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■2009/04/15 (Wed)
風に砂埃が混じり、ごうごうと音を立てている。険しい谷の斜面は、はるかな奈落へと落ちている。
そんな場所にも、古い住居の痕跡が点々と残されていた。かつてはこんな場所でも、そこそこの文明が栄えていたのだ。
リスティはそんな住居の跡に忍び込んでいった。この辺りにはコレクターが値段を付けてくれそうなお宝がたくさん眠っているのだ。
リスティは自身では、それなりの目利きである自負があった。盗みで生活する人間にとって、必要なスキルだった。
そんなとき、ふと気配が近付くのを感じた。リスティは仕事を中断して、物陰に身を潜めた。
住居が置かれているそこより、数メートル下に細い小道があった。かつては街道だったのか、アーチ状のゲートが点々と備えられている。
そんな場所を、誰かが歩いていた。
女だ。女はフードを深くかぶって姿を隠していた。腰に細身のレイピアを差している。
18f9d631.jpgさては自分を狙った賞金稼ぎか。リルティは武器を手に警戒した。
だが違った。ゲートの上に、別の気配が現れた。フードの女も、気配に気付いて振り返った。
「旅人を襲っているのは、お前か!」
フードの女がレイピアを抜いて気配と対峙した。
ゲートの上にいたのはメローナだ。ピンクの髪にウサギの耳を備えた美しい少女だ。だが、少女は人間ではなく、この周辺を徘徊する魔物なのだ。
メローナはフードの女の挑発にも乗らず、悠然とアーチに座って足をぶらぶらとさせていた。
「だったらどうなのさ」
メローナは挑発的に微笑んで言葉を返した。
「私が倒す!」
「ふーん。君が僕を倒しちゃうんだ。面白い。相手してやるよ」
メローナが宙を舞った。二人の剣が火花を散らした。二度、三度と剣戟を重ね、二人はギリギリに接近しあった。
ac82fd26.jpg「顔を隠したって、僕にはわかるよ。くんくん。ヴァンス家の臭いがする」
メローナは挑発的にフードの女に顔を寄せて、鼻をひくひくとさせた。
フードの女がメローナを押し返した。と同時に、二人の剣が太陽を宿した。
メローナの剣が、女のフードを裂いた。フードの下から現れたのは、長い金髪の可憐な乙女だった。
c62d2e81.jpg一方金髪の少女の剣は、メローナの肩を捉え、胸元までを引き裂いた。明らかな致命傷だった。
だが、メローナは顔に苦痛を見せず、不思議そうに首を傾げて金髪の少女を見た。
「あれ? クローデットじゃない」
「私はレイナ。高貴なる戦士、レイナだ!」
レイナ。覚えがあるぞ。リスティはすぐに自分の荷物袋を調べた。
f596d1f2.jpg見つけた。ヴァンス・レイナ。クローデットの妹だ。
なるほど、これは面白いかもしれない。リスティはにやりを口元をゆがめた。
戦いはまだ続いていた。あっとリスティが注意を向けると、形勢ははっきりと変わっていた。
レイナが尻を突き、胸元を隠していた。見事なバストがはだけかけて、レイナは羞恥で頬を染めていた。
「おっかしいなぁ、クローデットの臭いがしたのに。まbb9a3319.jpgあ、ライオンの将、クローデットの実力が、この程度ってことはないよねぇ。服が破れたくらいで『キャア』だもん」
メローナは挑発を込めた笑いを浮かべた。
「あなたの目的は、何?」
「僕はね、強い闘士を叩き潰して回っているのさ。クイーンズブレイドの参加者をね。――始まるのさ。四年に一度の、新しい女王を決める戦いがね!」
3ff4be82.jpg非常に残念な話をするが、テレビ放送版は肝心な部分が見えなくなっている。せっかく書き手が巧みに裸を描き出しているのに、肝心な部分は不自然な光が当てられ、あるいは煙が被され、裸の露出を隠そうとしている。女達の裸がどうしても見たい場合は、DVD版をお勧めする。




『クイーンズブレイド』に登場する女たちは、みな奔放で異能の力を備え、そのうえとてつもなく美しい。
容姿は完璧なまでに美しく整い、抜群のプロポーションには傷一つ認められない。
そんな乙女達が、下着にしか見えないビキニ・アーマーを身に纏い、華麗に戦う。
『クイーンズブレイド』は女だけの戦いであり、女たちが集い、戯れる、秘密の花園である。
a59cd4cc.jpg美しいヒロインを描くのは日本アニメのお家芸である。一方で、日本のアニメは魅力的な“”ヒーロー”はあまり描かれてきていなかった。ほとんどが典型的なステレオタイプであり、ヒロインの方が圧倒的にバリエーションが多い。もしかしたら、苦手分野なのかもしれない。




1b1794c3.jpg『クイーンズブレイド』は過酷な戦いが中心だが、戦いの生々しさよりも女達の美しさに重点が置かれている。
剣を交えた戦いだが、女達の完璧を誇る身体は、決して傷つくことはない。
アニメーターの視点は、女達の身体がギリギリまでに跳躍し緊張し、その身体が魅力に輝く瞬間を油断なく捉えようとしている。
8c29613c.jpgそして特筆すべきは、剣の攻撃によって、女達の衣服は不自然に引き裂かれ、豊満なボディがさらされる瞬間である。
危険な凶器は女の体を決して傷付けず、その裸体を覆う布の一枚を巧みに引き裂く。
アニメの構図は、物語の解説などほとんど目的とせず、あきらかに女達の身体を魅力的にさせる方法が模索されている。
ba87bf9c.jpg美しい丸みをもった豊満なバストを、なだらかな曲線を描くヒップラインを、それから不自然にちらちらとカメラがまとわりつく股間の周囲を、描き手はそれらがいかに魅力的に見えるか、性的な感性をそそるか、その模索に全精力が注がれている。
b27fbe27.jpg『クイーンズブレイド』は、フェティシズムの形式が模索されている。左のレイナは、涙と涎を垂らしている。いずれも典型的なフェティッシュアイテムだ。
地上波放送では確認できなかったが、失禁もあったようだ。完全版では、ひと通り液体は揃っているようである。やはりDVD版をお勧めだ。注目すべきシーンが削られた作品に、どんな価値があるというのだ。
『クイーンズブレイド』には女しか登場しない。
男は会話の中にちらちらと登場するだけで、あからさまに嫌悪が示され、物語に介入するのを完全に拒否されている。
女しか登場しない世界に、女達の戯れが続く夢幻世界。
男の視点と願望だけがあからさまに刻印されたアニメーション。
そこは、美しい乙女しか存在を許されない、秘密の花園である。



作品データ
監督:よしもときんじ 原作:Hobby JAPAN 原作監修:河原正信
キャラクター原案:赤賀博隆 えぃわ F.S 金子ひらく
         かんたか 空中幼彩 黒木雅弘 ズンダレぽん
         高村和宏 平田雄三 松竜 みぶなつき
キャラクターデザイン:りんしん デザイン補佐:野口孝行
総作画監督:りんしん 美術監督:東潤一 美術設定:泉寛
色彩設計・特技効果・デザインワークス:よしもときんじ 松原貞姫
撮影監督:池上伸治 音楽:横山克
アニメーション制作:アームズ
出演:川澄綾子 甲斐田裕子 田中敦子 水橋かおり
   平野綾 釘宮理恵 明石香織 高橋研二 本田貴子



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■2009/04/14 (Tue)
18e470e3.jpg竹原アキユキは、全速力で自転車を走らせていた。あと一回の遅刻で懲罰訓練だ。
しばらくすると、坂道の向こうが開けた。そこは海を背にした広場で、バス停留場が置かれていた。バスはまだ発車せず、行列を作っていた。
間に合った!
アキユキは自転車置き場に自転車を突っ込ませた。
「小父さん、あとお願い!」
アキユキはスタンドも立てず、管理の小父さんに自転車を引き渡した。道路を横切り、バスの裏側へと回る。バスに乗ろうとする行列はまだ何人も続いていて、その半ばに西村ハルと寺岡フルイチが並んでいるのが見た。
「うぃーす!」
アキユキはハルとフルイチに近付いて朝の挨拶をした。だがハルとフルイチの反応はそれぞれ違っていた。
「遅いよ」と嬉しそうに微笑むハル。
「おめえ、来んのが早えんだよ」と毒づくフルイチ。
「なに? どっちだよ」
「そうよ、フルイチ。アイスはゲッド」
ハルがフルイチににやりと笑いかけた。
ああ、そういうこと。アキユキは二人のやり取りに経緯を察した。
「俺にも?」
アキユキはハルに便乗した。
「早く並べよ!」
フルイチがなかば八つ当たり気味に怒鳴りつけた。
「はいはい」
アキユキは冗談っぽく返事を返して退散した。そのまま、列の一番後ろに並ぶ。
f3956010.jpg列の一番後ろに、灰色のジャケットを着た女の子が並んでいた。髪の色が真っ白で、バッグを大事そうに抱きかかえていた。
アキユキは、すぐに女の子が腕章をつけていないのに気付いた。バスの入口に目を向けると、軍人が厳しく乗員の腕章をチェックしているのが見えた。
b9c33f3c.jpgこれはいけないな。
間もなく順番が回ってきた。
「そのまま行って」
アキユキは女の子の肩を掴み、耳元で囁きかけた。女の子は戸惑いながら、頷いて返した。
アキユキはすぐに列から離れて、腕章を外した。
白い髪の女の子が、バスの入口へと進んだ。
「腕章。喋れんのか、貴様!」
軍人が高慢に女の子を怒鳴りつける。
857c9eca.jpgアキユキはタイミングを見計らって、早足で列に割り込んだ。
「おはようございます」
と挨拶をしつつ、女の子の足元に腕章を落とす。
「おいおい、順番だろうが。ちゃんと並べよ」
軍人が厳しくアキユキを足止めした。
「今日は、顔なじみってことで許可してください」
アキユキは声を抑えて懇願する調子を込めた。
「腕章は?」
「学校帰りに落としちゃったみたいで。仮証明って、どこで」
「総務課に届け出を出せ。明日には用意しておけよ」
軍人は仕方がないな、という調子を込めつつ、アキユキを怒鳴りつけた。
アキユキは早足にタラップを上りながら、ちらと女の子を振り返った。女の子はアキユキが落とした腕章に気付いて、手に持っていた。
「ちゃんと左腕につけておくように!」
軍人は女の子を睨んで厳しく怒鳴りつける。女の子は申し訳なさそうに会釈して、バスに乗り込んだ。
どうやら無事に通過できたようだ。アキユキはバスの後方へ、フルイチの隣の座席に座った。
f0c721f1.jpg「下手な芝居しやがって」
フルイチが声を潜めてアキユキに囁いた。
「転校生?」
すぐ後ろの座席のハルが、身を乗りだたせてアキユキに訊ねた。
「わかんねえ。難民なんじゃねえか?」
f337bcbb.jpg白い髪の女の子は、しばらく所在なげにしていたが、やがて運転席の後ろの空席を見つけて座った。
間もなくバスが発進した。女の子は後ろを振り返って、アキユキを探した。アキユキを見つけると、腕章を手に合図を送った。アキユキは「持ってて」と合図を送り返した。女の子は感謝を込めて会釈し、姿勢を前に戻した。
88fc707e.jpgバスは、海岸沿いの道路を走っていく。いつも見ている、退屈な風景だ。フルイチは武道の本に集中している。アキユキは耳にウォークマンをつけて、退屈な時間を紛らせた。
そうしながら、フルイチはぼんやり窓の外を見詰めた。今日はやけに探査艇が多い。何かあるのだろうか。
8ec384e8.jpgと疑問を感じたが、すぐに退屈して欠伸が漏れた。
しばらくして、バスは学校の前に停車した。一緒に乗った学生たちが行列を作ってバスを降りていく。
アキユキも行列に並びながら、あの女の子を気にかけた。白い髪の女の子は、運転席の後ろの座席から動こうとしなかった。
ここで降りるんじゃないんだろうか。
アキユキはバスを降りた。バスを降りると、すぐそこに学校だ。バス停にハルが待っていた。
4367a0d6.jpg「予鈴が鳴ってる。急げ急げ!」
ハルはやや厳しい声でアキユキを急がせた。
「いちいち待つなよ。これだから幼馴染は……」
アキユキはハルの側を通り過ぎつつ、不満を漏らした。
「おばさんに言われてるのよ。だらしない息子をヨロシクって……」
47960b73.jpg突然に、青い閃光がひらめいた。爆音が轟き、ハルの言葉を飲み込んだ。
アキユキの体は数メートル吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
爆弾だ。アキユキはすぐに身を返して起き上がった。
「ハル!」
爆破の中心地はバスだった。あの側にハルは居たはずだ。
バスを振り向くと、周辺一帯が爆破で吹っ飛んでいた。バスは骨格だけを残して焼け爛れ、e92d26ac.jpgその周囲で学生たちが倒れていた。
アキユキはその中からハルを探そうとしたが、視界に青く光る何かが目についた。
何だ、と注目していると、青い光は空中で生きているみたいに踊り始めた。
青い光が四方に散った。
13a4183d.jpg光の粒は、アキユキの右腕に直撃して姿を消した。
「痛ッ!」
右腕に激痛が飛び込んできた。アキユキは右腕を押さえて、痛みを抑えようとした。だが痛みは腕全体に広がり、なにかが這い回る感触を感じた。
しばらくして、痛みがひいた。全身が消耗して、どっと汗a31b4494.jpgが噴出していた。
「アキユキ、無事か。ハルは?」
背後からフルイチが近付いてきた。フルイチは右足を負傷して引き摺っていた。
アキユキは右腕を押さえたまま立ち上がった。そうだ、ハルは?
もう一度見回すと、バスの側で、ハルが座り込んでいるのが見えた。バスの残骸を見詰めて茫然と震えていた。
すぐにフルイチがハルの名前を呼んで近付いた。だがハルは気付かず、バスを見詰めていた。フルイチがハル6f17bf62.jpgの肩に手を置くと、弾けたように体をのけぞらせた。
「なんなのよ、これ!」
ハルは悲鳴のような声を上げて、興奮して泣き始めた。相当にショック状態のようだった。アキユキは冷静にハルの腕を手に取り、診断を始めた。
「自由権反対派か?」
アキユキもハルの側に近付いて、疑問を漏らした。
「冗談言うな。んなもん、とっくに粛清されている。北政府に決まっているだろ!」
フルイチは半ば感情的になって怒鳴り返した。
アキユキは何気なくバスの周囲に目を向けた。すると、バスの中に、誰かが残っているのを見つけた。あの白い髪の女の子だ。
アキユキはとっさにバスを目指して走った。
「アキユキ、行くな!」
フルイチの制止する声が聞こえたが、アキユキは構わずバスに向かった。
アキユキはぐしゃっと潰れた運転席からのぼり、バスの中へ飛び込んだ。
バスの中は全体が焼け爛れ、床の板が泡を吹いてめくれ上がっていた。相当の高温だったらしい。
バスの一番後ろの座席に、白い髪の女の子が背中を向けてうずくまっているのが見えた。
アキユキは女の子の側へ行こうとした。だが右腕を押さえていた左掌に、奇妙な違和感があるのに気付いて、ちらと目を向けた。
「何だよ、これ」
見ると、右腕の痛みの中心に、青い石の塊のようなものができていた。と思ったら、青い石が右腕の中に潜り込んで、姿を消した。
d0c97f6b.jpgアキユキは女の子の側へと急いだ。女の子はぐったりと焼け爛れたクッションに体を預けていた。周囲に緑の液体が広がっていた。
「動けるか?」
アキユキは女の子の肩を掴み、振り向かせた。女の子は力なく首をぐったりとさせた。お腹を押さえていて、そこから緑の液体が滲み出ac505ebc.jpgていた。
「……ごめんなさい、巻き込んで」
白い髪の女の子は、目を開いて、苦しそうな声で言葉を紡いだ。
「まさか、君が?」
「……私はナズナ。あなたなら……きっと大丈夫997c7add.jpgです。……亡念の…ザムド」
女の子は震える指を持ち上げて、アキユキの額を緩く叩いた。それを最後に、女の子は意識を失って崩れた。
アキユキの額に、何か現れる感じがあった。次の瞬間、何かが顔面を覆って、視界が真っ黒になった。
アキユキはパニックになって、顔を抑えて立ち上がった。顔に張り付いた仮面をはがそうともがいた。だが、仮面は外れない。それどこか、全身に何かが駆け巡って、蠢くのを感じた。
突然に、血が沸騰するのを感じた。体が膨張し別の何かに変態する感覚があった。アキユキの意識が飲み込まれ、別の意思に支配されていくのを感じた。
b68f9c09.jpg物語中の言語は、独自のパターンがあるが、ところどころで、日本語で表記されている。伝わりやすくするための配慮だろうか。




70425ecd.jpg『亡念のザムド』で描かれる日常風景は、日本のようでありながら、どこかしら異世界の空気を孕んでいる。
おそらく、どこかの実景を参考にされているのだろうと推測されるが、場所も時代もはっきりと特定できない。
日常風景は徹底的に接写され、日常的なあらゆる小道具は、書き手の意識の中に取り込まれた上で再構0f77c760.jpg築されている。
『亡念のザムド』が描く風景は、どこかしら古い日本の風景を喚起するようであり、さらに不思議なぬくもりを持ったデザインで満たされている。
曲線と円を多用したデザインが、SFの世界観にやわらかな印象を与えている。
どこかで見たことがあるかもしれない風景。だが、それでいて、かつて見た経験のないSF的異世界を作り上げている。
33e9e04b.jpg物語の風景は日本によく似ている。背景に三輪のレトロな自動車が登場する一方、近代的な建築も登場する。時代を特定させずに、あくまでも異世界であることを表現するためであろう。



70628f66.jpg人物の描写はしっかり描かれていて、難易度の高い演技を挑戦するかのように作画されている。
自転車で走るアキユキや、爆破に直面して震えるハル。
アニメではなかなかお目にかかれない演技を、しっかりしたパースティクティブの上で描かれている。
一つ一つの描写が妥協することなく描写され、奥行きのある世界観を描き出している。
de2dcf7e.jpgザンバニ号を見たとき、「ああ、またガンダムか」と思ってしまった。ガンダムのストーリーはすでに一つの形式なのだろうか。




一つだけ懸念があるとしたら、物語の構造だ。
展開自体は、ロボットアニメの典型的なパターンを踏襲しているように思える。
平凡な少年が謎の力を得て変態し(あるいはロボットを託されてパイロットに)、兵器として駆り出され、戦場の英雄へと成長していく。
物語の中心となるのは、あのザンバニ号と呼ばれる小さな船だろう。
『機動戦士ガンダム』におけるホワイトベースや、『不思議の海のナディア』におけるノーチラス号の類型だ。
アキユキはあのザンバニ号に乗り込み、世界を漂流しつつ、半ば冒険、半ば戦いの日々を送る……といったストーリー展開なのだろうか。
SFロボットアニメの典型を、新たな作家と新たなデザインで、再構築されたシリーズ作品として捉えるべきだろうか。
今後の展開を見守って生きたい作品だ。

作品データ
監督:宮地昌幸 原作:BONES メインライター:清水恵 野村裕一
アニメディレクター:奥村正志 キャラクターデザイン:倉島亜由美
ザムド/メカニックデザイン:橋本誠一
メカニックデザイン:山根公利 ヒトガタデザイン:水畑健二
美術監督:青井孝 色彩設計:梅崎ひろこ
撮影監督:福士享 宮原洋平 音楽:大島ミチル
アニメーション制作:ボンズ
出演:阿部敦 折笠富美子 立花慎之介 藤村歩
   三瓶由布子 玉井夕海 小西克幸 浜田賢二
   桑島法子 石塚運昇 早水リサ 土師孝也
   松来未祐 金光宣明 堂坂晃三 鈴木恭輔




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■2009/04/13 (Mon)
96fe27ae.jpg創聖学院の拡張工事の途上で、古い遺跡が発掘されたらしい。
親父からその話を聞かされた僕は、さっそく創聖学院へと向かった。
場所は広い学園の脇に置かれた森の中。そこをずっと進んだところに、問題の現場はあった。
1f9eabf1.jpgその一画はすでに木々が切り崩され、くり貫かれたみたいになっていた。そんな場所の只中に、いかにも曰くありげな木の祠が聳え立っていた。
幸いにも、工事現場の人たちは工具を残したまま、その周囲を立ち去っていた。工事は中断されたままの状態らしい。
僕は立ち入り禁止の柵を潜り抜けて、祠の側に近付いた。
まるで大きな墓標のような祠だった。祠には、消えかかった古い文字で「太転依(たゆたい)」と記されてあった。
僕が近付くと、凄く強い霊力を感じた。半人前の僕でも、全身にひりひりと感じるくらいだった。これをこのまま放置していては危険だ、と直感的に理解した。
edc0ec77.jpg「こら! スライトリーの生徒だな。こんなところで何をしている!」
すると、背後から鋭い声が飛びついた。
僕はギクッとして振り向く。きっとフローレスの執行部員だ。
創聖学院には女子学部だけの「フローレス」と、男女共学の「スライトリー」とに分けられている。女の子が着ているのは、フローレスの制服だった。
f2db2f72.jpg「えっと、何でグランド拡張工事が延期になったのか、気になっちゃって……」
僕はもどかしく言い訳の言葉を捜した。
「だからって、中に入る奴があるか。さあ、行くぞ」
ちょっとおっかない。ここは大人しく退散したほうが良さそうだ。

夜が遅くなってから、創聖学院に忍び込むことに決めた。
「なんや、急に呼び出して」
「なに? お祓い?」
呼び出したのは河合アメリと要三九郎の二人だ。いろいろ大仕事になるかもしれないから、協力してもらつもりだ。
僕らは諸々の道具をバイクに詰み込んで、あの工事現場へと直行した。
工事現場の周囲には明かりはなく、月明かりだけで暗く浮かんでいた。日暮れ時より、遺跡の周囲は影を濃くして、悪霊の気配を強めていた。
44011a5f.jpg「事件になる前に片付けたほうがいい。あんなにはっきり霊の姿が見えるなんて、異常だよ」
といいながら、僕は必要な道具を準備した。神主の衣装に着替えて、御神酒と榊を用意する。
「ちょっと霊とか、やめてよ!」
「神社の息子に言うことか」
c18abef5.jpgアメリが怯えた声をあげて、三九郎が突っ込みを入れた。タイミングのよさはさすが関西人だ。
僕はすぐにでも祝詞を唱え始めた。厳粛な空気が辺りを重く張り詰め、沈黙がどこまでも深まっていくようだった。
祝詞が終わる頃には、風の音すらとまっていた。
b66ecf01.jpg「違うよこれ。時間が止まってる!」
アメリが空中を指して声をあげた。見ると、宙を漂う木の葉が、そこで動きを止めていた。
突然に、祠が強い光を放った。僕はうっと目を閉じて、光から目を背けた。やがて強い光が収まり、もう一度目を開けると、祠の上に、大きな影が現れていた。
真っ白な髪をした、女神だった。
「太転依さま?」
「私は大和の東を統べたる綺久羅美守毘売(きくらみかみのひめ)と申す」
綺久羅美守毘売は厳粛な空気を湛えながら名乗った。
綺久羅美守毘売……家の神社で祭っている神様じゃないか!
「ここには、大小様々な太転依が封じられています。千五百種。総数にして数万匹。解き放たれれば、現世は大変な騒ぎになりましょう。断じて、この繭を別の場所に移しても、破壊してもなりません」
「難儀な場所やったんやな……」
三九郎が茫然と呟いた。
僕は同意して、重く頷いた。理事長たちにはよく話して理解してもらうしかない。
その時だ。静止していた風が動き始めた。風は強く、不自然な渦を巻き始めた。
強烈な風と共に、底のほうから邪悪な気配が立ち昇ってくるのを感じた。
「アメリ! バイクでここを離れるんだ!」
これは危険かもしれない。僕はすぐにアメリに避難するように指示した。
アメリは大人しく従って、バイクに跨った。だが、キーを捻ってもバイクは動き出さない。いや、エンジンはかかっている。いくらレバーを握っても、バイクは空回りするばかりだった。
e2a04ec3.jpg突然に、バイクが暴走した。バイクはアメリを振り落として、勝手に前方に進みだした。
あっと思う間もなく、バイクは祠に激突した。祠の中央に、真っ二つに亀裂が走った。
邪悪な気配は一気に強くなった。彼らを押しとどめておくものはなくなり、一斉に夜の闇に溢れ出した。綺久羅1553627c.jpg美守毘売の姿も、闇に捉われるように姿を消してしまった。
「綺久羅美様!」
僕は綺久羅美守毘売を失ってはいけない、と強く叫んだ。
すると、
e65be7a2.jpg「はーい」
この場にふさわしくないくらい、軽い返事が返ってきた。
振り向くと、そこに小さな女の子がいた。長い銀髪に和装姿で、狐の耳と尻尾を持っていた。それから、自分よりも大きなハンマーを持っていた。
3a9cc44d.jpg「だ、誰?」
僕は困惑して、少女に尋ねた。
「みんな、お仕置き!」
少女は僕の疑問には答えず、強い眼差しであたりを漂う悪霊を睨みつけた。



8638b8cd.jpg男性キャラクターより、女性キャラクターのほうが圧倒的な印象をもたらす。いわゆる、ハーレム・アニメだが、主人公の少年がやたら持てる理由は、例によって不明である(そこはただの願望の実現なので、論じる意味は不要であるが)。
ところで、泉戸祐理はどうして河合アメリと要三九郎を連れてきたのだろう。役に立っていないどころか、問題しか起こしていないのだが?

深い森の中に封印された、太古の悪霊。
それが解かれしとき、災いもたらす悪霊が世にはびこり、戦いのドラマが始まる。
『タユタマ』の物語には妖怪奇譚ものの背景があるが、中心となるのはコミカルなキャラクター達だ。
作品に厳粛な雰囲気が漂う瞬間もあるが、可愛らしいキャラクターが瞬時に作品の色調をリセットし、独特の空気感を作り出してしまう。
67f89133.jpgこの種の様式化されたキャラクターは横顔ほど特徴が出る。シルエットは横を向いているが、瞳が正面に向けらているのがわかるだろう。常に見る側の視線を意識したデザインだ。『らき☆すた』と較べてみると面白いかもしれない。


キャラクターたちは極端に潰しと伸ばしを繰り返し、独特な感性で構築されている。
小さな顔に、大きな瞳。キャラクターに付属された装飾は大袈裟なくらい過剰で、アクションは重力から解き放たれて、自由に飛び交う。
それでいながら、キャラクターたちには独特の様式美が貫かれている。
アニメーションヒロインの形式としては、普遍的な勢力を持ったジャンルである。
384b72a5.jpgこの種のヒロインの特徴は、過剰に性的であることだ。キャラクターデザインは性的な部分を過剰に大きく描き、キャラクター同士のやり取りの中でも、セクリャシティを喚起する言葉が連発する。大きなお友達用アニメの特徴だ。


3efd01cd.jpgだが、この種のデザインは過剰な様式化のために、演技空間に一定の制限が加えられている。
静止画のイラストレーションにおいては躍動感を持ったキャラクターたちも、パースティクティブを持った動画作品になると、むしろ奔放な魂を失ってしまう。
キャラクター同士の演技も立体的な感覚が乏しく、どの構図も平面的になってしまっている。
それが映像作品として、ひどく平凡な印象を与えてしまっている。
0e5e4d0e.jpg第1話後半からして、妖怪奇譚ものの色彩は完全に消滅する(というか、もののけデザインが可愛すぎるので、妨害者としての印象が弱い)。街に散った妖怪ほったらかしで、泉戸祐理の取り合いを始める。



0828ffb1.jpg作家の狙いは、厳密な演技空間を持ったドラマではなく、可愛らしいヒロイン達の戯れだろう。
美しいヒロインが華麗に宙を飛び交い、一人の青年を巡って奪い合いを繰り広げる。
作品の独特の色調は、作家の意図によって自由に操作されている。
コミカルな美少女が飛び交うヒロイック・ファンタジー。
だが、できれば夜中に一人でこっそり見たいアニメだ。

作品データ
監督:元永慶太郎 原作:Lump of Sugar
キャラクター原案:萌木原ふみたけ キャラクターデザイン:大河原晴男
クリーチャーデザイン:門智昭 秋山由樹子
プロップデザイン:野田めぐみ 大梶博之 総作画監督:大河原晴男
色彩設計:末長康子 美術監督:下山和人
撮影監督:笠井亮平 音楽:大川茂仲 蓑部雄祟
アニメーション制作:SILVER LINK
出演:日野聡 力丸乃りこ 下田麻美 置鮎龍太郎
伊藤静 若本規夫 丹沢晃之
水見はるか 岸尾だいすけ 中川理江



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■2009/04/13 (Mon)
ゲール一族の村は、しんと静まり返っていた。森のざわめきが、際立って聞こえてきた。
リアンノンは、不安に心をかき乱されるのを感じて、窓から月を仰いだ。
43d356c4.jpg「赤星様……。私たちゲール族の守星様。私に、勇気を下さい。この危機を乗り切れる強い意志を。何が起ころうとも、恐れず成し遂げる勇気を与えてください」
リアンノンは深く瞑想して、心のざわめきを抑えつけた。
それから立ち上がり、窓を閉じる。部屋のなかに射して64de458c.jpgいた月の光が失われて、部屋は真っ暗闇に沈んだ。
間もなく、村に何かがやってきた。ざっざっと訓練された靴の音。森のざわめきが強くなり、集団の気配が迫った。
気配の数は、圧倒的に多い。村ぜんたいを包み込むほどの軍団だった。
「我は神聖帝国首席司祭ドルクウだ。蛮族どもよ、心して聞くが良い! この村はたった今から我ら帝国の支配下に入った。意義のある者は進み出るが良い! すべては互いの剣と力によって決定されよう!」
老人の声だが堂々としていて、どこかに風格を漂わせるものがあった。
7394e25c.jpg同時に、ドルクウ老人の手下たちが村を蹂躙した。家々の扉を蹴り破り、窓や陶器が割れる音が周囲を満たした。
リアンノンは充分な間を計らって、扉を開けた。
村は武装された兵士たちに取り囲まれていた。だがリアンノンは決して戸惑いを見せず、意思を強く持って、119e8167.jpgそれでいて静かに、ドルクウ老人の元へ進んだ。
ドルクウはすぐにリアンノンに気付いて、にやりと顔をゆがめた。
「エリンの巫女だな。今までよく隠れてきたものだな。伝説の古代王国、アルビオンの後継者。妖精王プィルの末裔よ!」
ドルクウは傲慢に持っている杖を、リアンノンに突きつけた。
リアンノンは静かに呼吸して、空を仰いだ。もう一度、月星様に勇気を乞うために。
786df6d3.jpg原作はアダルトゲームだ。そういうわけなのか、少女の描写にはこだわりがあるようだ(尤も、アダルトにオリジナルはありはしないが)。物語前半は、ほとんどがリアンノンの美しいクローズアップで占められてた。



d40a139f.jpg静かな村に、邪悪な意思を持った軍団が突然迫り、エリンの巫女と呼ばれる美少女が連れ去られてしまう。
アニメ『ティアーズ・トウ・ティアラ』は北欧神話から着想を得たファンタジー作品だ。
だがその構築方法は、いかにも日本のアニメらしいアレンジが加えられている。
26fd3d4d.jpg自然の風景は観察による努力が感じられないし、村の風景や遺跡の描写も、現実的な質感を感じさせない。
世界観に堅牢なパースティクティブはなく、ドラマの中心は極端にキャラクターたちに偏重している。
ただキャラクターたちはどれも美しく描かれている。端整な容姿に、強い眼差し。可憐なる衣装。
『ティアーズ・トウ・ティアラ』がキャラクターを中心にしたドラマであることがよくわかる。
d05d5ee7.jpgキャラクターは美しく描かれているが、やはりファンタジーは風景をしっかり描くべきだろう。キャラクターを中心だけに偏ると、ただのコスプレアニメにしかならない。ファンタジーに説得力を持たせる方法は、学問以外にない。


物語は直線的に、滑り落ちるように進行する。
邪な企みに、怪しげな儀式に捧げられる美少女。それを救い出そうと戦う青年も、やはり美しい顔立ちをしている。
物語の起伏は少ないし、25分のアニメの中で消化されたプロットは短い。
だが、全体を通して重厚さで満ち溢れ、キャラクターたちが立体的なドラマを作り出している。後半における活劇への変化を、うまく演出している。
だが物語は、何かが起きそうな気配だけを残して途切れ、結末を次回に持ち越す。
大きなドラマへの予感を残しながら……。

作品データ
監督:小林智樹 原作:AQUAPLUS
ストーリー原案・キャラクター原案:まるいたけし キャラクター原案:甘露樹
キャラクターデザイン:中田正彦 プロップデザイン:池上太郎
美術監督:保木いずみ 色彩設計:佐藤美由紀 特殊効果:谷口久美子
撮影監督:設楽希 音楽:服部隆之 脚本:町田堂子
アニメーション制作:WHITE FOX
出演:大川透 石井真 後藤邑子 橘見尚己 四宮豪
石上裕一 逢坂力 秋本羊介 小形満



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■2009/04/12 (Sun)
279c030f.jpg桜も満開の春。
明日、私立洛芦和高校の入学式だというのに、夏目智春は引越しの荷解きをしていた。
母親が再婚したのを切っ掛けに、実家を追い出されたのだ。そんなわけで、今日から鳴桜邸と呼ばれる屋敷で一人暮らしだった。
0a7fdfca.jpgでも荷物は一杯だし、手伝いに来たはずの友人の樋口琢磨はちっとも協力的じゃない。古ぼけた屋敷に夢中になって、「幽霊が出るかも!」と探検して回っていた。
「可愛い幽霊だったら、もうここにいるのにね」
ふと、頭上から少女が声を掛けた。
1c294cb7.jpg智春が見上げると、桜が散る空に、少女が一人浮かんでいた。体の色が薄く、向うの背景が透けている。
この少女は水無神操緒。智春に取り憑いている、一応、幽霊だった。
ふと、屋敷の中で気配がした。樋口が何かやらかしたのだろうか。
一階の応接間へいくと、暖炉の前に見覚えのなf4d4810a.jpgいトランクが一つ置かれていた。
「智、こんな高そうなの、持っていた?」
操緒がトランクを覗き込んで、首を傾げた。
「それはあなた達のものよ。君、直貴さんの弟君ね」
えっと振り向くと、応接間に設置されていたソファにくつ361e462e.jpgろいでる女がいた。
夏目直貴。智春の兄で、今、アフリカに留学中の兄だった。
「いえ。あの、兄貴の?」
知り合いだろうな。智春はおずおずと女に尋ねた。
女は黒い短く髪を切りそろえ、赤いフレームの眼鏡をかけている。年0078c93c.jpg齢不詳な感じだが、とにかく大人の女性に思えた。
「直貴さんから頼まれたの。確かに渡したわ。それ、間違いなく、あなた“たち”のものだから。絶対、手放しては駄目よ」
女はそれだけ言い残すと、颯爽と屋敷から出て行った。

結局、引越しの荷解きは終わらないまま、日が暮れてしまった。
智春は、昼間の女を気にしながら、ベッドに横たわる。目を開けると、すぐ側を操緒がふわふわと浮かんでいた。
操緒は薄い寝間着を一つ羽織っただけの姿で、ゆったりと寝息を立てていた。
ふと智春は顔が熱くなって、目を逸らした。
そんな時だ。沈黙を破るように、何かが破裂する音が聞こえた。
泥棒か。智春ははっとベッドから飛び起き、一階へと降りていった。客間に飛び込むと、窓が割れているのが見えた。だが、派手に打ち破られたのではなかった。窓はきれいな円の形に削り取られていた。
なんだろう、これ。
思わず見入っているところに、気配が迫った。智春は首をぐっと掴まれ、壁に押し付けられた。
8cea25ec.jpg「アスラ・マキーナはどこ?」
少女だった。巫女装束のような衣装を身にまとった少女だった。
「イクストラクタを渡してください。あれは、危険な存在です!」
少女は強いまなざしで、智春を睨みつけた。智春は首を絞められて答えられず、少女の顔を見詰めかえした。少女は右と左の目の色が違っていた。
そこに、操緒が天井から姿を現して、駆けつけてきた。
操緒の姿に、巫女服の少女ははっと振り向く。
「射影体!」
少女は操緒の姿の驚愕して、その場から逃げ去っていく。

夜も明け、いよいよ高校の入学式だ。
a240a1c0.jpg学校に行くと、なぜか幽霊の操緒は私立洛芦和高校を身にまとっていた。
「その制服どこからもって来たの?」
「内緒。可愛いよね。ここの制服。いつも同じ服より、オシャレな幽霊のほうがいいでしょ」
操緒は得意げに微笑んで、空中でくるっと回ってみせた。
まあ、それもそうか。智春は深く考えずに、納得することにした。
間もなく、女好きの樋口琢磨の情報網で、昨日の二人の女の正体が明らかになった。
黒い髪の女は、同じ高校の2年生。名前は黒崎朱浬。科学部部長代理を務めていてる。
もう一人の巫女服の少女は、なんと同じクラスの嵩月奏。
夏目智春の周囲に、不穏な影が漂い満ち始める。
非日常の物語は、すでに始まっていた。

□■□■□

fd971280.jpg『アスラクライン』の物語は、現実世界を舞台としているが、完全なファンタジーである。
主人公の夏目智春は、親やその周辺社会から隔絶された屋敷に暮らし、現実世界との接点を持っていない。
夏目智春にとっての日常は、高校での生活ということになる27b7da82.jpgが、この学園生活という空間自体が、完全なる異空間である。
特殊なデザインの制服に、すべての登場人物はこの高校の在校生徒だ。
つまり、物語がこの高校の周辺から飛躍する展開はなく、すべてが高校生活の内部に集約され、完結するように作られているのだ。
8fb53b49.jpg夏目智春の在籍は「1年7組」である。この少子化の時代に、どうして「7組」なんて設定にしてしまったのだろう。現代の時代の流れを読み違えたのだろうか。



bf5d96e2.jpgもっとも、閉鎖された高校ですべてが集約されるファンタジー・アニメは、日本のアニメにおいては定番のジャンルである。
キャラクターや設定は独創的に練りこまれているように見えるが、アニメのジャンルにおいては平凡だ。
人物の設定、配置方法、学園風景……何もかもが、既視感で満たされている。
『アスラクライン』独自による、飛躍やイマジナリィはどこにも発見できない。
前時代的というべき設定や作法を、インデックスにして列挙したような作品である。
「個性がない」とは言わず、古典に倣ったアニメと見るべきかもしれない。

作品データ
監督:草川啓造 原作:三雲岳斗 脚本:小出克彦
キャラクター原案:和狸ナオ キャラクターデザイン:小森篤
メカデザイン:福島秀機 メカ総作監:小田裕康
美術監督:海津利子 美術設定:青木薫 色彩設計:甲斐けいこ
撮影監督:北岡正 音楽:田尻光隆
アニメーション制作:セブン・アークス 
出演:入野自由 戸松遥 野中藍 田中理恵
   下野紘 豊崎愛生 森久保祥太郎 こやまきみこ
   高橋研二 日笠陽子



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