだけど、どんな色なのかもわかんねえ。ま、今は迂闊に集会はできねえから、そいつらもいつの間にか解散しちまったりしてな」
「そうなんだ」
「お前は運がいいよ。今日だけで門田さんやサイモンに会えて、静雄が投げた自動販売機も見れて」
「それ、運がいいって言うのかな?」
僕は困惑して尋ね返した。
紀田は急に真顔になって、じっと僕の顔を見つめた。
「僕もだよ」
僕は応えるように紀田に頷いて返した。
その時だ、どこかで唸り声がした。まるでずっと暗い地下からズゥゥーンと響いてくるような音だった。辛うじて僕は、それがエンジン音だとわかった。
「お前本当に運がいいぞ! おまけに都市伝説を目の前で見れるんだから!」
紀田は言うより早く、音がした方向へと駆け出した。
「紀田君、都市伝説って何?」
「黒バイクだよ。首なしライダー!」
紀田はその先の歩道が切れた場所まで進んだ。その先に幅の広い道路が広がり、長い横断歩道が横切っていた。その道路を、真っ黒な影が今まさに通り過ぎようとした。
僕はその時、自分の体が震えているのに気付いた。怖かったんじゃ
僕はここで、この街で、他所では到底できないような経験をした。今まで、決して手が届かないと思っていたありえない現実が目の前に広がっているんだと感じた。僕は僕の新しい現実が始まる予感に、震えていた。
『デュラララ』第1話は顔見せだけだ。次から次へと登場人物が出てきたが、物語は一切動いていない。それから池袋の街が現実の風景とは別種の異界であると紹介した。
物語は動かないが、今にも何かが起きそうな、得体の知れない何かが動き出しそうなそんな予感の孕んだプロローグである。まともではない人物に、まともではない事件――。力と力がぶつかり合う物語が始まる。
まるで文明という秩序に対して異議申し立てするように、彼らは攻撃性を剥きだしにして異能の力をぶつけ合う。
現代という灰色に沈んだ無個性に対し、彼らはどんな活劇(アンチテーゼ)を演じ池袋の街にその存在を刻印するのか――見ものである。
作品データ
監督:大森貴弘 原作:成田良悟 原作イラスト:ヤスダスズヒト
シリーズ構成:高木登 キャラクターデザイン:岸田隆宏
メカデザイン・アクション作監:山田起生 総作画監督:高田晃
美術:伊藤聖 色彩設計:宮脇裕美 監督補:川面真也 撮影:田村仁
CGプロデューサー:神林憲和 編集:関一彦 音楽:吉森信
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
出演:豊永利行 宮野真守 花澤香菜 神谷浩史
〇 小野大輔 福山潤 中村悠一 梶裕貴
〇 堀江一眞 小林沙苗 黒田崇矢 戸松遥
〇 伊瀬茉莉也 松風雅也 伊藤健太郎 井口祐一